「奇抜すぎるファッションショー」と「素人の変態」との見分けがつかないという話
2023年9月25日 デザイナー 5
実需対応するために、国内の衣料品業者は期近対応を年々強化しているが、元々の取引サイクルでいうと、9月・10月は来年春夏物の提案時期である。
そんなわけで国際的にも欧米ではファッションウィークが開催されているわけだが、国際的メゾンブランドや国際的デザイナーズブランドが行うファッションショーは年々、一般人では理解に苦しむような提案が増えており、たびたびウェブ上、SNS上で揶揄嘲笑されている。
当方もたまにその手の画像をウェブで拝見するが、到底理解不可能である。逆にファッションショー専門の記者や編集者はこれらを見て、「よく理解できている(できている風を装っているだけなのかもしれない)なあ」と感心するばかりである。
そんな中、つい先日、ニューヨークファッションウィークで変なカッコウをした一般人がモデルのようにランウェイを歩いて警備員に取り押さえられるまで観客はだれもそれが偽物モデルだったと気が付かなかったという珍事が発生した。
NYファッション・ウィークのランウェイに“偽物のモデル”が闖入!「違和感が全くなかった」と話題に|Pen Online (pen-online.jp)
パリ、ミラノ、ロンドンとならぶ4大コレクションの一つ、NYファッション・ウィークのランウェイに、シャワー・キャップに海パン、ビニール・ポンチョという出で立ちの男性モデルが登場した。実はニセ者だったため、すぐに警備員に取り押さえられたが、それまで気づいた様子は観客側には全くなかった。近年ショーでしばしば目にする奇抜すぎるファッションが生んだ事件だと、ネットで話題になっている。
とのことである。
個人的には、毎シーズン必ず一定数珍妙なスタイルが提案され続けていれば、こういう珍事が起きても全く不思議ではないと思った。
まとめサイトに画像が掲載されているので引用したい。
【悲報】世界的ファッションショーに変態衣装が乱入 ランウェイを歩くも偽物だと気付かれず (画像あり) : 暇人\(^o^)/速報 – ライブドアブログ (himasoku.com)
どうだろうか?この画像を見て、当方は「ああ、これは気が付かないわ」としみじみ思った。ぶっちゃけ、当方ごときの人間からすれば、毎シーズンこの手の変態ルックは必ずランウェイに出てくるから見分けがつかなくて当たり前だと感じる。
例えば、今年初めに、JWアンダーソンのショーが奇抜すぎて話題になったことがある。
半裸男性が布ロールを手にランウェイを闊歩! JWアンダーソンのショーがネットで話題|Pen Online (pen-online.jp)
画像を引用させていただく。
どうだろうか?今回の闖入者とどう違うのだろうか?当方の目には全く同じに見える。だから、観客が偽物と見分けられなかったことも当たり前だと感じる。
しかし、今回のファッションショーが形式を見るにおいて、一般人よりも業界人向けだと考えられるのだが、業界人の多くも偽物だと見抜けなかったということになる。結局は業界人も「分かったような言動をしている」ものの、実際には奇抜すぎるモデルは理解できていない場合が多いということである。
このJWアンダーソンのパンツ一丁で原反を抱えるスタイルだが、記事では
答えは、「ジョナサン・アンダーソン氏は、白紙状態の一枚の布(布のロール)からすべてが始まるということを表現したかったのです」とのこと。公式コメントではないが、この言葉が理解の手助けになる。
と説明されているが、逆に言えば、こういう説明をされないと他人には理解されないということである。
今回の記事では
偽モデル闖入の様子を収めたビデオがソーシャルメディアに投稿されると、「マジで本物だと思った」「てっきり夏物の新作なんだろうと…」「警備員が出てこなかったら気づかなかった」などのコメントが集まり、多くの人が疑問をもたなかったことが分かった。
その理由が、近年ネットで目にすることが多くなった、ファッションショーでの奇抜すぎるファッションだ。実際のところ、多くのショーではお洒落で着てみたくなるファッションがメイン。しかしネットで拡散した画像や映像の中には、既に人の着るものの域を超えているファッションも多く、一般人に違和感を与えているようだ。
とある。そりゃそうだ。普通の人間にはパンツ一丁の男が原反を抱えているスタイルなんて理解できない。
そして
今回のビデオについたコメントの中には、「偽物って気づくのに時間かかったってことは、実際のモデルはただゴミを着てるってこと」「偽のファッションに気づかなかったことは、こういったショーがどれだけばかげているかを示す完璧な例だ」「ランウェイのファッションって、年々ゴミ化してる」などがあり、近年のファッションショーに批判的な声が相次いだ。
極めつけは「偽モデルのファッションがベストだったかも」というコメントで、奇抜すぎるファッションに対する率直な感想、さらには痛烈な皮肉とも言えそうだ。
と締めくくられている。
前回のブログで「400円のスーパーのワインをラベルを貼り替えてコンテストに出品したら金賞を受賞した」という記事を紹介したが、今回の偽モデル事件はそれと同じだといえる。
ソムリエに「最もまずい」と評価された400円の激安ワインが国際コンクールで金賞を受賞してしまう – GIGAZINE
海パン+透明ビニールポンチョ+シャワーキャップというスタイルは、素人がやると「単なる変態」だが、ランウェイだと変態とは見なされない。そして多くの人には実際のところ変態とランウェイ用衣装の区別はついていない。そういうことである。
今回の偽モデル事件は奇抜すぎるファッションショーの欺瞞を暴くことに一石を投じたといえるのではないかと思う。次回もこういう珍事が起きることを期待したい。
comment
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キムゴンウ より: 2023/09/25(月) 12:26 PM
「次は60年代リゾートをモチープにしたカジュアルがテイストなのかな」
「透け感ある素材の使用は継続だな」
とか思うのでしょうか?
ファッションのセンスのある人は想像力が合っていいよね
昔海外で面接に来ていたガイヤーさんが 呼ばれたのでそのままついて行くと
なんと報道番組のコメンテーターとして呼ばれていた 別のガイヤーさんとまちがって
放送にのっちゃったというのがありましたね
国際紛争かなにかで
「私ははっきりしたことはいえません」と当の害やーさんがコメントすると
「専門家でもわからないということですね」
と好意的に解釈されてました
そういえば もはや古典ではあるが「ピカソ」というのがあるけど
実際つくったデザイナーはどうなのってってやつです
良ければ何かの機会にお聞きください -
細野 より: 2023/09/25(月) 9:21 PM
ファションショーの服は意味が分からないものばかりで理解し難いと思っていたのは自分だけではなかったことに安心しました。でも、いくらファッションショーだからといってパンツ一丁はマズいのではないか。外に出たらお巡りさんに捕まると思うし、芸術ファッションの世界でも法律の枠を超えるのは許されないと思う。
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BOCONON より: 2023/09/25(月) 10:19 PM
最早昔懐かしい『知の欺瞞』騒動/ソーカル事件そっくりな話で笑いが止まりませんねw
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そこら辺の人 より: 2023/10/03(火) 10:25 PM
コレクションの席に座ったことありますが、ショーの途中にあの服変だねーとか言える訳ないですよね笑
しかも大声で笑
終わった後に「あんまりだったね。何あの透明な服、着れる訳ないじゃん」とか言うんですよ
自分が出来ないことを人に求めるのはちょっとどうかと思いますよ。想像力がないのは自分達だと自覚しましょう
警備員氏の見る目が確かだった!w
いや、デザイナーが警備員にとっ捕まえろって言ったんかな。しかし、違和感皆無w