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南充浩 オフィシャルブログ

グンゼは「機能ソリューション」と「メディカル」で営業利益を確保しているという話

2024年11月7日 決算 1

昨日、恒例のグンゼの中間決算(25年3月期第二四半期)発表に出席した。

業績自体は増収増益の好調だが、セグメント別に見るとアパレル事業部の大幅減益が目立った。

ただ、この傾向は今期に限ったことではなく、少なくともここ10年間くらいは変わらない傾向なので驚くことではない。極端な言い方をすると「グンゼの近年の常態」である。

 

売上高 673億2900万円(対前年同期比3・3%増)

営業利益 35億6600万円(同10・4%増)

経常利益 36億6700万円(同11.8%増)

当期利益 29億5600万円(同11・3%増)

 

となっており、増収大幅増益の好決算である。

ところがセグメント別に見ると大きく異なる。

機能ソリューション事業部とメディカル事業部が大幅増収増益で、祖業であるアパレルは増収大幅減益、ライフクリエイト事業部は大幅減収増益という具合になっており、営業利益の項目だけで見ると、アパレルだけが減益に終わっている。

 

機能ソリューション 売上高256億3500万円(対前年同期比5・7%増) 営業利益32億5100万円(同10・7%増)

メディカル 売上高64億6800万円(同17・8%増) 営業利益12億7900万円(同40・9%増)

アパレル 売上高298億6900万円(同1・7%増) 営業利益4億1700万円(同46・1%減

ライフクリエイト 売上高57億3700万円(同10・7%減) 営業利益3億300万円(同2・1%増)

 

となっており、アパレルだけが大幅減益だったことが分かる。また、アパレルは全社売上高の約半分を占めて4事業部で最大の売上高を誇っている一方で、営業利益額は売上高が5分の1程度のメディカル事業部に遠く及んでいない。

売上高はアパレルが最大だが、営業利益額は低く、営業利益のほとんどを機能ソリューションとメディカルで稼いでいるというのが近年のグンゼの体制である。

 

経営効率的な観点だけで見ると、アパレルは効率が悪く、機能ソリューションの効率は非常に良いということになり、メディカルは成長して高利益体質が確立されつつあるといえる。

ただ、一口に「アパレル」と言っても、扱っている商品や販路、販売形態によって業績は大いに異なる。グンゼの場合はメンズとレディースの肌着、それから靴下がメイン商材であとはパジャマやルームウェア類となっており、一般的なカジュアルウェアやドレス、ビジネスウェアは手掛けていない(カジュアル兼用できるようなホームウェアは少しあるが)。

販路は、主にGMSと呼ばれる大手総合スーパーとあとはスーパーマーケットなどの量販店。一部に百貨店があり、近年は直営店とネット通販を拡充している。

ただし、主な販路はGMSとスーパーが今でも7割から8割くらいを占めている。

 

 

今回のアパレル事業部の大幅減益に就いて

1、原材料費を含むコスト全般の高騰

2、円安基調

3、GMSやスーパーへの販売不振

の3つが挙げられていた。

1と2は自力ではどうしようもなく、店頭販売価格を上げるくらいしか手が無いが、長らく「金の品質 銀の価格」を掲げて割安商品を得意としてきたため、大幅な値上げは現在の客層が離れる可能性が高いので難しい。

 

 

GMS、スーパーへの卸売りの不振というのはこれもなかなか難しい問題である。

というのも、イトーヨーカドーが「ファウンドグッド」として衣料品売り場をアダストリアに丸投げしたことは記憶に新しいが、イトーヨーカドーに限らずGMS各社、スーパー各社の衣料品売り場は厳しい状況が続いている。さらにいうと、グンゼのメイン商材である肌着と靴下も厳しさが続いている。

金額や増減率は明言されなかったものの、今回の会見では「メンズ肌着減収、レディース肌着微増、レッグウェア(靴下、タイツ、ストッキング類)増収」との説明があった。

またGMS各社は肌着分野でも「トップバリュ」よろしく自社企画製品化(プライベートブランド化)を進めているので、必然的に販売量は伸び悩んでしまう。

 

 

レディース肌着(とりわけブラジャー)のシェアがユニクロに奪われてしまったことはここ数年間、繰り返し報道されているのでご存知の方も多いだろう。しかし、メンズ肌着の動向は全く報道も統計調査もなされていないが、某肌着靴下業界の中の人によると「報道されていないものの、メンズ肌着分野ではユニクロのシェア率は圧倒的1位」とのことだった。

GMS、スーパーはPB化で対抗しようとしてきたが、メンズ肌着分野においては他の分野以上にユニクロに客を奪われ続けているといえる。

またユニクロだけでなく、しまむら、ジーユーにもシェアを奪われているのではないだろうか。当方は実店舗の立地条件や価格面を考慮すると、割高になりつつあるユニクロ肌着よりも割安感のあるジーユーの肌着類を買うことが増えたので、ユニクロ肌着の牙城を崩すのは同じグループ内のジーユーではないかと思っている。

 

まあ、なんにせよ、メイン商品とメイン販路の特性によって、グンゼのアパレル事業部は近年は厳しいかじ取りを強いられてきたわけだが、中長期的に現在の状況は続くだろう。

直営店とネット通販は育ってはきているが、アパレル事業部の売上高を全て担えるほどの規模にはまだ至っていない。我慢しながら、気長に育てていくほかないだろう。

 

グンゼは多角化経営を掲げているし、祖業はある程度は大事にする体質なので、今後もアパレル事業は継続し続けるだろうが、社内の施策は機能ソリューションとメディカルが牽引するようになるだろう。実際、現在の社長は機能ソリューション出身で、そういう人事が今後も当分の間続くことになることは想像に難くない。

 

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2024/11/07(木) 11:45 AM

    メディカル部門の営業利益率が19.8%に対して、アパレル部門の営業利益率は1.4%で酷い低利益率っすねぇ。

    私は、肌着のTシャツは9割グンゼですが、グンゼって無駄にブランドと品目が多いんすよねぇ。ドレスシャツとか薄いニットの下には、透けたり形が響いたりし難いグンゼのカットオフのベージュのヤツを着てますが、コレだけでもデザイン、素材違いで色々出てて素人には訳分からん状態です。

    多分、もっと色とか素材違いとか減らして、売れてないブランドを廃止したら、色々コスト減ってもうちょい利益率上がるんじゃないんですかね?ま、でもデカい企業だと他の部署は知ーらね、って感じで誰もやろうとしないんだろうなぁw

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