
DCブランドブームという時代の名残さえ消えたと感じた話
2024年6月4日 企業研究 1
ビギHDが三井物産の完全子会社化した。
三井物産は2018年にビギHDに資本参画し、三井物産が33.4%、三井物産系のMSD企業投資が運営するMSD第一号投資事業有限責任組合が66.6%の株式を保有していた。今回、三井物産はMSDの保有株を取得し、出資比率を100%にした。
(中略)
ビギHDは、1970年に大楠裕二氏が創業したビギやメルローズなど擁する持株会社。現在は「ヨシエイナバ」「モガ」のビギ、「ピンクハウス」「マルティニーク」「コンバーストウキョウ」のメルローズ、「メンズ・ビギ」のメンズ・ビギ、「パパス」「マドモアゼルノンノン」のパパス、「ジョンスメドレー」のリーミルズ エージェンシーなどの事業会社で構成される。23年2月期のグループ売上高は456億円。
とのことである。
まあ、今回の完全子会社化は2018年に三井物産が資本参画した時からの規定路線だったのではないかと思う。というか、2018年時点で三井物産が33・4%、三井物産系の組合が66・6%を持っていた(合計すると100%)のだから、その当時からビギHDは三井物産の完全子会社になっていたといえる。
先日、ファイブフォックスの創業者とされる上田会長が亡くなられて、現在の年商は215億円ということがこれもまたWWDの記事で判明した。この辺りの蓄積はさすがはWWDである。
生い立ちや紆余曲折はそれぞれ両社とも異なるが、東京とは縁がない一業界ライターからすると、割と似たスタンスの部分もあると感じる。それとともに70年代生まれの人間からすると80年代にDCブームを牽引した両社の現状は「1つの時代の終焉」を感じさせられている。
まず、DCブームを牽引した二社ともに創業者は引退(死去も含め)しており、その当時のある意味で、よくも悪くも大らかな気風は無くなってしまっている。
当時から東京の業界のど真ん中で働いておられた方々に詳しい解説はお任せするとして(当方にはその知見がない)、あくまでも東京とは縁が無かった外野の業界ライターの感想をつらつらと並べてみたい。
この両社に似たスタンスを感じるというのは、90年代以降に伸長してきた現在の大手アパレル企業とは異なり、この両社ともにほとんど経済メディア、業界メディアに登場しなかった点である。登場するメディアはほぼファッション雑誌だけだった。
97年に不幸にしてか、幸いにしてか業界紙記者になってしまった当方だが、関西の新店舗オープンも含めてほとんど取材をさせてもらったことがなかった。恨み言ではなく、あくまでも事実として。
そこにはもちろん当方が入社した社の知名度が低かったとか、当方自身が新人で信用されていなかったなど様々な理由はあるだろうが、当時業界随一を誇っていた繊研新聞にさえもほとんど掲載されたためしが無かった。それこそ盆と正月の特集くらいだろうか。
日経新聞になるともう少し掲載されていた記憶があるがそれでも後年のユニクロやアダストリア、しまむら、ワールドなどに比べると年間の掲載回数は数えるほどしかなかった。
そういう状況から類推するとこの両社のトップは「経済メディアや業界メディアは不要」と考えていたのだろうと思われる。
トップがそう考えているなら畢竟、管理職以下そういう行動になる。
そのため、日経新聞や繊研新聞を読んでいてもこの両社の売り上げ状況なんかはさっぱりわからなかった。
そのうちに2000年代に突入すると、DCブームの衰退から両社とも盛時の面影は消えた。詳細は分からないながらも売り上げ規模はどんどんと縮小しているということが肌感覚的には感じられた。その結末がファイブフォックスの売上高215億円になるのだが。
物事は何事においてもメリットとデメリットは表裏一体だから経済メディアに出てこないということは、マス層の知名度においても、掲載され続けるユニクロやしまむら、アダストリア、ワールドに後れを取ることになる。「知られていないのは存在しないのも同然」だから、マス層においての認知度はどんどん下がって行った。実際、2023年3月まで専門学校の非常勤講師を務めさせてもらったが、6年半に渡る中で、ファイブフォックスとビギという社名を知っている生徒は誰もいなかった。それほどまでに知名度は低下していた。
そんな中、ビギは少しスタンスが変わる。私の記憶が確かなら(鹿賀丈史風に)、2018年の三井物産の買収によって、WWDなどの業界メディア、他の経済メディアへの露出が増え始めた。これは恐らくは大手総合商社である三井物産の方針がそのままビギにも適用されたのだろうと考えられる。
一方、ファイブフォックスは今に至るまで大手総合商社や大手金融などの他社に買収されいないから、メディアへのスタンスは隆盛を誇ったころと変わっておらず、掲載されるのは年に数えるほどだが、あくまでも読者という立場で言うなら、売上高が縮小し続けているから尚更露出が減ったと感じられてならない。
両社ともに当方とは全く縁の無い企業なのだが、記事によるとビギの創業者として知名度の高かった大楠裕二氏だが、一足先に引退をしてしまっている。
2020年2月3日のこの記事によると
グループ創業者の大楠祐二氏も同社の最高顧問職を退任し、グループから離れる。
とあるから、遅くとも2020年以降、ビギは全くの三井物産主導で運営されてきたということになる。
こうしたビギの経緯を見ていると、創業者が亡くなったファイブフォックスも恐らくビギのように大手総合商社なのか、大手金融なのか、大手IT企業なのか分からないが、近い将来買収されるのではないかと見ている。
たしかにブランド力はメッキリと無くなったが、店舗網はあるし、売上高はビギHDの半分程度なので買収金額も安く抑えられる。そこに価値を見出してアパレルに参入したいという奇特な会社もどこかにあるのではないか。
そうやって一つの時代は終わって、また新しい時代が始まり、それもまたいつかは終わる。そんな繰り返しが人の営みというものなのだろう。
物産がなに考えているのか、いまひとつ分かりません
商売として一番うま味があるのはネーム貸し
それにはネームに相当な知名度がなければいけない
しかし、ここ7,8年で物産が手に入れたネームは
今となっては知っている若者がほとんどいないもの
つまり物産の担当者が加齢臭がするオッサンもしくは
超熟女wだった思われるケースだけです
「担当者諸氏は、2000年ごろに青年期だったのか~」
と思われるネームしか買っていない
したがって、今を生きる若者には知名度ゼロです
転売するにしても、仕入れ値以上で売れるネームでは
ないと思われます
結局カネ余りの道楽なのかな?