月別: 6月 2017 (1ページ / 3ページ)

フィクションとイリュージョンのファッション専門学校

 「栴檀は双葉より芳し」という言葉がある。
優れた人物は若いころから優れているという意味である。

これと逆の意味の言葉が「大器晩成」である。
もっとも、陳舜臣氏によると「大器晩成」のもともとの意味は、「大器ができるには時間がかかる」という意味ではなく「大器はできにくい」という意味だったという。

まあ、「大器はできにくい」という方が、実情には合っていると思うが。(笑)

今年4月からファッション専門学校で週に1度だけ「計数管理」の授業をしているが、これがなかなか難しい。

売上高、粗利益、営業利益、経常利益、値入率、掛け率、上代、下代などの言葉の意味を説明するだけでも一苦労である。
なぜなら、学生たちにとってこれらの言葉はなじみがないから、言葉を見ただけで拒絶反応・思考停止に陥る。

これが偏差値の高い大学の生徒ならまだ違うのかもしれないが、往々にして偏差値の低い学生が集まる専門学校の場合は、本当に言葉になじませるだけでも工夫が必要になる。

それはさておき。

こういう話をすると、若者批判・学生批判が出ることがあるが、じゃあ自分が19歳のときどうだったかと考えてみると、これらの学生とあまり変わらなかったといえる。

もちろんこれらの言葉になじみはなかったし、興味も持たなかった。
とりあえず教えてくれるから覚えておこうかという程度だった。

しかし、社会人になってそういう言葉に普通に接するようになると、それらの重要性が立ちどころに理解できたし、学生時代にもっと勉強しておけばよかったと後悔した。

だいたい、人間なんてその程度がほとんどである。

栴檀はほとんど存在しない。
この社会は衆愚で凡夫の集まりである。

自分がその立場になって初めて理解する、興味を持つという人間が圧倒的大多数ではないか。

先日、一人の卒業生と再会した。
自分たちで洋服店を起業したいとのことで、いろいろとプランを練っていた。

そこで、彼から質問があり、資金調達についてだった。

資金調達にはさまざまあるが、自分で貯める・家族親族に借りる(もらう)以外だと、金融機関から借りなくてはならない。

そのためには、事業計画書の作成が不可欠だ。

店の完成予想図や洋服のデザイン画だけを見せてカネを貸してくれる人などこの世には存在しない。

売上高・営業利益・経常利益が書き込まれた事業計画書を見せて初めてカネが借りられる。
カネを借りるためには、つじつまの合った事業計画書を作らねばならない。

「何のツテもコネも知名度もないけど、とりあえず初年度売上高は10億円を目指します」みたいな妄想願望垂れ流しの事業計画書では誰もカネを貸してくれない。

で、営業利益とは?経常利益とは?ということを説明したのだが、たぶん、彼は今までで一番熱心に「授業」を聞き、一番理解を深めていた様子だった。

実際に学生の時にはピンとこないが、起業を計画して必要に迫られるとたちどころに飲み込んで理解できる。
人間なんてそんなもんだろう。

まあ、だから「栴檀」の登場を過剰に期待するのではなく、できにくい大器を一つでもできるようにするしかないのだろう。

嫌がられても「計数管理」はデザイン学部・デザイン学科の学生にも専門学校は等しく教えるべきだ。
「金勘定なしでデザインさえやっていれば商品は売れる」なんて陳腐なフィクションを教え込むことは罪に等しい。

また、「卒業と同時にマーチャンダイザーとしての就職を目指す」なんていう詐欺にも等しい看板は取り下げるべきだ。

商品面だけでなく、営業・販売面、生産面、資金面までをトータルに考えるのがマーチャンダイザーであり、そんな高度な知識・経験をたかだかファッション専門学校の何年間かで教えられるはずもない。

企業に就職してそれぞれの部門への理解を深めて初めてマーチャンダイザーになれるのが実態である。

そういう意味では、フィクションとイリュージョンしか教えないファッション専門学校の存在は百害あって一利なしである。
誰か「ファッション専門学校の闇」なんて本でも書いてくれないかな~?

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地域再生の失敗学 (光文社新書)
飯田 泰之
光文社
2016-05-27


あのまち、このまち失敗事例: 「墓標」シリーズ Area Innovation Review Mook
一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス
2016-06-27


地域再生の失敗学 (光文社新書)
飯田 泰之
光文社
2016-04-19


独立系デザイナーズブランドのゴールになるか?

 昨日の書いたことの延長線上なのだが、国内デザイナーズブランドを大手企業が買収することが増えてきた。

これは国内デザイナーにとっては喜ばしいことだと思う。
90年代後半のインディーズデザイナーズブーム以降、デザイナーズブランドにはゴールがなかった。

起業したのは良いけれど、そのあと、どうなったら「上がり」なのかが見えず、多くのデザイナーはエンドレスに活動を続けている。(していた)

当時は、大手アパレルの外注企画という仕事があったが、所詮は外注にすぎず、年間契約400万円程度で何年間か契約するだけのことで、そこからの飛躍はない。

下手をすれば1年で契約は打ち切られるから、自分のブランドが売れていないデザイナーにとっては死活問題となる。

当時、オリゾンティが外注企画ではなく、いくつかそういうブランドを抱え込んだが、売れずに早々に廃止している。

良いか悪いかは別にして、欧米だと、有名メゾン、有名ブランドがデザイナーやプロデューサーにそういう独立系デザイナーを高額な年俸で契約する。(年間400万円程度ではなく)
もちろん、契約は長く続く場合もあれば、数年で終わる場合もある。

しかし、数年で終わったところで、「〇〇ブランド前デザイナー」とか「〇〇ブランド元プロデューサー」という肩書が付いて回るから、それでビッグビジネスが展開できる。

これをゴールといえばいいのか、スタートといえば良いのかわからないが、一つの区切りにはなる。
次の明るい展開が待っている。

90年代後半以降の日本ではこういう事例はほとんどない。

デザイナー自身が経営者となって、ビッグブランドに育てれば良いとは思うが、それをできるデザイナーはほとんど見たことがない。
やっぱりデザイナーというのは多くの場合、デザイナーであり経営者ではない。

ファッション専門学校のデザイン学科やデザイン学部の生徒と接する機会があるが、やっぱり彼らは「クリエイト志向」だし、「物作り志向」だ。
学校もそれを良しとしている。

企業に就職して企業内デザイナーとなるならそれでも良いが、ファッション専門学校が看板にしている「デザイナーズブランドを立ち上げるデザイナー」を目指すなら、金勘定は必須だ。
むしろ金勘定の方が重要である。
金勘定のできる人間をパートナーとするなら話は別だが、多くのデザイナーはそうではないし、デザイナー志望学生もそういう発想はない。

なぜ、専門学校がそれを教えないのかが疑問である。

「夢」だけ語って食っていけるならこの世は天国だが、現実世界にそんな天国は存在しない。

逆にそんな天国を作りたいとも思わないが。

近年だと独力で成功したといえるデザイナーズブランドは、ミナペルホネンくらいだろうか。
日経BP社の「誰がアパレルを殺すのか」では、年商30億円・従業員150人とある。
年商30億円規模のデザイナーズブランドは国内では稀だ。

知名度だけは高い東京コレクション常連ブランドも実際の年商はトップクラスで3億~5億円程度しかなく、その他は年商1億円にも満たないものが多い。

年収5000万円なら大したものだが、年商5000万円ということは、ほとんど利益がないことになる。
そこに材料代、工賃、家賃、人件費、水道光熱費、電話代、備品代すべてが含まれるからだ。

しかし、そのミナペルホネンでさえ、年商30億円に対して従業員150人は多すぎるといわれる。
直営店を複数運営するからこその従業員の多さだろうが、人件費はどうなっているのかまったくの疑問でしかない。

まあ、いずれにせよ、ミナペルホネンに並ぶくらいの年商規模のデザイナーズブランドは国内にはほとんどないということに変わりはない。

そういうデザイナーズブランドに対して、アタッチメントやファセッタズムの大手企業による買収は、喜ばしいゴールが提示されたのではないかと思う。

大手企業に買収され、もしかすれば増資されて今までできなかったような新しい展開をすることができるかもしれない。
ビッグブランドに育って、デザイナー本人は巨額のカネを手にして引退でき、「豊かな老後」を迎えられる可能性も出てくる。

ゴールが見えなくてエンドレスに細々と活動し続けることは、若いうちなら良いかもしれないが、50歳・60歳が見えてきた人間にとっては無間地獄にも等しい拷問だろう。
実際に50歳手前の筆者はそういう心境であり、夢に見るのは、巨額のカネを手に入れて引退して「豊かな老後」を迎えることだけである。まあ、実現しそうにはないが。(笑)

今回の相次ぐ買収が成功するか失敗するかはわからない。
昨日も書いたように、そもそも国内に「高額デザイナーズブランド」への需要は限りなく少ない。
価格的にも商品的にも。

しかし、ある程度の実績が作れれば、これらに続く企業が生まれるだろう。
大手によるブランド買収が独立系デザイナーにとって一つのゴールになりえる可能性がある。
何とも喜ばしいことではないか。

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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25


誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25


国内デザイナーズブランドのビジネス化は本当に難しいと感じる

 「アタッチメント」「ファセッタズム」など最近、いわゆるデザイナーズブランドの買収がパラパラと起きている。
個人的には、デザイナーズブランドにとって企業に買収されるということは、非常に幸運なことではないかと思って見ている。

あ、そういえば「ケイタマルヤマ」もマミーナが展開するようになった。

一方で「アウラ」を展開していたコードナインは経営破綻となった。

国内デザイナーズブランドは、90年代後半からビジネスとして確立できることが非常に難しいと感じる。

売り上げ規模が増えれば何でもよいというわけではないが、売上高が極小のままでは、生活自体が立ち行かない。

「売上高じゃなくて利益だ」という声を聴くことがあるが、利益額が売上高以上になることは絶対にない。
どんなに利益率が高くても100%は越えられない。

例えば、売上高が100万円しかないのに、利益額を500万円にすることは不可能だ。

利益額500万円が欲しければ売上高を最低でも500万円には引き上げないといけない。
利益率100%として500万円だから、現実的に利益率100%なんていう商売はないから、500万円の利益が欲しければ少なくとも600万円以上は売らねばならないことになる。

売上高じゃなくて利益が重要というのは、それなりに売上高が稼げている企業にだけ当てはめられる言葉で、売れてないブランドはまず売上高を増やすことが重要になる。

現実的に多くのデザイナーズブランドは売れていない。
知名度が高いブランドでも売上高は極めて少ない。

以前に、このブログで「まとふ」について書いたことがあるが、卸売り先が5店舗くらいしかないということは、売上高はかなり少ないと考えられる。
まったくの推測だが年商は5000万円くらいが上限ではないのか。

「ファセッタズム」の買収額はたったの4182万円だった。
通常の「ブランド」として考えると、知名度からすると、その買収額は破格に安いといえる。

記事の中には前の所有会社の経営が悪化したためで、ファセッタズムのせいではないというような内容のものがあったが、買収額はその企業なりブランドなりの外部評価だから、ファセッタズムはその程度の評価しか外部からは、受けられなかったということになる。

自分と仲間数人で売上高が3億円あって、それなりに利益も確保できているからそれで十分というデザイナーズブランドも一部にはある。
それはそれで結構なことで、そういう生き方もある。

ただ、そういう立ち位置に昇れるデザイナーズブランドは極めて少なく、簡単になれるものではない。

逆に「もっと売上高を拡大して第二のギャルソン、サカイを目指すぜ!」というなら、自力では不可能なので資金力のある企業に買収してもらうほかない。

そもそも、国内デザイナーズブランドの需要というのは、日本国内では極めて小さいと見ている。
間違ってはいけないのは、日本国内の内需やアパレル市場規模が小さいというわけではない。
縮小し続けてはいるが、日本のアパレル市場規模は世界でも上位にランクインする。
そうでなくては、欧米ブランドやアジアブランドがわざわざ日本市場へ進出するはずがない。
彼らは儲からないことが一目瞭然な国には絶対に進出しない。
彼らは慈善団体ではなく、利潤追求団体だからだ。

そういう国内市場規模でも、国内デザイナーズブランドに対する需要は極めて小さいと感じる。

なぜなら、日本人の消費者も業界人も極めて舶来コンプレックスが強いから、高額なブランドを買うなら、まずは
欧米ブランドということになってしまう。
そして、手が届きやすい中価格の国内ブランドということになるが、この場合は、いわゆる国内企業や国内ファクトリーブランドがその対象となる。

さらにお手軽なのが、デザイン面で向上した低価格ブランド、グローバルSPAなどということになる。

国内デザイナーズブランドは、価格的には国内企業ブランドやファクトリーブランドよりも上だから、競合するなら欧米ブランドということになり、消費者心理的にも支持が得られにくい。

また、商品のテイスト・デザイン的にも企業ブランドやファクトリーブランドよりもトガっている、変テコりん、だからマスには支持されにくいし、そういう服を買ったところで着ていく場所、シチュエーションもない。

となると、圧倒的に企業ブランドやファクトリーブランドの方が使い勝手が良い。
または低価格ブランドの方が使い勝手が良くてしかも安い。

じゃあ、デザイナーズブランドをビジネス的に拡大するためには、広く世界に売って、薄く広く利益と売上高を稼ぐほかないのではないかと思う。

日本も含めてどこか特定の国だけで売上高を大きく増やすことは難しい。
なぜなら、日本も含めてどこの国も富裕層の人口は少数で限られているからだ。
欧米ラグジュアリーブランドと殴り合ってでもその少数の富裕客を強奪しなくてはならない。

だから、個人経営よりも大手資本に買収された方がやりやすい。

ただし、これまでのデザイナーズブランドの買収の多くは上手くいかなかった。

90年代のオリゾンティしかり、つい最近までの興和しかり、である。

90年代後半のインディーズデザイナーズブームなんて単なるあだ花に終わってしまった感がある。

このあたりの理屈をデザイナーズブランド側も飲み込んで、ビジネスと開発(クリエーションという言葉は嫌いなので)のバランスを取らないと、いくら大企業に買収されてもブランドとして成長することはありえないのではないかと思う。

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グンゼYGカットオフはエアリズムシームレスより圧倒的に優れた商品

 毎年、夏になると大量の汗をかくので着るものに困る。
若いころは、「イタリアでわー」とか「欧米でわー」の意見を参考にして、素肌にワイシャツを着てみたこともあるが、汗で濡れすぎて外回りはとても無理だった。

「イタリアでわー」とか「欧米でわー」の奴らは冷房の効いた部屋で内勤しかしていないんじゃないかとさえ思う。

吸水速乾肌着も試してみたが、汗をどんどん吸ってその上に着ているシャツにどんどん放湿するので、シャツに汗ジミが目立つだけだということがわかった。

通常の綿肌着はちょっと分厚いので、ワイシャツの下には良いが、Tシャツやポロシャツの下にはゴワつく。

そんなわけで、既存の商品、着用法はどれも自分には向いていないので、なんだかんだとだましだまし夏を過ごしていた。

ところが、昨年、グンゼからYGカットオフのサンプルを頂いた。
最初のうちは、通常のあれと変わらないと思って放置していたのだが、物は試しと着用してみたところ、非常に良かった。

綿55%・ポリエステル30%・ポリウレタン15%だが、生地が非常に薄い。
生地が薄い上に、Vネックが深いので、ためしに通常のTシャツを上に重ねてみたところ、まったく表からは見えない。こりゃ良いわ、ということで、昨年の8月はその1着を毎日洗濯しては着用していた。

生地が薄いので、吸水速乾肌着のように上に着たシャツ類に汗ジミができるのではないかと思ったが、それもほとんどない。

グンゼYGカットオフはかなり優秀だという結論に昨年夏達した。

価格は税抜きで1500円だが、まあ、それくらいの価値はある。

そうしたら、今年の夏用に腋パッドが付いた新型のカットオフをいただいた。
こちらは綿30%配合で少し組成が異なっている。

これも試してみて、何の問題もないが、昨年版と生地を触り比べるとわずかに硬さが感じられる。
触り比べないと気付かないレベルではあるが。

これで合計2枚になったので、あと3枚くらい買おうと決心した。

今年6月にAmazonから20%オフのタイムセールの案内が来た。
グンゼYGカットオフを探すと、半袖のクリアベージュ色はすでに品切れしていたが、ノースリーブは残っていた。
1620円(税込み)の2割引きで2枚買った。1296円(税込み)×2で2600円弱である。

そうこうしているうちにユニクロのチラシも入った。
グンゼYGカットオフの類似品、エアリズムシームレスwが990円に値下がりしている。

ちなみにグンゼYGカットオフとエアリズムシームレスの定価は同じ1500円(税抜き)である。

そんなわけで、両商品を着用して比べた感想をまとめてみたいと思う。

結論からいえば、値引きなしの定価販売なら迷わずグンゼYGカットオフを買うべきである。

グンゼYGカットオフの生地組成は先ほど書いた通りだが、エアリズムシームレスの組成はナイロン84%・ポリウレタン14%であり、筆者は世間の中高年男性ほど合繊嫌いではないが、この合繊100%という組成にはちょっと抵抗感がある。

なんだかサッカーのユニフォームのような感じがする。

実際に着用してみると、心配したほど着心地は悪くないが、綿混生地に比べるとやっぱり「合繊感」はぬぐえない。

グンゼYGカットオフが存在しなければこの商品でも良いのだろうが、グンゼYGカットオフが存在するとなるとちょっとこれを優先的に選ぶ理由がない。

サイズ感だが、グンゼYGカットオフはタイトに作られており、筆者でLサイズだが、エアリズムシームレスはゆとりがあり、筆者はMサイズである。

また、売りである「シームレス(縫い目なし)」という表記も疑問だ。

なぜなら縫い目はかなりたくさんあるからだ。むしろグンゼYGカットオフの方が縫い目が少ない。

まず、袖の取り付け部分である両方の肩口の縫い目と、ネックの両横の縫い目は両商品共通だから良いとする。

グンゼYGカットオフはこの4つの縫い目だけしかない。

一方、エアリズムシームレスwは身頃の両脇、裾に縫い目がある。
グンゼYGカットオフは胴体は縫い目なしで、裾も縫い目なしの切りっぱなしである。

エアリズム1

(エアリズムシームレスの全体)

エアリズム2

(エアリズムシームレスの裾の縫い目)

エアリズム3

(エアリズムシームレスの両脇の縫い目)

グンゼYG2

(グンゼYGカットオフ 皺くちゃで申訳ない)

グンゼYG

(縫い目のないグンゼYGカットオフの裾)

グンゼYG3

(両脇にも縫い目のないグンゼYGカットオフ)


にもかかわらず「シームレス」を名乗ってしまうユニクロの厚かましさと、「カットオフ(切りっぱなし)」としか名乗らないグンゼの謙虚さの対比に思わず笑ってしまう。

ユニクロをここまで押し上げた原動力の一つが「厚かましさ」「厚顔さ」というものがあるが、多くの人がユニクロ商品を買いながら、心のどこかで反発を覚えるのもこの「厚かましさ」「厚顔さ」にあるのではないかと思う。

990円に値下がりしたときなら、エアリズムシームレスwを選ぶという選択肢はあるだろうが、定価で買うことは今後絶対にない。

それにしても、エアリズムシームレスはどうして「ナイロン84%」という組成なのだろうか。
これは一度ユニクロに正式に尋ねてみたいが、現時点で、個人的な推測をいうと、ナイロンの方がポリエステルに比べて、「柔らかさ」「吸湿性」がある。
この部分に着目したのではないかと推測する。

だが、エアリズムの前身の「サラファイン」のときには、キュプラも混ぜられていたはずだ。
再生繊維であるキュプラはポリエステルやナイロンよりも吸湿性があるし、天然繊維に近い触感もある。

キュプラは概して高額な素材なので、サラファイン発売時には、キュプラを使ってあの価格という驚きがあったが、今のエアリズムにその驚きはまったくない。
むしろ、合繊100%という組成に驚かされる。

また価格設定も微妙だ。
合繊100%という組成から考えると1500円というのは割安感はない。

ヒートテックでもそうだが、他社の類似品の方がはるかに安い。
無理にユニクロで買う理由が見当たらない。

もちろん、スポーツブランドの本格商品に比べると安いが、吸水速乾にしろ保温にしろ、通常のサラリーマンにそんな高機能肌着は必要ない。
コスパだけで考えるなら他社の類似品の方がはるかに良い。

ワークマンとかドン・キホーテあたりでそろえるのがもっとも機能性が高くてコスパが高いのではないかと思う。

一方、グンゼの商売下手・宣伝下手にも歯がゆい思いがある。

「良い物を作っていれば必ず売れる」ということは、フィクションの世界にはありえても現実世界ではありえない。
現実にグンゼYGカットオフがそうではないか。

ユニクロよりも素材面も縫製面も圧倒的に優位に立ちながら、知名度・販売数量では圧倒的に負けている。
商品が悪いのではなく、売り方・見せ方・伝え方が下手くそだからだ。

グンゼは物作りをさらに追求するのではなく、売り方・見せ方・伝え方を工夫すべきだ。

売れるために「素材・縫製の品質をもっと強化します」なんてことをやらかすと、昨日のブログで書いた靴下工場のような憂き目にあう。
強化すべきポイントはそこじゃない。

そのことを理解していない国内企業が繊維業界には多すぎる。

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オミクロンな物作りを追求しても消費者には伝わらない

 衣料品やファッション雑貨類において、粗悪品は問題外として、要求水準以上のクオリティがあれば、次は「売り方」を工夫すべきである。

産地や工場に行くとよく聞かれるのが「〇〇ブランドの方が売れているけど、うちの方が品質が良い。なぜなら、うちの生地の方が経糸が〇〇本多いから」というような言葉である。

別に経糸に限ったことではない。
ニットやジャージなら目付(めつけ)だったり、目数(めかず)だったりする。
縫製工場ならステッチの幅が〇〇ミリだとかそういう類のことである。

繰り返すが、粗悪品は問題外だ。

しかし、要求水準以上の品質が実現された後、さらに目数を1つ増やすとか、ステッチ幅を1ミリ縮めるとか、そういうミクロなことを追求しても消費者にはわからないし、商品は売れない。

もちろん、物作りの姿勢は否定しない。
それはいくらでも追求すれば良いが、売るためには違うテクニックが必要になる。
「売る」のと「開発する」のとで区別をつけて取り組まねば効果がないし、それをするのが工場の経営者である。

それができないなら工場の経営は他者に譲るべきだろう。

先日、ある国内靴下工場の人に会った。
最近の業績が芳しくないそうだ。

粗悪品を作っているのではない。
むしろ、高品質品を製造している。
だけど売れない。

問題は、品質ではなく、売り方ではないか。

最近は奈良の靴下産地の尽力もあってさまざまな国産靴下ブランドが生まれている。
機能性に焦点を当てたものもあれば、色柄などのファッション性に焦点を当てたものもある。
その中で、もっともポピュラーな国産靴下ブランドといえば、タビオの「靴下屋」だろう。

タビオの靴下はたしかに高品質だが、数ある国産靴下の中でもっとも品質が高いかというとそうでもない。
同等の商品も数々あるし、この某工場はタビオよりも高品質だと自負している。
まあ、控えめに見積もっても同等レベルにはあるだろう。

だが、売れ行き、知名度はタビオと各社では段違いだ。

どうしてそうなったのか。それは「売り方」「見せ方」の問題で、タビオが上手くてその他は下手くそだったからだ。

この某工場の社長は根っからの職人肌らしく、苦境を乗り切るために「さらに高品質化を目指そう」と発破をかけているらしいが、はっきり言ってピントがズレている。

売りたいなら、広報・宣伝に力と金を使うべきだし、販促も強化する必要がある。

単に品質をさらに高めたからといって、売れると考えているなら考え違いも甚だしい。

例えば、合格点が100点満点中60点だとする。
大概の消費者は70点~80点くらいの出来であれば、満足する。
あとは価格とかデザインとか機能性とかそういうところの工夫が重要になる。

ところが、今、この某工場がやろうとしていることは、93点の品質を95点に上げようとすることだ。
大変な難業だと思うが、消費者にはその2点の差はほとんど伝わらない。
なぜなら、消費者は靴下のプロではないからだ。

目数を1つか2つ増やしたところで、何の効果も消費者は実感できない。

それなら、目数を1つか2つ減らして値段を下げたほうがよほど消費者の食いつきが良い。

今回はたまたま靴下工場の人と会ったのでこういう書き方になったが、国内の他の分野の繊維製品もほとんど同じである。
消費者には実感できないミクロを越えたオミクロンな世界を必死になって追求している。

その行為は尊いが、ビジネスには不適合である。

こういうオミクロンな物作りの良さを追求している間は、この某工場の商況は好転しないだろうし、他の国内の繊維製造業の苦境は改善されない。

オミクロンな開発は重要だが、それはあくまでも開発と位置づけ、ビジネスはビジネスとして割り切っての生産が必要とされる。

繊維の製造加工業は、1点作ることに心血を注ぐ「作家活動」ではなく、あくまでも大量生産が基盤となった工業ビジネスに過ぎないのだから、その部分をキチンと区別する必要がある。
区別できない製造加工業は淘汰されてしかるべきである。

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今の若者より昔の若者の方がよほど「量産型」の服装だった

 量産型女子とか量産型男子大学生とかいわれるが、正直なところちょっと意味が分からない。

似たような服装をしているということが言いたいのだろうが、「トレンド」と目される服装をこぞって着用するのは今に始まったことではないし、むしろ昔の方がトレンドへの集中度合いはひどかったように感じる。

逆に現在の方が服装は多様化していると感じる。

1970年生まれの筆者の覚えている範囲でいうと、安室奈美恵さんをキャラクターにして、バーバリーブルーレーベルが大ヒットしたのが97年だった。
バーバリーチェックのミニスカートにロングブーツという着こなしだったが、大ブームになり、それこそ20代の女性はこぞってこの服装をしていた。まさしく「アムラー」とかいう量産型女子である。
今の女子大生よりもチェックミニスカ+ロングブーツの比率は高かったと感じる。

また、この少し後に、神戸エレガンスが流行した時、20代女性はこの服装に集中した。

しかし、この両方とも「量産型」とは呼ばれていない。
左を向いても右を向いても似たような服装の女しかいなかったにも拘わらずだ。

ほかにも、2000年ごろに流行したローライズジーンズ。
そこからの派生で2005年ごろにピークを迎えた欧米ブランドのローライズブーツカットジーンズ。

このあたりも女性はまるでユニフォームのようにそろって着用していた。

2005年ごろまではユニフォームのように着用されているビッグトレンドがあった。

しかし、2008年以降はそういうビッグトレンドはなくなった。
かろうじて例を挙げるならスキニージーンズくらいだろうか。

逆に筆者は2005年までの社会に比べて、洋服の着こなしはビッグトレンドがなくなったことから多様化したと感じている。

例えば、3年位前まで老若男女に大人気だったストール。

2017春夏にストールを首に巻いて歩いている人がどれほど存在するだろうか。
ほとんどいないだろう。

3年位前までは老若男女こぞって巻いていた。まさしく量産型ストーラーである。

生地産地はこぞってオリジナルストールを企画製造した。
生地をただまっすぐに裁断して、四方を縫うだけだから、洋服を作るのに比べて格段に楽にできる。
オリジナル製品の入門編としてはうってつけの商材である。

それが徐々にトレンドから消えていった。
着用者が一人消え二人消えという具合だ。気が付いたらほとんどの人が巻かなくなった。

だが、ごくまれに見かけるストールを巻いた人を「うわ、ダサ。何年前の人?」とは思わないだろう。
これは筆者のみならず多くの人の共通した見方ではないかと思う。

今、ストールをこのクソ暑いさなかにわざわざ巻いている人はよほどの愛好家であり、その服装は大枠では「ナチュラル系」と分類されるジャンルに限られている。
いわゆる、綿や麻などの天然繊維の衣服をちょっとユルっと着用しているようなイメージの人たちだ。

ストールを巻いているのを見ても、「ああ、あのジャンルの人たちね」という程度で、流行遅れとは感じない。

ストールだけではなく、ほかのアイテムでも同じではないか。

スキニージーンズが大ブームでも、レギュラーストレートジーンズを穿いた人を「流行遅れ」とは思わない。

今春からワイドパンツの着用者が増えているが、その中にスキニージーンズを着用した人が混じっていても「時代遅れが混じっている」とは思わない。

いずれの場合も「そういうジャンルの服装が好きなのね」としか感じない。

筆者が高校生~大学生だったバブル期はそうではなかった。
ビッグトレンドは毎年次々と生まれては移り変わるし、それにアジャストすることが多くのファッション好きにとっての快楽だった。

トレンドを取り入れない者に対しては「ダサい」「流行遅れ」という見方がなされた。

今の方が各人の服装に関してはずっと寛大だと感じる。
2008年くらいまでの若い人たちの方がよほど「量産型」である。

実像を無視して、今の若い人を「量産型」と揶揄してみたところで洋服の売上高は増えないし好転もしない。
そういう業界のレッテル貼りの体質に対してますます消費者は拒否反応を起こすだろう。

だいたい、衣料品業界にいる人たちの考え方はおかしい。

先日のセール後倒し論の記事でもそうだ。

「業界が停滞しているのはセール早期化によるものだ」なんて八つ当たりに近い意見が述べられている。
アホなのか?

業界が停滞して、各社がバカで企画力と販売力がなくて不良在庫を山盛り抱えたから、セールが早期化されたのであり、最初から何もない状態ならセールが早期化される必要もない。
日々の売れ行きが順調で不良在庫を抱えていないならセールを早期化しようなんて考えるはずもない。

因果関係を逆に考えれば、解決策はさらに遠のく。
まあ、解決策なんて100万年先まで遠のけば良くて、その間に業界は淘汰されるだけ淘汰されるべきだと思うが。

横並び気質、売れ筋丸パクリ気質、過剰な欧米崇拝気質、と業界にいる各社・各人の方がよほどに「量産型」ではないか。

「量産型」が跳梁跋扈できる業界は今日も平和でのどかである。

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「日本製」ファッション用品はメディアが思っているほど盛り上がっていない

 先日から立て続けに国内の繊維製造業、産地企業の社員から退職の知らせが舞い込んでいる。
理由はさまざまあるが、その根本には会社の業績が悪化したことにより、業務環境や会社の運営方針の改悪に対する不満・不信なのだが、本当に国内の産地企業、製造加工業は今後、倒産・廃業が相次ぎそうな気配が漂っている。

苦境の原因はさまざまあるが、大別すると次の2つにわけられる。

1、製造加工業、産地企業自体が下請け気質を変えられなかった
2、大手アパレルや大手ブランドは日本製をまったく重視しておらず、製造の海外シフトを強化していること

である。

1については、これまでも何度か書いてきたように、90年代以降、さまざまな「自立化」や「ブランド化」「下請け脱却」が叫ばれてきたにもかかわらず、当の本人たちの意識、考え方はまるで変わらなかったということである。

相変わらず、1000万円もする機械設備はポンと導入するが、わずか数万円の展示会費用を出し渋る気質はまるで変わっていない。
広報やプロモーションに対する考え方もまったく変わらない。
たかだか5万円の費用も支払いたがらない。

しかし、酒を呑む費用はふんだんに払う。

神は細部に宿るというが、物作りでは細部にこだわりすぎて、その効果や良さがまったく売り手や消費者には伝わらない。

例えば、「ステッチの幅を1ミリ縮めました」みたいなことを嬉々として語られたところで、その技術力の高さはわかるが、他社の製品との圧倒的差異にはならない。
これで商品価格が安ければ売れやすいが、「1ミリ縮めたからすごい付加価値がある」と勘違いして、髙い価格を付けるなんてことは日常茶飯事だ。
消費者的視点でいえば、ステッチの幅が1ミリ縮んだ3万円の服と、従来通りのステッチで8000円で売られている服ならどちらを買うかである。
多くの人は8000円を買う。

次に2である。

なんだかわからないが「日本製を海外に売ろう」みたいな取り組みをよく耳にする。
ナンたら組合とかナンタラ協会が取り組んでいることもあるし、大手アパレルや大手ブランドが個々に取り組んでいる場合もある。

組合とか協会は、実際にそれを目的として活動しているのだと思う。(活動内容の良し悪しは置いておいて)

しかし、アパレルやブランドの多くはそれは単なる掛け声に過ぎないし、「売るための記号」にしか過ぎない。
特に大手アパレルや大手ブランドにとって、「売るためのポーズ」に過ぎない。

先日、お会いした退職を決めた人によると、それまで長年、太い付き合いをしてきた大手アパレルが、販売だけでなく、それに伴って製造もグローバル化に取り組み始めたので、国内の製造業者との取引を大幅に減らすことを通達してきたという。

また、別の大手は、以前からグローバル化に取り組んでいたが、それをさらに強化して、国内の製造業者を3社切り捨てたところ、その3社とも即座に倒産してしまったという。

これが大手の実態であり、「日本製ガー」と言っているのは単なる「売らんがためのポーズ」に過ぎない。
ちなみに笑えることに、両大手ともに「日本製」を売りにした商品ラインや単品アイテムを大々的にプロモーションしている。
さすが大手は二枚舌がお得意ですよね♪

まあ、こんな感じで、国内の製造加工業者や産地企業は内部的要因と外部的要因の両方によって、さらに倒産・廃業に追い込まれつつあるということである。

製造加工業者や産地の人が思っているように、「どこかの大手ブランドが救世主になってくれる」ことは絶対にありえない。

じゃあ、どうする?という話である。

余力のあるうちに廃業するのがもっとも賢明だろう。
追い込まれてからの倒産では、経営者自身が路頭に迷うことになる。

どうしても生き残りたいなら、これまで失敗し続けてきた「自立化」に取り組むほかない。

アホの一つ覚えみたいに自社オリジナルブランドを開発することだけが「自立化」ではない。
今まで「特定の大手と太い取引があるから」ということを盾に、受注先の新規開拓をしてこなかった「待ちの姿勢」を改めることも立派な自立化といえる。むしろこちらの自立化の方が様々なリスクは少ないだろう。

多くの製造加工業者によるオリジナルブランドが成功しない理由は、ブランドとしてのノウハウがないことは言うまでもないが、ブランド開発がゴールだと勘違いしてしまうところにもある。

ブランド開発はゴールではなくスタートでしかない。(Jwalkの歌詞ではないが)

そして、ブランドとしてスタートすると、今度はブランド間での競争を勝ち抜かねばならない。
背景が縫製工場だとかそんなことは関係ない。
背景が縫製工場だろうとキャバクラだろうと関係なく、ブランドとして拡大再生産をし続けなくてはならない。

消費者からしても背景が縫製工場だろうが、染色工場だろうがキャバクラだろうが関係なく、その商品自体が良いかどうかが重要になる。

それにしても、メディアが考えているほどには、「日本製品」は盛り上がっておらず、国内の産地企業、製造加工業者は最終段階にまで追い詰められているというのが実態である。

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ファッションビジネスの魔力
太田 伸之
毎日新聞社
2009-11-20


ファッションビジネスの魔力
太田 伸之
毎日新聞社
2013-08-30


ウェブでこれだけバーゲンが常態化しているのに、実店舗でバーゲンを後倒ししても意味はない

 今年の6月もそうだが、商業施設を見ていて、何年か前ほどのバーゲン早期化はあまり感じない。

今年は6月30日の金曜日に夏バーゲンを開催する商業施設が多そうで、曜日を考えれば6月30日がベターだと思う。

一方、バーゲンの通知が常に届くのはウェブ通販である。
一昨年に始めてAmazonで買い物をして以来、年間で8回~10回くらいは買うようになった。
主には値引きされたガンダムのプラモデルだが、たまに本を買う。
あと極まれに服や靴を買う。

服や靴はもちろん値引きされた商品しか買わない。

そうなると、Amazonから頻繁にお知らせのメールが送られてくる。
やれタイムセールだ、やれアウトレットセールだ、やれプレセールだ、という具合である。

またユニクロやアダストリアのウェブでもこれまで何回か買ったから、そこからも頻繁にメールで安売りのお知らせが来る。
6月20日にはアダストリアから3通も安売りのお知らせメールが来た。

2つは21日から夏セール開催という内容だが、もう1つは先行セール開催というものだ。

ユニクロはだいたい毎週火曜と金曜に「期間限定割引」のお知らせメールが来る。

GAPはウェブで買ったことがないが会員登録しているからメールが来る。
だいたい、GAPかバナリパで「なんちゃらセール開催中」とか、「〇〇すれば〇%引き」とかそういう内容である。

ウェブからのお知らせだけを見ていたら、ほぼ毎週何かの安売りセールをやっている。

筆者が受け取るのはこの3社がほとんどだが、もっとたくさんの通販サイトを利用したことのある人は、もっとたくさんの安売りのお知らせをそれこそ週に何通も受け取っているだろう。

例えば、ウェブでは買ったことがないが、ナノユニバースは6月21日現在、ウェブでは絶賛バーゲン開催中だ。
しかも「1000円、3000円、5000円の3プライスバーゲン」である。
実店舗でのバーゲン後倒しがどうのこうのなんて論争している次元ではなく、破格の投げ売りを開催している。

キャプチャ

このように、ウェブ通販だけを見ると年がら年中、毎週何かの安売りセールをやっていると感じる。

こんなに安売りセールが頻繁に開催されているなら、何も実店舗で買う必要もなく、安い服が欲しければウェブを検索すれば良いと感じる。
ますます、実店舗離れが起きるだろう。

さて、そういう社会状況になったにもかかわらず、ルミネが今年の7月もセール後倒しを行い、7月28日から開始するとの発表があった。
率直な感想をいえば、こういう状況でルミネだけがセールを後倒しする意味があるのかと感じる。

もちろん、業界、特に製造業系からは歓迎の声があがっており、その気持ちもわかるが、個人的にはその考え方は評価できない。

各社が足並みをそろえているならまだしも、安い商品が欲しい人はいくらでもウェブで手に入るのが現実だ。

じゃあ、どういう売り方が良いのかという話になると、これだけウェブ通販が年がら年中安売りをしているなら、最早全社そろってセール時期を後倒しするというのは実現不可能である。
実店舗でバーゲンを後倒ししたところで、ウェブでやってるなら、多くの客はウェブで購入する。

だったら、店舗はセールを後倒しせず、今年なら6月30日で足並みをそろえるべきだろう。

そして、1月~3月に入荷した「古い商品」を70%オフくらいで叩き売って、集客装置としつつ、5月ごろに入荷した新しい商品を10%オフとか20%オフくらいで販売するのが正解ではないか。

どうしても売れ残った商品は,そのあとのバーゲン末期で大幅値引きをして投げ売る。

こういう方法で各社は乗り切るべきだろう。

ウェブがこれほどバーゲンを早期化・常態化している中で、たかがルミネだけがバーゲンを後倒しにしたところで、業界の趨勢がそちらに向かうことはないし、各社がバーゲンを後倒ししたところで、ウェブはそれに縛られないだろうから今のバーゲン常態化は続くだろう。

そうなるとますます実店舗の売上高が下がりウェブでの購入率が高まる。
これが進み過ぎるとアメリカのように実店舗の大量閉鎖につながることになる。

各社がそういう結果を望まないなら、バーゲンの後倒しなんていう非現実的なファンタジーとは決別すべきではないか。

ウェブがこれだけ、バーゲン早期化・常態化している中で、実店舗のバーゲン後倒しという施策は何ら意味が無い。

バーゲン品が欲しい人はウェブないし、他の商業施設で買うだけのことにしかならない。
業界からバーゲンがなくなることはないし、定価販売が広がることもない。

ところで、繊研プラスを読むと、ルミネの新井社長のこんなコメントが掲載されているがこれは事実だろうか?

「ファッションビジネス業界が膠着(こうちゃく)状態にある大きな要因はセール(の早期化)ということをオーナーの人たちも分かっている。『夏のセールはやめましょう』という幹事会社もある。そもそも、これから暑くなる時期にセールをやるのはおかしい。本来なら、8月スタートにしたかった」という。


この人がセールを8月にやりたいというのは個人の嗜好の問題なのでどうでもいい。
疑問を感じるのはその前段である。

ファッションビジネス業界が膠着状態にある大きな要因はセールの早期化とあるが、これは事実誤認だろう。
セールが早期化しているから膠着しているのではなく、膠着して不良在庫がダブついているからセールが早期化しているのである。
因果関係を完全に取り違えている。

で、セールを後倒しすればその膠着状態が解除されるのかというと、その可能性は極めてゼロに近い。

膠着しているのは、セールの開始時期が早いからとか遅いからではなく、国内のファッション業界が、消費者の消費行動・嗜好の変化に対応できなくなっているからである。

また、オーナーが「夏のセールをやめましょう」と言ったというのも本当だろうか。
もし事実ならそのオーナーはよほどのアホか、リップサービスをふるまう人かのどちらかだろう。

ルミネに出店しているブランドというのは、個人経営のブティックではなくて、ある程度の店舗数を持ったチェーン店が9割以上である。
そういう大手企業のオーナーが「夏のセールをやめましょう」というなら、ルミネに出店しているテナントだけでなく、自社が各地に何店舗か構えている路面店で夏のセールをやめれば良いのである。

路面店ならだれに気兼ねすることもない。
ファッションビルや百貨店やショッピングモールのように、管理されているわけでもない。

セールをやめるのも後倒しするのも自由自在である。

自社の路面店ですらセールをやめられないような企業のオーナーがなぜ、「夏のセールをやめましょう」なんてことを発言できるのだろうか。

この発言が本心なのだとしたら、そのオーナーがよほどのアホか恥知らずである。

今後もルミネはバーゲンは後倒しし続けるだろう。
しかし、その動きはルミネだけに限定されたものとなり、今後は淀川の花火大会よろしく、単なる夏の風物詩の一つとして認識されるにとどまるだろう。

「また今年も、ルミネがバーゲン後倒し宣言をしたわ。そろそろ夏よね~」なんて会話が毎年6月には聞かれるようになるかもしれない。

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バーゲン後倒しに敬意を表して、現在、値下げ販売されているナノユニバースの商品のいくつかをどうぞ~♪





ファッション=趣味のワンオブゼム

 衣料品不振を伝える報道が多いが、衣料品業界の人はどうも、まだ「衣料品、ファッションは特別」と考えているフシがあり、どうにも共感ができない。

バブル期の美味しい時代を過ごしてきた年配業界人の観点の多くは取るに足りないことは言うまでもないが、かなり考えの深い若い世代の人でも、やっぱりどこかに「ファッション衣料は特別」だと考えているフシがあり、驚かざるを得ない。

個人的には、「ファッション=趣味のワンオブゼム」で、ガンプラ、釣り、将棋、囲碁、ドライブ、旅行、美食などの趣味の中の一つだと見ている。

筆者は食にはまったく興味がない。
だから、スーパーの惣菜とサイゼリヤと松屋とコンビニ弁当と鳥貴族が毎日のローテーションでもまったく構わない。
世の中には家族の手料理に対して異常に執着を見せる人がいるが、まったく理解できない。
不味い手料理を食べるくらいならサイゼリヤの方がずっとマシだと思っている。
また、外食でも値段の高低は別にして、店や味に並々ならぬこだわりを見せる人もいる。それもまったく理解できない。

それは完全に「趣味の世界」だと思っているので、自分が巻き込まれないなら、他人の行為は否定しない。

ガンプラを集めるのと同じ趣味の世界で、他人に迷惑をかけない限りは否定されるべきものではない。

ファッションもそれと同じ「趣味」だとしか見えない。

高度経済成長期、バブル期には高額なファッション衣料が飛ぶように売れた。
だから、その幻影をいまだに引きずっている人も多い。

70年生まれの筆者は、高度経済成長期の記憶はほとんどない。
80年代からバブル期なら記憶がある。

このブログで何度も書いているように、80年代に「トレンドのファッション衣料」を買おうと思ったら、いわゆるブランドショップか百貨店くらいしか買場がなかった。

多くの人が勘違いしているが、80年代やバブル期にも低価格衣料品は山のように存在した。
ジャスコやダイエーやイズミヤという総合スーパーに安い服は並んでいた。
今のジーユーやしまむらよりは高かったが、それでもブランド物よりは随分と安かった。

トレーナー3000円くらい、カジュアルシャツ2000円くらいだっただろうか。
これは92年ごろの記憶である。

ジャスコやイトーヨーカドーが衣料品で高利益をたたき出していたのはこのころのことで、この時代も低価格衣料品はそれなりに売れていた。

しかし、現在のような「低価格衣料品ブーム」にはならなかった。
なぜなら、商品の見た目があまりにもブランド物と違い過ぎたからだ。

まったく違う物を作ろうとしていたのではない。
ブランド物をコピーしようとしていたのだが、まったくできていなかった。

見た目のデザイン、色柄、生地、すべてが「何かが違う」という感じだった。
当時の服が残っていないか自宅を探したがさすがにすべて捨てていた。
画像があれば一目瞭然なのだが。

筆者が働き始めて間もない95年ごろでさえ、まだまだ差があった。

例えば、店に「ビッグエイト」という耳慣れないメーカーからGジャンが大量に入荷した。
価格は2900円だったのではないかと記憶している。

どこぞの大手メーカーから独立したオッチャンが立ち上げたメーカーだと聞いたが詳細はそれ以上しらない。
もう今は残っていないのではないかと思う。

リーバイスやリー、ラングラー、ボブソンなどのGジャンも扱っていたが、価格は9800円くらいだった。

価格差を考えると断然ビッグエイトを買うべきだと思うが、色・生地の薄さと風合い、シルエット、すべてが違っていた。恐ろしく「ダサくて安物臭い」商品だった。
だから結局、ボブソンだかリーバイスだかのGジャンを9800円で買った。

今の筆者なら考えられない行動だが、95年当時でさえ、それほどに「商品の見た目」に大きな差があった。

今春に2990円で買った定価3990円のユニクロのGジャンとは比べ物にならないほどの粗末な出来具合だ。

ユニクロのGジャンとて不満はある。
例えば生地が薄いとか、金属のボタンがチャチくさいとか。
しかし、2990円と1万5000円の価格差を考えれば不足はない程度の見た目には仕上がっている。
見るからにダサくて安物臭くはない。

当時のビッグエイトのGジャンは見るからにダサくて安物臭かった。

見た目に差がなくなれば安い方でも構わないと考える人が増えるのは当然である。

食品だって自動車だってパソコンだって自転車だって高性能で低価格な商品はそれなりに売れている。
洋服の買われ方がそうなってもそれほど不思議とは思えない。

http://blogos.com/article/228777/

昨年くらいから話題になっているが、日本におけるアパレル関連の低迷を見ると、もう服の選び方が根本的に変わっている気がする。
で、色んな記事を見ていると、「すべてごもっとも」と思う一方で、「まだまだ業界の人は甘く見てるんじゃないか」という感じもするんだよね。

とある。

この部分には賛同である。業界の人はまだまだファッションを特別なモノとして見ていると感じる。

しかし、実際のところはファッションは趣味の世界のワンオブゼムでしかなくなっていると思う。

「良い物を知れば~」なんて声が業界には多いが、それは興味のない人に「国産のナンチャラ牛を食べてみれば違いが判る」と言ってるのと同じで、余計なお世話でしかない。要らない人にとっては国産のナンチャラ牛なんてわざわざ試す理由がない。

25年前に、ジャスコで買った2900円のなんちゃってジーンズを穿いていた筆者が、リーバイスの501を穿いてみて「ジャスコのなんちゃってジーンズと全く違う」と感動したような「圧倒的な違い」が、今は感じられない。
それはブランド物が劣化したというよりは、低価格ブランドの商品の見た目が向上したということで、その差が感じられない人にとって「良い物を知れ」というのは、海原雄山の食材論と同じで、「知らんがな」としか思えない。

「良い物を知れば」「本物を知れば」という海原雄山理論をぶち上げている間は、衣料品の販売状況が好転するようなことはないと思う。

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社名の知名度が低くて、ブランド育成に失敗しているのは三陽商会だけではない

 バーバリーを失った三陽商会の危機を伝える報道は数々あるが、歴史の順を追ったこの記事はなかなか資料的価値はあるのではないかと思う。

三陽商会、バーバリー喪失ではない失速の本質
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278209/061400129/?n_cid=nbpnbo_fbbn

どこでも書かれているように、バーバリーの代わりに導入したマッキントッシュフィロソフォーが穴埋めをできなかったというのはその通りだが、三陽商会の凋落はこれだけが原因とはいえない。

記事中では、バーバリーが「中高年向けブランド」になってしまった90年代後半に、三陽商会が独自に「バーバリー・ブルーレーベル」を作って大ヒットを飛ばしたことを触れているが、単なるブルーレーベル礼賛に終わっていない部分が秀逸だと感じる。

 歌手の安室奈美恵さんが97年の結婚記者会見で同ブランドのミニスカートをはいたことで「火に油を注ぐような勢いで売れ出した」(新名宏行・現常勤監査役、社史より)。百貨店にとってもドル箱となった。「女子高校生や若者がこぞって百貨店に訪れた。万引き対策が大変だったほどだ」と大手百貨店幹部は当時を振り返る。

 ただ、世の中が「安室フィーバー」に沸いた頃の、三陽商会の業績をつぶさに見ると、ブルーレーベルが、会社全体の売り上げを底上げするほどではなかったことが分かる。ミニスカートが話題となった97年12月期の売上高は前期から1億7000万円増え1486億6800万円だったが、98年には早くも減収に転じた。2年後の2000年12月期の決算は、26億円の最終赤字となった。

バーバリーブルーレーベルが絶頂期を迎えたときでさえ、わずか1・7億円の増収、ピークは越えたとはいえまだまだ人気を維持していた2000年でさえ、26億円の最終赤字に陥っている。

ブルーレーベルを含んだバーバリーは好調だったのだろうが、それ以外のブランドがまるでダメだったということである。

そもそもバーバリー本社は、ライセンス先が勝手に作った(本来のライセンス契約ではあり得ない奇手)「ブルーレーベル」と、のちに作られる「ブラックレーベル」の存在を嫌っていたといわれている。
嫌ってはいたが好調だったので黙っていたともいわれるが、ライセンス契約が更新されなかったのもこれらを嫌っていた部分があるのかもしれない。

現在は、バーバリーとのライセンス契約を変更し、クレストブリッジとしてこのブルーレーベル、ブラックレーベルは存続しているが、かなりの不調だ。

以前にも書いたが、三陽商会も百貨店もマッキントッシュフィロソフィーが苦戦することはある程度織り込み済みだったと考えられるが、彼らの慌てふためきぶりを見ていると、クレストブリッジの不調は計算外だったのではないかと思えてくる。
しかし、バーバリーの冠ではなく、クレストブリッジなんていう名前に変われば、たとえ商品内容が同一でも売れなくなるのは当たり前だ。

で、90年代から現在に至るまでの三陽商会の失敗の本質は、バーバリー以外のブランドが育っていないことと、バーバリー以外での知名度がまるでないことだ。

ブランドが育っていないことは一目瞭然だからあえては触れない。
問題は、三陽商会という社名もバーバリー以外のブランド名も実は業界人が思っているほど知られていない。

最近はファッション専門学校生ですら「三陽商会」という社名を知らない。
「2年前までバーバリーをやっていた会社」と説明すると、「あー、わかった」と答える程度の知名度の低さである。

ちなみに専門学校生に知名度が低いのは三陽商会だけではなく、オンワード樫山、TSIホールディングス、ファイブフォックス、イトキン、レナウン、フランドルなどかつての百貨店向け大手アパレルは軒並み社名を知られていない。
ワールドは社名だけはかろうじて知られているが、それだけの存在だ。

このあたりはまったく同じ病巣があるといえる。
「カネのない若い奴らに知られる必要はない」と、各社の関係者は思うかもしれないが、知られていないのは存在しないのも同然だから、若い人にとっては存在しない会社なのである。
そして、10年後、20年後は今の若い人が中高年になる。
その時に、見ず知らずの会社の製品を選ぶだろうか。
まあ、ほとんどの人間は選ばないだろう。

20年後は、老人層が支持する会社になってしまっているだろう。
でも、これらの会社が20年後も存在しているとは限らないから、そういう心配は不要なのかもしれない。(笑)

閑話休題。

よく書けている記事だが、異説も紹介したい。

ライセンスの契約更新が上手く行かなくなりそうだとは、業界では早い時期から噂されていた。
記事中に三井物産出身の田中和夫社長が登場するが、その田中社長もバーバリーの契約更新には危機感を持っていたと、中の人に聞いたことがある。
丸っきり楽観していたわけではなかったようだ。
しかし、目に見えた対応策を掲げなかったので、結果としては同じことだったともいえるのだが。

また百貨店の再編は2000年後半に起きたが、きっかけは2000年のそごうの経営破綻だろう。
そごうの経営破綻以降、各百貨店の経営は極めて悪化し、経営統合が進んだ。
そごうも西武も経営破綻した者同士がくっついたし、経営が悪化した三越は伊勢丹に助けを求めた。

阪急と阪神は某モノ言う株主の企業買収を予防するためだったといわれる。

で、戻ると、三陽商会が金看板の「バーバリー」以外のブランド育成に失敗したということは、実は先ほど挙げた「若者に知られていない大手アパレル各社」に共通する問題だといえる。

ワールドは黒字回復と盛んに報道されているが、この2年で新たに話題になった新ブランド、復調ブランドは耳にしたことがない。黒字回復の要因は、経費削減によるものでしかない。
一説には、大規模な人員削減をやった結果、残すべきはずの人たちまでが自発的に辞めたために、逆に予想以上の黒字になったとまで言われている。

あとの各社も似たような状況で、話題ブランドをいくつか傘下に持つTSIは除外して、オンワード、レナウン、フランドル、ファイブフォックス、イトキンで、新たに伸びてきたブランド名を耳にしたことがない。

人件費を含む経費削減で当分の間は延命し続けるだろうが、それはいつまで続けることができるのか。

記事で三陽商会に指摘された事実は、旧大手各社に共通した課題だといえる。

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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25



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