「機能性」を謳った衣料品こそ気温・天候要因に売れ行きが大きく左右されやすいという話
2024年11月6日 月次速報 0
11月5日からやっと長袖を羽織った。
実際のところ、10月最終週からは「長袖を着ても大丈夫かなあ」と感じた気温の低い日もあったが、長袖を絶対に着ずにはいられないというほどには涼しくはなかった。
そのため、半袖生活を継続した。11月2日に豪雨が降って気温は下がったものの、それでも「長袖を着なくてはいられない」というほどではなかったし、11月4日は日中の最高気温は24度まで上がったので、半袖生活で通した。
それでも11月5日は最高気温21度まで下がったし、その後の予報では最高気温25度に至る日は無いので、長袖生活に踏み切った次第である。
そんなわけで、当方ごときの低感度で精神的に老化している老人になると、高気温が続くと季節がなんであろうと半袖生活を続けるのだが、やっぱりそのように「体感気温」で着用行動を変える人は年々増えているのではないかと感じさせられる。
以前にも書いたが、今年ほど夏日が続いた10月を当方は経験したことが無い。
昨年10月も残暑で低調だった企業は多く、今後は「10月は夏本番」といった認識でのブランド運営が業界内にいよいよ定着していきそうだ。
国内ユニクロ売上高は前年同月比7.5%減と7カ月ぶりの前年割れ。昨年10月も同8.5%減だった。「残暑はある程度予想し商品構成を組んでいたが、それを上回る暑さだった」と広報担当者。
秋冬向けの“ヒートテック”ではなく“エアリズム”が売れ続けている。
とある。
ユニクロ以外でも暑さで苦戦した企業は多く、
しまむらの「ファッションセンターしまむら」(9月21日〜10月20日集計)は同3.7%減。「残暑により冬物のアウター衣料や実用品が低調。一方(中略)通季の肌着やスニーカー、パンプスは売り上げを伸ばした」(発表資料から)。昨年10月も1.4%減だった。
アダストリアは同6.3%減だった。暑さに加え、会員向けポイント還元キャンペーン(10月30日〜11月11日)の開催期間が、昨年の期間(10月25日〜11月6日)と数日ずれたことも押し下げ要因となった。
となっている。
一方、無印良品は衣料も微増しており、
良品計画の「無印良品」は同18.6%増と大幅伸長した。スキンケアアイテムなどが引き続き好調な生活雑貨や食品がけん引しており、衣服・雑貨に限ると同1.7%増。10月25日〜11月4日に開催した会員セールの“無印良品週間”(昨年は10月27日〜11月6日の開催)による押し上げ効果も大きい。
とあり、会員セールの無印良品週間による値引き販売が奏功したといえる。恐らく、この値引き販売が無ければ前年割れだったのではないか。
無印良品週間で衣料品を購入した消費者の心理を類推すると「暑くて長袖や防寒着は要らないが、10%値引きだから少し先に着られる商品を安いうちに買っておこう」という感じではなかっただろうか。
当方も同様の考えで「今着用しないけど来月(11月)か再来月(12月)には着られるだろう」という考えでジーユーの790円に値下がりした長袖Tシャツを買ったからだ。
この記事には掲載されていないが、ワークマンの10月既存店商況も大幅前年割れである。
月次報告 – ワークマン公式サイト (workman.co.jp)
既存店売上高 15・6%減
既存店客数 14・5%減
既存店客単価 1・3%減
となっていて、客単価は微減だが客数が大幅減少しており、それによって売上高も大幅減少している。
当月は、気温が高く、衣料品や服飾小物など秋冬物が全般的に低調となり、中でも、アウターやボトムスの売上が前年を大幅に下回りました。一方、降雨日が多く、レインウエアや長靴などの雨関連商品は堅調に推移しました。
とのことである。
一方、これらとは客層が異なるだろうが、ユナイテッドアローズは好調に終わっており、
ユナイテッドアローズは同9.1%増と気を吐いている。「高気温が続いたものの、シャツ、カットソー、ジャケット、パンツ、ワンピースなどの秋物衣料やシューズ、バッグなどの動きが強」(発表資料から)く、年初来10カ月連続での前年超えとなった。昨年10月は同0.1%減だった。
とのことで、個人的には暑さ寒さが売れ行きに響きにくい靴、バッグがこの中でもとりわけ好調だったのではないかと推測している。
あと、低価格マス層向けブランドとは異なる客層なので、その客層は「いわゆる高感度」「いわゆるイシキタカイ系」なので、暑くても季節に応じた着こなしをしたいという人が多いのではないかと底辺たる当方は推測している。
挙げられているうち、前年対比だけで見れば、ユニクロとワークマンの前年割れ幅が最も大きい。それは恐らく、この両者のセールスポイントの大きな一つに「機能性」があるためではないかと思われる。10月のタイミングであれば本来なら保温肌着とか防風ナンタラ、軽量ダウンなどが動き始めるはずだが、10月末、何なら11月頭も高気温であるため、それらの商品が売れにくかったと考えられる。
機能性商品は現在のマス消費者のニーズにマッチしているとはいえ、衣料品の中でもひときわ天候や気温要因に左右されやすいというデメリットも抱えている。そのため、季節外れの高気温・低気温というマイナス要因によって他の「機能性を謳っていないブランド」に比べると大きな打撃をくらいやすいといえる。メリット一辺倒の商品は存在しないということである。
ラニーニャ現象が発生しそうという予報が夏前から出ていたが、現時点では、確固としたラニーニャ現象は発生していない様子である。このラニーニャ現象が発生しない場合、暖冬・酷暑傾向は来年以降も続くことになるから、ラニーニャ現象が発生するかしないかによって、来年の衣料品の売り上げを大きく左右することになるだろう。