「日本製」ファッション用品はメディアが思っているほど盛り上がっていない
2017年6月22日 産地 0
先日から立て続けに国内の繊維製造業、産地企業の社員から退職の知らせが舞い込んでいる。
理由はさまざまあるが、その根本には会社の業績が悪化したことにより、業務環境や会社の運営方針の改悪に対する不満・不信なのだが、本当に国内の産地企業、製造加工業は今後、倒産・廃業が相次ぎそうな気配が漂っている。
苦境の原因はさまざまあるが、大別すると次の2つにわけられる。
1、製造加工業、産地企業自体が下請け気質を変えられなかった
2、大手アパレルや大手ブランドは日本製をまったく重視しておらず、製造の海外シフトを強化していること
である。
1については、これまでも何度か書いてきたように、90年代以降、さまざまな「自立化」や「ブランド化」「下請け脱却」が叫ばれてきたにもかかわらず、当の本人たちの意識、考え方はまるで変わらなかったということである。
相変わらず、1000万円もする機械設備はポンと導入するが、わずか数万円の展示会費用を出し渋る気質はまるで変わっていない。
広報やプロモーションに対する考え方もまったく変わらない。
たかだか5万円の費用も支払いたがらない。
しかし、酒を呑む費用はふんだんに払う。
神は細部に宿るというが、物作りでは細部にこだわりすぎて、その効果や良さがまったく売り手や消費者には伝わらない。
例えば、「ステッチの幅を1ミリ縮めました」みたいなことを嬉々として語られたところで、その技術力の高さはわかるが、他社の製品との圧倒的差異にはならない。
これで商品価格が安ければ売れやすいが、「1ミリ縮めたからすごい付加価値がある」と勘違いして、髙い価格を付けるなんてことは日常茶飯事だ。
消費者的視点でいえば、ステッチの幅が1ミリ縮んだ3万円の服と、従来通りのステッチで8000円で売られている服ならどちらを買うかである。
多くの人は8000円を買う。
次に2である。
なんだかわからないが「日本製を海外に売ろう」みたいな取り組みをよく耳にする。
ナンたら組合とかナンタラ協会が取り組んでいることもあるし、大手アパレルや大手ブランドが個々に取り組んでいる場合もある。
組合とか協会は、実際にそれを目的として活動しているのだと思う。(活動内容の良し悪しは置いておいて)
しかし、アパレルやブランドの多くはそれは単なる掛け声に過ぎないし、「売るための記号」にしか過ぎない。
特に大手アパレルや大手ブランドにとって、「売るためのポーズ」に過ぎない。
先日、お会いした退職を決めた人によると、それまで長年、太い付き合いをしてきた大手アパレルが、販売だけでなく、それに伴って製造もグローバル化に取り組み始めたので、国内の製造業者との取引を大幅に減らすことを通達してきたという。
また、別の大手は、以前からグローバル化に取り組んでいたが、それをさらに強化して、国内の製造業者を3社切り捨てたところ、その3社とも即座に倒産してしまったという。
これが大手の実態であり、「日本製ガー」と言っているのは単なる「売らんがためのポーズ」に過ぎない。
ちなみに笑えることに、両大手ともに「日本製」を売りにした商品ラインや単品アイテムを大々的にプロモーションしている。
さすが大手は二枚舌がお得意ですよね♪
まあ、こんな感じで、国内の製造加工業者や産地企業は内部的要因と外部的要因の両方によって、さらに倒産・廃業に追い込まれつつあるということである。
製造加工業者や産地の人が思っているように、「どこかの大手ブランドが救世主になってくれる」ことは絶対にありえない。
じゃあ、どうする?という話である。
余力のあるうちに廃業するのがもっとも賢明だろう。
追い込まれてからの倒産では、経営者自身が路頭に迷うことになる。
どうしても生き残りたいなら、これまで失敗し続けてきた「自立化」に取り組むほかない。
アホの一つ覚えみたいに自社オリジナルブランドを開発することだけが「自立化」ではない。
今まで「特定の大手と太い取引があるから」ということを盾に、受注先の新規開拓をしてこなかった「待ちの姿勢」を改めることも立派な自立化といえる。むしろこちらの自立化の方が様々なリスクは少ないだろう。
多くの製造加工業者によるオリジナルブランドが成功しない理由は、ブランドとしてのノウハウがないことは言うまでもないが、ブランド開発がゴールだと勘違いしてしまうところにもある。
ブランド開発はゴールではなくスタートでしかない。(Jwalkの歌詞ではないが)
そして、ブランドとしてスタートすると、今度はブランド間での競争を勝ち抜かねばならない。
背景が縫製工場だとかそんなことは関係ない。
背景が縫製工場だろうとキャバクラだろうと関係なく、ブランドとして拡大再生産をし続けなくてはならない。
消費者からしても背景が縫製工場だろうが、染色工場だろうがキャバクラだろうが関係なく、その商品自体が良いかどうかが重要になる。
それにしても、メディアが考えているほどには、「日本製品」は盛り上がっておらず、国内の産地企業、製造加工業者は最終段階にまで追い詰められているというのが実態である。
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