販売員への衣装の貸与は人員確保に効果がありそう
2024年12月3日 企業研究 2
最近、百貨店や大型スーパーで1月1日の休業が増えた。場合によっては1月2日も休みで1月3日が初売りという店も出てきた。
ただ、江戸時代や明治時代の商店というのは、1月1日・2日が休みで3日が初売りというのが標準だったから、新しい取り組みというよりは原点回帰だといえる。
コンビニも24時間営業ではなく、夜11時とか12時、深夜1時頃に閉店する店も出てきた。深夜に人通りがほとんど無いような場所なら店を開けておくだけで光熱費と人件費がかかって無駄になりやすい。
1月1日営業も24時間営業も90年代半ば頃から便利さを追求した結果として定着し、その後の世の風潮の変化によって、全店で求められているものではないと分かってきた。
ちなみに当方が愛用するスーパー万代はずっと昔から正月3が日は休みで初売りは1月4日である。そのため、大晦日までに3が日分の食料を買い込むという作業が必要になるが、そこまで不便かというと意外と不便さはないから、往年の元日営業推進ムーブメントは一体なんだったのかと思えてくる。
そういう「気付き」もさることながら、正月休業や無意味な24時間営業廃止は、販売員確保という側面もあるだろう。就職氷河期時代は「販売員でもやらざるを得ない」という就業も多くあった。なにぶん求人が少ないから贅沢は言っていられない。しかし、2014年から株価が回復し、求人数が増えると販売員は敬遠されることが増えた。どんな職業にも適性はあるから、販売員に適さない人にとっては暮らしやすくなったといえる。販売員になりたくない人が販売員にならなくても良いというのは実に喜ばしいことだが、小売店側にとっては人材確保が難しくなる。そのため、例えば正月休業や24時間営業廃止など、他のオフィス系の仕事に近いような条件を提示せざるを得なくなるという部分もある。
当方も初めての就職は低価格チェーン衣料品店の販売員だった。これはこれで勉強になることが多かったが、今、改めて販売員をやるとなると、衣料品店よりは他の物販の方がありがたいと感じている。例えば雑貨とか、日用品とかそんなものの方がやりやすいのではないかと思う。
理由は、自分がその店・そのブランドの服を着用しなくて済むからだ。もしくは制服があるからである。
販売員を務めた経験からすると、低価格店でも自店の服を買って着るというのは、けっこう財布に痛い。いくら社割(たしか2割引きだった)があると言ってもキツいのである。
当方が勤務した店はTシャツ1900円くらいの店だったから、まだマシだったが、もっと高額な店に就職していたらと想像すると恐ろしくなる。
ごくたまに大手セレクトショップの社員とか社員経験のある人と話す機会があるが、たいていの人はカードのリボ払いを結構な金額で抱えている。それこそ総額で何十万円とか100万円とかの負債を常に抱えている。そんな話を聞くと「有名じゃない低価格店に就職してよかった」と思えてくる。
で、販売員の生活を思い出してみると、だいたい週5~6日は店頭に立つわけで、毎日同じ服というわけにはいかないから、上下のコーディネイトは洗濯することを考慮しても最低でも3~4セットは必要になる。まずはそれを揃える必要があるから、ここで結構な出費になる。その後、買い足していくことになるが、毎日洋服を触っていると新しく入荷した物は何となく試してみたいと思うようになるから、1シーズン中に少なくとも5点くらいは買い足す。
そして財布はますます厳しさを増すわけである。
それを思うと、ジャヴァのこの施策は販売員の人材確保にも非常に効果的ではないかと思う。
ジャヴァコーポレーション 〝仕事服〟貸与の利用率「ほぼ100%」 雇用面での効果も期待 | 繊研新聞
「利用率はほぼ100%」で、短期雇用を除く同社の販売スタッフ400人弱が活用している。バーゲン月以外の年8回で、新作など着用したい服を貸与するもの。1回につき各ブランドで約5スタイリングの中から選べる。
とある。これは販売員にとっては嬉しいだろう。このシステムが無いブランドよりは当方はこのシステムがあるブランドの方で働きたい。
販売員からは金銭面での負担が減ったなどと喜びの声が上がっている。会社側も新卒や派遣社員の採用活動をする時にアピールしている。
貸与後は本社で回収し、クリーニングに出してから自社のアウトレット店でリユースタグを付けて店頭価格の7割引きほどで販売している。社内ではリユース販売に後ろ向きな意見も多かったが、実際に販売してみると消化率は9割と高い。
とのことで、採用活動では強い武器になると思う。一方、解せないのは「クリーニング後アウトレットでリユースとして販売することに後ろ向きな意見も多かった」という点である。クリーニングしていないなら言語道断だが、クリーニング後に売ることに何の抵抗があるのだろうか?全く意味不明な意見である。こういう意味不明な意見の持ち主はこれに限らず業界には多いと感じる。
恐らく、この方式は他のブランドでも採用されるのではないかと思う。かつて「こっそりと、合コンに店の服を着て参加して、終了後に店に返却してそれを販売した」として問題になったことがあったが、そういう危険性は格段に減る。
それにしても気になるのは
「社員割引での購入が減ることを懸念していたが」
という一節である。ジャヴァコーポレーションやその他のアパレル企業や衣料品小売店は、社員販売にそんなに大きな売上高を期待しているのだろうか?給料を払った分から何割か取り戻すことを販売計画目標に組み込んでいるのだろうか?
もし、そうだとするなら酷い収奪体質の業界である。そういう意識のままでは今後も業界全体として人材確保は相当に厳しいままだと言わざるを得ない。
comment
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ミナミミツヒロ的けち生活者 より: 2024/12/03(火) 2:33 PM
それにしても、このやりくちって、
バビロン報酬なんかと同じです
今ロシアがウクライナでやってる事ね占領した領地から
物を全て持ち去るのはもちろん
人間もフル利用男は兵隊として戦わせ
おんなは・・・惨すぎて書けませんイメージ優先で急拡大した販売・飲食業
とりわけ大企業には
関わらないほうが無難ですいちど関わると
ケツの毛まで抜かれますよそして、そのマネして喜んでいる
ベンチャーもどきも同様です
>社員販売にそんなに大きな売上高を期待しているのだろうか?
>給料を払った分から何割か取り戻すことを
>販売計画目標に組み込んでいるのだろうか?
その通りです
そしてこの「社割販売を販売計画に含める方法」は
あのコーヒーチェーンが始めたビジネスモデルです
あそこはやりくちがとりわけ上手くて、ドリンク「のみ」
無料なんですな。けどフードを食いたくなるのが人情
もちろんフードは金取る訳で、しかも高単価商品です
このピンハネ手法でバイトパートの時給を
最低10%を巻き上げていると言われています
さらに社員はロイヤリチ~強制で豆やらグッズやらを
ほぼ強制的に買わせる事で、給料の15%程度を巻き上げる
飲食は細切れ時間で働くバイトパートがやたら多い世界
非常勤労働者が多けりゃ多いほど、労務管理はきつくなるが
同時にバイト時給をたんまり召し上げる、という訳です
一時期このコーヒーチェーンのビジネスモデルが
もてはやされたでしょう?
ようするにバイトパートを含め自爆営業させる事で
安定した部分の利益を出す構造です
イナカもんの女の子が都会にでてきて
あこがれのコーヒーチェーンで働ける!
しかも無料でドリンクが飲める!
そしてバ畜になり
時給の2割3割を巻き上げられるのでした・・・
ただ、賃料がかさむエリアに大規模出店を
繰り返すビジネスモデルでは、
労働者からピンハネしないと
事業が継続できないんですよ
それも事実です