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南充浩 オフィシャルブログ

無印良品というマスブランドで男女兼用服が売れなかったのは当たり前という話

2022年10月17日 売り場探訪 4

無印良品を展開する良品計画の22年8月期決算が発表され、ようやく衣料品の不振が各メディアで報じられるようになった。

無印良品の衣料品不振の原因は

1、ここ2年間ほとんど商品企画が変わらない(新型の投入がない)

2、地味な色目に終始し、アクセントカラーがない

3,陳列にも新鮮味がない

という3つの要素が考えられるが、もう一つ、4つ目の要素もある。

男女兼用服を増やしすぎたこと

である。

これについても、良品計画側から公式コメントを発表しようやく各メディアが報じ始めた。

 

当方は昨年11月の時点で無印良品の男女兼用服の多さが問題だとこのブログで指摘していた。

無印良品の衣料品の苦戦は「男女兼用服」の強化が理由ではないか? | 南充浩 オフィシャルブログ (minamimitsuhiro.info) (2021年11月8日投稿)

 

直近の各メディアではこの通りである。

無印良品が衣服で苦戦、社長が全面テコ入れ「ジェンダーレスが押し付けになっていた」 | Business Insider Japan

無印、衣料もっと「良品」に 男女兼用不発で開発刷新: 日本経済新聞 (nikkei.com)

である。

ビジネスインサイダーからの引用だが、昨年の良品計画は

無印良品は2021年から「ジェンダーレスファッション」に注力し、2022年には衣服の半分を男女兼用にすると報道されていた(日経MJ・2021年7月2日)。

と指摘している。

この「半分を男女兼用にする」という施策がいかに愚かであることか。

 

理由は考えてもらえばすぐにわかるはずだが、マスの男女平均では体格差が大きい。身長だとだいたい15センチ前後異なる。

身長がそれだけ違うということは横幅も異なることになる。

となると、女性に合わせたサイズ感では男性は横幅の問題で確実に着られないということになる。となると、女性にダボダボの服を着てもらうということになる。

じゃあ単純に男性向けに普通のサイズ感にすれば良いという話しでもない。この時期の無印良品はサイズピッチを極端に削っていたので「M~Lサイズ」みたいなアバウトなサイズ表記となっていた。こうなると男性にもダボダボのサイズ感とならざるを得ない。

平均身長が15センチ大きい男性にとってダボダボの服ということは、女性にとっては「もっとダボダボの服」ということになり、そこまでダボダボの服を好む女性が一体どれほど存在するのか。普通に考えても分かることである。

 

また各部分の「丈」も問題になる。

平均身長が15センチ違うということは当然、手脚の長さも大きく異なるということになる。袖丈、裾丈を男性にとってフルレングスにするのであれば、女性にとっては袖丈・裾丈ともに長すぎるということに必然的になる。スーツやフォーマルや高級ブランドなら「お直し」で対応すれば良いが、低価格品では「お直し」は好まれない傾向にあるからそれに対応するとなると、袖丈と裾丈は男性にとっては「短め」にならざるを得ない。長くて9分丈、女性に合わせるなら8分丈~7分丈となるだろう。

となると、男性にとっては奇妙な服にならざるを得ない。

ダボダボで袖丈と裾丈が短めというヘンチクリンな服が出来上がる。これは無印良品というベーシックカジュアルの顧客が求める服では到底ないだろう。

あと、着丈は必然的に長めになる。理由は女性のジャストサイズに着丈を合わせると男性には短めとなり、男性はヘソ出しルックとなってしまうが、ヘソ出し服なんて着たい男性はほとんどいないから、着丈を男性に合わせると女性にとっては長めにならざるを得ない。

これほどヘンチクリンな服を誰が好んで買うというのだろうか。

それが実験的に数型ある程度ならまだしも「半数に増やす」というのは現実の服という物を顧みない天下の愚策といえる。

 

ジェンダーフリーを唱える者を幾人も見てきたが、その者たちでさえ、ほとんどの者は男性は男性服を、女性は女性服を着ている。共通服を着ているとするなら、女性がダボダボのストリートカジュアル服を着ている程度である。

日経新聞の記事では

 

岡崎取締役は「ファッション業界にとってはキャッチーな取り組みだったが、消費者の多くが望んでいない商品だった」と反省する。

 

とあるが、この岡崎取締役、ひいては良品計画の経営陣の認識が大きくズレていると言わざるを得ない。「ジェンダーフリーという思想」がキャッチ―であるだけで、男女兼用服がキャッチ―であるわけではないから、良品計画の経営陣の認識が根本から明後日の方角を向いているとしか言いようがない。平たく言うと「アホちゃうか」である。

 

ここからは当方の邪推だが、良品計画の経営陣は「ジェンダーフリーという建前」に乗っかって、実はサイズピッチを削ることによってSKUの圧縮を狙っていたのではないかと思う。もちろん、建前を本当に信じていたのだろうが、サイズピッチを減らすことによって在庫量を圧倒的に縮小できるばかりでなく、1型当たりの生産数量を増やせることから生産コストの削減も可能になり、建前を唱えつつ在庫を圧縮し生産コストの削減という「一石三鳥」を狙っていたのではないだろうか。

通常の衣服だと男女でデザインが同じだとしてもレディースでS、M、L、メンズでS、M、Lと通常は6サイズを用意する必要がある。サイズピッチを細かくすればするほど展開サイズは増える。消費者にとっては利便性は高まるが、SサイズやXS、XXSサイズ、XLとかXXL(2L)、XXXL(3L)などの極端に小さいサイズ・大きいサイズは売れ残り在庫が多数発生しやすい。

となると、男女兼用のダボダボ服にしてS~M、M~L程度のサイズ分けにするなら、小さすぎる・大きすぎるサイズで売れ残り在庫は発生しない。(理論上)

またこの2サイズに集約するので、1型当たりの生産数量は飛躍的に増えることとなり、1枚当たりの生産コストは削減しやすくなる。

サイズピッチの削減を押し進め、生産コストを削減するためには「ジェンダーフリーという建前」は絶好の隠れ蓑になると考えたのではないだろうか。

 

もちろん「男女兼用服」という需要もゼロではないだろう。しかし、それは到底マスの需要ではない。無印良品という「マスに売らねばならないブランド」が押し進めれば売上高が稼げないのは自明の理である。まさに「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負け無し」である。

 

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/10/17(月) 2:35 PM

    アパレルよりもカン違い度が高い無印の人たちが
    なにを考えていたのか、手に取るようにわかります

    ・俺たち無印マンは時代の先をゆく人間だ
    ・俺たちは無印だから客を選ぶ資格がある
    ・俺たちの客は俺たちと同じく時代の先をゆく人だけだ

    そして

    ・時代はジェンダレス、性別なんてふよーだ
    ・しかもサイズ減らせてうっしっし

    最後に

    ・俺たちはカコイイ事してうっしっし
    ・客もカコイイ物着てうっしっし
    ・ついでに会社も儲かってうっしっし

    という流れだったに違いありません

    んで、南サンが試着してネタにしてジエンド
    「無印は将軍様コスプレ専用服だ!ww」

    これも既出ですが、客が服を買うのは、値段が安くて
    ソコソコ見栄えがしてソコソコ今ふうだからです

    作り手に共感してるからではありません

    にしても無印はネーム代を取らないのが
    売りだったのに、今ではまるでぎゃくなのがね・・・

    晩年の堤さんが心配されていた通りになってしまいました

    ・無印は反体制商品だからよその逆をやるのが仕事
    ・異国情緒を価格に上乗せした海外展開はダメ
    ・無印がのれん代を上乗せするのは自己矛盾

    10年ぐらい前にご指摘されていた事ですが、
    今となってはぜんぶ当たっている

    商品はもちろんだけど、広告も、売り込みたい思想wwも
    最大公約数的なんだよな・・・

    ついでにサイズ展開も最大公約数にして
    さらに売れなくなりましたwww

    今回の失態は、反省しろ~とかそういうレベルではなくて
    くるくるパ~とかそういうレベルです

  • BOCONON より: 2022/10/18(火) 5:33 AM

    ジェンダーレス服のトレンドはこの辺から始まったのでしょう。
            ↓
    https://news.yahoo.co.jp/byline/miyatarie/20210717-00247351

    https://www.ellegirl.jp/fashion/celeb-fashion/a39555710/94th-academy-awards-genderless-dress-22-0328/

    ユニクロも今期もいちおうジェンダーレスなコーディネイトを推してはいるようではある。
            ↓
    https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/kw/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3/look/

    しかし(以前もコメントしたような気がするけど)見れば分かるように,ジェンダーレスな,あるいはビッグ・シルエットのファッションというのは「男らしさ女らしさにとらわれる必要はない。カッコ良ければ ALL OK」と言うことであって,無印良品その他の「どう見てもパジャマw」な服や「北の将軍様かよw」的な「男も女も着られるけれど別にカッコ良くない,どころかダサい」服を着ることを言うのではない。当たり前ですね。
    まあ「小中学生の一見男の子か女の子かわかりにくい体操着・スクール水着」あるいは「女子がスカートかパンツか選べる高校の制服」とかは存外好評なようですが,ああいうのは無論 “ファッション” の話ではないから無印良品がその波に乗っかるようなものではない。これも当たり前ですね。

    で,結局無印良品の経営側も「男女兼用服は “自己満” に過ぎなかった」と認めているからあんまり追い打ちをかけるのも気の毒な気もするけれど,南さんも上の人のコメントも至極尤もな話でもある。つまり「失敗を恐れたら何もできない」「やってみなはれ。やってみな分かりまへんで」といったような立派な心掛けの話ではなく,「そもそもなんでそんな “自己満” な企画が通っちゃったんだ? 誰かとめる奴ぁいなかったのか」「 あんまりまともな感覚持った人間が経営陣にいないんじゃないか?」というレヴェルだと思わざるを得ない,という話であります。

    男女兼用服に限らず良品企画という会社の問題はたぶんそこにある。最近近所に出来た3コインズの大きめなお店など見ていると一瞬無印郎品のお店か,と錯覚するくらい垢抜けた感じしたりするので,無印の500円ショップもこれから参入してもどうも前途多難である気がしてきたな。

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/10/18(火) 11:54 AM

    そして、くるくるパ~路線にgoサインを出したのが
    コンサル出身の社長というのがね・・・

    南サンがいってた通りになってしまいました

    それも中小アパレルではなく、あの大企業w無印が!

    前の社長さんなんて高卒西友採用組だったし
    その前の社長さんは学生運動やりすぎて就職できない人でした

    こうした訳がわからん人たち(もっといえば西武しか雇わない層)が
    基礎を作って、その果実をちょうウルトラ高学歴高職歴が
    運用しだした瞬間、儲からなくなった・・・

    堤さんはご自分が日本に紹介した欧州のブランドが
    70年代になって最大公約数的な物ばかりになったから
    それに対するアンチテーゼで無印を造ったといってました

    そして今では、わけのわからんヒネリは効いちゃいるけど
    その実薄っぺらい最大公約数的な商品しか作れなくなりましたw

    このまとめが全てだと思います

    男女兼用下着・すなわち・ふんどし~ww

    とか

    男もフィット感すきすき・ユニセックスガードルw

    とかやってほしかったなあ
    将軍様コスプレ服より売れるし話題になりますよ

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/10/21(金) 4:16 PM

    ほいでもって、無印の対処策がリリースされました

    この衣料部門絶不調に対抗するために
    部門の人間の2/3を入れ替えるんですとwww

    企業の中身は20年で入れ替わるとはよくいったもんだ・・・

    むか~し同様に衣料品が絶不調だった頃があったんです

    その頃もスタッフの斬首を繰り返してるだけで
    何の成果も出なかったのにねw

    こらもう、商社経由でテコ入れするか
    西友時代の人に再登場願うかのどちらかでしょうな・・・

    原材料の高騰が続いているので、最終的には
    ポリ化レーヨン化化繊化にどう取り組めるか
    だと思います

    「高密度に打ち込んだコットンパイル」

    とか

    「糸が不均一で風合い豊かなフレンチリネン」

    みたいな手入れがメンドクサイ物は
    今どきのお客さんは誰も望んじゃいねーよ
    ってことです

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