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南充浩 オフィシャルブログ

ジーンズメイトに必要なことはオリジナルジーンズの開発ではない

2017年8月21日 企業研究 0

 経済系のメディアでは一挙手一投足が注目されがちなライザップグループによるアパレル買収だが、正直なところ短期間でのV字回復は難しいと見ている。

ジーンズメイトも何かと話題だが、今のところ、売り場を見ている限りにおいては新方針は具現化されていない。

その一環で、東洋経済オンラインに新しい記事が掲載されたのだが、いろいろな意味で興味深く読んだ。

ジーンズメイト、RIZAP傘下で再生できるか
2人のユニクロ出身者によるジーンズが武器
http://toyokeizai.net/articles/-/184981

1つには、ライザップも手をこまねいているわけではなく、様々な策を講じている点
もう1つは、この記事で紹介されている施策は業績回復にはほとんど効果がないだろうという点
3つ目は、元ユニクロ社員といっても、モノづくり担当は、所詮モノづくり担当に過ぎないという点

である。

大まかにまとめると、ジーンズメイトの回復の切り札として、自社ジーンズブランド「メイト」を開発したとのこと。価格は4900~6900円。

メイトジーンズは裏地のオレンジが映える、独特なデザインが印象的だ。おしりポケットのステッチはmateのMと富士山をイメージ。正面のポケット下には隠しリベットを仕込ませるなど、細部の作りにもこだわった。

とある。

しかし、読んで写真を見た限りではこれを消費者が買いたいと思う決め手はゼロだ。
裏地がオレンジだろうが赤だろうが関係ないし、バックポケットのステッチがあろうとなかろうと関係ない。
それが消費者が「買いたい」と思うポイントではまったくない。

そもそもジーンズメイトが自社企画製品(プライベートブランド)を手掛けるのは初めてではない。
あまり売れておらず、話題にもならなかったがすでにいくつかやっている。

例えば、プレイン、ブルースタンダードなどだ。
またジーンズだけでいえば、ビッグジョンとのコラボ別注品やビッグジョンにOEM生産させたものなども過去にあった。

直截な言い方をするとそれらはいずれも不発だった。

今後、この「メイト」もジーンズだけではなくトータル展開を考えているとのことだが、それならトータルに展開しているブルースタンダードとの棲み分けはどうするのか?

ジーンズメイトの直近の2017年2月期決算は、売上高91億9500万円(対前期比1・2%減)、営業赤字、経常赤字、当期赤字で9期連続赤字を更新した。

その前年も売上高は93億円にとどまっており、すでにローカルチェーン並みの売り上げ規模にまで縮小している。

そんなジーンズメイトが売り上げ回復を目指すのであれば、やることは「商品の単品開発」ではない。
単品の商品で戦局を一変させるには、1年戦争当時のガンダムや、波動砲を装備したヤマト並みの超兵器でなくてはならない。

しかし、今回の「メイト」ブランドのジーンズは、「普通のジーンズ」でしかない。
じゃあ、同じ価格帯のライトオンの「バックナンバー」ジーンズとどう違うの?
グローバルワークやその他の同価格帯ブランドのジーンズとどう違うの?

ということになる。

そしてそれらを押しのけて、「メイト」を選ぶ理由がどこにあるの?

ということになる。

裏地のオレンジとかバックポケットのM字ステッチとか、そんな些末なディテールなどまったく意味はない。

単品で戦局を一変させた例としては、例えばユニクロのフリース、ヒートテックがある。
どちらかというとフリースよりもヒートテックの方がそういう実績にふさわしいと思う。

フリースもいろいろと開発秘話はあるだろうが、買ってみた感想は「安かろう悪かろう」だった。当方にとって低価格以外に魅力はなかった。

ユニクロはフリース大ヒットの反動で既存店が大幅に前年割れする。
そんな中で2度目の大ヒット商品となったのがヒートテックで、寒さが苦にならない当方にとっては無用の長物だが、世の中からは圧倒的な支持を受けた。
初ヒットは一発屋が数多くいることから考えても、まぐれ当たりでできることもあるが、2度目のヒットはそれよりも難しい。

単品での戦局を変えることを望むなら、ヒートテックほどの超兵器でなくてはならない。

単なるジーンズの色違い、ステッチ違いでは戦局を一変させるどころか、戦局に飲み込まれて終わりである。

ジーンズメイトに今、必要なことは、

1、マーチャンダイジングの見直し
2、販促方法の見直し
3、広報・宣伝方法の見直し
4、各店舗の改装・リニューアル

である。単品開発ではない。

文中にもあるように、中高生時代にジーンズメイトを愛用していた学生も、卒業後は利用しなくなるのはなぜか?

それはジーンズメイト各店の内装、店づくり、品揃え、雰囲気が圧倒的に中高生向けだからである。
実際のところ、探せば大人でも着られる商品もあるし、価格の割に品質・デザインの良い商品もあるが、そんなものはすべて帳消しにされるし、そこまで丁寧に見てくれる消費者なんていない。

どうみてもジーンズメイト各店は、中高生向けの店にしか見えない。
そんな中高生向けの店に、「37・5歳がターゲット」というブルースタンダードを突っ込むのだから、売れなくて当然である。

中高生向けの店に、オッサン向けブランドを並べて売れると思っている方がおかしい。

中高生とオッサンが一緒に買い物をするユニクロやジーユーとは、ジーンズメイトの置かれた状況、品揃え、世間のイメージは大きく異なる。同じようなことが再現できるとなぜ考えられるのか不思議でしょうがない。

ジーンズメイトがいずれ規模拡大に転じる局面があるかもしれないが、それは直近のことではなく、数年後以降のことだろう。

反攻の狼煙として、商品開発を掲げる気持ちはわからないではないが、過去にもさんざん失敗した商品開発の総括なしに新たなブランドを立ち上げるのはいかがなものだろうか。

そんな小手先のことではなく、必要なことは根本的な部分の見直しではないか。

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