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南充浩 オフィシャルブログ

補助金頼みで産地振興はできない

2015年1月7日 未分類 0

 予定を変更して、今回はこの話題を考えてみたい。

なぜ地方は補助金をもらっても衰退するのか

地方創生に必要なのは、「おカネ」ではない
http://toyokeizai.net/articles/-/57362

地方振興、地域振興という言葉はそれこそ筆者が小中学生のころから叫ばれており、かれこれ30年以上も耳にしてきた。
その割には一握りの成功例のほかはすべて成果が出ていない。

筆者の属する繊維業界も同じだ。
業界新聞に入社した97年から変わらず(実際はもっと以前から。筆者が身近に見始めたのが97年から)に地域振興・国内産地振興というスローガンが掲げられ、行政からの補助金・支援金・助成金が投入され続けている。
その割には、それら支援事業はあまり効果を上げていないことが多い。

その理由がこの記事には示されている。

なぜならば、配ったその途端に、その事業に必要な各種経費として消えてしまい、それで終わりだからです。「1サイクル」(1回転)しか、経済が回りません。その経費の一部が人件費として各地域の人に配られるならば、まだましですが、地域の外などに外注してしまえば一度来た予算は、別の地域にいってしまいます。なんといっても問題は、一度使ったらそれだけで終わりです。もう2度と同じような効果を生み出すことはできません。

たとえば商店街が、国の予算などを使って大手代理店などに外注して、格好のいいポスターをつくってもらったり、大規模なイベントをやったところで、一度やったらもう終わりです。

地方に必要なのは、一回しで終わらない、一度資金を入れたらそれをもとに、地域内経済を取り込んで回り続けるエンジンです。

とある。
その通りだろう。

繊維業界に置き換えて考えてみると、各産地でさまざまな取り組みがある。
毎年恒例行事として行われているもの、新規に立ち上げられるもの、とさまざまある。

しかし、その多くは開催したらお終いである。

例えば毎年恒例行事として行われていることが多い、産地総合展示会。
筆者も某産地の総合展示会のお手伝いを何年かさせていただいたことがある。
多くの場合は開催したらそれでお終いであり、すぐさま次年度の予算の確保が始まる。
そして予算を消化してお終い。
それの繰り返しというパターンが多い。

こうなると、この行政から支給される予算なしではこの展示会は開催できないということになる。
実際に助成金が打ち切られたり削減されたりしたために開催を取りやめたり、開催規模を縮小した産地展示会は掃いて捨てるほどある。

そうならないためには、展示会開催でなにがしかの利益が生まれないと、自前での開催は不可能になってしまう。
実際には難しいことなのだが、展示会での受注額の数%を各社が協賛金として支払い積み立てて次回に生かすというような工夫が必要になる。

また

税金を用いた活性化事業の限界は、利益を出してはいけない、出せないという、その資金の性質と諦めで縛られてしまっているわけです。

という助成金・補助金の使い道への縛りも疑問である。
某組合が消費者向けに毎年必ず製品展示を行う。
消費者への告知という行動自体には意味があるが、毎年、見せてお終いということを続けていてもそれほど効果はない。
そうなると、その場で直接販売できることが理想である。

ところが、助成金で開催するからその場で売上高を作ってはダメというおかしな縛りがあって、何年もただ「見せるだけ」に終始している。
見せるだけの効果なんてたかが知れているにもかかわらずである。
真に産地、組合の活性化を望むなら、

逆に言えば、すべてとは言わないまでも「利益を出せないような活性化事業は、すべて止めてしまう」くらいの、思い切った意思決定が必要なのです。本当に活性化を目指すのであれば、です。

ということになる。これが正解だろう。

毎年恒例化した産地展示会とは反対に、新規で立ち上げられる取り組みの一つとしてファッションショー的な集客型イベントがある。

集客型イベントを開催する意味はゼロではない。
集客に成功すれば多少なりとも周辺地域での飲食による経済効果が発生する。
しかし、それで終わりだ。
それ以上にお金は動かない。周辺店が多少潤ってお終い。しかもそれが発生するのは年に1度か2度の決まった日で、それ以外の日はいつも通りの営業常態である。

単に人が集まることや、メディアに取り上げられることでも、一過性の経済効果を謳うことではダメなのです。「地域で資金を回し続けるエンジンを作り出すこと」、すなわち「しっかり利益を出すこと」でしか、地域の持続的な活性化なんて不可能なわけですから。

というのが結論となる。
しかし、なぜそれが実現できないか。

地域活性化に取り組むという名目で資金が流れ、その一回しのシステムの中で食っている人たちにとっては「税金での地域活性化」は不可欠です。しかし地域全体においては、その効果は全く波及しません。「成果を出している事業は、補助金に頼らない」というより、補助金に依存した段階で、もはや「衰退の無限ループ」にハマってしまうわけです。

地方創生に必要なのは、資金調達が可能な事業開発であり、民間が立ち上がって市場と真正面から向き合い、利益と向き合って取り組むことが必要です。成果をあげているのは、民間が立ち上がり、事業を推進している地域ばかりです。

逆にいえば、民間が「そんな損することなんか、わざわざやってられないよ」、「やはりリスクは行政に負ってもらわなくては」などと言い出して、地元での事業開発に取り組むことを諦めたら、再生することは基本的にないとも言えます。

とあり、まさにこれまで何度か産地展示会で見て来た姿である。

最初の推進剤として多少の補助金・助成金はあっても良いと思うが、それなしでは動けなくなるというのでは本末転倒というほかない。
産地企業の中には下請け製造加工業から脱却して自社ブランド化に成功した企業もある。
しかしそういう企業は補助金・助成金のみに頼ってはおらず、資金調達も含めて自社リスクをとっている。

そこを是正しないと、地方振興・産地振興なんて今のままの仕組みでは、あと100年続けたって効果は出ない。
筆者が知るだけでもかれこれ20年間続けてもほとんど効果がないままである。

行政や団体の意識変革も必要だが、地方・産地側の意識改革も必要ではないだろうか。

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