
OEM生産と韓国&中国からの買い付け品で成り立っているオリジナルブランドは結構多いという話
2024年8月6日 製造加工業 0
このところ、50代後半から60代前半の業界オジサンが、老親の介護のためにUターンしてくるパターンが多く「Uターンしてきたから、大阪で酒でも飲みましょう」とお誘いいただくことが増えた。
コロナ禍もあって5年ぶりとか6年ぶりにお会いする方も多く、なかなか懐かしい。中には20年ぶりくらいにお会いする片もいて、驚くばかりである。
そんなUターンされた人の中に、OEMを生業とされている方がおられて、既存のアパレル企業からの依頼はコロナ禍で激減したものの、捨てる神あれば拾う神ありで、IT系からの依頼がくるようになったのだという。
このIT系はタレント的なインフルエンサーではなく、その道のプロみたいなプチインフルエンサー(例えば料理人とか職人とか)を組織して彼らのプロデュースで専門向けの商材を企画製造しネット販売をしているそうだが、その中には当然衣服もある。その衣服のOEM生産を依頼されるようになったとのことだった。現場で使いやすいジャケットとかそういう類の衣服である。
これはある意味で当然の依頼であり、繊維・アパレル業界で働いたこともないIT系や職人が衣料品の企画から生産までを自分達だけで完結させることはできない。例外があるとすると、繊維・アパレル業界での就業経験があり、製造にもそれなりのパイプを作っていたか、独学ですべての工程を学んだか、の場合に限られる。
実は、いわゆるファッション系インフルエンサーブランドの多くの商品もこれと同じ作り方をしている。例外は、繊維工場のオリジナルブランドや、どこかのブランドでデザイナーや企画を担当したことのある人が立ち上げたブランドくらいで、タレント的なインフルエンサーブランドはどんなに有名なものでもOEM業者・ODM業者に100%依頼していると言っても過言ではない。
そして、OEM業者・ODM業者に依頼するならまだ「オリジナルブランド」を名乗るのも理解できるが、中には「韓国の東大門市場、中国の広州市場で買って来た物を自社のブランドとして売る」インフルエンサーブランド、自称D2Cブランドも決して珍しくないというのが実態である。
それが如実に示されたのが先日報道されたこの記事だろう。
「『アリソンブラウン』の商品が、中国発の激安通販サイト『SHEIN(シーイン)』が販売する商品と同一ではないかと疑問視する声が相次ぎました」(アパレル関係者)
ブランド立ち上げ時、紗栄子は自身のYouTubeで同ブランドをこう説明していたという。
「すべての商品を一から製作するのではなく、オリジナル商品と、紗栄子さんが韓国のアパレル業者から買い付けた商品をミックスしたブランドにしていくと話していました。実際にブランドのオンラインサイトでは、各商品の概要欄にオリジナル商品か否かがきちんと記載されています。」
とのことである。
オリジナル商品と韓国の業者から買い付けた商品をミックスしたブランドということで、そのことをきちんとサイトにも記載しているのはさすがは有名人のブランドといえる。
この人ほどの著名でもないプチインフルエンサー程度のブランドや、自称D2C小規模ブランドでは「韓国で買い付けた(もしくは中国で買い付けた)」という文言を書かずにオリジナルとして販売されていることも珍しくないから、この辺りの事前告知はさすがだといえる。もし発覚した場合は詐欺と分類されるだろうからだ。
ただ、有名人のブランドでさえ、この場合は韓国での買い付けを混ぜないと運営的にも商品型数的にも厳しいということだろう。
記事の中には次の一節もある。
《「SHEIN」様でのお取り扱いの当該商品を取り寄せて確認したわけではございませんが、商品画像等を確認する限りは、「アリソンブラウン」が韓国でセレクトし、買い付けをした商品と同様のものだと認識しております》
とのことで、シーインと同じということは認めている。
ここで重要なことは、いろいろと謎に包まれたままであるシーインは韓国からの買い付け商品もあるということである。
何が言いたいのかというと、シーインの急成長について、様々な解説がメディアでこの3年間くらいで報道されていたが、その中には結構な本数で「シーインの商品は全てオリジナル企画で、あれだけ多くの型数を矢継ぎ早に商品化できるノウハウはすごい。世界のアパレルはシーインに支配される」という論調があったのだが、それが誤っていたということが示されたということである。
もちろん、オリジナル品もあっただろうが、買い付けの既存品も多々あったということである。
少し以前にもシーインの盗用疑惑記事でアリババにも同じ商品が売られていたという内容のものもあった。これについては、長年中国工場を使ってOEMを手掛けていた某業者は
「シーインもアリババも同じ商品を買い付けて仕入れていたということです。今回の商品は恐らくは中国の広州市場あたりで見つけたものではないかと思います」
と指摘していた。
シーインがあれほどのたくさんの型数を次から次へと矢継ぎ早に展開できるのは、超速で仕上げられる独自のAIだかなんだかの特殊なノウハウを確立させたのではなく(もちろんオリジナル企画商品もあるだろうが)、韓国・中国から既存商品を買い付け仕入れている割合も相当高いと考えられるのではないか。
それにしても、今回は改めてネット通販の恐ろしさを改めて痛感した業者も多いのではないだろうか。ネット通販は「簡単に価格比較ができてしまう」と以前から指摘されていたが、今回はその好例だといえるだろう。ネット通販で簡単に商品を検索できるからこそ、アリソンブラウンとシーインの商品が検索されてしまい、価格差まで比較されてしまったわけである。