
機能性中綿アウターの開発競争が今後はさらに激化するだろうという話
2024年10月8日 商品比較 0
これは改めてわざわざまとめるほどのことでもなく、何年か前から続く傾向ではあるが、今後はさらに顕著になるのではないか、そんなふうに感じられる。
それはなにかというと、高機能保温(蓄熱・発熱も含む)中綿の競争が激化しそうだということである。
先日、ユニクロが高機能性中綿「パフテック」を大々的に発表し、例のごとくメディアが一斉に報じた。
例えばこの記事。
ユニクロから次世代高機能アウター「パフテック」が登場、ダウンの構造を化学繊維で再現 (fashionsnap.com)
パフテックは、膨らみの「PUFF」とテクノロジーの「TECH」に由来。気候変動や新しい生活様式による顧客ニーズの変化から、「暖かくて軽くて洗える」の3つを備えたジャケットを目指し、東レと共同で天然羽毛の構造を化学繊維で模した中綿の開発に至った。
中綿は2種類の繊維構造を採用し、繊維の中を中空構造にすることで空気を多く含むようにしたほか、1種類の綿を髪の毛の約5分の1の細さにし、空気を含む繊維の層を多重化した。また、綿をバネのような形状で縮れさせることで一般的なダウンと比べてかさ高性を損なわない構造を実現。
とのことで、他メディアも概ね内容は同じである。
今回の「パフテック」はメディアではまるで新商品かのように報道されているが、個人的には聞き覚えがあった。念のためググってみると一例としてこんな過去記事も出てきた。
【2023秋冬新作】ユニクロのパフテックパーカ|スッキリとしたシルエットで品よく着こなせる – ろんぶり (ronburi.com)
ユニクロのメンズ2023年秋冬新作・パフテックパーカは、表地は針穴がなく雨風が入りにくい。
スッキリとしたシルエットで品よく着こなせる
「ウォームパデッド」から「パフテック」に商品名を変更
とのことで、これは昨年10月掲載の記事である。
で、2022年秋冬までウォームパデッドとしていた名称を昨年秋冬からパフテックに変更したわけである。当方にも確かにそんな記憶はあるし、ウォームパデッドという名称にも記憶がある。
この辺り、ユニクロを展開するファーストリテイリングがとぼけているのか、メディア側が忘却している、もしくはとぼけているのかはわからないが、とぼけながらも大々的にファーストリテイリングが発表したということは、このパフテックが今後の主力商品の一つになるということだろう。
で、奇しくもそれにほんのわずか先駆けて、ミズノも機能性中綿の新商品「テックフィルサーモブレス」を発表した。不肖、当方が記事を掲載させてもらった。
“ダウンを超える” ミズノの機能性中綿「テックフィルサーモブレス」開発の狙いを聞く (fashionsnap.com)
冒頭にも書いたように、この手の機能性中綿アウターは5年くらい前からあちこちから発売されており、ジーユーだと「ヒートパデッド」の名称の商品が既存である。
ただ、今回のユニクロのとぼけたような大々的な発表を見ていると、今後はこの分野での開発競争、値ごろ感(激安ではない)競争が激化するのだろうと感じられる。
ミズノもすでにその体制をとりつつあるから、他のスポーツウェアブランド、カジュアルブランドも同様のことだろう。
ではこれらの商品を開発した目的はなんだろうか。
これは以前に書いたことの繰り返しになるが、
1、ダウン(羽毛)原料の価格高騰
2、動物愛護のムード
という点が大きいと考えられる。
特にユニクロの商品ラインナップを鑑みれば簡単に理解できると思うのだが、ダウン商品は年々値上がりしており、ウルトラライトダウンジャケットですら、すでに定価は6990円になっている。これ未満の価格のブルゾンは機能性中綿商品にすでに置き換わっている。
もちろん、売れ行きが悪ければ値下げされてダウンを売り切るだろうが、定価で買いたいとなった場合、ウルトラライトではないダウンジャケットはハイブリッドダウン(胴体はダウン、袖はポリエステル中綿)パーカですら12900円にまで値上がりしている。
メンズの今秋冬シームレスダウンパーカは定価14900円である。
これがパフテックパーカになると定価は6990円となっていて、ウルトラライトダウンジャケットと同価格帯でおさまる。
また、ミズノも「生産数量が増えれば、テックフィルサーモブレス商品はもっと値下げすることも可能」としている。
「値ごろ感」「割安感」という言葉はブランドごとに実金額設定は異なるが、例えばジーユー、ユニクロだと防寒アウターで1万円未満、できれば5000~7000円くらいを想定しているのではないかと考えられる。ミズノだとどうだろうか1万円台半ばくらいだろうか。
この価格帯の防寒アウターを製造する際には、すでにダウンは原料高騰によって、想定する製造コストに合わなくなっているといえる。
かと言って、全商品を2万円以上、3万円以上に設定するわけにもいかない。それでは買いたくないという人も多々いる。当方もその一人だろう。
そうなると、機能性中綿の開発に着手せざるを得ない。もう何年も前から各社ともに着手しているが、今後はさらに軽量化、速乾性などの機能性を高めることが求められるようになり、各社ともにそこでの差別化競争を激化させることになるだろう。そしてその傾向はすでに始まっていると感じられる。
割安感・値ごろ感のあるダウンアウターが欲しい人には、今秋冬にまとめ買いしておくことをお勧めしたい。来年秋冬以降はそういうダウンアウター類はどんどん市場から姿を消していくと推測されるからだ。