ウェブでこれだけバーゲンが常態化しているのに、実店舗でバーゲンを後倒ししても意味はない
2017年6月21日 ネット通販 0
今年の6月もそうだが、商業施設を見ていて、何年か前ほどのバーゲン早期化はあまり感じない。
今年は6月30日の金曜日に夏バーゲンを開催する商業施設が多そうで、曜日を考えれば6月30日がベターだと思う。
一方、バーゲンの通知が常に届くのはウェブ通販である。
一昨年に始めてAmazonで買い物をして以来、年間で8回~10回くらいは買うようになった。
主には値引きされたガンダムのプラモデルだが、たまに本を買う。
あと極まれに服や靴を買う。
服や靴はもちろん値引きされた商品しか買わない。
そうなると、Amazonから頻繁にお知らせのメールが送られてくる。
やれタイムセールだ、やれアウトレットセールだ、やれプレセールだ、という具合である。
またユニクロやアダストリアのウェブでもこれまで何回か買ったから、そこからも頻繁にメールで安売りのお知らせが来る。
6月20日にはアダストリアから3通も安売りのお知らせメールが来た。
2つは21日から夏セール開催という内容だが、もう1つは先行セール開催というものだ。
ユニクロはだいたい毎週火曜と金曜に「期間限定割引」のお知らせメールが来る。
GAPはウェブで買ったことがないが会員登録しているからメールが来る。
だいたい、GAPかバナリパで「なんちゃらセール開催中」とか、「〇〇すれば〇%引き」とかそういう内容である。
ウェブからのお知らせだけを見ていたら、ほぼ毎週何かの安売りセールをやっている。
筆者が受け取るのはこの3社がほとんどだが、もっとたくさんの通販サイトを利用したことのある人は、もっとたくさんの安売りのお知らせをそれこそ週に何通も受け取っているだろう。
例えば、ウェブでは買ったことがないが、ナノユニバースは6月21日現在、ウェブでは絶賛バーゲン開催中だ。
しかも「1000円、3000円、5000円の3プライスバーゲン」である。
実店舗でのバーゲン後倒しがどうのこうのなんて論争している次元ではなく、破格の投げ売りを開催している。
このように、ウェブ通販だけを見ると年がら年中、毎週何かの安売りセールをやっていると感じる。
こんなに安売りセールが頻繁に開催されているなら、何も実店舗で買う必要もなく、安い服が欲しければウェブを検索すれば良いと感じる。
ますます、実店舗離れが起きるだろう。
さて、そういう社会状況になったにもかかわらず、ルミネが今年の7月もセール後倒しを行い、7月28日から開始するとの発表があった。
率直な感想をいえば、こういう状況でルミネだけがセールを後倒しする意味があるのかと感じる。
もちろん、業界、特に製造業系からは歓迎の声があがっており、その気持ちもわかるが、個人的にはその考え方は評価できない。
各社が足並みをそろえているならまだしも、安い商品が欲しい人はいくらでもウェブで手に入るのが現実だ。
じゃあ、どういう売り方が良いのかという話になると、これだけウェブ通販が年がら年中安売りをしているなら、最早全社そろってセール時期を後倒しするというのは実現不可能である。
実店舗でバーゲンを後倒ししたところで、ウェブでやってるなら、多くの客はウェブで購入する。
だったら、店舗はセールを後倒しせず、今年なら6月30日で足並みをそろえるべきだろう。
そして、1月~3月に入荷した「古い商品」を70%オフくらいで叩き売って、集客装置としつつ、5月ごろに入荷した新しい商品を10%オフとか20%オフくらいで販売するのが正解ではないか。
どうしても売れ残った商品は,そのあとのバーゲン末期で大幅値引きをして投げ売る。
こういう方法で各社は乗り切るべきだろう。
ウェブがこれほどバーゲンを早期化・常態化している中で、たかがルミネだけがバーゲンを後倒しにしたところで、業界の趨勢がそちらに向かうことはないし、各社がバーゲンを後倒ししたところで、ウェブはそれに縛られないだろうから今のバーゲン常態化は続くだろう。
そうなるとますます実店舗の売上高が下がりウェブでの購入率が高まる。
これが進み過ぎるとアメリカのように実店舗の大量閉鎖につながることになる。
各社がそういう結果を望まないなら、バーゲンの後倒しなんていう非現実的なファンタジーとは決別すべきではないか。
ウェブがこれだけ、バーゲン早期化・常態化している中で、実店舗のバーゲン後倒しという施策は何ら意味が無い。
バーゲン品が欲しい人はウェブないし、他の商業施設で買うだけのことにしかならない。
業界からバーゲンがなくなることはないし、定価販売が広がることもない。
ところで、繊研プラスを読むと、ルミネの新井社長のこんなコメントが掲載されているがこれは事実だろうか?
「ファッションビジネス業界が膠着(こうちゃく)状態にある大きな要因はセール(の早期化)ということをオーナーの人たちも分かっている。『夏のセールはやめましょう』という幹事会社もある。そもそも、これから暑くなる時期にセールをやるのはおかしい。本来なら、8月スタートにしたかった」という。
この人がセールを8月にやりたいというのは個人の嗜好の問題なのでどうでもいい。
疑問を感じるのはその前段である。
ファッションビジネス業界が膠着状態にある大きな要因はセールの早期化とあるが、これは事実誤認だろう。
セールが早期化しているから膠着しているのではなく、膠着して不良在庫がダブついているからセールが早期化しているのである。
因果関係を完全に取り違えている。
で、セールを後倒しすればその膠着状態が解除されるのかというと、その可能性は極めてゼロに近い。
膠着しているのは、セールの開始時期が早いからとか遅いからではなく、国内のファッション業界が、消費者の消費行動・嗜好の変化に対応できなくなっているからである。
また、オーナーが「夏のセールをやめましょう」と言ったというのも本当だろうか。
もし事実ならそのオーナーはよほどのアホか、リップサービスをふるまう人かのどちらかだろう。
ルミネに出店しているブランドというのは、個人経営のブティックではなくて、ある程度の店舗数を持ったチェーン店が9割以上である。
そういう大手企業のオーナーが「夏のセールをやめましょう」というなら、ルミネに出店しているテナントだけでなく、自社が各地に何店舗か構えている路面店で夏のセールをやめれば良いのである。
路面店ならだれに気兼ねすることもない。
ファッションビルや百貨店やショッピングモールのように、管理されているわけでもない。
セールをやめるのも後倒しするのも自由自在である。
自社の路面店ですらセールをやめられないような企業のオーナーがなぜ、「夏のセールをやめましょう」なんてことを発言できるのだろうか。
この発言が本心なのだとしたら、そのオーナーがよほどのアホか恥知らずである。
今後もルミネはバーゲンは後倒しし続けるだろう。
しかし、その動きはルミネだけに限定されたものとなり、今後は淀川の花火大会よろしく、単なる夏の風物詩の一つとして認識されるにとどまるだろう。
「また今年も、ルミネがバーゲン後倒し宣言をしたわ。そろそろ夏よね~」なんて会話が毎年6月には聞かれるようになるかもしれない。
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バーゲン後倒しに敬意を表して、現在、値下げ販売されているナノユニバースの商品のいくつかをどうぞ~♪