
ポップアップ出店するメリットとデメリット
2024年9月11日 売り場探訪 0
2010年代半ば以降、百貨店やファッションビルでのポップアップストアが増えたと感じる。とりわけ、2020年のコロナ禍以降はポップアップ出店の軒数も増えたし、出店要件のハードルも下がったと感じられる。
理由は簡単で、コロナ禍によって商業施設内からのテナント撤退が相次ぎ、出店ブランドも集めにくくなり、施設内の余白スペースが余ったことが大きい。
例えば、開業直後にコロナ禍が発生したヨドバシ梅田リンクスはコロナ自粛明けでもまだテナントが埋まっていない場所もあったほどだ。
一方、ブランド側もコロナ以前は「試しに出店しておこうか」という気風がまだ残っていたが、コロナ以降は無理をしてまで出店しないという方向性が一層鮮明になっており、商業施設内をテナントで埋めるという作業は想像以上に難しくなっている現状がある。
一昔前までは都心百貨店や都心のファッションビルにポップアップ出店(期間限定出店)できるのは、結構名の通ったブランドや企業に限られているという印象があった。
それこそ、産地企業や工場によるファクトリーブランドが都心店にポップアップ出店することはなかなか難しかった。感覚的に2000年代前半くらいまでは立ち上げたばかりのファクトリーブランドの発表の場は業界内展示会くらいという場合が多かった。
ところが、2010年代半ば以降の、各ブランドの不採算店撤退に加えて、コロナ禍によって出店テナント不足に陥ってからは、立ち上げたばかりのファクトリーブランド、立ち上げたばかりのデザイナーズブランドが容易に出店できるようになった。
実際、百貨店側もポップアップスペースを増やしたり、開催回数を増やしたりしており、面識のある百貨店部長もコロナ禍前は年間50回のポップアップ企画担当だったのが、コロナ禍以降は年間100回のポップアップ企画担当に変わっている。
そんなわけで、立ち上げたばかりの工場ブランドや個人事業主みたいなブランドがコロナ禍以降は毎週毎月都心百貨店やファッションビルにポップアップ出店しているのをSNSでも頻繁に見かける。
さて、そんなポップアップ出店に対して、このようなアンケート記事があった。
ポップアップストア出店、4割超が新規獲得・売上向上・認知向上に効果。ECへの好影響実感は6割 | ネットショップ担当者フォーラム (impress.co.jp)
ポップアップストア出店支援プラットフォーム「SHOPCOUNTER(ショップカウンター)」を運営するCOUNTERWORKS(カウンターワークス)はが実施した「リアル店舗の出店実態調査2024」によると、ポップアップストア出店者の4割超が新規獲得・売上向上・認知向上に効果があったと回答、また約6割がECサイトへの好影響を実感していることがわかった。
調査は年8月7日から26日にインターネット調査を実施。「SHOPCOUNTER」利用企業の101人から有効回答を得た。
とのことである。
ポップアップ出店者の4割が新規獲得・売上向上・認知向上の効果を実感しており、6割がECサイトへ好影響があったことを実感している。
これは当然の結果で、特に立ち上げたばかりのブランドや零細規模のブランドは、知名度が低く売上高も低い。そして顧客も決まりきった人しかいない。
百貨店やファッションビルというメジャーな場所でポップアップ出店することは、今まで自ブランドを知らない人が多数目にしてくれるわけだから、これまでよりも格段にすべてが向上することは間違いない。
その一方で、ポップアップ出店もメリットばかりではない。
ポップアップ出店をすると、当たり前だが売上高から「家賃」が何割か引かれる。ファッションビルの場合は当方は知見がないが、百貨店だとだいたい売上高の3割~4割が「家賃」として引かれるのが通常である。
仮に100万円を販売したとすると30万円~40万円が引かれるわけである。
人件費もその上に必要になる。ブランド事業主が一人でずっと売り場に立ち続けるなら、人件費は限りなくゼロに近づけることも可能だが、ブランド事業主も普通は他の業務もあるから、売り場に立てない時間もある。その間臨時アルバイトを雇用するわけだが、当然時給が発生する。
そうなると、手元に残った70万円からさらに10万円くらいは支払うことになって、手元に残る利益は思ったよりも少ないという場合が多い。意外と出店コストはかかるのである。
そして人員数も必要となる。
そのため、ポップアップ出店を継続し、ある程度の知名度を向上させることができたブランドは、ポップアップ出店をやめるか出店回数を減らすか、という施策を取る。
ブランド初年度から3年目くらいまでは頻繁に出店していても、それ以降は年に1回か2回に減らすというのが極めて当然の措置といえる。
ブランド事業主はポップアップ出店の回数を減らすタイミングを見極めることが極めて重要である。
ポップアップ出店を全否定するのも間違っているし、一定の年数が経過しても頻繁にポップアップ出店し続けることも間違っている。どのタイミングで回数を減らすのか、それを見極めることがポップアップ出店のキモだろう。