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南充浩 オフィシャルブログ

最もマスに普及したウェアラブル商品は電動ファン付きベストではないかという話

2024年7月5日 商品比較 0

メディアや最先端のイキリイノベーターたちはフィーバーするがマス層には広がらずその存在すらも忘れ去られてしまうという事案が少なからず世の中にはある。

大山鳴動して鼠一匹という状態である。

繊維・アパレル業界にはことのほかそういう事案が多い。

例えば、通販用計測スーツである。ゾゾスーツを筆頭に話題になったが、実際今現在、洋服の通販を買うために計測スーツを使っているという人を身の周りで見たことがない。

あの当時言われていた「ゾゾが世界を制覇する」も「ユニクロと既製服は死んだ」も未だに実現していない。それどころかそんな過熱報道があったことすら多くの人は忘れ去っている。2024年現在、いまだにゾゾは世界を制覇していないし、ユニクロも既製服も全く死んでいない。

いかにイキリイノベーターたちの言うことが当てにならないかである。

そんな中の一つに「ウェアラブル」もある。

繊維企業のウェアラブル事業を追う① “スマートウェア”はどうなった? | 繊研新聞 (senken.co.jp)

〝スマートウェア〟という言葉を覚えているだろうか。導電性を備えた繊維やフィルム、塗料を主に用いたセンシング技術で開発された、服型のウェアラブル商品を指す。繊維メーカーが固有の技術を活用し、ウェアラブル商品を想定した素材や製品を相次ぎ発表したのが約10年前。そのころ初めて開催された展示会「ウェアラブルEXPO」も年を追うごとに関心を高めていった。ところが昨年と今年の2回は服型を主軸にした日本企業の出展はゼロ。

とのことである。

 

 

 

煽った側のメディアとしてのこういう検証姿勢は非常に重要で、今回の繊研新聞の姿勢には敬意を表したい。言いっぱなし煽りっぱなしのメディアがいかに多いことか。な?WW・・・おっと誰か来たようだ。

2013年、2014年頃からウェアラブルに注目が集まり、体調管理などのスマートウェアが一時的に脚光を浴びた。この辺りの記憶は残っている。

しかし、気が付いてみるとウェアラブルもスマートウェアも今ではほとんど報道されなくなった。新商品が開発されているかどうかも怪しいところである。

繊研新聞の記事では昨年・今年のウェアラブルEXPOへの服型商品の日本企業の出展はゼロとのことである。いかにこのジャンルが衰退しているかである。

この記事によると、ウェアラブルのスマートウェアの敗因は、スマートウォッチや腕に装着するフィットネストラッカーなどに手軽さにおいて劣った点にあると分析している。

ところが、服型は主に体調の見守りというヘルスケア用途で市場開拓が始まったものの、当初期待されていたほど大きな成果は上がっていない。

理由は明白。スマートウォッチやフィットネストラッカ―(活動量計)のような腕に装着する商品と比べると〝手軽さ〟が不十分だったからだ。腕装着型の商品は、一般市場だけではなく、働き方改革、それに伴う健康経営の潮流を背景に、企業による従業員の体調見守り用途で需要が飛躍的に伸びている。

より体に密着してバイタルセンシングができる服型は、腕装着型以上に正確なデータを取得できるとされる。しかし、デバイスの手軽さが明暗を分けた。

とある。

 

 

何事においても「手軽さ」「気楽さ」というのは重要である。人はわざわざ進んで小難しいことやマニアックなことをやりたいとは思わない。そう思うのは真性のマニアだけである。

当方はスマートウォッチも嫌いだから所有していないしフィットネストラッカーも装着していないが、経験上スマホアプリでも代替に近いことができることを知っている。

正直なところスマホアプリで計測される心拍数などは正確なのかどうかかなり不安を感じるのだが、手軽さだけで言えば、わざわざ機械を買わなくても済むからスマホアプリが最も手軽なのである。実際、スマホアプリで十分と思っている人も少なからずいるのではないかと思う。

 

 

 

新規の技術開発は必要だが、過度な期待をかけるのはいかがなものかと、この件に限らず常に思っている。

例えば、この記事にあるサービスだが、何の必要性があるのかさっぱりわからない。

ナイキのシューレース調節アプリ「Nike Adapt」が終了、今後は手動で (fashionsnap.com)

 

「ナイキ(NIKE)」が、シューレース調節アプリ「Nike Adapt」を8月6日をもって終了すると発表した。アプリは、同日に世界中のApple及びAndroidのアプリストアから削除される。

同アプリは、2019年に発売した自動靴ひも調節機能が付いたバスケットボールシューズ「ナイキ アダプト BB」に使用。アプリ上でシューレースを自動で締緩することができるほか、左右のフィット感の調整、ライトの点灯・カスタマイズなどができる。ナイキは同アプリを終了する理由として、今後アダプトシューズの新作は作成しないためとしている。

 

当方は物知らずであるから、非常にためになる開発目的があったのかもしれないが、それでも当方からすればアプリをインストールしてそれを操作するよりも靴紐を自分で締めなおした方が手っ取り早いのではないかと感じられてならない。ただ、このサービスが廃止になるということは需要はそんなに無かったということだろう。だってどう考えてもスマホアプリをインストールする手間、それを操作する手間、を考えれば靴紐を自分で締めなおす方が手っ取り早い。技術開発のための技術開発だったのではないかとしか思えない。

 

 

体調管理のスマートウェア以外のウェアラブルもさして見かけたことがないし、身の周りでも業界人を含めて使っている人を見たことが無い。ウェアラブルという商品で最もマスに普及しているのは、空調服を始めとする電動ファン付きベスト・ブルゾンではないだろうか、次いで電熱線入りのベスト・ブルゾンではないだろうか。

結局のところ、なんや訳の分からん崇高な目的とか込み入った技術よりも、猛暑を涼しくしたいとか極寒を緩和したいとかそういうシンプルな需要こそが真の需要ではないかと思う。

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