催事を地方百貨店に「外販」するのは良い取り組みではないかと思った話
2024年9月17日 売り場探訪 0
2024年も早い物で、残すところ3ヶ月半になっている。
相変わらず当方は変わり映えのしない日々を過ごしており、恐らくこのまま朽ち果てて行くのであろうと確信している。
新型コロナ感染者数は増えているという報道もあるが、言ってみれば従来型インフルエンザみたいな感じで受け取っている人が多いのか、人出は減る気配が無い。
よほど強力な変異株が現れない限り今後はそのような扱いが続くのだろうと考えられる。
人出が増えたことで、実店舗や各商業施設もそれなりに賑わっている。インバウンド需要も加算されて好調な都心商業施設は多いようだが、それでもコロナ禍以前のように各ブランドの出店ラッシュというのは起きそうにない。各ブランドともに採算が取れるか取れないかという見極めはさらにシビアになっており、人出が順調だとしてもこのムードが変わることはないだろう。
そんなわけで、コロナ禍で特に顕著だったのが、商業施設内の出店テナントが埋まらないという状態である。人出が少なかったコロナ禍では店をオープンさせたところで採算は取れない可能性が高いから、各ブランドは容易に出店しなくなったわけだが、コロナ自粛が終わってもそのムードは恐らく変わらないだろう。
ただ、都心の商業施設は全体としては好調(ブリーゼやイーマ、ヌー茶屋町のような都心廃墟もあるが)だから、それなりにテナントは揃う可能性は高いが、地方・郊外の小型商業施設は厳しい。
とりわけ、百貨店という業態に絞れば、都心大型旗艦店が過去最高レベルの好調さを維持していることに対して、地方・郊外店は苦戦で閉店・撤退が相次いでいる。
だから、都心旗艦百貨店が絶好調という報道と、百貨店業界全体が苦戦という報道が併存できてしまうわけである。プロ野球で例えてみると、チームは5位とか6位に低迷しているのに、4番打者だけがホームラン王を獲得しているような感じだと言えば理解しやすいのではないかと思う。
都心旗艦店ですらテナントを埋められないので、ポップアップ出店を増やしていることは以前にも書いた通りだが、地方・郊外百貨店なら尚更テナントが埋まらない。
実際、今年1月に閉店した島根の一畑百貨店の原因の一つは「改装に向けて交渉したが出店テナントが集まらない」ことだった。
今後も同様の理由で閉店する地方・郊外百貨店は続出するだろうと考えられる。
そんな状況の地方・郊外店において結構引き合いが多いのではないかと思われるプランが紹介されていた。
阪急阪神百貨店とスークカンパニー 地方百貨店に催事を外販 | 繊研新聞 (senken.co.jp)
エイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)の子会社阪急阪神百貨店とスークカンパニーによる、独自催事企画の〝外販〟が地方百貨店を中心に広がっている。主に「英国フェア」や「文具の博覧会」(文具博)で、外販先が毎年催事を開くなど各地で定着している。新たな店からの需要もあり、さらに広がる見込みだ。
とある。
地方・郊外店が空きスペースを埋めようとするなら都心店と同様にポップアップ出店を増やすほかない。しかし、地方・郊外店はスタッフの数も都心店より少ないから、ポップアップ専用担当者を多く置くわけにはいかない。いくら効率的に働けと言っても人間が実現できる限度はあるわけだから、現状の体制のままで強化することは難しい。そうなると、大手のポップアップ企画を外注するというのは非常に効率的だといえるだろう。
実際、当方も関わらせてもらっていたテキスタイル・マルシェという販売会でも阪急阪神百貨店とスークカンパニーにはお世話になっており、結構な企画力がある。もちろん当たりはずれもあるし、思ったほど集客できないこともあった。(自分たちの問題も含めて)
とはいえ、コロナ禍が明けてからもかなり積極的にポップアップを頻繁に行っているから、それを地方・郊外百貨店が「外注」するというのは現実的に効果があるだろう。
また、もしかすると出店者側にも地方・郊外百貨店で開催するメリットはあるかもしれない。
というのも、阪急阪神の有力店はほとんど関西に集中しているので、地方の業者からすると出店するためには最低でも1週間前後の長期出張が必要となるケースが多い。
しかし、地方・郊外店が外注すれば、地方の業者の地元百貨店で開催できる可能性が高くなる。特に「一人親方」みたいなメーカーやブランドなら長期出張せずに済む地元店開催というのは、それなりに嬉しい選択肢になるのではないかと当方は考えている。
もちろん「地元は嫌だ、大阪の梅田でやりたい」という地方の業者もおられるだろうが、大阪くんだりまで1週間も出張するのはためらわれると感じていた地方業者も少なからずおられるのではないかと思うし、そういう業者にとっては地元店で開催される可能性があるということは歓迎されるのではないだろうか。
一方、阪急阪神からすれば、ポップアップイベント企画を外販するというのは従来型の物販と外商以外の百貨店ビジネスの確立にもなる。お互いの需要と供給がある程度一致するので、このモデルはそれなりに効果を挙げるのではないかと思っている。