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南充浩 オフィシャルブログ

アメリカでも一部品目からの値下げが始まったという報道があったという話

2024年7月3日 トレンド 2

大学三年生のときと四年生のとき、若気の至りで何をイキっていたのか、ヨーロッパに1か月間バックパッカーをやってみたことがある。ドイツを縦断してオーストリアに至ってそこから帰国するというのが1度目、2度目はローマから出発して北イタリアを一周してローマにもどってくるというルートだった。

当時は飛行機で17時間とかかかって、エコノミーシートに座り続けるのがしんどくてたまらないという体験をしたのでその後二度とヨーロッパには行っていない。多分死んでも行かない。

当方が飛行機で耐えられるのは台湾までである。

それはさておき。ドイツから電車でオーストリアへ入国し首都ウィーンへ行くという体験をしたわけだが、陸続きで国境を越えるというのは日本人としてはなかなか珍しい体験だった。飛行機に乗るよりもよほど手軽でカジュアルな印象を受けた。まあ、ドイツとオーストリアは同じドイツ語圏だし、一時期は同一国だったこともあるから格段に行き来がしやすいというのもあるだろうが。

日本の場合、外国へ行くには必ず海を越えなくてはならない。これは物理的な距離もさることながら、心理的な距離もけっこうあると感じる。

 

 

そんなわけで、当方も含めてほとんどの日本人は外国というのはなかなか心理的に遠いと感じているのではないかと思う。

だからこそ余計にこれまで「外国では~」「〇〇国では~」という言論が幅を利かせて国内では重宝されてきたのだろうと思うが、そういう外国出羽守もそろそろ賞味期限切れが増えていると感じる。

これまで日本は30年前後デフレが続いていた。デフレになるからさらに物価が下がるというデフレスパイラルについて多くの議論があった。

その一方で海外、特に欧米豪中あたりはインフレが続いてきたが、これに対して憧憬に近い物を抱く日本人も相当数いたと感じるが、最近は動画SNSの発達と普及によって、海外のリアルな経済状況を伝えるYouTube動画が増えており、当方もいくつかのチャンネルを継続的に視聴している。

その中で語られているのが、最近のインフレスパイラルと、アメリカ市場で一部商品の値下げが始まったという話である。

 

 

まず、インフレスパイラルでいうと、デフレスパイラルの逆なのだが理論的には普通にあり得る。物価が上がるから賃金アップを要請する、賃金アップを要請されたからそれを賄うためにまた物価を上げるというスパイラルが繰り返されるのは普通に考えればわかるだろう。

これはこれで相当にやっかいでどこかでスパイラルを断ち切らなければならない。なにぶん物価上昇率の方が給与上昇率を上回っているのだから。

一方で、このところ物価上昇続きだったアメリカでも一般庶民は耐えられなくなり、一部商品の値下げが始まっているというレポート動画が複数の海外在住ユーチューバーからアップしている。

いくつかご紹介しよう。

という具合である。

 

 

 

それも当然で、アメリカにせよ中国にせよ、もちろん日本にせよ、全国民が富裕層・準富裕層になれるはずもなく、そんな楽園は世界のどこにも存在しない。

当然インフレスパイラルに対して購買力を無くすという層が出てくるし、スパイラルが続けば続くほど脱落する層も増えるのは当たり前である。普通に考えれば分かるだろう。

で、いよいよアメリカの物価高も頂点に達しつつある今、逆に食料品や日常消耗品は一部の品目で値下げが始まりつつあるようだ。

これはいずれ、どこかでまた別に書いてみたいが「価格があまりにも高くなりすぎると需要が無くなる」という現象である。(そのままやんけ)

 

 

 

海外からのちゃんとしたメディアの記事でもこんなのもある。

最安値競争が加速するファッション業界: ウォルマート がZ世代の顧客を狙う一方でシーインは価格を引き上げ

ウォルマート(Walmart)は、自社のプライベートブランドで、30年前に創設されたノーバウンダリーズ(No Boundaries)の再ローンチを発表した。新たに改修されたこのブランドは、非常に安い価格で若い層やZ世代の消費者を積極的に対象とする。

商品の80%以上は15ドル(約2370円)以下で販売され、いくつかのTシャツはわずか5ドル(約790円)だ。ノーバウンダリーズはウォルマートにとってすでに20億ドル(約3160億円)を超えるビジネスで、この刷新によってさらに多くの若い層の顧客が、ほかの同様な低価格ブランドから乗り換えることを同社は期待している。

 

とのことで、ウォルマートは休眠していたPBを使って新たに超低価格ラインを開始し、それがすでに売上高3200億円弱にまで達しているという報道である。

シーインの急成長といい、アメリカでは本当に超低価格品の需要が大きいということがわかる。

これに対してシーインは少し値上げをし始めているという一節もあり、

 

ロンドンで6月中にもIPO(新規公開株)を発行するのに先立ち、価格を引き上げたのだ。エディテッド(Edited)からのデータによれば、シーインはこの数カ月に商品の3分の1以上の価格を引き上げた。

 

とのことだが、個人的にはシーインは今までが激安すぎたので、値上げしたと言ってもさほどの金額ではないと考えられ、消費者の購買にはそう影響は与えないだろう。

例えば、日本では価格高騰で「うまい棒」が10円から12円に値上がりしたが、値上がり率では20%にもなるが、実額は2円である。うまい棒の消費にはほとんど影響が出ないだろうし、2円値上がりしたことで買い控えも起きないだろう。シーインも似たような感じだろうと思う。

アメリカがデフレに陥るかどうかはわからないが、行き過ぎた物は必ず揺り戻しがあるのが世の常だから、物価上昇は落ち着くか少し下がるかという状況になる可能性は低くないだろう。

 

 

何が言いたいのかというと、結局はアメリカだろうが、欧州だろうが中国だろうが低価格品というのはすべてのジャンルにおいて無くならないということで、インフレが行き過ぎればその反動で値下げする品目も出てくる。その辺りの状況を見ながら、価格政策を決定するべきで、イデオロギーを根拠にして価格を決定するという経営施策は正しいとは言えない。

陰極まれば陽に転じるし、亢龍悔いあり、である。

 

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 comment
  • ミナミミツヒロ的けち人間 より: 2024/07/03(水) 12:42 PM

    >低価格品はすべてのジャンルにおいて無くならない

    正確には「アパレルのような軽工業製品において」
    という限定条件下において、ですよね

    需要サイドが不滅なのはご指摘の通り

    そして供給サイドでも、
    生産がほぼ無限大かつクイックレスポンスでw
    増やせるジャンルだから
    あっという間に価格崩壊につながります

    流通が良くなった現在、
    住まいを除けば、モノを安く買おうとすれば
    好況不況を問わず激安価格で買えますよね
    それも民主主義国家なら、世界どこを問わずです

    うらかえすと、先進国で製造業の仕事が
    無くなるはずです

  • とおりすがりのオッサン より: 2024/07/03(水) 1:24 PM

    南さんにバックパッカーの過去があったとは驚き!カッコいい!
    高校の同級生が中学でベルギーに留学してた時に、山で迷って国境越えちゃって密入国したことあると言ってたのを思い出しました。私なんか、一人では本州から出たこともなく、自分で行ったのは北は仙台、南は名古屋までしかないです。名古屋は青春18切符で夜行電車で行ったら、背もたれ直角の椅子でぎゅう詰め車内でたいへんでしたがw

    アメリカも貧富の差が相当大きくなってるようですが、途上国の所得が増えていったら最終的には、安い製品は先進国でも底辺の労働者が作ったりするようになるんすかね?それとも、中国、東南アジア、インドとかの賃金が更に高くなっていったら、アフリカとかで作るようになっていくのか?日本だと、移民が増えて日本人のほうが少なくなって移民のために日本人が低賃金で働いてる未来もありそう(´Д`)

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