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南充浩 オフィシャルブログ

商業施設が撤退したから閑散とするのではなく、閑散としていたから撤退するという話

2024年6月28日 トレンド 3

先日、ネットニュースにこんな記事が流れてきたのだが、ちょっと因果関係が逆ではないかと思った。

百貨店が消えたまちを歩いた。にぎわいは程遠く、駅前は活気を失った。若者はそっけなく「買い物はイオンか通販」…高齢女性は本音を漏らした「やっぱり『一畑』の紙袋で包んで渡したい」 | 鹿児島のニュース | 南日本新聞 | 373news.com

 

20年以上ハンドルを握る男性運転手は「一畑百貨店が閉店して明らかに駅前の活気がなくなった。買い物帰りの客もいなくなり痛手。続けてほしかった」と明かす。

 

とのことだが、そもそも売れ行きが落ちていて、なおかつその後のコロナ禍もありテナントが集められなくなったことが一畑百貨店閉店の原因である。

もちろん、一畑百貨店が閉店後、さらに客足は減った可能性はあるが閉店前から盛時と比べて客足は落ちていただろうと考えられる。

嘆くほどに賑わっていたなら、一畑百貨店は閉店しなかっただろうし、改装に向けてのテナントも順調に集まったはずである。

土地勘がないので、外れているかもしれないが、地図上では一畑百貨店から歩いて10分弱くらいのところにイオンモールがある。以前にコメントで「このイオンモールは相当古いですよ」と教えていただいたが、イオンモールが近隣にあるなら賑わいはそう変わらないのではないかと思ってしまう。近隣住民で買い物に困っているという人はそう多くはないのではないだろうか。

 

 

 

「中元を買う場所がなく困っていたので助かる」と比良田弘子さん(71)さんは笑う。「でも本当は」と続け、「一畑の紙袋で包んで渡したい気持ちもある」。

当然、このような需要はゼロにはならなかっただろう。

だが、中元・歳暮という風習も年々減っている。6月半ば頃になると都心の大型百貨店でもお中元フェアという売り場が組まれるが、年々その売り場面積は縮小しているように見える。

当方にしてももう長いこと、中元・歳暮はもらっていないし、贈ったこともない。

生活スタイルは多様化しているから、当方と同年代でも特定の何人かに関しては中元・歳暮を贈り続けているという方もおられるだろうが、個人的にはマジョリティーではないのではないかと思っている。

それゆえに減少し続けていると考えられる中元・歳暮需要のためだけに百貨店を存続させることは、到底できない。

 

 

 

この記事に対して、同様に感じている人がいたようで、こんな記事が掲載された。

「百貨店閉店でにぎわいが消えた」キャンペーンに、新聞が“チカラ”を入れる理由:スピン経済の歩き方(1/7 ページ) – ITmedia ビジネスオンライン

そこで前述したように鹿児島の地元紙『南日本新聞』が、「百貨店ゼロ県」の島根県松江市へ取材に行った。つまり、この記事は「山形屋再建」をテーマにした連載で、「百貨店がなくなった街がどんなに寂しいか」ということを鹿児島市民に知らしめる目的でつくられたものなのだ。

このような話を聞くと、なぜ新聞はそんなに「百貨店閉店でにぎわいが消えた」という方向へ話を持っていきたいのかと不思議に思う人も多いはずだ。

前出『南日本新聞』の記事に対して専門家なども指摘しているが、今日本の地方都市で起きている現象は「百貨店閉店でにぎわいが消えた」ではなく「にぎわいが消えたから百貨店が閉店した」が正しい。

 

とある。この部分に関しては深く同意する。

この筆者は原因を「人口減少」としているが、当方はそれだけではないと思っている。たしかに島根・鳥取は人口減少が激しい県だし、他の地方都市も減少傾向にある。

だが、それ以外にもさまざまな理由があるだろう。

1、中・小型店が多い地方百貨店は広大なショッピングセンターに見劣りする

2、地方・郊外は自動車社会になっているため、電車利用を基点とした百貨店より駐車場のあるショッピングセンターが選ばれている

3、ゲームセンター、玩具店、書店などがそろっているショッピングセンターの方がエンタメ性が高く家族連れ客に選ばれやすい

などなど

である。

この記事は、発行部数の縮小著しい新聞という旧ビジネスメディアが、減りゆく地方百貨店を同病相憐れんでいて、自社新聞社も含めた保護キャンペーンを張っているのだと主張しているが、たしかに、そのきらいは多分にあるだろう。

ただ、新聞の発行部数の減少も単なる「人口減少」だけで説明できるものではない。見放される理由がそれ相応にある。

 

 

 

同じ地方百貨店でも賑わっている店舗は今も営業を継続しているし、逆に閉店が決まった・閉店してしまった店舗というのは、当方がいくつか訪問した限りにおいては、閉店が決定する以前から閑散としていた。

例えば、今年7月に閉店が決定している岐阜高島屋も短時間ではあるが何年も前に複数回訪問したことがあるが、その当時ですら閑散としていたし、周辺地域も閑散としていて「こんな状況で営業が継続できるのだろうか?」とすでに当時に感じた。

もうかなり以前になるが、閉店する直前の奈良そごうにも訪れたことがあるが、やはり閑散としていた。ちなみに子供のころ、オープン直後に訪れたこともあるが、その時の混雑ぶりとは雲泥の差で、なるほど閉店するのも当然だと思った。その跡地にオープンしたイトーヨーカドーも早々に撤退したがやはり閑散としていた。

知っている範囲でいうなら、百貨店に限らず全ての商業施設は閑散として売り上げが稼げなくなるから撤退なり閉店なりをするわけで、閉店したから活気が無くなるというのは捉え方の順番が逆なのである。

 

この新聞の「保護キャンペーン」は恐らくは徒労に終わるのではないかと思う。

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 comment
  • 元メンズアパレル業界の端くれ より: 2024/06/28(金) 5:48 PM

    その元奈良そごうの館は今「ミナーラ」という名前となり、3年前にスーパー「ロピア」が入ってから週末は駐車場満車になります。
    今は人を集めるのは百貨店でも総合スーパーでなく、食品スーパーみたいです。

  • でこぽん より: 2024/06/28(金) 6:30 PM

    松本の井上百貨店も閉店しますが、20年以上前から客より店員のほうが多く閑散としていましたよ。

  • ミナミミツヒロ的けち人間 より: 2024/07/01(月) 9:43 AM

    みかんの親せき氏>店員が客より多くて20年

    地場百貨店の金持ち度は凄いなぁ
    バブル過ぎの頃、旅行ついでに地方百貨店に
    よく足を運びましたが、日本全国どこも一緒です

    底地込みで建物もってて、手堅い売上で外商に贈答品
    がある訳だから、傾きはじめても、4半世紀は優に持った
    という事になります

    ただ、小売業である以上、従業員が必要で人件費がかかる

    必ずやってくる引き際考えなきゃいけなかったのに
    猶予期間があまりに長いと人間そうはなれないものですな・・・

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