
ルーズシルエットが国内市場から今後消えることは無いだろうという話
2023年11月9日 トレンド 0
2020年のコロナ禍前後だったと記憶しているが、マス向けの某ファッションインフルエンサーが「ビッグサイズ、ルーズシルエットのマストレンドがそろそろ終わってもおかしくないのにまだ終わる気配がない」という主旨の発言をしておられたことがあった。
たしかに、ルーズシルエット・ビッグサイズは先端層では2015年頃から、マス層では2017年頃から広まっていて、今年で先端層からすれば早8年、マス層でさえ6年が経過しようとしている。
人間なんて飽きる動物だから、だいたい何のブームでも3年、長くても5年くらいで沈静化する。短ければ1年くらいで終わってしまう。それを考えてみると、6~8年も続いているというのは長すぎるといえる。
もう「マストレンド」というよりは「定着化」ではないかと感じる。
2015年までと2015年以前ではトレンドの在り方が全く異なってしまったように感じる。
2015年まで続いた大ヒットアイテムといえば、スキニージーンズ、スキニーパンツで、2008年から15年まで都心で観察しているとほとんどの人がスキニーないしはスキニーっぽいスリムパンツを穿いていた。稀にレギュラーストレート系だろうか。スラックスでさえも細身が圧倒的だった。ワイドパンツやバギーパンツなどの太目パンツをわざわざ穿いている人はよほどの信念を持った人に限られていたといえる。
別にスキニーに限らず、その前の美脚ブーツカットしかり、ビンテージ系ジーンズしかり、で各時代に数年おきに大ヒットトレンドが生まれて、マス層の着用傾向は一辺倒だった。
そして、前の時代のトレンド商品はほぼ市場から姿を消すというのがお決まりだった。ちょうどバブル期のルーズシルエットが跡形もなく消えたように。
しかし、2015年以降のビッグサイズ・ルーズシルエット復活はそれ以前とは異なっており、前の時代のスキニーパンツが市場からも消えなかったし、着用者も消えなかった。
ビッグサイズのトップスにスキニー、スリムパンツを合わせるカジュアルコーディネイトは人口に膾炙していたし、風俗店のスカウトマンはなぜか制服のようにスキニーを穿いていた。地方のマイルドヤンキー層にはいまだにスキニーを愛用している者も多い。
業界メディアや経済メディアでは「スキニーは死んだ」とか書かれていたが、実際は全然死んでおらず、最大のマスブランドであるユニクロでもジーユーでも何なら無印良品でもスキニーが投入されなかった時期は無い。
ということは一定数量は必ず売れていたということになる。売れていない物を6年間も8年間も継続するほどマスブランドの経営者は寛容ではない。
2010年以降の市場を見ていて「永遠に復活しないトレンドは無い」と感じるので、いずれ、2000年代を席捲したあの上下ともにピチピチピタピタのシルエットも復活するだろうと思う。
だからといって、現在のルーズシルエット・オーバーサイズが以前のように消滅するかというとそれはしないのではないかと思う。ファッションの1分野として現在のスキニーパンツ同様に残り続けるのではないかと思う。
先日、たまたまこんなYouTubeショートを見てしまった。本当にたまたま流れてきた。
興味のある人は短い動画なのでご覧いただきたい。
めんどくさい人のために手短にまとめると
1、日本のファッションはジャンルがたくさんあってどれがマストレンドなのかわかりにくい
2、日本のファッションは明るい色を取り入れる人が多い
という2点になっている。
動画でも語られているが韓国はその逆だということである。
1、一つのファッショントレンドに一極集中する
2、落ち着いた色(動画中でこう言っている)で固めている
ということで、日本の場合、黒・白・グレー・紺あたりを基本色に定めつつ、売れるかどうかは別にして必ずアクセントカラーを最低1色は差し込む。赤・黄色・オレンジ・ピンク・ブルーなどである。意外とそのアクセントカラー品番が好評に売り切れることも多いから、必然的衣明るいカラーを取り入れた服装をしている人はそれなりにいるということになる。恐らく韓国にはアクセントカラーをわざわざ用意するブランドは少ないということなのだろう。
で、この人は日韓を頻繁に行き来しているようだから、この感想は正しいのだろうと思う。
日本のファッションジャンルの多様化は今後も変わることがないと考えられるので、タイトシルエットブームが復活したとしても現在のルーズシルエットが無くなることはなく、1つのジャンルとして残り続けると考えられる。
また、この6年間くらい着用してみた感想でいうと
1、体が圧倒的に楽。動作が圧倒的に楽
2、試着なしでネット通販で購入する際に圧倒的に便利
という2点のメリットが凄まじく大きいと感じられる。
そのため、タイトシルエットが大復活しても当方は上下ともにピチピチには戻らず、ルーズシルエットは愛用し続けるだろう。
「モテたい」意欲がみなぎっていた若い頃ならともかく、最早この年齢になって「モテ」のために窮屈なピチピチ服を着るくらいなら、モテなくても構わないので快適なルーズシルエットを着用した方が一億倍マシである。
そして何度も書いているように試着なしでネット通販で買うなら「小さすぎて着られない」という危険性がほとんどゼロに近いルーズシルエットはめちゃくちゃ便利である。
当方だけではなく、この2つの利点を手放したくないという40代・50代・60代は結構多いと推測できるので、その点から言ってもルーズシルエットが市場から再び消滅するということは極めて考えにくい。
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