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南充浩 オフィシャルブログ

ワールドに買収されたライトオンの現実的な再建策は縮小黒字化しかない

2024年10月9日 企業研究 4

ワールドのグループ会社がライトオンを買収するという発表があった。その後、様々な解説記事が出ているが現時点で、ライトオンのこれまでの足跡を正確に伝えているのがこの記事である。

 

ライトオン、赤字店の大規模退店へ ワールド傘下入りで大ナタ

ジーンズカジュアル専門店のライトオンは8日、ワールド系の投資会社によるTOB(株式公開買い付け)を受け、新体制下での5カ年の中期経営計画を発表した。「聖域なき構造改革」を旗印に、不採算店の大規模退店や人員削減を断行した後、ワールドの生産やITのリソースを活用し、事業を軌道に乗せる。24年8月期実績の売上高380億円、営業損失50億円に対し、最終年度の29年8月期目標として売上高254億円、営業利益15億円を掲げる。事業規模を縮小させつつ確実に利益を生み出せる体質を作る。

 

とのことで、ワールドが掲げる「ライトオンの縮小黒字化路線」は現在取り得る最も現実的な路線だといえる。というか、縮小黒字化路線以外にやりようがない。

ここで注意が必要なのだが、営業利益15億円の黒字化は2029年8月期のことで、5年後の目標なのである。

要は、現在のライトオンを黒字化させるには「最低でも5年は必要」という極めて厳しい判断がくだされたということになる。

完全部外者たる当方もライトオンの早期黒字化は絶対に不可能だと思っており、5年後くらいが妥当な目標だと感じる。

 

ライトオンは07年8月期の売上高1066億円、営業利益58億円をピークに落ち込みに歯止めがかからず、24年8月期の最終損益も6期連続の赤字で終わった。MDなどのテコ入れを図ったものの効果は出ない。他社がコロナ禍から回復する中、24年8月期は既存店売上高が13.0%減、客数に至っては17.1%減だった。客離れで在庫が膨らみ、値引きが増える悪循環に陥り、荒利益率は8.3ポイントも低下した。

 

とあるが、他では「コロナによる業績低迷」なんて事実誤認記事も珍しくないが、ここで書かれているように、ライトオンは2007年度決算でピークを迎えた後、一時的に業績が回復することはあったとはいえ、ずっとダウントレンドを続けてきてついに売上高はピーク時の40%未満にまで縮小してしまった。特に2010年代後半以降は減収に次ぐ減収が続いており、原因はコロナ禍では全くない。

コロナ禍による影響があったとするなら、縮小するスピードを速めた点にあるだろう。

 

 

それよりもあまり報道されていなかったが、ライトオンの厳しさを浮き彫りにさせたのが、2023年5月以降のコロナ自粛全面解禁以降の商況である。

この記事でも他社がコロナ禍から回復する中、24年8月期は既存店売上高が13.0%減、客数に至っては17.1%減だった。」と述べられているように、他社は23年夏以降の業績は軒並みコロナ前に匹敵する、もしくはコロナ前を越えるほどに回復させているのに対して、ライトオンは23年5月以降も売上高、客数ともに大幅減少させ続けてきた。コロナ禍中だと「他社も悪いから」で片づけられるが、コロナ明けで他社の商況が回復しているのにライトオンだけが縮小し続けたというのは、原因はコロナ自粛ではないということになる。

 

創業者・藤原政博氏の長男で20年に就任した藤原社長は「当社単独での事業継続は困難」と苦しい胸の内を明かした。

経緯としては23年2月に金融機関から他社とのアライアンス(提携)を要請され、同業を含めた複数社に打診を始めた。ワールドとは24年2月から協議に乗り出し、業績悪化がさらに深刻になった6月中旬に事業再生支援を前提としたアライアンスを正式に依頼したという。

 

とあるが、恐らくは藤原社長自体も「事業継続は困難」と心底思っていただろうし、金融機関もそう考えるようになっただろう。金融機関から今回の打診があったとは他の記事でも書かれている。また、某メーカーからは「銀行からは融資が受けられなくてノンバンクからカネを借りたという噂もあった」との声も出ている。

 

 

この記事では具体的な再建策がいくつか提示された後、

 

ただジーンズカジュアル専門店という業態自体がダウントレンドになる中、再建は容易でない。中計の最終年度も売上高は254億円であり、前期に比べて35%減。売上規模を追わず、着実に利益を出す方向性を鮮明にする。11月に社長に就任する予定の大峯氏は「ライトオンのデニム文化は尊重しつつ、一本足打法は時代にあった形に見直す必要がある」と述べた。

 

と締めくくられているが、この見方には当方も賛成で、「ジーンズカジュアル専門店チェーン」という業態自体が斜陽産業だといえる。

実際にトップ企業であったライトオンもこうなってしまったし、地方のチェーン店も続々と破綻している。あまりメディアには取り上げられないが、業界二位のマックハウスも縮小に次ぐ縮小である。ジーンズカジュアル専門店という業態で大幅に成長している企業は無い。

 

当方が30歳だった西暦2000年頃までは、百貨店やDCブランドを買えない・買いたくない人はカジュアル服をジーンズカジュアル専門店で買うという風潮があった。特にメンズはその傾向が強かった。しかし、現在そんな風潮は全くない。まだ晴れの場として百貨店に存在意義を見出している人は少なからずいるが、デイリーカジュアルはユニクロ、しまむら、ジーユーで事足りてしまう。それに加えて全国展開でダークホース的に支持を伸ばしているのが古着のセカンドストリート(訂正しました)である。

百貨店やデザイナーズブランド以外の受け皿としてライトオンを筆頭とするジーンズカジュアル専門店は消費者の選択肢に最早入っていない。

 

 

マス層にとってジーンズはユニクロ、ジーユ―などで、少しこだわる層ならディーゼルや欧米ブランド、もしくはアイアンハートとか桃太郎ジーンズとかその手のブランド、という選択肢が主流になっている。

ライトオン、マックハウスなどの専門店への需要はゼロではないが、ピーク時には遠く及ばず、今後その需要が回復することも難しいだろうと考えられる。

一般的にアパレルは斜陽産業と言われることも多いが、そのアパレル業界の中でもジーンズカジュアル専門店チェーンは特に斜陽産業だといえる。現在残っているマニア的な需要の受け皿としては全国チェーンであるライトオン、マックハウスでは規模が大きすぎ、最終的には高イメージを確立できた小規模チェーン店や単店舗だけが残るのではないだろうか。

 

 

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 comment
  • キム ゴンウ より: 2024/10/09(水) 11:47 AM

    全くその通りだと思います。

  • フェイクアメカジオヤジ より: 2024/10/09(水) 12:39 PM

    ジーンズに関しては、ユニクロのようなモノ消費とフルカウントやリーバイスビンテージクロージングのようなストーリーを語れるコト消費に二極化したように思います。

  • とおりすがりのオッサン より: 2024/10/09(水) 3:22 PM

    ライトオンで最後に服を買ったのは15年くらい前な気がしますが、来季予想も売上高281億円(27.6%減)、営業損失15億円、経常損失20億円とからしく、もう儲からない会社経営するの辞めたくなっちゃったんでしょうかね?w

    南さんのTwitter(現X)にTOB価格出てて、クッソ安いん(TOB価格1株110円、前日終値305円)でそんなTOBもあるんだぁとググったら、【株式公開買付け(TOB)の買付価格は、市場価格を下回ることがあります。これは「ディスカウントTOB」と呼ばれ、特定の株主から株式を買い取ることを目的としています。】だそう。

    株主構成を見たら、創業家と創業家の会社と自社株で合計42.42%とか持ってて,さらに銀行、保険屋とかが合計7.98%もってて、あとは協業してる豊島株式会社が7.18%と、直近でJPモルガン・チェース銀行が2.47%取得してる模様。

    と、さらにググったら、110円で6億5千万分の新株発行して創業家の資産管理会社が取得して、買収できる株の割合を50%超にしちゃうみたいでした。一般投資家は蚊帳の外で買ってた人は大損なのかしらん?今日の終値で47円下がって258円でした。あらら(・∀・)

  • anonymous より: 2024/10/09(水) 10:49 PM

    「古着のセカンドハウス」って、
    セカンドストリート??
    マック「ハウス」につられた?

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