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南充浩 オフィシャルブログ

繊維向け用途が減少し続けるペットボトルリサイクル

2024年12月16日 素材 0

業界メディアや各ブランドの発表を見ていると、さぞかしリサイクルポリエステルが普及しているのだろうと思わされるが、現状は真逆で、特にペットボトルからの再生ポリエステルというのは減少傾向にある。

23年度のペットボトルリサイクル 繊維向けは3万トン割れで過去最低 | 繊研新聞

飲料・食品業界団体らで作るPETボトルリサイクル推進協議会は年次報告書をまとめ、23年度の結果を公表した。販売量に対する回収率は92.5%、リサイクル率は85%と高い割合を維持。一方、用途別で繊維向けは前年比35%減で3万トン割れと過去最低レベルで、代わってボトルtoボトルが14.9%増で過半を占めた。

とのことで、経済的合理性から考えると極めて当たり前の結果といえる。

 

前回にも書いたが、リサイクル事業にも取り組んでいるグンゼの現場担当者と今年夏に雑談レベルの会話をした際、担当者は

 

「ペットボトルを砕いてポリエステル糸に再加工するよりも、ペットボトルとして再利用するか、ペットボトルに貼り付けるラベル(〇〇のウーロン茶とか書かれたあのペラシート)に再加工した方が効率的です」

 

と説明していた。

理由は、以前から何度も書いているようにリサイクルポリエステル糸は、バージンポリエステル糸に比べて、硬くて糸自体に色が着いたままで無色にならないという欠点的特徴があるからだ。おまけに再加工のコストも高い。

最近は、ソフトで無色になる再加工法も開発に成功しているが、業界全体に普及するのはまだまだ先のことになる。

 

 

それよりもペットボトルはペットボトルとして再利用した方がずっと手間が省けるというのは、ド素人が考えても理解できるだろう。

おまけに別の形状のペットボトルに再加工したとて、硬いとか色がどうのとかは、衣料品向けの糸に比べてずっと許容基準値が低い。当方も含めてマスの人々にとってペットボトルが多少硬かろうが、ほんのり色が着いていようがさして関係ない。しかし、衣料品になるとそれは生命線となる。

ペットボトル用のラベルも同様だ。多少硬かろうが何の問題も無い。どうせ飲み終えたら捨てるだけである。

使用済みペットボトルがペットボトルとして再利用、再加工されることは極めて理にかなっている。逆にわざわざポリエステル糸に加工する方が無駄を生んでいると言えるのではないかと思っている。

 

 

無料会員部分も差しさわりの無い範囲で見てみよう。

 

異物を除去した正味の回収量の合計は58万9000トンで販売量に対する回収率は92.5%。リサイクル量は54万1000トンで、リサイクル率85%米国(21年19.6%)欧州(同42.7%)と比べて高い水準を維持する。

 

とあり、異物とはキャップやラベルなどだろう。実際に当方もペットボトルゴミを出すときにはキャップとラベルを取り払っている。

23年度の我が国のペットボトルリサイクル率は85%と算出されており、年度は2年の差があるが、米国の21年度の19・6%、欧州の21年度の42・7%と比較すると圧倒的に高い。

この数字が事実とするなら、19・6%と42・7%という低水準で、どの口で「環境対応ガー」と言っているのだろうか。

 

国内向けの再生樹脂の利用量をアンケート調査(カバー率94.6%)したところ、ボトル用が21万4600トンで輸出用ペレットを含む全体の54.7%を占める。前年比では14.9%増、構成比は10.1ポイントも伸び、ボトルtoボトルが急速に拡大しているのがわかる。

これに対し、シートや成形品といった他の用途はおおむね減少傾向だが、特に繊維は2万8600トンで前年比35.1%減と大きく減少した。繊維は14年の8万8000トンから22年の4万トン台まで減少が続いていたが、3万トンを割るのは初めて。全体に占める比率も7.3%で前年比4.3ポイント減少した。繊維に使われる量が多い輸出向けペレットは1万7000トンで前年比19.8%減少した。

 

とある。

気になる方は無料会員登録して全文をお読みいただきたい。

リサイクルは重要と言えば重要だが、何でもかんでもわざわざ繊維や生地に再加工する必要があるのだろうか。当方は全くそうは思わない。特にペットボトルはペットボトルとして再利用・再加工するのが最も効率的であることは普通に考えれば誰もが理解できるだろう。

 

 

もう一つの課題としてはリサイクル素材は価格が高くなりやすい点にもある。

素材の価格が高くなるということは製品の価格も比例して上がる。それはそれとしてデフレ脱却のためには必要なことかもしれない。

実際にリサイクル素材の要因だけではなく、衣料品の店頭販売価格は全般的に上昇傾向にある。このこと自体は仕方がないと思うが、リサイクルポリエステルの衣料品使用をやめれば、衣料品の店頭販売価格は幾分か値下がりするのではないかと思う。

 

現時点ではリサイクルポリエステル糸というのはさほど需要が大きいわけではないから、23年度の統計が示すように、今後もペットボトルリサイクルの衣料品向け使用比率というのはさらに低下し続けるのが、自然な流れではないだろうか。

 

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