変質しつつあるユニクロのヒット商品
2015年1月6日 未分類 0
ユニクロのヒット商品が昨年から変質しつつあるように感じる。
昨年秋口から話題になったのが、メンズのウールブレンドケーブルクルーネックセーターである。
女性に大人気となり、SサイズやMサイズが品切れとなった。
大人気!ユニクロのメンズ「ケーブルニット」を着る女子が急増中
http://matome.naver.jp/odai/2141386156666143201
1月6日現在のオンラインストアでは白と紺の2色だけが残っている。
白はXXL以上の大きいサイズのみ、紺はM~4XLサイズまでが残っている。
グレー、赤、黒などの他色があったがこれらは完売している。
素材は40%ポリエステル,30%ナイロン,25%羊毛,5%カシミヤであり、正直に言えば5%のカシミヤなんて入っていても入っていなくてもほとんど同じ程度の分量である。
羊毛の価格は昨年秋から低下に転じたが、それまでこの4年間は上昇の一途をたどってきた。
そのため、昨年秋冬に発売された多くのブランドのセーター類はウールの含有率が低まっているか、ウールの含有率を高めて価格を上げているかのどちらかであった。
ライトオンの店頭を見ると、メンズのウールセーター類は型数が2013秋冬と比べると激減しており、ウールの含有率がどうのこうのではなく、セーター類自体を減らすという政策を打ち出したのではないだろうか。
ユニクロのこの商品は合繊が70%ということになるが、その理由として羊毛価格の高騰があると思うのだが、もう一つはセーター自体を軽量化するために合繊を増やしたとも考えられる。
また秋口から着用できるようにウールの含有率をあえて減らしたとも考えられなくもない。
価格は2990円。
正月に関西に帰省した某ブランドのMD氏もこのセーターを着用していた。
その時彼が着用していたのはグレーで、ほかに白も持っているそうだが、白を買うために都内のユニクロを何店舗か回ったそうだ。
勉強不足の筆者は知らなかったのだが、これに先駆けて、レディース向けのアンクル丈柄パンツが完売していたそうである。
チェック柄とストライプ柄なのだが、特にグリーンのチェック柄が一番人気らしい。
そして、今度は今春の新作にもその人気が波及している。
今度はチルデンニットが人気!ユニクロの快進撃が止まらない
http://matome.naver.jp/odai/2141911315659149001
とある。
チルデンニットはチルデンセーター、クリケットセーターとも呼ばれ、Vネックのセーターだが、首回りや袖口、場合によっては裾にボディの色とは異なる色のラインが入るセーターのことである。
今回人気となって早くも完売しつつあるのはレディース商品である。
また同じく、今春の新作で秋物のケーブルニットとまったく同じデザインのメンズセーターが、素材と展開色バリエーションを変更して発売されている。
コットンカシミヤケーブルクルーネックセーター2990円である。
これの黄色と黒がオンラインストアでは早くも完売に近い状態となっている。
両色ともLサイズが残るのみで、Sサイズ・Mサイズともに完売しているから女性客も相当多く買っているのではないかと推測される。
XXLサイズ以上のビッグサイズも完売しているのでそちらは男性客ではないかと考えられる。
今回の一連のヒット騒動を見ていると、これまでのユニクロの大ヒット商品とはいささか様相が異なるように感じる。
これまでのユニクロの大ヒット商品はフリースしかりヒートテック肌着しかり、サラファイン(元シルキードライ)しかり、ウルトラライトダウンしかり、いずれも機能性と圧倒的な低価格が武器となった。
そして販売枚数は他のアパレルブランドとはけた違いの数百万枚規模だった。
98年前後に大ヒットしたフリースは、何と言っても当時1900円という圧倒的な安さであり、ファッション性はそれほど高くなかった。
実は当時、筆者もあまりの人気ぶりにためしに1枚購入してみたのだが、Mサイズの割には身幅が大きすぎ、お世辞にもカッコイイとは言えない商品だと感じ、すぐさま知人にタダであげてしまった。
当時、ユニクロのフリースに対抗するために百貨店ブランドやSPAブランドもこぞってフリースジャケットを発売していたが、シルエットは圧倒的にそちらの方がきれいだった。
それ以降のヒット商品もファッション性で評価されている部分は少ないと筆者は感じる。
しかし、今回のアンクル丈パンツ、メンズケーブルセーターから始まるヒット商品の流れは、ファッション性で評価されている側面が大きいのではないか。
また、発表されていないのでわからないが製造枚数もそれほど多くはないだろう。
せいぜい10万枚程度ではないか。もしかしたらそれを下回っているのかもしれない。
これまでのユニクロなら完売アイテムを追加生産する場合があったが、今回はそれをしていない。
今回の一連のアイテムは価格はそれほど安くない。
もちろん、高価格ではないが他ブランドを圧倒的に下回るほどの低価格ではない。
むしろ似たようなデザインでもっと安い商品が他ブランドにはあるのではないだろうか。
1、ファッション性で評価されている
2、製造枚数はそれほど多くなく、追加生産しない
3、他ブランドと比べてそれほど価格が安いわけではない
この3点において、ユニクロの商品は変わりつつあるのではないかと感じられる。
品切れ続出という点を指して「機会ロスを起こしているではないか」と揶揄する声もあるが、ファッションアイテムは機会ロスを起こす程度がちょうど良いのではないかと思う。
それが渇望感を生み、次の新作アイテムを購入させる動機づけになる。
反対に常に欠品させない状態が続くと、消費者は購入する意欲が減退し、値下げを待つようになる。
そうすると評価されているのはファッション性やブランド力ではなく、低価格のみということになり、それが今までのユニクロだったといえるのではないか。
筆者は昨年からの一連の流れを見ていて、ユニクロはようやくファッションブランドになりつつあるのではないかと感じられる。
これまでは実用面一辺倒だったが、実用面のみではいずれ他ブランドに取って代わられる。
別にトップバリュだって、PBIだって構わない。いくらでも消費者は乗り換えてしまう。
実用面・価格面のみが強調されがちだったユニクロにファッション性までが加味されつつあるこの状況は、これまで「ユニクロはファッションじゃないよ」と負け惜しみを口にしていたアパレル各社の勝ち目はなくなってしまう。相当の危機的状況が訪れつつあると感じるのだが、果たして他のアパレル各社はそう捉えているのだろうか。
のんびりと構えている場合ではないと思うのだが。