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南充浩 オフィシャルブログ

客単価が大幅増になると客数を大幅に減らすライトオンの既存客層を考えてみる

2024年11月8日 月次速報 0

ライトオンの10月月次速報が発表された。

今10月に関しては、記録的猛暑が長引いたことによってユニクロやワークマンなど大幅に前年割れしたブランドも多いことから、前年割れとなっても仕方のない部分はあるが、ライトオンの前年割れ幅はそれを差し引いても大きすぎて驚くほかない。

ライトオン/10月の既存店売上高25.8%減、客数33.5%減

ライトオン(2024年8月期:売上高388億円)が11月5日に発表した10月の月次売上高前年比によると、既存店は売上高25.8%減、客数33.5%減、客単価11.6%増となった。

全店は、売上高30.7%減、客数38.2%減、客単価12.0%増だった。

 

とのことで、客単価が10%以上も増えているにもかかわらず、既存店売上高が25%強、全店売上高は30%強も減少しているのだから、危機的水準にある。もし客単価が前年トントンだったら売上高は40%以上減っていただろう。

客単価が10%以上上がっているのに売上高が下がっているわけだから当然客数は大幅に落ち込んでおり、既存店で33%強減って、全店だと40%弱も減っている。

客数がこれほど減るということは、ライトオンは消費者から完全に見放されていると言っても過言ではない。猛暑が異常に長引いたことだけではここまで減らないだろうから、商品政策も販売施策もことごとく失敗しているといえる。

 

 

10月にTOBによってワールド傘下となったが、当然のことながら10月の商況にはそれの影響は反映されない。品揃えの商品政策面で変わるのは来年春夏物からだろう。原則として今秋物は以前の商品政策を継続するほかないし、冬物に関してもほとんどはそのまま続行だろう。一部に手直しは入る可能性はあるが、全体の構成比からすると多くて10%で実際は数%入ればよいところである。

今更秋物の仕入れ量や仕入金額を変更できるはずもないし、冬物も同様だ。商品を一新するなら来年の春夏物からにせざるを得ない。何なら、来年春物でさえ10月半ばからでは商品政策変更は遅いきらいがある。

一方、販売施策や広告宣伝活動などは、早ければ12月ごろから変更することは可能だろう。もっともポスターやパンフレット類(製作しているかどうかはわからないが)などは印刷の関係上急な変更や中止は難しいだろうが、ウェブ系の施策については早ければ12月から変更が可能だろうと考えられる。

 

 

 

昨年対比実績の増減率というのは、参考にはなるが、単年度だけを比べてもあまり意味はない。そこでライトオンの10月月次速報をもう少しさかのぼって見てみる。

23年10月の既存店売上高は対前年同月比11・8%減 既存店客数が同14・9%減 既存店客単価が同3・6%増

となっており、12%弱減った昨年よりもさらに26%減っているのだから、一昨年比では約35%減と大幅に落ち込んでいることがわかる。客数も同様だ。

 

ただ、22年10月というのは、概ね物販の実店舗は平常営業していたが、まだコロナ自粛は続いており、例えば居酒屋なんかはまだ客入りがコロナ前と比べると回復していなかった。完全回復したのは23年5月以降のことになる。そのため、通常のアパレルショップは22年は低調で23年5月以降に業績が急回復しているケースが多い。その点を考慮すると23年10月で大幅に落ち込んでいるライトオンは当時から相当危機的状況にあったといえる。

しかし、不思議なことにコロナ自粛の影響がまだ残っていた22年10月のライトオンの月次実績は比較的好調なのである。

22年10月の既存店売上高は同3・3%増、客数が同0・3%増、客単価は同3・0%増となっている。

そしてコロナ自粛の影響がさらに強かった21年10月の実績も他社ほどの落ち込みは見せていない。

21年10月の既存店売上高は同10・1%減、客数は同1・6%減、客単価は同8・7%減で踏みとどまっている。コロナ自粛の風潮が続いていた当時としては健闘したといえるのではないかと思う。

 

ついでにコロナ自粛真っ最中の20年10月の実績はというと、

既存店売上高が同9・4%増、客数が同25・1%増、客単価が同12・5%減と売上高と客数を大幅に伸ばしている。

 

世間一般的に好調だった19年10月は逆に苦戦しており、

既存店売上高が同17・3%減、客数が同37・0%減、客単価が同23・5%増と大苦戦しており、特に客数の減少率が壊滅的である。

 

 

対前年同月比だけを見ると、世間一般の商況とは真逆になっており売上高は、19年絶不調、20年好調、21年健闘、22年好調、23年不調、24年絶不調となっている。

19年、20年当時の商品までは覚えていないので何が要因なのかははっきりとはわからないのだが、個人的にはそれぞれの年度の客単価に注目してみたい。

19年は客単価が大幅増、20年は大幅減、21年も大幅減、22年微増、23年微増、24年大幅増となっており、不振の時はほとんどが大幅増となっており、好調の時は減少ないしは微増で留まっている。

この数値だけを見ると、ライトオンは値下げした時には結構売れるが、定価を値上げした、もしくは値下げをしなかったときには売れなかったということが言えそうである。

ライトオンの売り場を断続的に見ていると、退任した藤原社長が新社長に就任したタイミングで商品が刷新され、1000円台の低価格品や990円の値引き品販売をやめた。その際、実店舗への来店者数が大幅に減少したという体感があり、その半年後くらいから恐らくは不振在庫の990円への値下げ販売を行ったところ、客入りは回復したので、当方も含めてライトオンの主要客層は値下げ品もしくは割安感のある商品を求めている人が多いのではないかと考えられる。

売る方としては高く売れるにこしたことはないし、ブランドステイタスを上げるためにも高価格化したいので、値上げやセール品販売の廃止にチャレンジするものの、既存顧客がついてこない上に新規顧客は獲得できなかったと考えられる。

 

 

ここで考えたいのが、ライトオンのどのような考えの既存客層が多いのかである。

他人の心中などテレパシー能力者ではない当方にわかるはずもないので、あくまでも当方自身の考え方をベースに類推してみる。

ビジカジやオケージョン対応ではない、純粋カジュアルを売っている店として、ライトオンにはまず「ステイタス性の高さ」なんてものは全く求めていない。

一方、手持ちのカジュアル服がユニクロ、ジーユ―の占有率が高くなりすぎると、たまには違うブランド品も買いたくなる。今のままではまるでファーストリテイリングの社員のようである。

となると、ユニクロやジーユーに少し金額を上乗せした程度で買いたいとなる。当方の場合はそれがアダストリアの投げ売り品であり、アーバンリサーチの投げ売り品だが、2010年代後半まではライトオンの在庫処分投げ売り品も選択肢の一つだった。

 

しかし、投げ売り品や低価格品が無くなり、比較的割安感があったPB商品までもが大幅値上げされてしまうと、当方としてはライトオンで買う理由が無くなってしまった。

そして、2020年代からはほとんど買わないという状況になっている。

 

もちろん、全員が当方と同じように考えているとは思わないが、多くの既存客層は「ユニクロ、ジーユ―に1000~3000円上乗せしたくらいで買えるカジュアル」というのをライトオンに求めていたのではないかと思う。

ライトオンもそのことは分かっていたから、これほど頻繁に客単価が上がったり下がったりしたのだろう。

 

ただ、やはりライトオンを短期間で企業規模を維持したままで高価格ブランド化することには無理があったといえ、新たに経営するワールドはどの路線を選択するのか注視してみたい。

 

 

 

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