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南充浩 オフィシャルブログ

サイズピッチの細かい商品を扱うことの難しさ

2024年9月18日 商品比較 1

どの分野においても部外者からは想像もできないような苦労や理屈、原理が存在するということを改めて感じた。

つい先日、某肌着メーカーの展示会にお邪魔したのだが、そのメーカーはノンワイヤのブラジャー、ブラトップ類が主力商品の一つになっている。

特にこのジャンルでは10年くらい前からユニクロのブラトップが猛威を振るっていて、それまでの王道だったワイヤー入りのブラジャーを主力としていたワコールやトリンプジャパンを苦境に追い込まれていることは広く知られているのではないか。

 

 

で、このメーカーの担当者が言うには

「実はブラトップ、ノンワイヤーブラジャーがメイン商材となって当社も助かっている部分がある」

とのこと。

どの部分が助かっているのかというと、「サイズ展開が少なくて済む」という点だという。

ブラトップだとざっくりとS、M、Lの3サイズで、もう少し上下に広げてもSS、LL、3Lの3サイズを加える程度で済むだろう。最大で6サイズである。

当方は未使用だし、今後も使用する気はさらさら無いので詳細はわからないがノンワイヤーブラもだいたい似たようなものだろう。3サイズ、多くて6サイズ程度ではないかと考えられる。

 

 

しかし、従来型のワイヤーブラはもっとサイズピッチが細かい。

例えば、ワコールが提示しているサイズ展開表を見てみよう。

 

サイズ表~ブラジャーのサイズ~|下着の基礎知識 | ワコール (wacoal.jp)

 

まず、バストサイズだけで5センチ刻みで60~110センチまで実に11サイズある。そしてこれにカップ数を組み合わせるわけだが、AAからIカップまでこちらも11サイズある。

これを組み合わせて、例えば「C70」とか「C75」というように表示するわけだが、サイト内の表に示されているように78サイズも存在することになる。

もちろん、ワイヤーブラの全商品がこの78サイズ全てを生産するわけではないが、それでも普通に20サイズや30サイズは生産・販売することになるだろう。

 

 

実はこれは作る側にも売る側にも非常に負担になる部分がある。

売る側からするとドンピシャのサイズでないと売れない。必ず売れ残るサイズが発生する。そして作る側としても「全サイズ完成してからの納品が求められる」ため、生産リードタイムが長くなるという。

これがブラトップ、ノンワイヤーブラなら最低3サイズ、多くて6サイズくらいだから、サイズごとの仕入れ数量さえ見込み違いを起こさなければ、全サイズ完売できる可能性が高くなる。

これは極めて当然のことで、75センチの人が80センチを買うわけもないし、70センチを買うわけもない。しかし、Mサイズなら適合できる範囲の人が格段に増える。

そして生産する側としても3サイズ~6サイズなら20~30サイズと比べて生産してソートを揃えるまで時間がかからないので結果、納品までのリードタイムは通常版ブラジャーに比べて短縮できる。

 

 

当方はメンズブラを愛用したことなどないのでもちろん着け心地はわからないし、今後も分かりたくもない。

もしかすると、女性としてはブラトップやノンワイヤーより通常版の方が着け心地が良いという人も少なからずおられるかもしれない。その辺りは日常生活において女性と接する機会が皆無なのでわからない。もし感想を教えていただける方がおられればありがたい。

ただ、これだけブラトップ類・ノンワイヤーブラが売れているということは、これらの商品群に対して大きな不満を持っているという人は多数派ではないのだろうとは思う。

 

 

サイズピッチが細かい商材といえば靴、子供服なども該当する。

当方はイズミヤのテナントで靴の販売にも従事したことがあるが、靴のストックルームというのは実に広大である。初めて案内されたときには驚いてしまった。今から28年くらい前のことである。

売場と同じくらいの広さのストックルームがあり、そこに箱に入った靴が山積みされていた。靴というのは1足ずつ箱に入っているので、積みやすいがかさばるのである。そしてサイズピッチが5㎜刻みで多い。

だからそれほど広大なストックルームが必要になるというわけである。

靴も同様に5㎜違うと全く売れない。実際に自分が買う立場でも5㎜小さいと足も入らないし、5㎜大きいとスポスポして歩きにくい。

だから、実店舗で靴が全サイズを短期間で売り切るにはよほどの人気商品か、よほど来店客数が多いか、ということが必要になる。

これはブラジャーも同様だろうし、子供服も同様だろう。まあ、どちらも靴ほどの広大なストックルームは必要ないのだが。

 

 

ブラジャーなんて何の興味も無いし、自身の生活とは無関係だったので想像すらしていなかったが、一般消費者はだれも意識していないようなサイズピッチの苦労があるということを改めて知ったわけである。

その点を踏まえて考えてみると、ブラトップ類・ノンワイヤーブラ類の売り上げ規模の拡大というのは、消費者が快適性を評価しているだけでなく、実は売り場や商品供給側のメリットも重なった部分があったのではないかと思えてくる。もちろん、従来型ワイヤーブラを販売・供給していた企業からすると痛手を被っているわけだが、それ以外の業界からは意外と考えされた面もあったのではないか。

需要と供給のバランスとよく言われるが、需要側だけでなく供給側にもメリットがある商品というのは強いということなのだろう。

 

 

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 comment
  • ミナミさん的節約主義者 より: 2024/10/09(水) 9:10 AM

    したがって、世の中総メリヤスとなる訳です
    それも化繊100の

    柔らか仕立てのジャケットが15年ぐらい前に
    ちょこっと注目されましたが
    今やジャケットまでメリヤス生地ですもんねぇ・・・

    ざっと見渡して、アウターに織物を着ている人は
    中高生か販売業の人たちぐらいじゃないのかな?

    それらのセクタも今ではポロシャツに
    侵食されつつありますしね・・・

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