
コロナマルダイとセレクが倒産したのでざっくりと過去を振り返ってみる
2024年12月17日 企業研究 2
衣料品は一見すると参入障壁が低くてド素人にも分かりやすい分野だと思われがちだが、糸、生地、パターンは専門性が高く、国家資格なんかは必要ないが、しっかりとした知識と長期間に渡る経験が求められる。
糸、生地、パターンなんかは当方のようなド素人にさえ、まだ認識される確率も高いが、副資材となると、知識が求められる上にさらに認識されにくいという報われにくい分野でもある。
とはいえ、副資材無しでは洋服作りはほぼ不可能だから、目立たず報われないが必要不可欠な分野でもある。
衣料品業界において副資材とは、ボタン、ファスナー、芯地、織りネームなどを指す。
その副資材業界の中にあってひときわ目立ちにくいし、存在すら認知されにくいのが芯地だろうと思う。
普通の服で「芯地」が見えている服はほぼ存在しない。
しかし、襟、前立て、袖口などいたるところに芯地は使用されているにもかかわらず、見えないから、とりわけド素人インフルエンサーなんかには存在すら認知されないという極めて不憫な商材が「芯地」である。
まあ、そんな芯地を扱う会社、コロナマルダイが破産した。
正確には芯地の製造卸である。
コロナマルダイ(株)/破産手続き開始決定 <大阪> | 小口倒産・破産開始-JC-NET(ジェイシーネット)- 倒産・企業、政治・経済の情報サイト
あまりに知名度が無さ過ぎて、このサイトも業種には触れていない。
では在りし日のコロナマルダイはどんな感じだったのかを見てみよう。
VOL.13 コロナマルダイ株式会社様 | KanFA SDGs推進室
2020年11月の記事である。今からちょうど4年前である。
この記事に登場する森澤章雄社長はスーツ姿でいかにも社長然とした身なりをしておられる。
実は今から20年くらい前の森澤社長はこんな身なりをしておられなかった。
2003年で業界新聞を辞めるまで当方は森澤社長に定期的に取材させていただいていた。メンズワイシャツ特集というものが定期的にあり、その際、シャツメーカー以外にシャツ生地紡績やシャツ生地問屋、そして芯地なども合わせて取材するため、定期的にお会いしていたわけである。
コロナマルダイはシャツ向け芯地では当時一定のシェアがあった。
この当時の森澤社長はポロシャツにスラックスというラフないでたちが多かった。まあ、よくある大阪・本町界隈の社長という服装だった。
記事掲載時のコロナマルダイの会社概要は以下の通りである。
■会社概要
商号 コロナマルダイ株式会社
代表 代表取締役社長 森澤章雄
創業 1941年2月
設立 1957年
従業員数 15名
事業内容 芯地の製造及び販売
となっている。
今から振り返れば、当方も若かったが森澤社長も恐らくはお若かった。画像の御顔は当時の記憶とそんなに変わっていない気がするが、当方が30歳前後で、それよりは10歳以上年長だったと記憶しているから、現在は60代半ば以上だろう。
当時の記憶では、なかなか活発で事業欲の旺盛で意欲的な方だという印象が強かった。
さて、コロナマルダイと並んでもう1社破産している。
CELEC(株)/破産手続き開始決定 <大阪> | 小口倒産・破産開始-JC-NET(ジェイシーネット)- 倒産・企業、政治・経済の情報サイト
これは何の会社かというと、コロナマルダイがフーセンウサギから商標を買い取ったベビー服の会社である。
ちょうど、先の記事内の森澤社長の画像で、ドアに「コロナマルダイ」と並んで「CELEC」と書かれてある。経営者が同じなので連鎖倒産したということだろう。
さて、コロナマルダイがセレクを買ったのは2014年のことなので、ちょうどまる十年で破産したことになる。
当時の記事を見てみよう。
服飾資材製造卸のコロナマルダイ(大阪、森澤章雄社長)は、13年に自己破産したフーセンウサギの高級ベビー服ブランド「セレク」の商標権を昨年秋に取得、今年3月に子供服アパレルのセレクを設立、15~16年秋冬物から販売を開始する。
とある。フーセンウサギが倒産してから早いもので11年が経過した。
余談だが、当方の大学の3つ上の先輩がフーセンウサギに就職しており、たまに展示会でお会いしていたのだが、フーセンウサギの経営が悪化したころから見かけなくなった。その後、本社も雑居ビルに移転したのだが、収益性は上向かずに13年に倒産した。
先輩が倒産に巻き込まれていないか心配いたが、今秋の同窓会で15年ぶりくらいに再会できて無事が確認された。今は全く違う業界で働かれており、それはとても賢明な選択だと思った次第である。
それにしても当時は、コロナマルダイがベビー服ブランド「セレク」を買い取って直販に乗り出したことに驚いたが、森澤社長ならあり得ると感じたものだった。
当方も日常的にベビー服・子供服業界を追跡調査しているわけではないから、知らないだけなのかもしれないが、買収以降でセレクの名をほとんど聞いたことが無かった。
そのため、あまり上手く行っていないのではないかと思っていたのだが、そのうちに忘却して気にしなくなった。
今回、検索でウェブ上の痕跡を探ってみたが、コロナマルダイもセレクも公式サイトは消えている。
ただ、セレクのインスタアカウントは残っているが、最後の画像は2018年の年末にアップされたものだ。
CELEC(セレク)(@celec.baby) • Instagram写真と動画
それ以降は更新されていない。
推測だが、2019年から業績が悪化したのか、担当者が辞めたのか、その両方なのか、だろう。
それにしても「セレク」をコロナマルダイが買収した際には、あの目立たなくて地味で知名度の無い芯地業界の会社がベビー服とはいえ、ブランドを買い取って直販に乗り出すとは時代は大きく変わったと感動すらしたのだが、結局は本業もベビー服も上手く行かなかったということで、本当に繊維ビジネスは難しいと感じる。
恐らくは20年春からのコロナ禍の影響もあったのだとは想像するが、コロナ禍を抜きにしてもインスタ運営が18年末で停止していることを鑑みると、上手く行っていなかったと思われる。
今回のダブル倒産に関して大阪・本町界隈からは「破産手続きが決定されたのは12月4日からだが、それ以前から相当に経営が悪化していて、最終的には夜逃げに近い感じになった」という声もあった。
comment
-
-
ミナミミツヒロ的けち生活者 より: 2024/12/19(木) 1:24 PM
キム氏>貼り芯
今ではあまり使わない単語になりましたね
40歳以下だとまず「接着芯」ですから>副資材無しでは洋服作りはほぼ不可能だから
>目立たず報われないが必要不可欠な分野でもある。恐らく倒産した人も同じ認識だったのでしょう
しかし国内でこれほどまでに服が作られなくなって
その上ニットが主流になるとは思っていなかった筈>メンズワイシャツ特集というものが定期的にあり
そうなんです。でも今はメンクラ自体が消滅するご時世・・・
おもうに、シャツは生活必需品だから
総労働人口は減っても
確実に生き残る商品だ!と思っていたんじゃないのかな?
加えて創業が古いから手金があった・・・本業に見切りをつける事を含め
いかに商売を止められるかそれがとても大切な時代だったのでは?
今ではない、景気がまだ良かったが
売れる服の構造に変化が起きつつあった
2005年頃の話です
スーツやジャケットに使用される芯も貼り芯になって、へたるのが早くなりましたね。
制作工程は随分楽ではありますが、持ちは長くはない。そういう服が主流になっているのは
昔を知っている人間に取っては少し残念ではあります。今回紹介された企業もそんな時代の流れに合わなかったのかもしれませんね。