衣料品販売で天気・気温の情報価値が高まっているという話
2024年11月27日 天候・気候 0
2000年代半ばごろまでは「衣料品の売り上げ理由に気温や天気を挙げるべきではない」という論調が多かった。メディア向けの対外用発言はいざ知らず、アパレルや小売業内部では上司はそのように部下を指導していたのが普通だった。
当方も90年代前半の販売員時代に当時の上司からそのように指導されたし、90年代後半から業界紙記者となってからもそのような発言をするアパレル企業や小売業の上層部は数多くおられた。
ただ、売り場に立った経験からいうと、暑さ・寒さ、天気は大きく売上高を左右したことは事実だった。しかし、2010年代半ば以降に比べると、夏の暑さはマシだったし、秋はそれなりに気温は下がったし、冬は何よりも寒かった。だから、当時のその論調もわからないではない。また、気温と天候で売上高が大きく左右されるべきではないという姿勢というか、精神性というか、が必要なこともわからないではない。
だが、2010年代以降の猛暑、暖冬、秋の短期化などの進み具合を見ていると、もう気温に左右されてはいけないなんていう精神性で乗り切れるレベルではなくなっていると当方は強く感じる。
また、マス層の嗜好もファッション性やトレンド性よりも、快適性や機能性を求める度合が強まっていることから気温・天候要因に左右される度合いが一層、高まっていると感じる。
当方も含めた今のマス層は、暑かったら1月でも半袖を着るし、寒かったら5月でもダウンジャケットを着るというスタイルになっている。昔のように、立春を越えたら寒くても春物を着るとか、9月になったら暑くても長袖を着るなんていうスタイルを貫いている人はほとんどいない。
そんなわけで気温・天候情報がアパレル企業・小売業にも必要不可欠な物になっている。
ウェザーニューズ、アパレル小売りへサービス拡大 企業広告やアプリに活用 | 繊研新聞
天気への関心の高まりから、ビジネスへの気象情報の活用が注目を集めている。気象情報会社のウェザーニューズ(千葉市)は、気象データの提供や自社メディアでの広告宣伝で、アパレルなどの小売り企業へのサービスを広げている。
とあるが、気温・天候を上手く情報ビジネス化できていると感じる。
セレクトショップなどが自社サイトの特集ページやアプリで気温別にコーディネートを提案したり、天気予報機能を加えたりといった活用例もある。
とのことで、当方もYahoo!天気アプリで「今日のコーディネイト」というコーナーをチラっと見かけることがある。
アパレル・小売り側が気温・天候情報を顧客サービスとして活用している例がこれだろう。
気温別コーデ提案がアプリやSNSで活発に ゾゾ、パルの担当者に反応を聞く | 繊研新聞
気候の変化を受け、気温別のコーディネート提案による訴求がウェブサイトやアプリ、SNSで活発だ。気象情報を組み込んだり直近の気温の推移を反映させたりして、毎日のコーディネートや少し先の季節のアイテムを紹介している。季節の変わり目は1日の気温差が大きく、特に気温への注目度が高まることもあり、反応は上々のようだ。
とのことである。
今後はますますこの情報需要は高まるだろうと思う。
しかし、当方は先ほどのYahoo!天気アプリの「今日のコーディネイト」を含め、昔のファッション雑誌の定番だった「この気温ではこのコーディネイトをしろ企画」も今ではほとんど参考にしない。
理由は当方の体感温度と異なる場合が多いからである。毎度書いているように当方は暑さに弱い。湿度や日差しにも影響されるが、23度くらいから「暑い」と感じ始めて、実際に15分くらい歩くと汗をかいてくる。「気温コーディネイト企画」の提案では「当方にとって暑すぎる服装」である場合が多い。
また、寒さには比較的強い方だと思っているが、それでも最高気温10度未満ではさすがに寒いと感じるが「気温コーディネイト企画」ではやたらと薄着が提案される場合も多々あった。となると、その提案では「当方にとって寒すぎる」のである。
もちろん、当方の感じ方がおかしいと言われればそれまでだが、体感温度というのは個人によって恐らくかなりの差がある。猛暑がおさまってまだそこまで気温が低下していない10月下旬に早々とダウンジャケットを着ている人を多数見かけた。猛暑と比べるとヒンヤリ感じるのだろうが、ダウンジャケットなんて着たら暑すぎないかと心配になる。
逆に白人系の外国人旅行者は真冬で当方すらダウンジャケットを着ているような寒い日でも半袖Tシャツで闊歩している。
そんなわけで、当方は毎朝必ず天気と気温をチェックしてから寝間着から着替えるのだが、自分が「暑い」と感じる気温と、「寒い」と感じる気温はだいたい何度くらいなのかというのを何年かかけて理解できるようになった。だから各種の「気温対応コーディネイト企画」はあまり参考にしないのである。
気温対応コーディネイト企画という存在は、個々の人にとって気温情報に接する入り口としては非常に有用だが、そこから進んで、個々人が自分が暑いと感じる気温、寒いと感じる気温を理解することが必要不可欠ではないかと思う。
蛇足だが、仕事関係の人と雑談していても、天気・気温情報を全くチェックしていない人も多数おられることに時々驚いてしまう。まあ、暑さ・寒さで困ったと感じることが少ない人なのだろうとは思うが、衣料品の売れ行きがここまで気温・天候に如実に左右されるようになったご時世では、業務としてチェックしておく必要があるのではないかと思っている。