「物」ではなく「ラベル」で評価する人が多いという話
2023年9月22日 商品比較 2
衣料品に限らず「ブランドのラベル」というのは、かなり重要である。
当方も含めてほとんどの人が「ブランドのラベル」を見て物の善し悪しを判断している。そういう「ラベル」を作って刷り込ませることがブランド作りの最重要項目の1つだろうと思うし、「ラベル」に苦しめられているブランドは「ラベル無し」の状態で商品を判断してもらいたいとも思うだろう。
かつて、落ち目になったブランドを取材したことが何度もある。共通していたのが「物は良いと思うんですけどね、ブランド名で判断されてしまう」という状態だった。
自分達で作り上げた「ラベル」に逆に苦しめられるということも起きるわけである。
原宿で開催中の「匿名宝飾店」 正体は「4℃」、約4000人が来店 | 繊研新聞 (senken.co.jp)
9月8日から原宿に出現していた正体不明の期間限定店「匿名宝飾店」のブランド名は「4℃」だと、エフ・ディ・シィ・プロダクツが発表した。同店は、そのユニークなコンセプトがSNSなどを通して話題となり、19日までに約4000人が訪れた。
という報道が先日あった。
この匿名宝飾店については繊研新聞以外にいくつかのメディアが採りあげて報道していた。
4℃というとブランド名の認知度は高く、女性ばかりでなく男性でもブランド名くらいは知っている人が多いだろう。若い男性が意中の女性に贈るプレゼントアクセサリーの定番みたいな認知のされ方である。
毎年、クリスマス前にはツイッター上で「4℃ガー」という謎のネガキャンが行われる。もらえる物は病気以外何でももらっておいたらええやんけ、としか当方は思わないのだが、イシキタカイ系を高度に拗らせた女性たちが謎のネガキャンを行う。まあ、クリスマス前の風物詩のようになっている。
今回の匿名化はそういう「ブランドのラベル」をはがして再評価をしてもらおうという意図で行われた。
ネットの登場やSNSの台頭でブランドへの意見が可視化され、イメージが固定化されやすくなったことに触れ、「ジュエリーそのものを見て、大切にしている物作りを知って頂き、次の100年に向けて新たなるチャレンジとしてこの機会を作りたいと考えた」と述べた。
とある。
結果としてはかなり良かったようで、
これまでの来場者アンケートでは83%が「4℃のイメージが変わった」、78%が「正体は意外だった」と回答。「匿名であることで初めて手に取ることができた」などの声も寄せられたとしている。
とのことで、4℃というブランド名を毛嫌いしていたような人もいただろうが、商品自体を「ラベル」無しで見てみると悪くはないという評価に至っているようだ。まあ、人間の認知なんてそんなもんである。
食の分野でもこんな報道があった。
ソムリエに「最もまずい」と評価された400円の激安ワインが国際コンクールで金賞を受賞してしまう – GIGAZINE
まあ、見出しだけで内容がお分かりいただけるだろう。
ベルギーの公共放送局「RTBF」が「有名ソムリエに最悪と評価された激安ワイン」のラベルを貼り替えて国際コンクールに出品する実験を行った結果、高評価を得て金賞を獲得してしまう事態が発生しました。
という内容である。
ラベル無しの効き酒がさっぱり当たらないというのはこれまでも散々テレビ番組などで流されてきたが、国際コンクールでもそれは変わらないということだろう。
人間の味覚の細かい嗜好は個人によって異なるわけだから、A君にとって美味しい物をB君も同じように美味しいと感じるとは限らないという話である。
もう20何年前のことになるが、親戚の食事会でホテルニューオータニのコース料理を食べたことがあったが、2万円だか3万円だかしたフレンチのコースだったが、びっくりするくらい不味かった。それが本場の味だったのかもしれないが、これに何万円も払う価値を当方は感じなかった。3000円くらいならOKだが。
ただ、ニューオータニという「ブランドのラベル」、フレンチのコースという「ブランドのラベル」が一定数の評価を得ていたということだろう。
これから伸びて行きたいブランドはこの「ラベル」を形成するという作業が必要になり、4℃のように一部の消費者間であまり良くないイメージがこびりついてしまったブランドは「ラベル」を隠して商品そのものを判断してもらうという作業が必要ということになる。
今回の4℃の手法は例えば、サマンサタバサあたりも真似をしてみてはどうだろうか。やたらと知名度だけは高い割に何となくあまり良くないイメージがこびりついてしまっている点はそっくりである。さらにいえばサマンサタバサは売上高も低迷している。
商品ラインナップを見ると、あのエビちゃん時代のかわいいイメージとはかけ離れたシックな商品もある。だが、エビちゃん時代のイメージが消費者にこびりついているので、それを手に取ってもらいにくい、探してもらいにくいという状態に陥っている。
そっくりそのまま匿名カバン店なんてやってしまうと単なる猿真似だが、ブランドのラベル無しに商品を見てもらうという根本の考え方は取り入れてみてはどうだろうか。
「ラベル」を作ったり剝がしたりするのが「ブランド化」「ブランディング」という作業の1つの要素だろう。何ともめんどくさいことだが、めんどくさいことをしないと物は売れない。
それにしても人間の評価基準なんて「ラベル」一つで容易に変わってしまうということを改めて認識しておくことが企業側には必要不可欠だろう。
comment
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南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/09/22(金) 1:14 PM
キム氏>4℃の商品は値段なりの価値はある
あと付け的分析ですが、どんなスタイルでも
使えるデザインだった印象がありますしかもネーム代が少ない。したがって
・誰でも買える
・誰でも使える
・何歳になっても使える
(したがって、その分イメージも廉価w)となる訳、なのかなぁ?
ネームに弱そうな日本人ですが
実用度にシビアなのも日本人ですちょっとしたプレゼント等に使えて
でも、長く使えるから
これだけ持続的・安定的に続いているのでしょうそれにしても対象年齢が
20歳~50代というのもすごいブランドだよな・・・そして全階層が対象だから
堅実な価格設定とメンテ体制があれば
そら長続きしますわな
YAHOOニュースでこのブランドのシークレットショップの事を知りました。
コメント欄を見ると、付き合っていた彼氏にここのジュエリーを買ってもらってうれしかった。その彼氏が今の旦那です。今も大切に使っています。このパターンのコメントを散見しました。
おそらくは大量に4℃を大量に消費した世代でしょうね。良い思い出がある。
一方でサマンサの場合、こういうストーリが仮にあっても、今もサマンサのバッグを使っています、という甘い記憶が作られないように思います。
もう一つは4℃の商品は値段なりの価値はあると言うことじゃないでしょうか。
サマンサのバッグが値段なりに価値があるのか、藤四郎の私にはわかるはずも無いですが。