MENU

南充浩 オフィシャルブログ

教科書的構成でも苦境から脱しにくい地方・郊外百貨店

2024年12月4日 百貨店 0

先日、中高年向け婦人服専門店の有志団体LCC会を聴講させていただいたのだが、

その際

・「地方郊外百貨店はこれからもどんどん閉店する」

・「地方郊外百貨店のユニクロ、ジーユ―、百均導入は止まらない」

ということが話題となっていた。

 

この意見に関しては自分も全くの同意である。

それからすぐに堺髙島屋の閉店が発表されたので、あまりのタイミングの良さに驚いたわけである。もう各メディアが報道している。

高島屋堺店が26年1月に閉店 地方百貨店の苦戦続く

 

高島屋は3日、堺店の営業を2026年1月7日で終了すると発表した。堺店は南海高野線の堺東駅に1964年に開業。売場面積は2万5000平方メートル(百貨店区画1万6000平方メートル、専門店区画9000平方メートル)。同じく堺市にある泉北店(74年開業)との2店舗体制で大阪南部の地域ニーズに対応してきた。

売上高は1991年度の約300億円がピークで、直近の23年度は103億円(百貨店区画のみ)に縮小していた。20年度から営業赤字が続いていたことから、同店の建物賃貸借契約の満了を見据えて営業終了を決めた。従業員156人は配置転換などで対応し、雇用は維持する。

百貨店は大都市にある旗艦店が訪日客や富裕層の旺盛な消費で好業績なのに対し、地方都市や郊外の中型店舗では苦戦が続く。高島屋は今年7月に岐阜高島屋を閉鎖するなど、採算の見込めない地方店の整理を進めている。

とのことで、どの報道も概ねこの内容である。

報道されているように売り場面積は約2万5000平方メートルなので、商業施設としては結構小さい。売り場が狭いと言われている伊勢丹新宿でさえ4万6000平方メートルもある。阪急うめだ本店で8万平方メートル、近鉄あべのハルカス本店で10万平方メートルだから、都心旗艦百貨店を見慣れていると狭く感じる。またイオンモールを始めとする大型ショッピングセンターを見慣れていると狭く感じる。

これは髙島屋堺店だけの問題ではなく、都心旗艦百貨店以外のすべての百貨店に共通する問題である。

当方も20年くらい前に一度か二度、仕事のついでに視察に立ち寄ってみたが、意外と狭いという感想しかなくて、何の感動も無かった。

当方は堺という土地にあまり土地勘が無いが、関西圏だと堺に住んでいる・住んでいた・実家があるという人も多いので「その昔は地元では結構なシンボル的な店だった」という声を聞いていたから、実際に足を運んでみると意外に狭かったので、ちょっとがっかりしたという記憶がある。

で、堺市に行くには、南海電車に乗るわけだが、働き始めてから初めて知ったのだが、堺駅と堺東駅の二つが存在する。当方は、就職してから1年後に堺にあったイトーヨーカドー内の店舗へ転勤になったのだが、これは堺駅にあった。そのため、1年弱、堺駅へ通勤していた。(その後また転勤した)

一方、堺髙島屋は堺東駅にある。

どちらが栄えているかというと堺東駅のようで、たしか、イトーヨーカドー内の店舗で勤務していたときに来てもらっていた地元のパートさんたちもそのように言っていた。

個人的には堺駅と堺東駅の2つに分裂しているところが、堺市がイマイチ大繁華街になりづらい理由の1つではないかと思っている。

髙島屋堺店の現在のフロアマップを見てみると、1階と2階が食料品になっていて、地下1階がレストランフロアになっている。6階はメンズ服・子供服フロアだが玩具コーナーもある。9階はハローワークと幼児教室である。

フロア構成としては、最近の潮流にしっかりと乗っているといえる。

百貨店の中で売上高シェアが1位に躍り出た食品を1階と2階に配置している。また6階には小スペースとはいえ玩具コーナーがあり、子供連れ客も意識している。さらに9階にハローワークを設置することで、公共施設に来場する人も取り込もうとしている。

これは2010年代以降に提唱された地方・郊外型百貨店向けの売り場構成の教科書的対応だといえる。

そして6階には、恐らくは旧専門店街のスペースと思われる部分にABCマート、ユニクロ、セリアを揃えている。地下1階にはドラッグストアのコクミンもある。

これは大型ショッピングセンター客も意識したテナント構成だといえるだろう。

しかし、問題はそれでもコロナ禍以降は売上高が回復せず、赤字転落したままだという点にあるだろう。

要するに、2010年代以降に有効だとされていた分野の強化やテナントを誘致しても、売上高は回復せず黒字化も出来ない可能性が決して低くはないということだ。

先のLCC会で言われていた「ほとんどの地方郊外百貨店はユニクロ、ジーユ―、百均が導入されている」という見本だが、それでも売上高は回復できなかった。

こうなると、地方郊外型百貨店の立て直しに有効な方策はなかなか考えづらくなる。

もちろん、立地とか地元の人達の嗜好とかそういう相違点はあるだろうが、それでも「必ず回復させられる方策」というものは存在しないといえる。

堺市には、イオンモールが二つもある。また南海電車で難波駅まで行くのにさほど時間はかからない。となると、競合は2つのイオンモールだけでなく、難波駅にある巨大な髙島屋大阪店も競合ということになる。そうなると、売り場面積の狭い堺店が教科書のような構成にしたところで、ユニクロやセリアはイオンモール店の方が大きくて品揃えが豊富ということになるし、百貨店ブランドのラインナップとしては難波の高島屋大阪店の方が豊富ということになり、堺店はどちらにも勝てない中途半端な存在ということになってしまう。

教科書のような売り場構成にしてみても回復できなかったというのは、その結果を象徴しているのではないかと思えてくる。

今後も地方・郊外百貨店の閉店はまだまだ続いて、減るところまで減るだろうと思って眺めている。

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ