
衣料品の買い上げ客数減少の理由は「商品価格上昇」だけではないだろうという話
2024年8月7日 売り場探訪 0
猛暑が際立ち始めた2019年頃から綿100%Tシャツに見切りをつけて、真夏用に吸水速乾Tシャツを買うようになったが、さすがに4~5年も経過するとそれが相当数量たまっている。
また昨年にはユナイテッドアスレの吸水速乾迷彩柄Tシャツを3枚Amazonでポチったので、それを合わせると真夏用吸水速乾Tシャツの手持ち枚数は10枚くらいになり、それを毎日ローテーションで着用している。
そんなわけで、今夏は洋服を購入する意欲が著しく無いのだが、それでも月に2枚くらいはジーユーで値下がりした590~990円の吸水速乾系の服を買っている。しかし、その程度である。
一方、相変わらずの品薄感からガンプラは新発売商品の7割くらいを毎回買っている。そしてこれまで後回しにして買っていなかった商品も再入荷品を見つけた際には買うようになっているから、購入頻度と購入個数は大幅に伸びている(自分比)ではないかと思うほどである。
何度も書いているが、これは当方が老化ゆえに洋服への興味が薄れてきているのではないかと思うのだが、世間一般的にも、20~30年前と比較して洋服への「強い」興味を示す人の数は減っているのではないかと、体感的に思えてくる。
23年度全国主要SC売上高 にぎわい戻り19年度上回る 衣料品は過半数が客数減 | 繊研新聞 (senken.co.jp)
繊研新聞社が実施したアンケートによる「23年度SC売上高ランキング」は、22年度に続き9割余りの施設が増収となった。21年度から増収基調になっており、全体としてコロナ禍前の19年度を上回った。新型コロナによる行動制限の解除で、各施設はリアルを楽しみたい消費者に応え、インバウンドも押し上げた。ただ、単価上昇の進んだ衣料品では客数の確保が課題になっている。
とある。
最近、大阪市内のファッションビルを覗いて見ても、平日昼間でもそこそこ客入りが多い。もちろん「暇つぶし」で散歩がてら来店している人も相当数いると思われるが、それでも買い物意欲は2019年くらいには高まっているのだろうと感じられる。
このアンケート記事のSCにはアウトレットモールも含まれており、正確にはアウトレット、ショッピングセンター、ファッションビルへのアンケート調査だということが以下の部分からわかる。
ランキング1位は3年連続で御殿場プレミアム・アウトレット(PO)。20年に増床し内外の観光客を捉え続けており、23年度も大きく伸ばした。同施設も含めインバウンドの増加による効果は大きく、アウトレットモールや大都市ターミナルの大型施設の伸び率が高くなっている。そのため上位10施設のうち、御殿場PO、ルクア大阪、神戸三田PO、三井アウトレットパーク木更津、JR博多シティ、軽井沢・プリンスショッピングプラザが19年度を超えただけでなく過去最高の売り上げとなった。
で、興味深いのは無料会員登録部分の結末にあって、引用すると、
しかし衣料品については様相が変わっている。増収だった施設は6割余り。3分の1は減収という結果で、その要因は買い上げ客数が確保できなかったこと。85.1%の施設で客単価が上昇しているが、過半数の55.4%で買い上げ客数を減らしている。原材料の高騰が衣料品の単価を押し上げているが、それが買い控えにつながっていると指摘する施設も多い。
かつてのような比率で衣料品のテナントを揃えている新しい施設はあまり見られず、改装で衣料品のテナントを別の業種に切り替えることも多い。当面はそうした傾向が続きそうだ。
となっている。
衣料品が増収した施設は6割強しかなく、30数%は減収に陥っている。85%の施設で(恐らく衣料品の)客単価は上昇しているが、55・4%の施設では(衣料品の)買い上げ客数が減少しているという結果になっている。
2022年以降、原材料高騰、燃料代高騰、円安基調の加速などからほとんどの衣料品ブランドが少しずつ値上げをしているから客単価が上昇するのは当然の結果だといえる。一方、買い上げ客数減少の理由はさまざま考えられる。繊研新聞社、もしくは取材に答えた担当者は「衣料品の価格上昇が買い控えにつながっている」と主張しているが、果たしてそうだろうか。当方はそれ以外にも大きな理由が複数存在するのではないかと思っている。
その1つが衣料品への「強い」興味を持つ人が減っているからではないかと思っている。引用記事中にも「改装で衣料品を別のテナントに切り替えるところも多い」とあるが、最近改装オープンや新規オープンした商業施設のテナントの衣料品比率は減っている。メインとなるテナントは飲食・食品、化粧品・コスメ、サブカルあたりである。京都高島屋SCもメインテナントは衣料品ではなく、まんだらけや飲食街となっている。天王寺MIO本館6階だって衣料品テナントが減ってジブリカフェやキャラクターグッズ店が増えている。
それがいずれもある程度の集客に成功しているのだから、結論としては「衣料品よりも飲食やサブカルに『強い』興味を持つ人が増えた」ということではないかと見ている。
店頭販売価格が上昇したから買い上げ客数が減ったという側面はあるだろうが、それよりも興味の対象が飲食やサブカル、コスメに移った人が多いという要素の方が大きいのではないかというのが個人的な意見である。
じゃあ、商品価格を下げたら必ず衣料品が売れるのかというと、そうではないことはすでにコロナ禍前から証明されていて、値下げをしても苦戦をするショップは珍しくなかったことは業界でも周知の事実だろう。
買い上げ客数の減少理由を店頭販売価格の上昇にだけ求めるなら、業界はまた厳しい値下げ競争で疲弊することにつながりやすくなるので危険な考え方ではないかと思われる。