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南充浩 オフィシャルブログ

小規模アパレルのM&Aが本当に増えていると感じた話

2025年1月16日 企業研究 0

コロナ自粛が明けてから、大学時代の同級生や1、2学年上の先輩らと同窓会的にお会いすることが増えた。当方が今年55歳になるので、同級生は最低でも今年55歳。浪人していたら1歳上・2歳上になる。

先輩連中はまごうことなく還暦手前である。当方も含めてみんなジジイとババアである。

同窓会的に出会う人は当方とは異なりだいたいが真っ当な人間なので真面目に会社員として勤務を続けている人が多く、もれなく定年手前になっておられる。

近年の情勢でいえば、雇用延長は当たり前だからよほどの資産家でない限りは雇用延長で65歳まで働く方が多いのだろうけど、やはり「定年退職」というのは「一区切り」という意識が強く、別に定年退職の無い当方ですら、やはり還暦で「一区切り」という気持ちが強い。

 

 

この業界には、当方と同年輩、年長で企業規模を問わず創業経営者としてがんばっておられる方が多い。当方とは違って気力充実しておられるが、いずれは老いて引退を余儀なくされる。どんな鉄人でも必ず死ぬのである。その際、息子や娘に引き継がせたいと思っておられる方もおられるだろうし、古参の優秀な社員に譲りたいと思っておられる方も多いだろうが、最近は特に小規模アパレルが自社よりも規模の大きな会社に売却するというケースが増えていると感じる。

先日、もう半年以上も音沙汰が無くなっていた小規模アパレルの創業経営者から久しぶりに連絡があった。

発表はされていないが、某大手副資材メーカーに買収されて傘下となることが決定したとのことだった。文面からは「ホッとした」という感じが伝わってきた。零細・小規模アパレルの後継者問題の最も賢明な解決方法は中堅・大手企業に売却することではないかと当方は思うようになってきた。

その結果として、リストラされる社員は何人か出てくるにせよ、ある程度の社員の雇用は守られるしブランドも買収先の会社の施策がおかしくなければ存続する。ベストではないがベターな選択肢ではないかと思う。

 

 

 

そんなことをしみじみ感じていたら、たて続けに小規模アパレルの買収が報道された。

 

ソトーがメンズアパレルのジェノとジーステージ・ジャパンを完全子会社化 BtoC戦略を強化 | 繊研新聞

F・O・インターナショナル、マザーリップを完全子会社化 都市部の開拓を加速 | 繊研新聞

である。

 

まず、ソトーの方から見てみよう。

染色整理加工のソトー(愛知県一宮市、上田康彦社長)は1月15日、アパレルメーカーのジェノ(大阪、疋田勝久社長)と同社子会社のジーステージ・ジャパンの全株式を取得。完全子会社化すると発表した。同日の取締役会で決議。契約締結は20日、株式譲渡日は31日を予定している。

両社が持つアパレル製品の企画・生産管理と海外生産のノウハウを取り込み、EC分野での新たな販売戦略を構築するのが目的。ソトーが企画販売しているブランド「MOVB」(モーブ)を含む既存事業とのシナジーを実現。ソトーが中期的な経営戦略の基本としている「BtoC(企業対消費者取引)への事業領域拡大」を加速したいとしている。

ジェノはメンズアパレル製品の企画・生産管理、OEM(相手先ブランドによる生産)と販売を事業としており、その関係会社のジーステージ・ジャパンはジェノ企画製品の販売及び国内でのシャツの製造販売を行っている。

とのことで、ジェノは年商規模は不明だが、資本金は9500万円でジーステージの直営店やネット通販も展開しているので、年商は10億円台はあるのではないかと思われる。

とはいえ、業界では決して中堅・大手規模ではない。

ソトーは染色整理加工業者としては珍しく資金力もあり事業買収に積極的である。かつて2010年には艶金興業の事業を買い取ったこともあった。

 

次にFOインターナショナルの方を見てみよう。

子供服のF・O・インターナショナル(神戸市、FO)は、子供服製造卸のマザーリップ(名古屋市)を完全子会社化する。1月16日に全株式を譲り受ける株式譲渡契約を締結する予定。FOにはない国産、高単価ブランドを傘下に入れることで、百貨店や駅ビルなど都市部の開拓を加速する。

マザーリップは子供服の卸事業を約20年継続し、国産の物作り、企画力に定評がある。価格帯は1万円前後で、子供服の中では高価格となる。卸以外の販路を持たないため、FOの生産力、販売力を合わせて、SPA(製造小売業)やECを拡大できると判断した。

 取得額は非公開。マザーリップは年商が1億円弱で、米本律男社長は続投、従業員も継続する。主力の子供服ブランド「トイトイトイ」は、今春から百貨店で期間限定店を出店する。休止していたベビーブランド「ボリボンウーフ」は、FOがベビー、ギフト向けを強化しているため再開する。

とのことで、こちらは高価格小規模アパレルの典型だといえる。

低価格帯に強いFOとしては、小規模とはいえ、高価格帯に強い企業を買収することはメリットがあった。

 

ジェノにせよ、マザーリップにせよ、現時点ではベストな選択肢だったのではないかと思う。

両社ともに現社長は「ホっとした」心持ちだろうと推測する。

 

 

さて、同年代がそろそろ終わりを見据え始めているので、当方も終わりを意識している。当方の仕事など引き継ぐ必要も無いし誰も困らないから、年金支給年齢に達したら、少しだけ延長して、現時点なら66歳になったらすっぱり終わろうと思っている。支給年齢が引き延ばされれば仕方が無いのでそれまでは何らか働くだろう。そんなわけで年金支給年齢の引き上げはやめてほしいと切に願っている今日この頃である。(笑)

 

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