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南充浩 オフィシャルブログ

オフプライスストアが我が国で広がりにくいのは需要が無い上にウェブ通販上に投げ売り処分場が常にあるから

2024年9月12日 売り場探訪 0

当方は基本的に想像力が乏しい人間なので、過去や現在で扱ったことの無いサービスや商品に入れ込むことができない。まだ見ぬものへの期待というのはほとんどしない性質である。

もちろん、将来的には様々に新しい商品やサービスが登場するということだけは理解しているが、それらのものが一足飛びに成功するとも思っていない。

そんなわけで、メディアで毎日のように「新しい〇〇」と言って過剰に紹介される事例は、かなり冷めた目で見ているし、ちょっと過剰に持ち上げ過ぎじゃないかと思うものが少なからずある。

 

 

そういう事例の一つが「オフプライスストア」である。

2010年代後半くらいから業界メディア、経済メディアでは「新しい小売業態」として盛んに持ち上げられてきた。理由は様々考えられる。

 

1、我が国においては新しい売り方だった

2、アメリカで繁栄している業態だから

3、不良在庫品の処分場が新たにできるから

 

ざっと、当方が思いつくのはこの3つである。

1と3は説明の必要も無いだろう。特に3については業界的にもある程度歓迎される理由だろう。問題は2である。我が国では海外で流行った物は必ず日本でも流行るという信仰にも似た迷信があるが、それはケースバイケースであり流行る物もあれば流行らない物もある。何せ国民性も文化も日常慣習も異なるのだから全てがマッチするはずもない。

もちろん、情報として知っておく必要はあるが、全てを過剰に盲信する必要はないのである。この信仰にも似た迷信を過剰にこじらせると、欧米出羽守と呼ばれる人が出来上がってしまう。

 

 

2010年代後半にオフプライスストアが過剰に持ち上げられた時に、当方は「果たして流行るとは思えない。全く成り立たないわけではないが、アメリカほどに広がることは無い」と感じた。

理由はいろいろとあるが、まず、今現在ほとんど存在しない物へ期待しないという元々の性格に加えて、当方にはオフプライスストアなるものの必要性が全く感じられなかったからである。

2020年からコロナ禍で3年前後は実店舗が苦戦するという事態が図らずも訪れてしまったが、コロナ自粛明けになってもオフプライスストアはいまだに大きく拡散する状況ではない。

それについてはこのような記事も掲載されたので、実際に国内ではさほど大きく広がっていないというのが確定しているといえる。

 

日本でオフプライスストアが離陸しない理由と2つの突破口【小島健輔リポート】

会員制の有料記事なので結末は読むことができないので、当方の個人的な考えをまとめさせてもらう。

 

 

アメリカではどうだか知らないが、我が国においては衣料品の低価格在庫ルートは結構数多く構築されているというのが最大の理由ではないかと思う。ここにわざわざ新しい一つを大々的に組み込む必要が無いし、消費者もまたその必要性を感じていないだろう。

それではまず、在庫処分ルートを考えてみよう。

 

1、アウトレットモール

2、各ショップの夏冬のバーゲンと月々の見切り品

3、百貨店やショッピングセンターの投げ売り催事

4、各通販サイトの見切り投げ売り品

 

マス層がすぐにたどり着けるルートでざっと4つもある。

これ以外にも場所は選ぶが

 

5、在庫処分屋の店舗

 

も挙げられる。

また低価格衣料品が欲しいなら、セカンドストリートに代表される大手古着屋チェーンや、ネットでメルカリうヤフオクを使うという手もある。

これだけあれば、わざわざ未知の「オフプライスストア」なるものを求める消費者は数少ないだろう。さらにいえば、5の在庫処分屋とオフプライスストアの何が違うのかもさっぱりわからない。

そんなものをわざわざ「アメリカで流行っているから」という理由だけで欲しいと感じる日本人消費者は多くないだろう。

 

すでにアウトレットモールが国内に登場してから30年くらいが経過しており、すっかりと生活に馴染んでいる。さらに有名ブランドや有名店の多くはアウトレットモールにテナントを出店している。

ブランド物が夏冬のバーゲンでしか安く買えないという時代はとっくに終わっている。

そして個人的に大きいと感じるのが、

 

各公式通販サイトで必ず年間通じて売れ残り品を値下げ処分販売している

 

ことではないだろうか。

 

例えば、ユニクロの大型店ほど広い店でなければ、販売時期が終わった商品を並べておけるはずもない。通常なら必ずどこかに格納して、また半年後くらいに値下げして並べ直す。

シーズン遅れの値下げ品を実店舗で物色していると、だいたい長くても1年前くらいの物までである。

しかし、当方が愛用しているドットエスティ、アーバンリサーチ、ベイクルーズストアを見ても、常に値下げ処分品がサイト上には存在している。しかも2年前、3年前の商品も売り切れるまでずっと並んでいる。

陳列スペースに限界がある実店舗とは異なり、ウェブの広さは無限だから、何年前の処分品でも売り切れるまでずっと並べることができる。

そのため、ネット通販は今では恒常的な在庫処分品投げ売り売り場と化している。

当方などはそれらのサイトで在庫処分品を常に買うので、オフプライスストアなるものにわざわざ出かける理由がない。

 

先ほどの記事で、ワールドの合弁事業として華々しくデビューしたアンドブリッジがいまだに8店舗に留まっていることが触れられている。最も勢いがあると感じられるゲオの「ラックラック」も21店舗に留まっており、中期的目標には程遠い状態にある。

ただ、アンドブリッジよりはラックラックの方が順調に店舗数を増やしているし、郊外モールだけではなく都心施設や地方百貨店にも出店している分だけ、ラックラックの方がアンドブリッジよりは人口に膾炙しやすいだろう。我が国市場ではオフプライスストアの需要は少ないが、以前にも書いたが、その少ない需要を全国規模で押さえるのはゲオのラックラックだろうと確信している。

 

 

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