
旧レナウンの倒産は放漫経営の中国企業傘下になったことも大きな理由だった
2024年9月3日 経営破綻 1
前回、書いたようにレナウンの社名が復活するわけだが、ネットの反応を見ていると旧レナウン、もしくは旧レナウンの残党が復活させるかのように捉えている人が多くて驚いた。
報道にもあるように、小泉アパレル傘下にあるオッジインターナショナルがレナウンに社名を変えるのが実態なので、アクアスキュータムとダーバンの2ブランドを引き取ったこと以外に、旧レナウンとはほとんど関係が無い。
旧レナウンの破綻については、2000年代半ば以降の日本国内市場での苦戦が根本的な原因であることは言うまでもない。このころになると中高年向けの手堅いブランドは所有していたものの「人気ブランド」と呼べるものはレナウンには残っていなかった。必然的によくても現状維持、悪ければ減収という状況が続いた。結果論から言うと、その後も倒産に至るまでレナウンには起爆剤となるような「人気ブランド」は生まれなかった。
このため、仮に旧レナウンが今も存続できていたとしても再度売り上げ規模を拡大できたということは考えにくく、規模を縮小し続けていたのではないかと当方は推測している。
しかし、物事の原因や理由は一つであるとは限らない。旧レナウンの倒産理由には、中国の山東如意集団の傘下になったことも大きいといえる。
2010年にレナウンは山東如意集団の傘下になった。現在とは異なり中国経済が絶頂期だったため、多くの国内識者や国内業界人はこの措置に高い評価を示した。
少年向けバトル漫画で言うなら、最強の必殺技を習得したようなものだった。だが、これもバトル漫画によくあることだが、最強の必殺技には必ず弱点がある。
旧レナウンの倒産に至る直接的原因は親会社である山東如意集団の子会社への売掛金が回収できなかったことにあったのは2020年の報道で多くの人がご存知だろう。
延命のために傘下になったのに、その親会社が倒産の引き金を引くことになるとは何とも皮肉な結末だったというほかない。
さて、レナウンに引導を渡すことになった親会社たる山東如意集団だが、その後どうなったのかというと、これも各メディアで報じられていたものの、中にはご存知ない方もおられるようなので改めてまとめるが、一言で言うと債務不履行となった。親会社の経営もその後すぐに破綻したのである。2020年12月のことである。
中国・山東如意が債務不履行 2010年レナウンに出資 – 日本経済新聞 (nikkei.com)
中国の繊維大手、山東如意科技集団が14日に期限を迎えた社債の元利払いができず、債務不履行になった。社債発行時に主幹事を務めた交通銀行が同日、発表した。一時は「中国のLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン」とはやされた名門の苦境が一段と鮮明になった。
2017年に発行した社債10億元(160億円弱)と、その利息の返済が滞った。総額40億㌦(約4160億円)に達するとされる海外買収や傘下企業の不振で経営が悪化。20年に入り他の社債で利息の支払いを延期するなど資金繰り難が鮮明になっていた。
山東如意は10年にレナウンに出資した。レナウンが経営破綻に追い込まれた一因には、山東如意のグループ会社とされる香港企業からの売掛金回収が滞ったことがある。レナウン破綻は中国国内では山東如意の経営不振の象徴として取り上げられることが多い。
とのことであり、そもそも山東如意集団自体が放漫経営を繰り返して巨額債務を抱えていたわけである。一説には買収マニアだった山東如意集団は借金で有名ブランドの買収を繰り返していたとも言われている。
結果論ではあるが、レナウンは最も頼ってはいけない企業の傘下に自ら望んで入ってしまったことになる。当初の目的は「中国市場へ進出し店舗を拡大する」というものだったが、結局はそれも果たせずに終わっている。この中国市場での店舗網拡大がまったくの失敗に終わった原因はひとえに山東如意集団のノウハウが欠落していたことによるものだろう。
2000年代後半から中国の経済成長が一段と鮮明化し、我が国企業もレナウンを筆頭に進んで傘下になることが増えたが、2020年のコロナ禍によるロックダウン以降、明らかに中国経済は苦境に陥っており、23年のゼロコロナ解除によって当初は爆発的に経済回復があると思われていたが、24年現在、中国経済はさらなる苦境に陥っている。
そのため、2020年以降、ブランドを売却したり山東如意集団のように経営破綻する中国企業も増えている。
例えば、
である。2021年4月の記事である。
山東如意集団(本社:中国·山東省)、七匹狼(本社:中国·福建省)、復星国際(本社:中国·上海)とともに中国の「買収マニア」とも称されている大手スポーツ企業の貴人鳥(本社:中国·福建省)は、会社更生手続きを申請し受理されたものの、破産になる可能性があることがわかった。貴人鳥は、2017年9月に米国のスポーツブランド「プリンス(PRINCE)」の商標権を獲得したことで知られている。2017年12月9日に30.76元だった株価は2021年4月2日には2.61元にまで値を下げている。
とのことで、最初は企業名を「鳥貴族」と読み間違えてしまったことはここだけの話だ。
また、一早く日本のスポーツウェアメーカー「フェニックス」を買収した中国企業もブランドを手放している。
志風音が「フェニックス」ブランドの事業を継承、最大5年間の契約 (fashionsnap.com)
今年末で事業を終了するフェニックス社のスポーツブランド「フェニックス(phenix)」の事業をシフォン(志風音)が継承する。志風音はフェニックスの親会社中国動向集団との間でマスターライセンス契約を締結。契約期間は2021年1月1日から2024年3月31日までとし、両社が合意した場合は契約を2年間延長する計画だという。
2008年には中国の大手アパレル中国動向集団がフェニックス株の91%を取得し買収した。
とのことで、これは2020年10月の記事である。
旧フェニックスの関係者から直接聞いた話によると、中国傘下になった後も全く業績は上向かず、苦戦し続けたとのことで結局は中国動向集団がフェニックスを投げ出したわけである。
そんなわけで、改めて復習してみると、旧レナウンの倒産は国内市場での苦境に加えて、ドンブリ勘定の放漫経営だった中国企業の傘下になったというダブルパンチによるものだったといえる。そしてこの中国傘下入りが2010年当時は広く一般的に「正解」だと思われていたのだから、世間で言われる「正解」もそんなに当てにならないということがわかる。
新レナウンは堅実に存続してもらいたと思う。
私が勤めるダメダメ金属加工工場も、数年前に某上場企業に買収されましたが、その企業のシャッチョさんも買収マニアっぽく、現在で買収した子会社が11社もありますw
しかも、本業とたいして関係ない製造業の会社をバンバン買収していて、私が勤める会社のあとに年1ペースで買収してるっぽいです。そこの社長の話を聞いてると、売上高を200億円とかにしたいみたいで、あんまり考えもせずに買収続けてるみたいっすね。売上高が増えても利益増えなかったら、あんま意味ないのに。
結構、先行き不安ですw