GMSの自主衣料品売り場を低価格ブランドに丸投げすることのメリットとデメリット
2024年11月14日 売り場探訪 1
GMS(大型総合スーパー)の自主編集衣料品売り場というのは、いつ見ても賑わっていない。
もちろん全店を見ているわけではないから、中には賑わっている店もあるのだろうが、恐らく各社の決算を見ていても大半以上は閑散とした売り場なのではないかと思われる。
先日、あべのキューズモールのイトーヨーカドーの衣料品売り場を平日の午後に通った。あべのキューズモールにはユニクロ、ジーユ―などの低価格ブランドが多数テナント入店している。
低価格ブランドのテナントは平日昼間でもそこそこ賑わっていることが多いが、イトーヨーカドーの衣料品売り場はとりわけ閑散としている。土曜・日曜・祝日ならもう少し客入りはあると思うのだが。
他のGMSを断続的に見ていても本当に衣料品売り場は閑散としている。
イトーヨーカドーが衣料品売り場をアダストリアHDに丸投げして「ファウンドグッド」というブランドで売り場を開始したことは話題となった。
業界内には賛否両論ある。当方も決して全面的に賛成しているわけではないし、特に品揃え的には大丈夫なのかとも思うし、アダストリアが企画・生産・仕入れをしてイトーヨーカドーが全額買い取りというのは、アダストリア側にメリットが多すぎる気もする。
しかし、この閑散ぶりを見ていたら、他社ブランドに丸投げした方が客入りくらいは好転するのではないかとも思えてくる。
先日、当方の最寄り駅からほど近い駅の西友に「パレット」がオープンした。正確に言うと、衣料品の自主売り場を廃止して、パレットとハニーズをテナント入店させて、パレットをメインに据えたのである。
パレットというのは、ご存知の方も多いだろうが、アージュという会社が展開している低価格デイリーカジュアル店であり、ざっくりと商品を見たところ仕入れ品を主力に揃えているという感じである。
そしてこのアージュという会社はあのヨンドシーホールディングスの一員である。
ヨンドシー(4℃)というとアクセサリーが有名で、決して「低価格」のイメージはないだろう。だが、4℃はその昔、広島の低価格アパレルメーカーのアスティと合併してホールディングスとなった経緯がある。そのため、実は低価格アパレルも得意分野としており、パレットを展開しているアージュもそのアスティの系列会社になる。
西友時代の衣料品売り場に比べると、視覚的に「見やすい」と感じるようになった。
まず、照明の明るさが増した。天井に設置されている白色蛍光灯は同じだが、スポットライトが取り付けられており、その分明るさが増したと感じる。あと、もしかしたら、天井に備え付けられている白色蛍光灯も明るさを増したのかもしれない。
老化が進んでいるのかわからないが、とにかく西友に限らず薄暗い照明では見えにくくて物を選んだり作業したりする気が起きない。個人的に薄暗い照明や間接照明は大嫌いでイラっとする。
以前の西友の売り場は白色蛍光灯で色自体は見やすかったが、なんだか少し薄暗い印象があった。電気代節約のために光量を減らしていたのかもしれない。あとは売り場の閑散とした雰囲気がわびしさを増加させていたのかもしれない。
だが、パレットに変わってからは新たに取り付けたスポットライトのおかげもあって薄暗いわびしさは無くなっていた。これだけでも入店意欲・購買意欲は上がる。
商品的にはどこにでもある量販店向け仕入れ衣料品が並べられているが、それでも以前の西友よりもなんだか見やすい陳列だと感じる。
この辺りは当方は専門外なのでわからないが、ビジュアルマーチャンダイジング(VMD)の専門の方に解説してもらいたいと思う。
専門外の当方としてはどう説明してよいのかわからないが、西友売り場よりもはるかに見やすい陳列に変わっている。実際に今のところその効果があるようで、平日昼間に行ってもそこそこ入店客がいる。
売れているのかどうかまではわからないが、入店客がいるだけで売り場には活気が出てくる。活気がでるとムードも明るくなり、さらに入店しやすい店になる。
そういう意味では現時点では自主衣料品売り場を廃止して、パレットに変えたのは正解だったと感じられる。
この変貌ぶりを見ると、イトーヨーカドーが自主衣料品売り場を廃止して「ファウンドグッド」に丸投げしたのはある意味で正解だったのではないかと思えてくる。
もちろん「ファウンドグッド」は各識者が指摘されているように現時点では不備も多くあるが、恐らくは売り場の見映えだけを比較しても自主衣料品売り場よりは随分と向上しているのではないだろうか。
営業利益額やら営業利益率やらそんな点ではメリットがあるのかどうかはわからないが、閑古鳥が鳴きっぱなしのGMS自主衣料品売り場を放置するよりは集客装置として他社ブランドに売り場を明け渡した方が、消費者視点では正解ではないかと思う。
特に西友とパレットを比較すると売っている物は値段も物もさほど変わらないのに、パレットの方がはるかに見やすく感じられて入店意欲も涌くことを鑑みると、導入は正解だったといえる。
ただ、消費者的にはパレットやらファウンドグッドの方が魅力的に見えるかもしれないが、これがスタンダードになるとGMS各社から衣料品売り場運営や品揃えのノウハウは消滅してしまうから、諸刃の剣でもある。とは言っても現時点でもそんなノウハウは各社ともにほぼ失われつつあるのだから、閑古鳥が常駐する自主衣料品売り場を維持しても無意味なのかもしれない。
王寺?