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南充浩 オフィシャルブログ

自分の周りで起きた出来事から今年のアパレル業界を振り返る

2024年12月9日 考察 1

みなさんこんにちは!

USです。

12月に入りようやく季節らしい気温になってきました。

今年はウールのPコートを着たい気分だったので3シーズンぶりにを引っ張りだして着用しています。

見た目が小奇麗に見えますし、着用していると背筋が伸びる感じがしてなかなか良い感じです。

ただしそこそこ重量があるので肩が凝る感じが否めないのが残念です。

やっぱり中綿のジャケットが軽くて良いですね。

 

 

さて、今回は今年最後のブログということでわたしの周りであったアパレル業界のことについて振り返ってみようと思います。

 

  • 人件費・材料費・円安などによる物価高

アパレル業界だけではなく全ての業界で共通している出来事です。

アパレルは労働集約型産業です。いくら省人化が進んだと言えど、生産過程で多くの人の手が掛かります。特に国内においては新しい設備投資をできる工場はほとんどなく、旧式の生産システムを使用して生地や洋服を作っているケースが多く、最低賃金の高騰は商品代に大きく影響を及ぼします。結果、材料費は高騰し、さらにその材料を縫製し、服の形にするのも人なので製品の単価も高騰します。更にショップや個人宅に配送するのも人の手が掛かるのでそれもまた商品単価にプラスされることとなります。

現在の状況において、以前作った服を、以前作った単価と同じすることは不可能に近いです。同じ値段で売り出しているものがあるとすればよほどの企業努力がない限り、どこかの工程を端折られている可能性が高いと思います。

アパレル製品に関わっている会社の方と話をしていると多くの方が「今、価格を上げられない会社は遅かれ早かれなくなってしまうだろう。」と話をしております。

また、「単価が安い会社に乗り換えたけれど質(サービス低下)があって結局前の会社に戻った」等という話もよく耳にします。結局のところ価格と質(サービス)は比例するものなのでしょう。為替はどう動くのか専門家ではないのでよくわかりませんが、確実に人件費は来年も上がるので来年以降も物価高による商品単価工場の流れは変わらないでしょう。

 

  • 染工場倒産による染色スペースの減少

新潟の見附染工が今年倒産しました。割と大きな染工場なので業界関係者の間で激震が走りました。北陸の染色スペースがこの影響により一気にタイトになったと良く耳にします。

ポリエステル素材の加工技術は小松マテーレ・帝人・東レなどに代表されるようにまだまだ日本に優位性があり、海外でも需要があります。

生地納期が掛かることにより製品のリードタイムが伸びてしまい、洋服の生産スケジュールに影響が及んでいます。また日本の生地問屋さんもコロナ以降は在庫が減っており、必要なものを必要な分必要な時に発注するという具合に切り替わっているので欲しい時に生地がない、ということもよく聞きます。

素材に拘って物づくりをする場合は余裕を持ったスケジュールで生産をする必要があります。また、見附染工に関わらず、国内設備の老朽化・労働者の高齢化による倒産・廃業は今後増加していくものと考えられます。大きな企業は設備や人に投資できますが小規模業者は厳しい状況にあり、小回りの利く物づくりが今後やりにくくなってしまうのが懸念材料です。大きな会社に物づくりが集中してしまうことで更に今よりも納期が掛かるようになることにも繋がるでしょう。

個人的には現状、国内の物づくりの最大の利点は小回りの利く対応(小ロット)だと思っているのでこの点が欠落してしまうはことに国内の物づくり致命傷になりかねない、と思っております。

 

  • 省人化

先日のJIMAのブラザーミシンなどを見ていても思いましたが、省人化はどんどん加速しています。アパレル業界においてどの程度影響があるのかはよくわかりませんが物づくりにおいては一部大量生産をする場合においては歓迎される部分もあるかとは思います。

また、接客サービス業においての省人化は働いているスタッフの減少に繋がるのでユニフォームの需要が減少してしまうということにも繋がります。現在ユニフォーム業界はカジュアル衣料業界よりも堅調と言われておりますが省人化の流れで先行きが明るいとは言い難いです。

 

  • 既存の深堀(リファイン、再編集)

素材メーカーの展示会に行って感じたことですが、新しい物の開発というのが手詰まりになっているような気がします。既存の物の組み合わせを変更することにより新しい物のように見せ、それを打ち出すということが多かったと感じました。

また、春夏物の展示会では酸化チタンのプリントによる遮熱効果を狙った企画などを目にしました。昔からある物を違った目線(使い方)で打ち出すような工夫も見られます。新しいものを生み出すよりも、今あるものの見せ方を変えて新しい需要に当てはめていく方が効率的でやりやすいですし、投資した設備も有効に使えます。物価高で設備投資にもお金が掛かるので既存設備の有効活用に重きを置いている会社が多いのかもしれません。

 

以上わたしが感じた今年1年のアパレル業界の振り返りでした。

筆者が見たり、感じたりをしたひとつにしか過ぎません。そんなことないやろーということもあるかもしれませんが一つの意見・見方としてご容赦ください。

これらの話はアパレル業界というよりは他の業種にも同じことが言えることばかりかもしれません。川下に近い方はこのような話に触れる機会が少ないと思いますので自分たちが取り扱っている服がどういう状況で物づくりをされているのかを知って頂き、少しでも興味関心を持つきっかけになれば嬉しいと思います!

以上USでした。

 

少し早いですが今年一年お付き合いいただきありがとうございました。

来年もよろしくお願いします。

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 comment
  • copon より: 2024/12/09(月) 12:45 PM

    南さんの語り口が好きで、いつも拝見しております。
    質問ですがUSとはなにですか。
    それともうひとつ、アパレル以外のおはなしもお願いします。

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