月別: 8月 2017 (1ページ / 2ページ)

「原価率50%」という思想はダイエーやユニクロの延長線上にある

 最近の報道を見ていると、トウキョウベースのブランドコンセプトは「原価率50%」じゃないかと思えてくる。(笑)

ブランドを確立するうえで真っ先に出てくるのは「高原価率」というのはどうなのだろうか。
それはファクトリーブランドや職人系のブランドの立ち位置ではないか。

似たようなブランドコンセプト(笑)にファクトリエがある。
こちらは疑似ファクトリーブランドを目指しているのだから、それはそれで良いのかもしれない。

ところで、国内外の低価格ブランドにやられっぱなしのアパレル業界人はこのブランドコンセプト(笑)に共鳴する人が多いように感じるのだが、実はこの考え方も、グローバル低価格ブランドは置いておいて、ユニクロやかつてのダイエーの思想の延長線上にあるといえる。

創業当時のダイエーやそれ以降の大手スーパーマーケット(GMS)の本来の思想は「良い物を買いやすい値段で提供する」である。97年ごろから飛躍的に売上高を拡大したユニクロも同じ考え方である。

バブル崩壊、リーマンショックで痛手を被った百貨店や百貨店と一体となったアパレル各社は、売上高低迷によって、原価率を切り下げ、商品の品質を下げている。
百貨店を販路とする某上場アパレル(あまり話題にならないマイナー企業)は2010年以降、秋冬のセーターの原価率を18%まで切り下げている。それでいて販売価格は据え置きか少し上げている。

で、これに対するアンチテーゼがトウキョウベースであり、ファクトリエであるといえる。

店頭販売価格こそ違うが、根本的な考え方はユニクロや創業当時のダイエーと同じで「良い物を買いやすい値段で提供する」である。

かつてのような高額素材をふんだんに使い、それを高額で販売するきらびやかなファッション業界が再現できるようなことは、今後ありえないと個人的には見ている。
ラグジュアリーブランドへのむやみなアホみたいな崇拝も2008年以降鳴りを潜めてしまったから、日本も欧米と同じく分相応な消費をする成熟社会になったといえる。

さて、こういう流れを見ていると面白い。
今日のアパログで「小売りの輪」という理論が紹介されている。

http://www.apalog.com/kitamura/archive/706

 マルコム・P・マクネアによる「小売の輪」理論(1957年)は、グランドセオリーとして引用される機会は多くはないが、ときおり私の頭をかすめる重要なフレームワークだ。

 追随業者が次々に参入し、価格競争がより激しくなる。

 価格だけでは武器にならなくなり、価格以外の付加価値(品揃え、設備やサービス)を増した競争が展開される。時間とともに人件費増加、規模の拡大によって本部費などの経費が増加、結果的に薄利多売から高粗利路線へと転換せざるを得なくなる。

 革新的な小売業者が既存のマーケットにローコスト、ローマージンの価格競争で市場参入しシェアを奪う。(価格が上がってきたところで、別の新しい革新的小売業者が誕生し、価格競争で市場参入してシェアを奪う。)

 以上のサイクルが、どこを始点にするわけでもなく終点にするわけでもなく、延々と回り続けるというのが小売の輪だ。

とまとめられている。

「良い物を安く」という思想がダイエーをはじめとするGMSを生み、同じ思想のユニクロが衣料品分野で参入し、GMSのシェアを奪った。今後、ユニクロがワークマンやドン・キホーテの自社企画衣料品にシェアをいくらか蚕食される事態が起きるだろう。

さらにその後、そのころには当方は死んでいるかもしれないが、ワークマンやドン・キホーテも新規参入業者に侵食されているかもしれない。

百貨店ブランドや大手セレクトショップへのアンチテーゼとしてトウキョウベースやファクトリエがあると見ているが、これとていずれ、さらなる新規参入業者に侵食されるか駆逐されるかしてしまうだろう。

例えば、先ごろ、ニトリがアパレル業界への進出を発表した。
具体策は何も発表されておらず、時期的にもいつ頃になるのかもわからないが、これも実現すれば、小売りの輪の一つで、新規参入業者が価格競争を仕掛ける事例になるだろう。

そのとき、ユニクロやジーユーがどれだけ侵食されるのか、もしくは他の低価格ブランドが駆逐されてしまうのかはわからないが、消費者が年間に買い物できる総額は決まっているのだから、他社からシェアが幾分か奪われるのは当然といえる。

そう考えると、高価格を維持し続けているラグジュアリーブランドの努力というものは、好き嫌いは置いておいてすさまじいものがあるといえる。

ブランドビジネスの本質は

「1円の物を1万円で売る」

ことにあり、それが支持されるのは、雰囲気でありブランドの歴史であり、店舗内装の見事さであり、ショッパーのかっこよさであり、販売員の接客応対であり、修理体制の整備によってである。

決して原価率の高さではない。

小売りの輪の中で勝ち続けることも容易ではないし、ラグジュアリーブランドへと昇ることも容易ではない。そういう厳しい世界の中で、日々もがき苦しんでいるのが我々だということになる。

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昇給率から考えてもバブル期や高度経済成長期のような消費が復活することはない

 我が国のGDPが年率4%増のペースで推移しており、景気は拡大傾向が続いているといえる。
一方、多くの人は景気拡大の実感がないと伝えられるが、これは2005年ごろの景気拡大でも同じことが言われていた。

実際に我が身を振り返ってみてどうかと問われると、たしかにあまり実感はない。
別に当方の手取りは増えていない。
しかし、何となく世間の雰囲気を見ていると一服感は感じる。強い不況感は感じない。

好況にもかかわらず、高額衣料品の消費は伸びないが、それは当たり前ではないかと思う。
これからこのままGDPが伸び続けてもバブル期までのような爆発的な消費は回復しないだろう。

それには単に「モノ余り現象」や「コト消費」などの要因以外に、給与水準が大きく増えないからといいう要因もある。

先日、たまたま父親の大卒初任給の話題になった。
当方の父親は1944年生まれだが、1月生まれなので学年は1943年生まれと同じになる。
浪人も留年もせずに大学卒業後、サラリーマンとなってなんやかんやあって今に至る。

働き始めたのは1966年4月ということになり、父親の記憶では初任給は2万円くらいだったという。

大卒初任給の年次統計だと1968年からしか掲載されていないが、68年は3万円強となっている。

http://nenji-toukei.com/n/kiji/10021/%E5%A4%A7%E5%8D%92%E5%88%9D%E4%BB%BB%E7%B5%A6

別のインターネットの書き込みでは66年ごろは2万5000円だったとあるが、確証はない。

父親の話も含めて総合すると66年の大卒初任給の相場は1万8000~2万5000円くらいだったと考えられる。
ちょうど今の初任給の11分の1くらいだ。

一方、当方が働きだしたのが93年か94年だったが、このときの平均は19万円強である。
27年くらいでおよそ10倍に初任給は増えているということになる。
もちろん物価もそれにスライドしているが、物価は単純に10倍になったわけではない。
商品によっては5倍くらいに抑えられているものもあるし、10倍以上のものもある。

そこから現在まで24年間くらいが経過しているが、大卒初任給平均額はほとんど増えていない。
せいぜい1万円か2万円増えた程度で、1・05倍程度であり、ほぼ同じ期間だった66年から93年の間の10倍増とは比べ物にならない。

年次統計を見ていると、68年以降はだいたい毎年5000~1万円ずつくらい初任給が上がっている。
5000円というと今から見るとそれほど高いとは思わないが、30000円の給与が35000円になるのだから、最低でも1・2倍以上に増えているといえる。

初任給が高くなれば、この当時の年功序列賃金だと先輩社員の給与はそれよりも増えているということである。
そうでなければ、入社2年目や3年目よりも新卒の方が給料が高くなってしまい、年功序列の賃金体系は維持できなくなってしまうからだ。

父親の記憶によると、初任給は2万円だったものの、翌年以降は月額1万円とか2万円のペースで昇給していったという。
初任給は2万円だが、翌年からは月給が3万円に増えるということで、実に50%増である。
1・5倍に増えるということになる。

今の初任給水準に合わせると、初任給は20万円だが、翌年からは月給が30万円に増えるというのと同じである。で、その次の年もまた1万円増えたとすると、入社二年で給料は倍増しているということになる。

父親の記憶が正しければ、初任給20万円で、翌々年の月給は40万円になっているのと同じだ。

これだけ短期間に劇的に昇給すればおのずと消費は活発になる。
自動車だろうが住宅だろうがローンを組むことを恐れない。ローンの良しあしは置いておいて、そういう気持ちになっても不思議ではない。

さらにいえば、このころの半期に一度のボーナスは3ヶ月とか5ヶ月分の支給があったらしい。

ましてや、いくら高額だとはいえ、自動車や住宅に比べてケタ違いに安い洋服なんて飛ぶように売れて当然だろう。

初任給20万円とすると、7月に60万円、12月に100万円の支給があったことになる。

そりゃ金遣いが荒くても当然だろう。

このころは、既製服やオシャレ着、カジュアルウェアなんていうものが出始めで、みんな持っていなかったからなおさら飛ぶように売れる。

それまでまったく所有していない新製品が出れば、飛ぶように売れるというのは、家電もiPhoneもこのころの洋服も同じである。

そもそも、60年代には既製服もオシャレ着もカジュアルウェアもほとんど存在していなかった。
60年代前半に大学生だった父親に尋ねてみても、よほどのオシャレ野郎以外は、今のクールビズみたいなシャツとスラックスで通学していたそうだ。

ジーンズはまだ一般カジュアルとして普及していないし、そもそも今のようなカジュアルウェアというカテゴリーさえない。

そういうものが発売され、それがアメリカの文化だと喧伝されれば、飛ぶように売れるのは当たり前だ。価格が高くても毎年50%も給料が増え続けるなら買うことに躊躇はなくなる。

先日、トウキョウベースが初任給を25万円に引き上げるという発表があった。

老人世代の大量定年に加えて、若者人口の減少から人手不足となっていて、就職率は圧倒的に高くなっている。優秀な人材を捕まえるためにも今後企業は初任給を上げていくだろう。

じゃあ、60年代後半とか70年代みたいな旺盛な消費が復活するかというとそれはないだろう。

就職してからの昇給率はその当時ほど高くないからだ。
もちろん、初任給が上がった分だけ多くの会社は昇給させるだろう。
しかし、その昇給率は当方の父親が経験したような50%増とか倍増ではありえない。

それはみなさんが己自身の昇給を振り返ってみればおのずと明らかになるだろう。

一部の例外を除いてそんな昇給を果たした人はいないはずだ。

また、初任給が増えたといっても当時のような増え方ではない。

となると、「少々高い服でもドンドン買うで~」なんて人は今後もほとんど現れない。
マイルドなインフレが起こり、物価上昇にスライドして収入が増えることはあっても劇的に増加はしない。初任給だって、20年後に10倍増になっているなんてことはないだろう。

となると、少しだけ財布のヒモは緩むことはあっても、70年代の高度経済成長期や80年代のバブル期のような「高い服」がバンバン売れるということは考えられない。

結局、「景気回復の実感がない」とか「高額衣料品が売れない」とか嘆いている企業幹部やマスゴミマスコミ各社の経営陣というのは、当方の父親と同年配とは言わないまでも、バブル期の旺盛な消費を身をもって体験している世代だといえる。

だから、少々の景気回復では物足りないし、あの当時の熱狂が忘れられないのだろうと思う。

そしてその当時の感覚を残したままで、種々の施策を打ってみたところで、バブル崩壊以後しか知らない世代(47歳の当方も含む)の消費動向を忠実にキャッチなんてできない。

それが旧大手アパレルや百貨店各社、ひいてはマスゴミマスコミ各社が苦戦している最大の要因だろう。

バブル期みたいな旺盛な消費を理想として考えているならアホそのものである。

高度経済成長期を身をもって体感した世代の多くは定年を迎えており、彼らが実権を握っている企業はほとんどない。しかし、バブル体感組はまだ定年を迎えておらず、多くの企業の上層部にいる。
今の消費者のニーズに的確に対応できるようになるのは、このバブル体感組が定年を迎えて以降のことになるのではないかと思う。

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オレたちバブル入行組 (文春文庫)
池井戸 潤
文藝春秋
2007-12-06


オレたち花のバブル組 (文春文庫)
池井戸 潤
文藝春秋
2010-12-03


ロスジェネの逆襲 (文春文庫)
池井戸 潤
文藝春秋
2015-09-02


アパレルブランドの「小売店向け展示会」は意味がなくなりつつある

 関西視点で気候のことを話すと、お盆のころに猛暑がやわらいだ。
安心していたら、お盆明けから再び猛暑となった。
26日の土曜の明け方に雷雨があり涼しかったのだが、また昨日から猛暑が復活している。

本当に「猛暑死ね」としか言いようがない。

Yahoo!の週間天気予報によると、猛暑のピークは今日でお終いのようで、この予報が的中してくれることを切実に祈っている。

これまで我慢して毎年夏の猛暑の中を移動してきたが、今年はついにこらえ性がなくなって、必要最小限の移動しかせずに過ごした。

また猛暑のピークが過ぎたらあちこち覗いてみようと思う。

そんなわけで今夏の各社の動きはあまりよくわからない。(笑)
しかし、6月ごろまでの傾向でいうなら、各ブランドの小売店向け展示会というのは、芳しくない受注状況が続いている。

これは大小問わずにそういう傾向がもう数年以上続いているし、単独展示会・自社展示会だけではなく、合同展示会も同じような状況だといえる。

いつも展示会にお邪魔するほか、ときどき雑談に立ち寄る「スー・ヒライ」「スー・スー・スー」の2ブランドをご夫婦で展開している平井達也さんも「小売店1店舗あたりの受注数は例外店を除いて年々減っています」という。
Mサイズ1枚、Lサイズ1枚みたいな受注が多いのだそうだ。

名前は伏せるがもう20年以上続いている中規模カジュアルアパレルも年々、展示会での受注枚数は減っていて、商品のデザイン傾向を変えようが、新ブランドを投入しようがほとんど効果がない。ついにはこらえ切れずに新ブランドをやめてしまった。

これには理由があって、一部の好調店を除いて、小売店は総じて苦戦傾向にある。苦戦傾向にある小売店は過剰在庫を抱えていたり、売上高が激減していたりして仕入れ金額を抑えざるを得ない。

また、「売る」ことに対して自信を喪失していて、「数量を売る自信がない」とか「何が売れるかわからない」という心理状態も作用していると考えられる。

だから、無難な物・実績のある物・ネームバリューのある物(あると思われる物)だけを発注する。
それがさらに同質化を生み、売れ行きを鈍らせるという悪循環スパイラルに陥っている。

なぜなら、それらをほとんどの店が仕入れるのだから、必然的に店同士の品揃えは同質化する。これで同質化しない方がおかしい。

それを少しでも緩和させるために考え出された狡すっからい手段が「別注品」である。
自社・自店だけ正規品と少し異なる色柄やデザインの商品を納品してもらうやり方である。

猫も杓子もラベンハムのキルティングジャケットの別注、リーとチャンピオンのTシャツの別注を販売している理由はこれだ。

しかし、素人から見ると、その別注品の差異なんていうのはかなり微細で、あまり見分けがつかないことも多いし、ロゴマークを少し大きめにプリントしました程度なら、どちらで買っても同じことだとしか思えない。

先日、今ちょっとした話題となっているオールユアーズの人と久しぶりにお会いした。

キャンプファイヤーが主催するクラウドファンディングで、ファッション部門で史上(歴史は短いが)最高額をたたき出した新進アパレル企業である。

「毎日着てしまう」ジャケパン CFで1000万円超受注
https://senken.co.jp/posts/allyours-170828

どうでも良いことだが、この見出しの「CF」というのはクラウドファンディングのCFだろうか?それともキャンプファイヤーのCFだろうか?
もしかして、それに引っ掛けたキャンプファイヤーという名称設定なのだろうか?

それはさておき。
明日が締め切りだが、現時点(8月29日)で1500万円超にまで受注金額が膨れ上がっている。

久しぶりにお会いしたのは、オールユアーズの企画を一手に担当している原康人さんで、素材や製造に詳しいだけでなく、商品企画や販売方法のプランニングまで幅広く能力を発揮できるので、個人的には「業界の若き逸材」だと見ている。

その原さんが、「僕らは近々、小売店向けの展示会を廃止しようと思っているんです」という。
その理由を尋ねると、「実際に展示会を開催しても受注数量はトータルで10枚~20枚程度なんです。Mサイズ1枚だけとかそういう受注はざらにありますから」とのことだ。

これまで多くのブランドで耳にしていた状況と同じで、廃止することは納得である。

じゃあ、その代わりにどうするのか?と尋ねてみた。

すると「今回、クラウドファンディングでこれだけの受注があると、逆に小売店からかなりまとまった数量の発注がありました。それこそ1店舗で10枚とか20枚はざらです。じゃあ、これからはクラウドファンディング主体で商品を発表すれば効率的ではないかと考えています。クラウドファンディングでバカ売れしたと聞けば、小売店はまとまった枚数を発注してくれますから」という答えが返ってきた。

なるほど理にかなっている。そして「ビビっている」小売店からすればクラウドファンディングで売れれば「実績」が見えるわけだから、安心して仕入れることができるということになる。

展示会での受注精度を上げたり、受注枚数を増やそうと努力しても、多くの小売店がビビッていて、迷走しているのだから、効果を上げることは極めて難しい。
そのメーカー、ブランド側の努力はほとんど無駄に終わるだろう。

それよりも新しい売り方を模索した方が良いのではないか。

クラウドファンディングで実績を見せるというのも一つのやり方だろうし、例えば、ウェブ通販で売りまくるとか直営店舗で売りまくるとか、そういうことも一つの方法ではないかと思う。

展示会にさらに多くの小売店を呼ぶとか、展示会での発注枚数を増やすためにアトラクションを企画するとか、そういう方向の努力は今の状況では実を結ばない可能性が極めて高い。

そういえば、その昔、某GFF(岐阜ファッションフェア)というイベントは、バイヤーを「長良川の鵜飼い+ホテルでの宴会」に招待して効果を出そうとしていたが、徒労に終わっていた。
まあ、効果が出ると考えていたことが不思議でならないのだが。

まるで、「ジーンズが売れないから、生地の重さを0・5オンス上げてみました」とか「トレーナーの着丈を1センチ長くしてみました」みたいな意味のない改変と同じといえる。

従来型の「小売店向け展示会」にこだわり続けるメーカー、アパレルブランドは今後さらに厳しい状況に追い込まれていくと考えられる。

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イケアの売上高が日本で減少傾向にあるのは当たり前ではないか

 洋服は毎月何枚か趣味と実益を兼ねて買っているが、家具類は買ったことがない。
そういえば、もうかれこれ10年近く家具は買っていない。

もともと家具にはまったく興味がないし、今使っている物が壊れたら買い替えるだけで、買い足しやら買い直しは毛頭する気がない。

逆に、引っ越しなどの必要に迫られてもいないのに、頻繁に家具店に行く人の気持ちはまったくわからないし、家具を頻繁に買う人の気持ちもわからない。

そんな当方からするとニトリだ、イケアだ、と騒ぐ人々が理解できない。
ニトリは相変わらず出店ラッシュが続いておりますます巨大化する兆しを見せているが、イケアは最近ほとんど出店を聞かず、噂すらあまり聞こえてこなくなっている。

そんなことを考えていたら、東洋経済オンラインにイケア不振の記事が掲載された。

意外と不調?イケア・ジャパンの巻き返し策
8年ぶり大幅値下げでニトリ・無印を追う
http://toyokeizai.net/articles/-/186013

2016年度の売上高は前年よりも減少して、767億円におわったという。

華やかな説明会の陰で、イケア・ジャパンの業績は冴えない。親会社を含めて非上場のため開示されている情報は少ないが、決算公告によると売上成長は2014年度を境に鈍化。2016年度の売上高は767億円で、同社が2020年までの目標に掲げる「1500億円」には程遠い。

2006年に日本1号店を千葉県船橋市にオープンしてから10年以上が経つが、店舗数は熊本の小型店1店を含めても9店のみ。2018年度の出店計画も1店で、目標とする2020年までの全国14店体制達成には黄色信号が灯る。

売り上げと出店ペースが伸び悩む中、2013年度に87億円あった営業利益も、2016年度には5分の1未満の16億円まで激減した。営業利益率は2.2%で、イケアグループ全体の12.8%から大きく見劣りする。

とのことで、記事中で使用されているグラフによると、2016年度の売上高は明らかに2015年度よりも低下して、2014年度とほぼ同じであることがわかる。

また営業利益と純利益は、2015年度、2016年度はかなり低い。
グラフの目盛りから判断すると2015年度の営業利益は10億円程度、純利益も3億円程度だろう。
また2016年度の純利益も10億円程度だと推測される。

この原因を記事ではニトリに押されているためだと説明するが、それはまったくその通りではないか。

日本人の中にはイケアを知らない人も多数いるのではないか。
逆にいうとイケアを知っていたり、イケアに対して興味のある消費者はもう取り込み切ったのではないか。

家具にあまり興味のない人間からすると、イケアがあろうとなかろうとどうでもよい。あまり自分の生活に変化はない。

中には「イケアの家具はデザインが良い」という人もいるが、当方からすると、ニトリの家具だってそこそこデザインは良いし、他の店もそれなりのデザインの商品がそろっているので、デザインの優越性なんてほとんど理解できない。

おそらく、洋服に興味のない人もそういう感じなのだろうと思う。

洋服で「ユニクロのデザインは」とか「イタリア物は」と言っている人のほとんどは、実は「物」ではなくて「ブランド名」だけで判断しているにすぎないが、商品の見た目の差異なんてかなり小さくなっていて、本当に興味のある人か、本当の目利きでないと判別できない。

家具もそんな感じになっているように当方からは見える。

家具も洋服も、多くの消費者は「見た目がそこそこ、品質もそこそこで値段は安ければ良い」という志向だから、見た目と品質がそこそこで低価格のニトリは売れる。イケアも同じ範疇だが、ニトリがあればイケアは要らない。

あと、個人的にイケアを使いたくないと思うのは、買ってきた家具を組み立てるのがめんどくさいからだ。それならニトリやその他家具店で最初から組み立ててある商品を選ぶ。

洋服も売れにくくなっているが、家具は本来ならもっと売るのが難しい。

それこそ洋服なら1枚や2枚余計に買っても収納場所を確保するのは容易だ。
しかし、家具はそうはいかない。
椅子が安かったから1脚余計に買ってきたなんてことはできない。
通りがかったらソファーが安かったから衝動買いしたなんてことはちょっとできない。

そうすると、買い替え需要や買い足し需要は数年に1度あるかないかだから、洋服よりも日々販売することは難しいのではないかと思ってしまう。

洋服なら毎月複数ブランドを買うこともできるが、家具はそういうわけにもいかない。

1ブランドで買いそろえたら、最低でも数年間は他ブランドを買い足す必要がなくなる。

洋服の場合は複数ブランドが並立できるが、家具の場合はそれは難しいのではないかと思う。
ニトリとイケアが拮抗して並立するという事態は極めて起こりにくく、どちらかのシェアが大きくなれば、もう片方は小さいシェアを獲得して存続するしかない。

ニトリが圧倒的になれば、イケアの売り上げ規模が今以上に成長することはほぼ不可能に近いと個人的には見ている。

だからイケアが国内で伸び悩んでいることは何の不思議もない。

それにしてもニトリのおかげでグローバルインテリアブランドの本格上陸が阻止されているというのは、洋服でいえばユニクロ、ジーユーのおかげでグローバル低価格ブランドの本格上陸が阻止されているというのに似ていて興味深い。

運営側の不手際もあるがトップショップ、オールドネイビーは撤退、フォーエバー21は伸び悩んでいる。

わけのわからんグローバルブランドにわが物顔をされるよりは、ユニクロやニトリといった自国企業が君臨してくれている方が好ましいといえる。

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いつだって、可笑しいほど誰もが誰かパクりパクられているのさ♪

 最近、ブランド間での商品の同質化が激しいといわれている。
それはどうして起きるのか。

先日、こんなことがあった。
某靴工場の人と会う用事があった。

雑談をしていると、「某セレクトショップが、某老舗靴ブランドの商品を持ってきて『これと同じのを作ってくれ』と依頼してきた」そうだ。

これだけを聞くと、某セレクトショップはなんと悪辣なのだろうと憤りそうになるが、話には続きがあって、

「でもその老舗ブランドも別の靴を作る際には、そのセレクトショップの別の商品を持ってきて『これと同じのを作ってくれ』と依頼してきた」とのことだから、どっちもどっちである。

こうやって業界はお互いパクリ合っているから、必然的に商品も同質化する。

これは靴のことだが、洋服や雑貨もほぼ同じ構図だ。

お互いがお互いの売れ筋商品を持ってきて「これと同じものを作ってくれ」と依頼するのである。
これで同質化しない方がおかしい。

もともと、ファッション業界はそういうパクリ愛パクリ合いで成り立っており、それで各ブランドが規模を拡大してきたことは事実である。

商標(ブランド名)をわざと類似させることもあり、業界の若手の中にはいまだに「コム・デ・ギャルソン」と「コムサ・デ・モード」の区別がついていない人もいる。

15年くらい前にファッション専門学校を卒業した学生が、就活でファイブフォックスの面接を受けて「ぼく、昔からコム・デ・ギャルソンが大好きだったんです」と言ったことがある。
もちろんその学生は不合格に終わった。

それはさておき。

しかし、オッサン世代として20年くらい前を思い起こせば、各ブランドはお互いにパクリ合いをしていたが、丸パクリすることはほとんどなく、商品にはそれぞれのブランドっぽいアレンジが施されていた。

トレンドの情報源もたいがいがパリコレだとかミラノコレだとかニューヨークコレに限定されるので、どうしても同じような商品になる。
今では、ほとんどどのブランドも見分けのつかないトレンド商品が並んでいるが、20年くらい前はブランドごとにそのトレンド商品のアレンジも違っていた。

うちはフェミニンなテイストだから、少しフリルを付け加えましたとか、うちはカジュアルテイストなのでロゴプリントを施してみました、とかそういう具合にパクリ商品もトレンド商品もブランドごとにアレンジされていたので、「きわめて同質化している」ようには見えなかった。

ところが、各ブランドがデザイナーや企画担当者を「コスト」とみなしてリストラを進めた結果、そういう「アレンジ」を施せる人が社内にいなくなった。
代わりに登用された若手の仕事は、他社の売れ筋の丸パクるだけだし、外注デザイナーに頼めば、その外注デザイナーは何社もの企画を受けているから、必然的にそのブランド間での商品デザインは似てしまう。

丸パクリ感がにわかに強まったのは、インターネットとデジタルカメラが普及し始めた2000年ごろからだと記憶している。

すでに2002年ごろ、児島の某洗い加工場へ取材に伺ったところ、そこの社長が「東京のナントカってブランドの企画のおねえちゃんが、『こんなふうに加工してください』ってデジカメの写真をメール添付して送ってきよった」と言って、その画像を見せてくれたことがある。

メールに添付されていたのは、当時人気だったジーンズカジュアルブランドの商品写真だった。

このころからすでにこういう「お手軽商品企画」は横行していたのである。

今現在の風潮はその延長線上にあるだけのことだ。

そして、今、低価格ブランドが、手段は別として商品の企画力・デザイン力を高めている。丸パクリ合いばかりしている既存アパレル各社がそれに対抗できるとは到底思えない。

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三越伊勢丹とカルチュアコンビニエンスクラブの提携は何が目的だったのか?
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ファクトリエが国内工場を立て直せない最大の理由
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/nd2f9baabd416?creator_urlname=minami_mitsuhiro

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愛し愛されて生きるのさ
小沢健二
EMIミュージック・ジャパン
1994-07-20


LIFE
小沢健二
EMIミュージック・ジャパン
1994-08-31


愛し愛されて生きるのさ
transit general office inc.
2014-03-19




中途半端なアパレルはワークマンとドン・キホーテに食い散らかされる

 メディアはもとより、その折々のトレンドに流されやすいアパレル企業経営者は、今、ユニクロとゾゾタウンと百貨店くらいしか注目していないように感じられる。

しかし、ことカジュアル分野でいえば、ワークマンとドン・キホーテが既存アパレルの牙城を脅かすダークホースになると見ている。もしかしたら、「高機能・低価格」という評価軸に限定すれば、この両者はユニクロの牙城も侵食できるのではないだろうか。

以前に、ワークマンの防水透湿ジャケット「イージス」をユニクロのブロックテックパーカと比較してみた。
発表されているスペックだけで見ると、ワークマンの「イージス」の圧勝だった。そして低価格でもイージスの圧勝である。

残念ながらというか、こちらの勉強不足で、いまだにイージスの現物が確認できていないのだが、着用してみてシルエットがおかしくなければ、もうブロックテックパーカを買う必要はなく、これからはイージスのみを買うことになる。

ワークマンには、探せばほかにもこの手の商品は山ほどあるのではないかと思う。

先日、ドン・キホーテの決算発表があった。増収増益だが、その中で「時計・ファッション用品」の売上高が2・8%増の1584億円にまで増えた。

しかし、この中には高単価のラグジュアリーブランドの商品も多数含まれているため、1584億円がまるまる通常価格のファッション用品の売上高ではない。

この分野の中で、ドン・キホーテのプライベートブランド(PB)である「アクティブギア」と「レストレーション」の2ブランドが含まれる。前者がスポーツウェアで後者はカジュアルである。
もちろん、スポーツウェアといってもアスレジャー寄りなのでカジュアルとして使えるアイテムも多数ある。

中でも「レストレーション」は売上高100億円に到達したということで、次は300億円まで拡大させる計画が発表されている。

ちなみにこの「レストレーション」の売上高の方が、ジーンズメイト(売上高91・5億円)よりも大きくなっているというのが現実だ。

https://senken.co.jp/posts/donki-hd-170818

この2PB強化のニュースは様々な媒体で取り上げられたが、実際に商品写真が掲載されているものは少なかった。
そういう当方もドン・キホーテを利用することは年間でほとんどないから実際にその売り場を見ていない。どのような商品なのか皆目わからないのに感想を述べることはできないので、いくつかニュースを見ていたら商品画像が掲載されているものがあったのでご紹介しつつ、画像を少し引用したい。

http://fashion-j.com/news/2017/05/donki-fashion/

0531donk2

画像からだけでいえば、商品の「見た目」はそれほど悪くないと思う。
とくにスポーツの「アクティブギア」はジーユースポーツよりもデザイン的には良いのではないかとも思う。

カジュアルの「レストレーション」も少し安物っぽさがあるが、デザインはそれほど悪いとは思わない。これよりも変なデザインの商品は珍しくない。

0531donk3
0531donk5

あとは値段が安ければそれなりに売れるだろうと思う。
これで値段が高ければ売れる見込みはゼロだが、ユニクロ並みかそれより少し安い程度で抑えれば、それなりに売れるだろう。300億円の達成は難しくないだろう。

一昔前までのスーパーマーケットに並んでいた低価格カジュアルは商品の見た目が圧倒的に劣っていたが、同価格帯の2017年のドン・キホーテの商品はそこまで見た目は劣っていない。

その理由はここで報道されていた。

https://www.wwdjapan.com/454216

PB開発の責任者としてプロジェクトを率いるのは、ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)出身で、UA内で初めて本格的なSPA業態として「グリーンレーベルリラクシング(GREEN LABEL RERAXING)」を立ち上げから手掛けた、小田切正一さんです。

50歳になるのを機に独立され、ブランド開発やマーケティングなどを業容として活動されていたところ、大原(孝治ドンキホーテホールディングス)社長兼CEOから「ドンキでセレクトショップを作りたいので協力してほしい」とラブコールを受けて事業に参画。今はドンキホーテホールディングス・リテール・マネジメント取締役兼ドン・キホーテSPA開発本部本部長に就かれています。

とのことで、個人的にはこの小田切氏とはまったく面識がないのでどんな個性と能力の持ち主なのかはわからない。
しかし、出身母体で長く要職に就いていたということは、仮に本人に商品デザインや商品製造の能力がなかったとしても、人脈やら背景やらブレーンを持っているはずで、ドン・キホーテのPBにそれがふんだんに使われていることは間違いない。

というか、それがなければ、ドン・キホーテが小田切氏をスカウトする理由はない。

グリーンレーベルリラクシングの商品企画のノウハウが投入されているから、マシな商品デザインに仕上がっている。

実はこれはドン・キホーテだけの特殊事例ではなく、2005年以降、スーパーマーケットの衣料品も含めた低価格ブランドの商品デザインがマシになったのは、すべて同じ理由である。

この小田切氏のような人たちがあちこちにいて、その人たちにスーパーマーケットも低価格ブランドも商品企画を依頼しているからだ。

かつての一流ブランドに属していた企画担当やデザイナーが独立して(企業側からリストラされて)こういう企画請負会社を数多く設立している。
彼らは彼らで食わねばならないから、低価格ブランドやスーパー向けの商品企画だって条件さえ合えば引き受ける。

かくして、かつての大手アパレルと低価格ブランドのデザイン差異は限りなくゼロに近づいたというわけだ。

同じようなデザインでそこそこの品質が担保されているなら、よほどの変人マニアでない限りは安い方で買う。

これが低価格ブランド隆盛の一因である。

さて、ラグジュアリーブランドやその横並びの高価格ブランドは別として、かつて百貨店や専門店を席捲した「中価格帯」といわれるようなブランドは、今後ますます苦しくなる。

見た目も商品の品質も低価格ブランドとさほど変わらなくなっているからだ。
それでいていまだに価格差がある。変人マニアではない大多数の人は必ず安い方で買う。

この現実を直視できないなら、この手のブランドはますます凋落する。
いずれ、ワークマンとドン・キホーテに大きく売上高を削り取られることになる。
ユニクロだってもう「高機能・低価格」だけではこの2社にある部分では追い越されている。

「ブランド」とは何か?「付加価値」とは何か?を既存アパレルは鼻血も出なくなるほど考えなくてはならない局面に追い込まれている。

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ジーンズとデニムパンツに関する事実誤認のお手本のような記事

 つい最近、トンデモない記事を見てしまった。

おじさんを惑わせる「デニムとジーンズの違い」とは?
http://diamond.jp/articles/-/139366?display=b

結論からいうと、「おじさんを惑わせているのはアンタだ!」ということになる。

この記事の筆者は、ジーンズ=ダサい、デニム=今風でカッコイイ、ということが言いたかったのだろうが、それにしてもいたるところに事実誤認がある。

ファッションなんて個人の主観が入るから数値的な「正解」なんてものはないが、事実誤認はそれとは異なる。こういうことを放置しておくと、工業・ビジネス的な用語の定義までが狂うことになってしまう。

まず、

デニムの語源はフランス語で「ニーム産のサージ(織物)」(serge de Nimes、サージ デ ニームが省略されたもの)の意。一方、ジーンズは「スポーツウエア・作業衣などに広く使われる厚手の綿布」をあらわしています。

とあるが、すでにここで事実誤認がある。

デニムの語源はその通りで、デニムとは生地の名称である。デニムのフランス語読みの「ドゥニーム」がかつてオリゾンティ傘下にあり、現在、ウィゴー傘下にある「ドゥニーム」というジーンズブランドの名称のルーツである。

しかし、後半は全く間違っている。
ジーンズとは、デニム生地で作られた5ポケット型ズボンの総称である。
ジーンズが綿布を指すなんてことは完全なる誤認である。

じゃあ、デニム生地の定義とはなんだろう。

経糸に紺色、緯糸に白い染色しない糸を使って織った綾織生地のことである。
もっというと、経糸の紺色は、糸の中心部分は染めずに芯白の状態になっているのが、本来である。

今では経糸が黒のブラックデニムや、経糸の紺色が芯まで染められた「色落ちしにくいデニム生地」、経糸が色糸のカラーデニムなんていう派生形もある。

一方、同じ商品を指す言葉として、少し古語になってしまった「ジーパン」というのもある。
「太陽にほえろ」でもそんなあだ名の刑事がいた。

この記事の中でもジーパンという言葉が出てくる。

ジーパンは和製英語?で、日本人が作った造語だ。
これは、GI(ジーアイ)パンツの略語だ。
戦後直後に生まれた。

GIとはアメリカ軍人の意味で、戦後直後、アメリカが中古ジーンズを我が国に輸入したときにこの名称が生まれた。

だからジーパンをもしも、英語表記するなら、G-PAN となる。

一方、ジーンズは、JEANSと英語では表記する。
カタカナで書くとジーパンもジーンズも似たような字面で発音も似たようになるが、英語で表記するとまったく異なることがわかる。

JEANSの語源だが、先のドゥニーム生地をイタリアのジェノバから輸出していたということになるらしい。イタリア語ではジェノバはGenoaと表記するが、英語ではイタリア語のGはJに変わることが多いので、JEANSになった。

イタリア語のGIAPPONEが、英語ではJAPANになるのと同じである。

そして、デニム生地で作られたズボンはすべてデニムパンツと呼ぶことができる。

ジーンズとはまったく形がちがうカーゴパンツ(両腿脇にポケットがあるので6ポケットパンツとも呼ばれる)も、一昨年ジーユーが売りに売りまくったガウチョパンツもデニム生地で作られていればデニムパンツと呼ぶこともできる。

デニム生地で作られたズボンの総称がデニムパンツであり、その中で、5ポケット型やそれに類した形状のズボンをジーンズと呼ぶ。そしてジーンズの和製造語がジーパンである。

おじさんにファッションを解説するなら用語を正しく解説すべきであり、異なる自己流の解釈を一般的かのように唱えることは、それこそ「おじさんを惑わせる」行為以外の何物でもない。
こういう手合いがスタイリストを名乗るのはいかがなものか。

さらにこのトンデモ記事では

具体的なブランド名は控えますが、数千円~1万円程度のものではなく、できれば2~3万円程度の「デニム」を1本手に入れてみてください。

と主張するが、もはや意味不明だ。

おそらく、2万~3万円の「デニム」はかっこいい、9000円くらいの「ジーパン」はダサいということが主張したいのだろうと思うが、その手のブランドのステマだろうかと思う。

9000円くらいのエドウインやリーバイスにも現代風にアレンジされた品番がある。それを穿けば良い。
また3990円のユニクロ、3980円の無印良品のジーンズもかなり見た目はグレードアップされていて、それこそ、ファッションに詳しくない人では、穿いていても「ブランドもの」と区別できないレベルに達している。

この記事を書いた人は商品知識が浅すぎる。本当にスタイリストとして様々な商品を見ているのだろうか?

今秋物で入荷したばかりのライトオンのオリジナルブランド「バックナンバー」の6900円ジーンズだってなかなかの見た目になっていて、おそらくこの人では「ブランドもの」と区別することすらできないだろう。

ジレについても書いていたことがあるが、早い話がベストと同じ商品群を指し、それのフランス語がジレだというだけのことで、日本語のチョッキとまったく同じだ。

だから、チョッキ=ベスト=ジレ であり、呼び方が今風だから云々なんてのはアホの寝言でしかない。
そもそも、イキって「ジレ」なんて、底の浅いファッショニスタどもが勝手に雰囲気づくりのために呼び始めただけのことであり、ベストで定着していた一般名称を混乱させたにすぎない。

中にはアホな販売員もいて、「ベストとジレは少し違いますよ」なんて真顔で接客してきたこともあった。コイツハナニヲイッテルンダ・・・・・

この手のアホな人たちはそのうち、「ネクタイとクラヴァットは違いますよ」なんて言い出しそうである。

こういう名称なんて一般の人が詳しく知っている必要はさらさらないが、仮にもファッションを仕事にしていて、スタイリストなんてことをやっているのだったら、名称は正しく認識してもらいたい。もちろん件のジレ販売員もである。そうでなければ、余計な混乱を引き起こすだけのことになり、消費者を惑わすだけの害悪な存在にしかならない。

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クールビズに上着は不要では?

 ファッションにおける「カッコイイ」とか「ダサい」というのは、結構主観的な部分が入るから性質が悪い。
議論はまとまらないし、めんどくさい。

こちらから見たら、それこそ「ダサい」人が集まって「あいつはダサい」なんて言い合っている。
「っ鏡」と言いたくなるが、こういうのが衣料品業界には多い。

で、ことファッションだから一向にまとまる気配もないし、妥協点も合意点も見つからない。

クールビズもその一つだろう。
冷房温度を上げたいなら、「厚着」をしている男性サラリーマンは薄着になるのが当然だと当方は思う。

男性サラリーマンが薄着になるのが嫌なら冷房温度を下げる。

論理的に考えれば、そのどちらかしかない。

しかし、その論争が毎年夏前後にはかまびすしいし、あと100年くらいやり合ったって結論とか妥協点は見つからないだろう。実にめんどくさい。
いっそのこと、全職場でワーキングユニフォームでも導入すればよいと思う。

先日、日経スタイルに堀場製作所社長の意見が記事として掲載された。
これは、先日、東洋経済の記事が指摘されたように、見出しと中身が一致していないと思う。

見出しだけみると、またぞろ反対派の主観丸出しの意見かと思う。

スーツにノータイ? 世界ではあまり見かけませんね
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO20040850W7A810C1000000

しかし、この記事の肝は以下にあるのではないと思う。

「その省エネという精神自体は良いのですが、『それならネクタイを外す前に上着を脱ぐべきではないか』と思います。スーツを着てノーネクタイというのはグローバルではだらしない印象を与える恐れがあります。少なくとも欧州ではビジネスの世界でそのようにネクタイを外している人はあまり見かけません。米国のカリフォルニアでは、上着やネクタイはせず本当のクールビズを実施しています」

「ネクタイを外して、上着は着用しなさいという。やはり日本人というのは、何か教科書的なルールに安心したり、言葉に踊らされるところがあって、実質的な意味を考えるところで弱いと感じますよね」

この意見は賛成だ。

ネクタイの有無は別として、上着を脱ぐのが一番涼しい。
なぜなら、単純に着ているものが一枚減るからだ。
その分通気性も熱の発散性も高まる。

当方はネクタイに関して思い入れはないから、あってもなくてもどっちでも良いが、シャツにネクタイというスタイルで過ごす方が、ノータイで上着を着ているより涼しいことは体験上間違いない。

それにネクタイをしている方が仕事をしている気分になれるという人もいるだろうから、ノータイ上着のスタイルより、シャツネクタイのスタイルの方がクールビズには適している。

また、記事中でも指摘しているように、カリフォルニアのように上着もネクタイも廃止した「本当のクールビズ」というのはもっとも理想的である。

要するに半袖シャツ1枚とかポロシャツ1枚、場合によってはTシャツ1枚で過ごせということだ。

これがもっとも涼しいことは言うまでもない。

今年8月は関東は冷夏だという。猛暑が続く関西にいると何ともうらやましいことだ。
当方は暑さが苦手だから夏という季節はなくなっても別に構わない。
海にも行きたくないし、プールにも行かない。
真夏の昼間に野外で活動することは仕事以外はあり得ない。
休日はなるべく外に出ずに冷房の効いた部屋で過ごしていたい。

中には、「男はやせ我慢しろ」という人もいるが、それはその人だけが勝手にやっててもらいたい。
もはやそれは趣味の世界でしかない。他人の趣味を押し付けられるのは不快でしかない。

ところで以前、クールビズに対して、先ごろ亡くなった人がこんな提案をしていた。

戦前を舞台にした映画などで目にすることがある、半袖開襟シャツスタイルを復活させればよいのではないか。

と。

個人的にはこの意見に賛成である。
カリフォルニアスタイルはラフすぎると感じる日本人は多いだろうし、かといって大多数の男性サラリーマンは猛暑の中でスーツ姿に逆戻りはしたくないだろう。

Tシャツ1枚、ポロシャツ1枚のスタイルよりはキチンと感もある。

このあたりが妥協点ではないのかと思う。

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ジーンズメイトに必要なことはオリジナルジーンズの開発ではない

 経済系のメディアでは一挙手一投足が注目されがちなライザップグループによるアパレル買収だが、正直なところ短期間でのV字回復は難しいと見ている。

ジーンズメイトも何かと話題だが、今のところ、売り場を見ている限りにおいては新方針は具現化されていない。

その一環で、東洋経済オンラインに新しい記事が掲載されたのだが、いろいろな意味で興味深く読んだ。

ジーンズメイト、RIZAP傘下で再生できるか
2人のユニクロ出身者によるジーンズが武器
http://toyokeizai.net/articles/-/184981

1つには、ライザップも手をこまねいているわけではなく、様々な策を講じている点
もう1つは、この記事で紹介されている施策は業績回復にはほとんど効果がないだろうという点
3つ目は、元ユニクロ社員といっても、モノづくり担当は、所詮モノづくり担当に過ぎないという点

である。

大まかにまとめると、ジーンズメイトの回復の切り札として、自社ジーンズブランド「メイト」を開発したとのこと。価格は4900~6900円。

メイトジーンズは裏地のオレンジが映える、独特なデザインが印象的だ。おしりポケットのステッチはmateのMと富士山をイメージ。正面のポケット下には隠しリベットを仕込ませるなど、細部の作りにもこだわった。

とある。

しかし、読んで写真を見た限りではこれを消費者が買いたいと思う決め手はゼロだ。
裏地がオレンジだろうが赤だろうが関係ないし、バックポケットのステッチがあろうとなかろうと関係ない。
それが消費者が「買いたい」と思うポイントではまったくない。

そもそもジーンズメイトが自社企画製品(プライベートブランド)を手掛けるのは初めてではない。
あまり売れておらず、話題にもならなかったがすでにいくつかやっている。

例えば、プレイン、ブルースタンダードなどだ。
またジーンズだけでいえば、ビッグジョンとのコラボ別注品やビッグジョンにOEM生産させたものなども過去にあった。

直截な言い方をするとそれらはいずれも不発だった。

今後、この「メイト」もジーンズだけではなくトータル展開を考えているとのことだが、それならトータルに展開しているブルースタンダードとの棲み分けはどうするのか?

ジーンズメイトの直近の2017年2月期決算は、売上高91億9500万円(対前期比1・2%減)、営業赤字、経常赤字、当期赤字で9期連続赤字を更新した。

その前年も売上高は93億円にとどまっており、すでにローカルチェーン並みの売り上げ規模にまで縮小している。

そんなジーンズメイトが売り上げ回復を目指すのであれば、やることは「商品の単品開発」ではない。
単品の商品で戦局を一変させるには、1年戦争当時のガンダムや、波動砲を装備したヤマト並みの超兵器でなくてはならない。

しかし、今回の「メイト」ブランドのジーンズは、「普通のジーンズ」でしかない。
じゃあ、同じ価格帯のライトオンの「バックナンバー」ジーンズとどう違うの?
グローバルワークやその他の同価格帯ブランドのジーンズとどう違うの?

ということになる。

そしてそれらを押しのけて、「メイト」を選ぶ理由がどこにあるの?

ということになる。

裏地のオレンジとかバックポケットのM字ステッチとか、そんな些末なディテールなどまったく意味はない。

単品で戦局を一変させた例としては、例えばユニクロのフリース、ヒートテックがある。
どちらかというとフリースよりもヒートテックの方がそういう実績にふさわしいと思う。

フリースもいろいろと開発秘話はあるだろうが、買ってみた感想は「安かろう悪かろう」だった。当方にとって低価格以外に魅力はなかった。

ユニクロはフリース大ヒットの反動で既存店が大幅に前年割れする。
そんな中で2度目の大ヒット商品となったのがヒートテックで、寒さが苦にならない当方にとっては無用の長物だが、世の中からは圧倒的な支持を受けた。
初ヒットは一発屋が数多くいることから考えても、まぐれ当たりでできることもあるが、2度目のヒットはそれよりも難しい。

単品での戦局を変えることを望むなら、ヒートテックほどの超兵器でなくてはならない。

単なるジーンズの色違い、ステッチ違いでは戦局を一変させるどころか、戦局に飲み込まれて終わりである。

ジーンズメイトに今、必要なことは、

1、マーチャンダイジングの見直し
2、販促方法の見直し
3、広報・宣伝方法の見直し
4、各店舗の改装・リニューアル

である。単品開発ではない。

文中にもあるように、中高生時代にジーンズメイトを愛用していた学生も、卒業後は利用しなくなるのはなぜか?

それはジーンズメイト各店の内装、店づくり、品揃え、雰囲気が圧倒的に中高生向けだからである。
実際のところ、探せば大人でも着られる商品もあるし、価格の割に品質・デザインの良い商品もあるが、そんなものはすべて帳消しにされるし、そこまで丁寧に見てくれる消費者なんていない。

どうみてもジーンズメイト各店は、中高生向けの店にしか見えない。
そんな中高生向けの店に、「37・5歳がターゲット」というブルースタンダードを突っ込むのだから、売れなくて当然である。

中高生向けの店に、オッサン向けブランドを並べて売れると思っている方がおかしい。

中高生とオッサンが一緒に買い物をするユニクロやジーユーとは、ジーンズメイトの置かれた状況、品揃え、世間のイメージは大きく異なる。同じようなことが再現できるとなぜ考えられるのか不思議でしょうがない。

ジーンズメイトがいずれ規模拡大に転じる局面があるかもしれないが、それは直近のことではなく、数年後以降のことだろう。

反攻の狼煙として、商品開発を掲げる気持ちはわからないではないが、過去にもさんざん失敗した商品開発の総括なしに新たなブランドを立ち上げるのはいかがなものだろうか。

そんな小手先のことではなく、必要なことは根本的な部分の見直しではないか。

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ゾゾタウンと百貨店の比較はまったく意味がない。百貨店が「小売りの王様」なんて化石の認識

 おそらく、ゾゾタウンの株式時価総額が1兆円を越えたことも影響しているのだと思うが、ニュースピックスでも三越伊勢丹の凋落と比較したシリーズ特集が組まれている。

「ゾゾタウンは次世代百貨店」
「ゾゾタウンが百貨店の『王座』奪った日」

などのタイトルの記事がたしか8回に分けて掲載されていた。

もちろんゾゾタウンの好調は特集すべきだが、百貨店との比較はピントがズレているし、それを総力特集してしまう認識もどうかと思う。

まず、驚くのはいまだに百貨店を「小売りの王様」だと思っている人が多いことである。
何をもって彼らは「王様」を選んでいるのか判断基準はわからない。
ステイタス性ならそれなりに今でも残っているから、まあ「王様」と言えなくもない。
中元や歳暮、贈答品を送るときにやっぱりバラの模様の包装紙は効果がある。東京だったらあのタータンチェック柄の包装紙だろうか。
その包装紙のステイタス性はいまだにある。同じアサヒスーパードライの詰め合わせをもらうにしたって、そういう包装紙でもらった方が良いと感じる人は多い。イオンやセブンの包装紙にはそこまでのステイタス性はない。

売り上げ規模でいえば、百貨店の王座なんてとっくの昔に陥落している。

例えば、日本チェーンストア協会によると、スーパーの売上高は2006年に14兆円にも達している。
百貨店が20年前に9兆円弱あった売上高を毎年減らし続けてきているので、2006年当時はすでにスーパーの売上高の足元にも及ばなかったことになる。

すでに売り上げ規模でいえば、2005年あたりに百貨店の王座なんてスーパーに奪われているといえる。

2016年の百貨店の売上高は5兆9780億円しかないが、ドラッグストアチェーン店は6兆4900億円もあり、ドラッグストアの方が百貨店よりも売り上げ規模がはるかに大きくなっており、百貨店が「王様」なんていう認識は化石時代の遺物かと思ってしまう。

そういう観点での議論は無益でしかない。

また、ゾゾタウンを百貨店と比較するのもナンセンスだ。

百貨店の主要な販売物としてはファッション衣料はあるものの、それ以外に食料品もある。
現に食品強化をした百貨店はそれなりに善戦している。地上1階を食品売り場にした大丸東京店がそれを証明している。

他方、ゾゾタウンはどうだろうか。売り物はファッション衣料・用品しかない。
食料品はない。

また百貨店がステイタス性を保ち、富裕層を顧客化できている理由の一つに「外商」がある。
いわゆる富裕層と直接、個別に商品を販売するやり方で、詳細はあまり明かされていない。
一般的に高島屋や松坂屋、三越のような老舗は外商が強いとされていて、新参百貨店やファッション特化した百貨店はあまり外商は強くないとされている。

ゾゾタウンに外商なんていうシステムはない。
ツケ払いはあっても外商はない。

ゾゾタウンが扱っているのは徹頭徹尾衣料品とファッション用品のみである。

となると、ゾゾタウンは百貨店ではなくファッションビルだといえる。

ゾゾタウンの形式も、いわゆるネットの仮想商業施設に各ブランドをテナント出店させ、そこでの売上高の何%かをゾゾタウンへ納めるというもので、これはファッションビルの形式と原則的には同じだ。だからゾゾタウンは「取扱高」という表現で、テナント各店の売上高総額を発表している。
取扱高のうちの何%かがゾゾタウンの収益となるから、純粋なゾゾとしての「売上高」ではない。

さらに、ゾゾタウンの看板の一つにユナイテッドアローズやナノユニバースなどの人気セレクトショップの入店がある。ゾゾタウンが一気に成功した理由の一つにはこういう人気セレクトショップが先駆けて入店したことがある。
しかし、百貨店には例外を除いてセレクトショップは出店しない。

三越・栄店にはセレクトショップは一切出店していない。しかし、三越が運営するファッションビルの「ラシック」にはセレクトショップがひしめいている。
となると、ゾゾタウンは百貨店ではなくファッションビルだ。

一方、ゾゾタウンにはタカキューやジーンズメイトといったベタな低価格チェーン店も出店している。
どこの百貨店にタカキューやジーンズメイトが出店しているのか?
ファッションビルならこういうベタな低価格店も出店できるが、百貨店には出店できない。

この方向から見てもゾゾタウンが百貨店ではなくファッションビルであることがわかる。

だからゾゾタウンを比較すべきは百貨店ではなく、ルミネやアトレ、パルコ、ルクアなどのファッションビルであるべきで、基準が違うものを比較してあーだこーだ言っても何の意味もない。

そして、この手の記事に共通するのが、Jフロントリテイリングのギンザシックスの賞賛である。

一部を除いたラグジュアリーブランドを集めたという狙いは面白いが、実際に賞賛されるほどの売上高があるのかというとそれは疑問だ。
すでに小島健輔さんもブログで、売上高が芳しくないことを指摘しておられる。
オープン後わずか3か月強でその状態なのだから、旧JR大阪三越伊勢丹と同じ推移だといえる。

そして、ギンザシックスとは百貨店形態ではなく、ブランドをテナント入店させるファッションビル形式であり、百貨店が不動産業・デベロッパー業へと大きく舵を切った事例になる。

現状の既存社員・既存役員だけで従来の百貨店事業を立て直せるような状況では、もはや、なくなっているから、良くも悪くも効率しか見ていないジェイフロントがデベロッパー業へと転身するのは、それなりに評価はできるが、全百貨店の再生モデルがあれだというのはおかしいのではないか。
現にギンザシックスもオープン3か月後くらいで失速しているではないか。

なら、全百貨店が全部ルミネとかアトレとかパルコになれば事態は解決するのか。

これらの議論が大手を振ってまかり通り、それをまたアホな経営陣が真に受けるから、さらなる悲劇が生まれるのである。百貨店に限らずアパレルでも。

ニュースピックス編集部に限らず、メディアも評論家も一般大衆も、ファッションといえば百貨店とユニクロとゾゾタウンしか見ていない。
そして、まるで立脚点が違うその3つを比較して語り合っているにすぎない。
これが酒飲み話ならそれはそれで楽しいが、大真面目にやる議論ではない。

個人的には百貨店に対しての共感も同情も利害関係もまるでないが、この手の「酒飲み話」に振り回されることなく、再建したければ工夫を凝らしてもらいたいと思う。

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