月別: 9月 2016 (1ページ / 2ページ)

すべり止めのゲルなしでも脱げにくい無印良品のフットカバー

 関西はときどき涼しい日があるものの、厳しい残暑が続いている。
気温は30度を下回る日が多いが湿度が高く、イラっとする。
ただでさえ短気なのに、更年期障害の影響か、夏の暑さと湿度の高さにはイライラさせられっぱなしである。

そんなわけで今年もまだ半袖生活を続けており、この調子なら10月の下旬まで半袖生活が続きそうだ。
ズボンは7分丈が中心でフルレングスを着用するのはこれもまた10月下旬ごろになるだろう。

あと20日くらいは筆者の半袖・7分丈パンツ生活が続く。

クールビズの影響もあって真夏の間は短パン、7分丈パンツ姿の男性が増えた。
靴もそれに合わせて履き口の広いローファータイプやそれに似せたスニーカー類が選ばれる。
履き口が広い靴を履くと、靴下をどうすれば良いかということになり、近年丈の短いスニーカーソックスが定番化していたが、ローファータイプの靴を履くとスニーカーソックスでもバランスが悪く、もっと面積の少ないフットカバーと呼ばれる靴下が重宝される。

しかし、フットカバーは履き口が大きいがために保持力が弱く、靴との摩擦によってすぐに脱げてしまうという欠点がある。
この欠点を克服すべく、各メーカーはさまざまに工夫を凝らすが、実現できているメーカーとそうでないメーカーがある。

昨年に買ったグンゼがOEM生産したイトーヨーカドーのフットカバーと、グンゼのオリジナルブランド「トゥシェ」は脱げにくいフットカバーの双璧だった。
その前に買ったライトオンの明細柄フットカバーと合わせて、筆者の中では、「脱げにくいフットカバー」ローテーションの3本柱で、それ以外の製品との格差が大きかった。

IMG_1802

(脱げにくいライトオンの迷彩柄フットカバー)

登板過多が祟ったのか、グンゼのトゥシェのつま先が破れてしまったので、また新たなエースを探すためにいくつかのブランドでフットカバーを買ってその「脱げにくい度合」を比較してみた。
今回はそんな内容である。

まだ本格的に暑くなっていない時期に無印良品で3足990円のキャンペーン中だったフットカバーを買った。
通常のフットカバーとは形成の形が違うらしく、脱ぐと他社商品とはその形状が大きく異なる。
またかかと部分には、フットカバーおなじみのゲル状のすべり止めがない。まるっきり編地だけで構成されている。

ためしに買って履いてみたところ、かなり優秀で、ほとんど脱げない。
ゲル状のすべり止めなしの商品では史上最高に脱げにくいと言っても過言ではないだろう。
それほどに優れている。これは新エースである。

IMG_1803

(脱ぐとこんな形状になる無印良品のフットカバー)

IMG_1804

(履くとこんな感じ)

続いて、ジーユーで3足390円に値下がりしたフットカバーを買ってみた。
これは履き口がかなり広い。
本当に足先だけを生地が包む感じだ。かかとにはおなじみのゲルが塗られている。

が、これはかなり脱げやすく、一度か二度履いたきりで放置している。
野球でいえば二軍である。

次にユニクロで、期間限定で3足790円に値下がりしていたフットカバーを買ってみた。
これはジーユーよりは履き口が狭いが、他社と比べると標準的といえるだろう。

生地が厚手のものから薄手のものまでバリエーションがあり、厚手のボーダー柄2足と薄手の無地を1足買ってみた。もちろんかかとにはゲルが塗られている。
履き比べた結果、厚手のボーダーの方はかなり脱げやすい。二軍である。
薄手の無地はまあまあの保持力だったが、昨年のエースに比べると物足りない。
ローテーションの谷間に登板させる感じである。

8月のお盆明けのころに、イトーヨーカドーの平場で4足1000円に値下がりしたフットカバーが売られていた。
イトーヨーカドーのオリジナルだが、ナイガイがOEM生産をしており、ラベルにそう書かれている。
元値は1足350円だ。

IMG_1799

薄手生地を4足買った。これもかかと部分にはゲルがある。
履いた結果は、ユニクロの薄手無地と同等くらいの脱げにくさで、1・5軍かせいぜいがローテーションの谷間に登板させるくらいである。

そんなわけで、今夏は無印良品で買った以外はすべてはずれだったといえる。

特に設計思想に関していえば、全体の形状を考慮することで、かかと部分のすべり止めゲルをなくしても脱げにくいという点においては無印良品のこのフットカバーはかなり優れているといえる。
あまり話題にはならなかったようだが、ゲルなしで脱げにくいという機能性を付加し、それを形状を工夫することで実現した点においてはこの商品はもっと称賛されるべきだったのではないかと思う。

来年は、昨年からの生き残りのグンゼとライトオン、今年新たにラインナップに加わった無印良品のゲル無しを越える新エースを購入することができるだろうか。

フットカバーだけは購入しないとその脱げにくさの度合いが分からないから困ってしまう。
下手をすると二軍用製品が溢れかえることになってしまう。

やれやれである。



「風合いの良さ」とか「味」を強調するだけの高級素材は理解されにくい

 昨今、高額な洋服は売れにくいとされている。
一般人からしてみれば、高額な洋服と安い洋服の何が違うのかよく分からないのである。

物作りガー的な人からすると「消費者が劣化している」とか「物の価値がわからない人が増えている」とかいう理屈になるが、でも、いくら憎悪してみてもわからんもんはわからない。
わかるようになるまで啓蒙活動をするか、今の消費者が評価しやすい物を作るか、そのどちらかしかない。
どちらもできないなら、それは仕方がないからどうぞ淘汰されてください、ということになる。

いつも書いているように、見た目がほとんど変わらなくなっていることは大きな理由だと思う。
百貨店アパレルの企画力、MD力が低下したと同時に、低価格ブランドの企画力・MD力が向上しているのが原因である。

例えばファーストリテイリングにはワールド出身者が本当にたくさん在籍している。
アダストリアにもワールドやらTSIの出身者がたくさんいる。

早い話、百貨店アパレルのノウハウは業界に拡散してしまった。
それに加えて長引く凋落ですっかり百貨店アパレルが保守的になってしまい、もっとも安全パイだと考えられる売れ筋の再生産に終始してしまったから、商品の見た目が変わらないという状況に陥っている。

売れ筋の再生産から脱却することは可能だが、流出したノウハウを回収することは不可能である。

だから、今後も低価格商品の見た目は最低でも今と変わらない。
以前の状態に戻ることは絶対にない。

今度は素材のことを考えてみる。

素材の良し悪しも正直なところあまりよくわからない。
超高級素材ですごく柔らかいとか手触りが良いとかそういうことはわかるが、でも安い素材でもそれなりによさそうな風合いをしていたり、手触りが良い物もある。
某大手セレクトショップのバイヤーがカシミヤ0%をカシミヤ70%だと言いくるめられて、誤表記をしたまま店頭で販売したことはそれを証明している。

担当バイヤーがちょっとアレすぎではないかと思うが、それを差し引いてもカシミヤが入っているように感じるくらいの素材だったということもできる。一般消費者なら確実に識別できなかっただろう。

モノづくりのプロに解説してもらうと、違いは判る。
しかし、逆にいえばそれくらいでないと違いが判らないということもできる。

「この風合いの良さが」とか「この味が」とか言われても、まあ、わからんではないが、すごく納得できるかというと微妙なところである。

だから、この味のある素材だからン万円ですと言われても、「そうですか」としか答えようがない。

この「風合い」とか「味」のみを追求する物作りの姿勢だけでは、今後永遠に高い価格で売れるようにはならないのではないかと思う。

個人的にはそこにプラスアルファの要素を加えてはどうかと思う。

例えば機能性の付加
ゴアテックスという機能性素材がある。透湿防水機能である。
でもゴアテックスは高額である。
現在ではほぼ同じ機能の廉価素材もあるが、ゴアテックスはブランド化しており、高値でも売れる。
筆者なら7990円のブロックテックパーカで十分だが。

次にわかりやすいネーミングを与える。
これはユニクロが得意とするところだが、例えばブロックテック、ヒートテック、エアリズムなどである。
ネーミングだけでどんな機能があるのかなんとなくわかる。

ネーミング変更はアパレル業界が元来、得意とするところである。

今夏トレンドとなったスライドサンダルだが、もともとはシャワーサンダルと呼ばれていた。
海水浴やプールの前後にシャワーを浴びる際に使われる形のサンダルだからだ。
また便所サンダルと呼ぶ人もいた。(筆者である)

_UY500_

シャワーサンダル、便所サンダルという呼び名のままなら、果たしてトレンドアイテムになったかどうか。
名称を変えたからヒット商品になるという事例はけっこう存在する。

じゃあ素材にもそういう工夫を凝らしてみればどうだろうか。
洋服にも同じようにネーミングを工夫してみればどうか。

「100双糸超細番手使用のシャツ生地」では一般消費者はそれが高級素材なのか何なのかわからない。
「ムラ糸使い12オンスデニム素材ペインターパンツ」というのは商品名としてどうなのだろうか。
果たしてどれだけ一般消費者に対して訴求力があるのだろうか。

この辺りを工夫することで、高価な素材と安い素材が消費者にもわかりやすくはならないだろうか?

機能性の付加と、ネーミングの工夫。

これをもう少し真剣に考えてみてはどうか。「風合いガー」「味ガー」を百万回連呼しても消費者の認識は変えようがない。



閉店ラッシュは日本だけの現象ではない

 百貨店・量販店の大量閉店が話題だ。
百貨店では、北花田阪急、西武八尾、西武筑波、そごう柏、三越千葉、多摩センター三越の閉店が発表された。
また東洋経済では「伊勢丹松戸、伊勢丹相模原、伊勢丹府中も閉店候補に挙げられている」と掲載されている。

量販店だとイトーヨーカドーの20店舗の閉鎖、ユニーの25店舗の閉鎖がすでに発表されている。

アパレルの直営店ではワールド、イトキン、オンワード、TSIの各社が大量閉店を発表して昨年から話題となっている。

こうしてみると日本が不景気だという印象を受ける。
実際、今秋開催の展示会を回っても、あまり良い話は聞かない。
苦戦傾向のブランドの方が圧倒的に多い。

しかし、アメリカも大量閉店が次々に発表されている。
アメリカの市場に詳しいマックスリーさんのブログから引用しよう。

http://www.apalog.com/maxre/archive/238

今年、倒産した企業店舗若しくは一部を閉鎖した店舗をざっとリストアップしてみると・・・

フィニッシュライン(150店舗)ピアワン・インポーツ(100店舗)シアーズ(78店舗)コールズ(18店舗)スポーツオーソリテイ(140店舗)メンズウエアハウス(250店舗)パックサン(175店舗)オフィスデポ(300店舗)エアロポステール(154店舗)ラルフローレン(50店舗)

カナダのジョーフレッシュはマンハッタン店を全店閉鎖し、JCペニーでの販売も契約期間が終わったと思われ完全に姿を消してしまいました。セレクトショップや細かい企業をあげればもっとありますが、これだけでも1415店舗。既に閉店した店もあれば、これから3年内に閉鎖というのもあります。今年の特徴として売り場面積の大きな店舗が多く含まれています。

最近では米国コーチが、卸売りをしているデパートから、トータル店舗数の25%にあたる、250店舗の撤退を発表しました。昨年は、自社アウトレット等で、低価格商品を露出しすぎて、ブランド価値の低下、昨年は70店舗の閉鎖を行い、新デザイナーの元に立て直しを計っている真っ最中。デパートでも、ハンドバッグの売り上げが落ちている事から投げ売り状態。卸売り店舗の閉鎖は同様の処置と言える。

そして、なんといっても、最も衝撃的だったのが、米国最大のデパート、メイシーズの100店舗の閉鎖。

である。アメリカも相当に洋服が売れにくくなっている。

そういえば、先日、ラルフ・ローレンも「デニム&サプライ」の廃止を発表した。

そして、中国でも大閉店ラッシュが始まったようだ。

中国小売業は「死屍累々」の惨状 閉店ラッシュはネットの影響でなく中国経済そのものの低迷が原因だ
http://www.sankei.com/column/news/160922/clm1609220004-n1.html

8月末に山東省青島市の大型百貨店、陽光百貨と全国展開の百貨大手である百盛集団の重慶市万象台店、さらには大連で有名な久光百貨が相次いで閉店したことを取り上げ、深刻な業績不振が閉店の原因であると分析している。

 大連久光百貨の場合、今年上半期の売り上げが前年同期比で48・8%も激減した。重慶市万象台店のオーナーである百盛集団全体の売上総額も前年同期比で12%減となったという。その結果、百盛集団は万象台店だけでなく、今年に入ってから西安市の東大街店と重慶市の大坪店も閉店させることとなった。

 記事によると、売り上げ急落・業績不振は今、全国の百貨店業が直面する共通の問題となっている。たとえば全国展開の新華百貨は今年上半期の純利益が69・2%も減り、杭州解百集団のそれは20・5%減となった。

 こうした状況を踏まえて、北京商報記事は今後、全国における百貨店の「閉店ラッシュ」はさらに広がっていくだろうと予測している。

スーパー業の場合、華潤万家という全国チェーンが今年に入ってから727店舗を閉店させ、「閉店ラッシュ」の最高記録を更新したという。有名なカルフール・グループも中国全土で18店舗を閉店し、人人楽というスーパー大手は11店舗を閉めた。

 上述の「百度百科・閉店ラッシュ」によると、中国小売業の閉店ラッシュは昨年からすでに始まっている。2015年の1年間、全国の小売業界で約865店舗も閉店の憂き目にあったが、今年に入ってから、この勢いはさらに増しているという。

今月5日、中国社会科学院財経戦略研究院は「流通青書・中国商業発展報告(2016~17)」を発表したが、その中で、今後5年以内に、中国全国の「商品交易市場」、つまり百貨店やスーパーやショッピングセンターなどは、約3分の1が淘汰(とうた)されていくと予測している。

とのことで、中国の閉店ラッシュの原因は、明らかに経済失速である。
個人的には中国という国の経済成長が大幅に伸びるということは今後起きないと見ている。

一方、米国の衣料品不振の原因についてマックスリーさんは

これだけの店舗が一気に閉鎖に追いやられたのは、様々な事情が複雑に絡み合っており、ファストファッションの登場から、インターネット販売への移行、アウトレットやオフプライス店人気、若年層がモールへ行かなくなった、アスレジャートレンド、消費者が物よりも体験を求めている、生活の中にデジタル機器が真に入り込んだ人類最初の世代、ミレニアルズの存在、等々。
ひと昔前の様に、一つのトレンドが終わったら次ぎの仕掛けをというだけでは対応しきれない複雑な事情が交差しています。

と分析しておられるが、日本の大量閉店の原因もほぼ同じではないかと思う。

ただ、細かい点でいえば日本のアスレジャートレンドは米国とは違うし、若年層がモールへ行かなくなったということもない。逆に地方の若い人はイオンモールには足を運んでいる。
しかし、インターネット販売への移行、低価格店の人気、物よりも体験という点は日本でも共通する原因といえる。

しかし、いずれにせよ日米ともにオーバーストアで供給過剰であることは間違いない。
中国は「鬼城」と呼ばれるゴーストタウンがあちこちに作られているから元からオーバーストアなのである。

さて、このオーバーストアの時代にどのように生き残るつもりだろうか。
今までと同じようなやり方では閉店ラッシュに巻き込まれてしまう。
ネットショップを始めただけではすでに何十万店もあるネットショップの海に埋没してしまう。

いまだに恐ろしいほどの無邪気さで「ネット通販を始めたらすぐさま何百万円・何千万円も売れる」と妄信している業者がいて驚かされてしまう。

ネットショップ妄信者がいる一方で、海外進出に無邪気な期待をかける人々もいる。
しかし、米中ともに大量閉店ラッシュを迎えている上に、欧州は景気が良くない。海外進出すること自体は拡販のためには当然といえるが、無邪気に過度な期待をするのはちょっとおバカさんだといえる。

衣料品のビジネス環境は国内外ともに厳しいという前提に立って事業計画を立てるほかない。

北京レポート 腐食する中国経済
大越 匡洋
日本経済新聞出版社
2016-08-26



中国バブル崩壊の全内幕
宮崎 正弘
宝島社
2016-07-01


製造加工業は「夢の世界」ではない

 少し前に業界紙に「産地企業への専門学校生の就職が増えた」という記事が掲載されていた。

アパレル企業にデザイナーやパタンナーとして就職することは狭き門になってしまったから、「作り手志望」の学生がいわゆる、製造加工業へ就職するというのは一つの方策だといえる。

織布工場、染色加工場、縫製工場なんかに就職を希望する学生や若者をたしかに最近はよく見かけるようになった。

しかし、ちょっと気になることもある。

先日、久しぶりに工場へ伺ったのだが、そこも最近は「求人募集していませんか?」という若者からの問い合わせが増えているそうだ。
2,3年前からそういう問い合わせに対して何人か採用してみたところ、どの人も長続きせずに辞めてしまった。
長続きせずに辞めることは仕方がないにしても、そこに至るまでのエピソードはちょっとひどいので、聞いているうちに笑えてしまった。

例えば、勤務日初日から無断欠勤した人。

例えば、立ち仕事が多い工場内でなぜかソールの固いワークブーツをかたくなに着用し続け、足が痛いとしょっちゅう泣き言を言っていた人。(スニーカーは頑として履かなかったそうだ)

例えば、勤務開始早々から10分の勤務時間超過にも残業代を申請しようとした人。

ざっとこんな感じである。

また別の工場では、ファッション専門学校の新卒を採用したところ、1カ月くらいで退職を願い出られた。
思っていた仕事とは違うと言いたかったのかもしれないが、その元学生は何度も工場見学やインターンを経験していたから、職務内容が予想できなかったはずはないのだが。

製造加工業を目指す学生・若者の全員がこうだとは思わないし、職業人たる自覚を持った人も多いとは思うが、ちょっと認識が甘すぎる人も多いような気がする。
ファッション専門学校生と断続的に接触していてもちょっと認識が甘い人が多いと感じることもある。

製造加工業を志望するファッション専門学校生に多く見られるのが「売り上げノルマに追われる営業や販売はイヤだから、そういうことに追われない製造加工業へ行きたい」という動機である。

だが、46歳のオッサンからすると、製造加工業へのそのとらえ方は間違っているのではないかと思う。

もちろん、工場のラインで働く工員に売上ノルマが課せられることはほとんどない。
だからといって、工員が「私は売上高とか関係ないし、興味もない」なんてことは許されない。
結局、工場が儲からなければボーナスも支給されないし、毎年の昇給も望めない。
初任給が20万円だったとして10年後も20年後も給料が20万円のままなら生活は厳しい。

長く工場に勤めていれば、そのうちに経営にも携わるようになるだろうし、自らが経営しないまでも管理職になったり、経営陣のメンバーになったりすることもあるだろう。

そうすれば、完全に「金勘定」が業務の一つに加えられることになり、売上ノルマだとか利益率だとかそういうことを気にしなくてはならなくなる。
そういう立場になっても「金勘定」にはまったく興味がないなんて言っていたら、工場にとっては戦力外である。
プロ野球選手なら確実に戦力外通告されてしまう。

国内の製造加工場がどんどんと倒産・廃業に追い込まれているご時世である。
製造加工場こそ「金勘定」がもっとも必要な仕事であり、「金勘定」なしには存続はできない。

物作り志望の学生や若者は、製造加工業という仕事に対して、山にこもって生活している陶芸作家とか木彫り作家とかそういうイメージを抱いているのではないかとちょっと疑っている。

もしそういうイメージを抱いて製造加工業を目指しているなら、そんな間違ったイメージは今すぐに捨て去るべきで、どうしてもそういうイメージを追いかけたいというなら、陶芸作家とか木彫り作家を目指すべきだろう。

繊維製品の製造加工業は、れっきとした工業であり、アナログな手作業の部分はあるものの、完全に量産を目的とした作業である。
特殊な場合を除いては、一人の工員が1着の服を完成まで縫製するなんてことはなく、ある程度の流れ作業で部分部分の縫製を担当する。

1着をまるまる自分で縫製しました、なんていうのはオーダーメイド服の縫子さんくらいだろう。

営業や販売をしたくないから製造加工業というのは単なる逃げではないのか。
応対に「社会常識」が求められやすい営業や販売が嫌だと言っている人は、そういう「社会常識」がない場合が往々にしてある。だから勤務初日から無断欠勤なんていうことを平気でやってしまえるのだろう。

製造加工業は金勘定とは無縁ではないし、「社会常識」とも無縁ではない。

製造加工業は、楽園でも優しい世界でもない。
「社会常識」のない人が逃げ込むための「夢の世界」ではない。

他の職種同様に金勘定も「社会常識」も必要である。

専門学生や若者が製造加工業を目指すなら、そこを踏まえたうえで目指すべきだろう。

なぜ、日本の製造業はソリューションビジネスで成功しないのか?
株式会社ワイ・ディ・シー共動創発事業本部
日刊工業新聞社
2016-10-01



リレーブログ「私が服を好きになった理由」

 今日は趣向を変えて。
ツイッターでリレーブログが回ってきたので、その題材で書いてみる。
「私が服を好きになった理由」である。

「え?お前服好きじゃないやん」という声が聞こえてきそうだが、根っから嫌いではない(笑)。

ファッション業界の人ほどの思い入れはないかもしれないが、近所のオッサンよりは「仕事の対象物」としては好きである。
根っから嫌いなら、こんな儲からない業界はもっとさっさと足を洗っている。
逆にそこそこ好きだからこの年まで、何の成果も残さずに生き恥を晒しているのだろうと思う。
いやはや後悔先に立たずである。

さて、このブログでも何度か書いているように、大学を卒業するまで、母親がジャスコかイズミヤで買ってきた服を着ていた。
夏用のTシャツ類が7,8枚、冬用のトレーナーが3枚くらい、厚手綿織物のズボン(ジーンズやチノパンではない)が4枚くらい、あとはジャンバー(ブルゾンとかジャケットなんて洒落たものではない)を2~3枚、そんなレパートリーで年間を過ごしていた。

すべてジャスコかイズミヤのカジュアル平場に売っていた1900円くらいの洋服である。

1970年生まれだから、中学を卒業するときは86年、高校卒業は89年だった。

中学・高校は制服だったので結局、カジュアルを着る機会はほとんどない。
当時流行していたジーンズは、ハイウエストで太ももにゆとりがあるのに裾幅が絞られている「スリムジーンズ」だった。おまけにケミカルウォッシュである。
今のテイパードジーンズとはまたシルエットが異なり、いわゆるモンペみたいな形をしていた。

で、大学に入学するといきなり制服がなくなるのだが、別に色気づいていないし、モテたい願望もそんなになかったので、中学・高校のころのカジュアルを着て通っていた。

友人たちはバイトをしたりして、だんだんとリーバイスとかボブソン、ラングラーなんかのジーンズを穿くようになっていった。
そんなわけで、好奇心から梅田のジョイントなんていうジーンズ専門店を覗くようになった。

初めて覗いた時には衝撃が走った。

なぜならジーンズが高かったからだ。
リーバイスとかラングラーが6900~8900円もしていた。
自分が穿いているズボンは1900円なのに。
もちろんそんな高いズボンは1枚も所有していないし、買う勇気もない。

こんな高い物を買う意味がわからない。まあ、そんな感じだったが、友人たちは買っていた。
「こんな高いズボンを平然と買ってるこいつらすげえわ」というのが偽らざる気持ちだった。

そんな感じで大学2年の終わりか3年の終わりごろだったと思う。

90年か91年のことである。

ケミカルウォッシュのモンペスリムジーンズの流行は終わっており、ジーンズのトレンドは定番ストレートになっており、大学生の男子はやたらとリーバイス501が好きだった。
そんな記憶がある。

さすがにカジュアルウェア生活も3年目くらいになるとちょっといろいろと試してみようと思い始めている。
しかし、ネックは価格である。7900円という大金をズボンごときに平然と支払える鋼のメンタリティはない。

たぶん、トム・クルーズ主演の映画「トップガン」が流行っていて、MA-1ブルゾンも流行していたような記憶がある。
でも今のスマートなMA-1ではない。あのダボッとした、工事現場の作業員御用達のあのMA-1ブルゾンである。

Ma1black

MA-1ブルゾンとリーバイス501を合わせるのが人気だった。

そこでジャスコやイズミヤの平場で501と同じ形の1900円のジーンズを探してみたが見つからない。
見つからないというよりそんな商品は当時存在していないのである。

デニム生地が違う、形が違う、洗い加工が違う、同じデニム生地のズボンとはいえ、イズミヤジーンズとはすべてが異なっていた。

自分には縁がなかったと簡単にあきらめていたころ、友人の一人が、501を安く売りたいと言ってきた。
理由を尋ねてみると、裾上げの長さを失敗したのだそうだ。
長すぎたのか短すぎたのか忘れたが、どちらにしろ丈の長さを指定しまちがえたそうだ。

で、3000円か4000円で引き取ってくれと言われて、それでも愛用している1900円のデニムズボンよりは高いので3日ほど熟慮した。熟慮した結果、投資してみようと決心ができたのである。

友人から受け取って穿いてみると、今までのイズミヤデニムズボンとは違う。
おお、やっぱり高いだけのことはある。素直にそう思えた。

もちろん、顔が良くて体型の良い奴にはどんなに服装を工夫しても勝てない。
それは永遠不変の絶対真理である。
顔と体型の良い奴が絶対的勝者である。
しかし、服装を工夫することでマシには見える。それをその501で感じた。

それから501を卒業まで愛用して、就職活動に失敗して、イズミヤの子会社だった安物の洋服販売店チェーンに就職した。
就職してからは仕事なので一から独学をした。

そうすると洋服を工夫すると、上手くいけば顔と体型の悪さを少しマシに見せられることがわかった。
洋服と髪型の工夫で顔と体型の悪さは少しくらいはカバーできるのである。

そうやっていろいろと工夫を凝らすことを続けているに従って、洋服というかファッションを好きになっていった。
まあ、ファッション業界人に比べるとその好きという度合いは浅いものだったが。

そこからこの業界で20年以上生き恥を晒している。

2005年くらいまでは、本当に「高い服」と「安い服」はデザインや色柄、シルエットなどの見た目も使用している生地も違っていた。
リーバイス501とほとんど見分けがつかないような低価格ジーンズは存在していなかった。
メンズビギに売っているようなデザインジャケットはイズミヤやジャスコの平場には売っていなかった。
だからみんな高い服を買っていたのである。
ケチな自分でさえ、略礼服ではない黒のスーツを、アトリエサブで5万円も支払って買ったのである。
ラングラーやボブソンのジーンズを7900円も支払って買っていた。

98年~2000年くらいまでのどこかの間で、ワールドの神戸本社に取材に行った際に、ついでにタケオキクチの切りっぱなしメルトンジャケットを割り引いてもらったとはいえ3万円弱も支払って買ったことがある。
このジャケットは今でも冬には着ている。かれこれ15年以上着ているから本当にお買い得だったと思う。

メルトンの生地の分厚さ、シルエットの美しさ、縫製の丈夫さ、切りっぱなしでフロントが比翼ファスナーになったデザインの奇抜さ、どれを取っても似たようなものは低価格ブランドにはなかった。

しかし、2005年以降の業界を見ていると、明らかに百貨店ブランドのクオリティやデザイン性が凋落して、低価格ブランドのそれらが改善されており、2010年代になるとほとんど見分けがつかなくなっており、下手をするとユニクロの方が価格が安くて品質が高い商品まで出てきた。

ファッション業界人は変な謎のプライドを持った人が多いから、そういう人々はユニクロに憎悪を向けたり、グローバルファストファッション追放キャンペーンなんてくだらないことに情熱を傾けている。
そんなことはするだけ無駄だ。ユニクロをいくら憎んでも百貨店ブランドの売上高は回復しない。
グローバルファストファッションは追放できないし、万が一にも追放できたとしても、代わりの低価格ブランドが登場するだけのことである。

それよりも本当に百貨店ブランドの売上高の回復を望むなら、2000年代前半までのクオリティ、デザイン性の回復を追求すべきである。
明らかに低価格ブランドとは異なっていたから、わざわざ百貨店ブランドでみんな買っていたのである。
品質もデザイン性も変わらなくなれば安い方で買うのは当たり前である。
人は似たようなものなら安い方で買う。
ユニクロを憎悪している自称ファッショニスタだって、日々の食料品は安いスーパーマーケットで買っている。
いくらイキったところでそれが実情だ。

大学卒業以降の20年間強、業界を見続けてきてそう思う。

現在の百貨店ブランド不振は、明らかに、品質とデザイン性の低下が原因だ。
逆に低価格ブランドは品質とデザイン性が向上したから支持されている。

そこを見直さない限り、今の状況のまま変わらない。
そう思う。




ド素人の身内にデザインを任せて産地企業のブランド化はいつも失敗する

 産地企業も純然たる下請けでは生き延びることができないので続々と自社ブランドを開発するようになっている。
で、先日、業界紙でそんな特集を読んだ。

記事の内容はまあ可もなく不可もなく、がんばってくださいねという感想しかないが、商品写真を見たところかなり「???」という感じを受けた。
もちろん、撮影が悪いことも考えられる。
また印刷されたのでそれによって見栄えが悪くなったことも考えられる。

もしかしたら実物はかなり良い感じなのかもしれない。

しかし、画像を見ただけの感想でいうなら、ちょっと購買してもらうのは難しいんじゃないかと感じる商品が多かった。

画像を見た感じだと、素人のデザイン画に基づいて素人が縫製したようだった。

ここからは完全に推測だが、商品デザインをもしかしたら工場のオッサンとかにいちゃんがやっていないか?

あと、このブランドのターゲットは?コンセプトは?テイストは?価格帯は?
工場の社長とかオッサンとかが思い付きで設定していないか?練られたものとは到底思えなかった。

多くの繊維の製造加工業者は「物」にはいくらでも金を支払うが、「形のない物」には1万円の金だって支払いたがらない。
ここでいう「形のない物」とはデザインだったり広報だったりブランドプロデュースだったりマーケティングだったりのことを指す。
これらはオリジナル商品を販売するにおいて必ず必要となる要素である。

けれども手に取って見られるような「物」ではない。

1台何千万円、何億円もするような機械を買うことにあまり躊躇はしない。
知っている範囲でいうと、かなり気軽に機械を買う。

が、デザイナーに支払う1万円は異様に惜しがる。どうせ毎晩酒を飲みに行って何万円も支払っているんだからそれをデザイナーのギャラに回せばよいと思うのだが、そうではないようだ。
このあたりの産地のおっさんのメンタルはまるっきり理解不能である。理解したいとも思わないが。

それはさておき。

ブランドスタート時にデザインのプロを使わないことで、当初の投資額は下げられるかもしれないが、走り始めてからの修正に次ぐ修正にかかるコストを考えると、どちらがお得なのかちょっとわからなくなる。
もしかしたら、素人デザインで素人製作から始まって何年も修正し続けていく方がトータルコストは高いのではないかと最近思い始めている。

また素人デザインで始めたことによってブランドがビジネス規模に育つまでの長い月日を考えるとこれもかなり無駄ではないかと思える。

プロを適切に使えば、その半分の年数でビジネス規模に育つ可能性が高い。

このあたりのコスト総額は算出するのが難しいが、実際のところ、開始当初にデザイナー費をケチることがそんなにお得だとは思えない。

それにしてもこういう話は10年前からあって今もまったく変わっていない。

某染工場がデザイナーと契約してオリジナル柄を開発し、その柄を使ったオリジナル製品を作ったことがある。
もう10年前のことだ。

ところが2年目くらいに助成金が切れたのか、彼らが想像したほど(かなり過大な期待を抱いていたっぽい)売れなかったからか、デザイナーとの契約をやめて自社で図柄開発をすると言い出した。

だれが図柄を開発するかというと、ド素人たる社長の息子である。
サンプルを見せてもらったことがあるが、近所のオッサンが描いた落書きと同レベルだった。

これをいろいろな展示会に出品したが、ド素人の落書きが施された商品が受注されるはずもなく、いつの間にかこっそりひっそりブランドは終わっていた。

こんなことをやっている工場は今でも珍しくない。

どうすれば成功するのかということをまとめることは難しいし、その通りにやっても成功するとは限らない。
ユニクロと同じことを今から別の会社がやったって成功するとは限らないのである。

しかし、こうやれば失敗するというノウハウは100%外れない。

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし、である。

こういう産地企業の失敗事例は掃いて捨てるほどあり、どれもこれも同じような理由で失敗している。
産地企業同士の情報網でそういう失敗事例は即座に広まるはずである。
どうして繰り返される失敗事例に学ばないのか。

そういう産地企業のメンタルは本当に不可解で理解不能である。

「形のない物に金は払いたくない」という産地特有のメンタリティーはそろそろ矯正すべきである。
そうでなければ何百年やったって自社ブランド開発なんてできっこない。





産地とデザイナーの協業が成功しにくい理由

 昨今では産地企業とデザイナーの協業が増えてきたが、だからといってデザイナーを起用した産地ブランドが成功する確率はあまり高まっていないと感じられる。
もとからすごく成功するという案件ではなかったが、今もその確率はそんなに高まっておらず、従来レベルのままではないかと感じられる。

さて、産地とデザイナーの協業について繊研新聞などでも折に触れられているが、某ベテランデザイナーからは「そんな取り組みは20年前も30年前にもあったけど、どれもほとんどものにならずに終わっているだけ」と辛辣だがなかなか適切な意見をいただいたことがある。

この某ベテランは、筆者よりも年上でおそらく60歳前後だと思われる(正確な年齢を知らない)が、過去に産地企業とのコラボや産地展示会のディレクションを行ったことがある。
実体験に基づいての意見だといえる。

20年以上前のこの業界の実情は知らないが、18年前に業界新聞に入ったときにはすでに、産地とデザイナーの協業はあった。
例えば、産地展示会でデザイナーブランドのファッションショーを開催したり、そのデザイナーが産地で新規開発された特別な生地を使ったりしていた。
90年代後半にはすでにそういう取り組みがあって、成果がほとんど出ていないが、現在まで連綿と続いてきた。
ベテランがいうように、この18年間だけを見ても別に珍しい取り組みではない。

ではなぜデザイナーを起用した産地企業のブランド作りは成果が出ない場合が多いのか。

産地企業や産地全体のブランド会議に何度か出席した経験上からいうと、大きく2つの理由がある。

1、産地企業や産地がデザイナーに丸投げをしすぎている
2、デザイナー側の能力不足

この2つが絶妙なバランスで混然一体となって不幸な結果を招くケースがほとんどである。

まず1である。
産地や産地企業に多いのが「売れるデザインにしてよ」なんていうあいまいな仕事の発注の仕方である。

いやいや、オッサンよ、ブランドコンセプトは?ターゲットは?販路は?テイストは?

これらがクリアにならないとデザイナーはデザインができない。
これらの組み立てまでデザイナーに丸投げするということだろうか?
それならデザイナーの職分ではなく、もはやプロデューサーである。

ブランドを立ち上げたいのだったら、嘘でも仮でも事業主がそのあたりは提示しなくてはならない。
デザイナーとの話し合いの結果修正されるのは構わないが、すべてを最初から丸投げというのはあまりにも無責任である。
丸投げということはデザイナーに全権委任することになるから、デザイナーが好き勝手なデザインを上げても文句は言えない。
それで文句を言うなら、「お前が自分でやれよ」って話になる。

次に2である。

デザイナーという人々は「売ること」にすごく長けていない場合が多い。もちろん例外はいる。
マーケティングとかほとんど気にしていない(ように見える)人も多い。

まあ、ニーズを聞いて追随するのは賢い戦略ではないが、かといって「ニーズを作ってやるぜ」なんてことは、挑戦することを否定はしないが並みの人間には不可能だ。
で、多くのデザイナーの場合、「ニーズを作る」能力に関しては並みの人間と変わらない人が多いように感じる。あくまでも体感的にだが。

変に意気込んでマーケティングに基づかないでモノを作ると、なんやよく分からない独りよがりの製作物が出来上がってしまったりする。

自分の趣味の範疇でやるなら大いにけっこうだが、一応売り物を目指しているならそれはどうかと思う。
あくまでも「デザイン」だから「アート」ではないわけで、売り物にしなくてはならない。
デザインはあくまでも客観性・機能性が求められる。主観的で良いのはアートだけである。

また、「こういうものを作るのはどうでしょう?」という提案の際に具体的なプレゼン物があまりない。
けっこう口先だけで説明する人もいる。

これまで存在しなかったものをプレゼンする際、言葉だけで相手を納得させるのは不可能である。
これまでの見分の範疇から外れたものを人は理解しない。
その範疇外のものをどうやって理解させるのかがプレゼンのコツになる。

そのコツに対しては様々な意見があろうが、先日ご紹介したカルチュアコンビニエンスクラブの増田社長のお言葉を拝借すると、

・リアル化
・実績を示す

が重要になる。

デモ版とかサンプルとか画像とかそういう「リアル化」である。
で、そういう似たような事例を展開した結果どうなったかという「実績」を示す。
自分の過去の実績でも良いだろう。あんまり実績を盛り過ぎると繊維・ファッション業界に跳梁跋扈するアレオレ詐欺になるからご注意を。

これで相手は理解が深まりやすくなる。
もちろん百発百中ではないが、命中精度はこれまでよりは高まるだろう。

デザイナーと産地との協業、デザイナーを起用しての産地ブランド作り、いずれの動きも否定しないし、これでもそれなりに応援はしているつもりだが、以上のようなことをデザイナー、産地側ともに念頭に置いて活動を見直してみてはどうか?

おそらくこれまでよりは成功確率が高まると思うのだが。


情報デザインの想像力―イメージの史学
藤本 貴之
プレアデス出版
2005-02


産地企業が自社ブランドを成功させるためには「助成金ゴロ」を排除すべき

 先日、知り合いの工場へ行った。
国内の生地工場も染色加工場も縫製工場もこれまでの単なる下請け業では生き残りが難しい。
一部の例外はあって、大手ブランドとガッチリ組んでいるところは別だが、それとてもいつ契約が終了するかもわからない。未来永劫同じ条件で契約が続く保証は存在しない。

下請けから脱して自立したメーカーになるために行政からは補助金や助成金が支出される。

しかし、この助成金を使って本当に自立化したメーカーになった企業は数少ないのが実情である。
だいたい3年間支給されるが、ほとんどの企業はその3年で新規事業をやめてしまう。

いくつかの産地企業を間近で見てきたが、助成金事業にはたいてい、助成金ゴロみたいな人が介在する。
一般的な新聞で紹介される事例では著名なデザイナーやプロデューサーと組む事例が多いが、著名人を誘致できる事業は少数派で、大多数は筆者のような外部の人間からすると「誰?これ」というレベルの知名度の人が多い。

もちろん、知名度の高い低いは根本的な問題ではない。
デザインなりプロデュースなり営業なりに高いノウハウを所有していればむしろ安い買い物である。
が、そういう人は往々にしてデザインでもプロデュースでも営業でもあまり能力を持っていない。
なんだかわからないがコーディネイターのような立場をとることがほとんどで、そのコーディネイト能力にも疑問がつく。
この手の人はだいだい中年以上の年代で、あちこちの産地でお見かけするが、産地間以外の場所ではほとんどお会いすることがない。

某縫製工場では「ある生地工場のオリジナル製品を製作する依頼を受けたが、そういうコーディネイターのような人が介在してきて、デザインをするわけでもなく、副資材を手配するわけでもなく、ブランドプロデュースをするわけでもなく、それでいて手数料を何十万円か助成金の中から手にしている」と言って首を傾げている。
これはほんの一例で、こういうことが助成金事業では珍しくない。

こういう助成金ゴロともいうべきコーディネイター?の仕事の大半は産地組合や行政窓口の会議に出席することだけである。

ある産地に、補助金・助成金申請にめちゃくちゃ強い人がいた。行政の窓口からその責任者まですべてを知り尽くしていて手を尽くして補助金・助成金をねじりとってくる剛腕だった。
こういう人は産地に対してはまだ貢献している。何はともあれ資金を分捕ってくるからだ。

助成金ゴロと呼ばれる人たちにはそこまでの剛腕さもない。
本当に会議に出るだけの簡単なお仕事だったりする。

業界全体を見回しても、ここ10年間で産地企業がブランド化できた事例はそれほど多くはないだろう。
いずれも好き嫌いは別にしてみると、有名なところだと

佐藤繊維、近藤ニット、今治タオル、ネストローブくらいだろうか。

知名度が低いブランドだともう少しいろいろと出てくるだろう。

佐藤繊維はカリスマ社長の世界観を全面的に打ち出した特殊な製品が評価されているが、あの世界観を万人が真似ることは難しい。
今の工場の社長があんなカリスマを発揮することも不可能である。

真似るとするなら、いわゆる一般的なアパレルブランドであるネストローブだろう。
そこまで特殊なテイストではないブランドの組み立て方の参考事例にはなるだろう。

http://nestrobe.com/

業界紙にも経済誌にもあまり掲載されないが、このブランドは元は縫製工場である。
ネキストという会社がブランドを運営するが、この会社は大阪服装縫製工業組合の組合員名簿に名前を連ねている。

http://www.ho-you.or.jp/member/member.html

で、ブランド立ち上げの沿革だが、、独立行政法人中小企業基盤整備機構のウェブサイトに詳しい。

http://www.smrj.go.jp/index.html

その中の

http://www.smrj.go.jp/keiei/dbps_data/_material_/common/chushou/b_keiei/keieiseni/pdf/34668-080-087.pdf

である。

昭和25年創業のネキストは、平成16年度の自立事業をきっかけに自社 ブランド「ネストローブ(nest Robe)」を立ち上げ、 1年弱で東京・青山 に直営店をオープンした。

とある。

さらに

ブランドを生産面から支えるのが大阪本社の縫製工場だ。木戸は「従来 のカットソーのOEM事業で培ってきたものづくりのノウハウとクイッ クレスポンスの生産体制があったから成功できた

ともある。

もともとはカットソーのOEM生産を手掛けていた縫製工場なのである。

生地工場や染色加工業、縫製工場などが自社ブランドを立ち上げる場合、かなり参考になる事例といえるが、取材嫌いなのか業界紙でも経済誌でも記事を見かけたことがない。

ただ、開始したのが今から12年前なので、その当時の社会情勢とはまた細かな部分で変わってきているので、そのまま当てはめても難しい部分はあるだろう。
例えば、このナチュラルテイストのブランドを今から立ち上げて市場に参入できるのかとか、そもそも現在「ロハスブーム」が続いているのかなどの部分が疑問である。

けれども、あまり特殊なテイストではないアパレルブランドを立ち上げるという根本的な課題は、ネストローブを研究することが分かりやすいのではないかと思う。

それはさておき。

産地企業がどうしてそういう助成金ゴロにたやすく付け込まれるのかというと、産地企業が外の業界を見ていない、耳に痛いことを言う人を嫌う、というところが多いためだろう。
必然的に、長い付き合いのあるいつものお仲間のあの人に頼もうということになる。
彼らは厳しいことは言わないし、長年の付き合いで気心はしれている。
ノウハウがないことと成果を出さないこと以外は、産地企業としてはめちゃくちゃ付き合いやすい。

いわば関係性の深さだけで成り立っているといえる。

関係性を構築するのはビジネスでは必要だが、ノウハウも手腕もなく関係性の深さだけでビジネスを行うということは究極的にはこういう助成金ゴロになってしまう。

産地企業がブランド事業を成功するためには、関係性は浅くても助成金ゴロではないプロデューサーやコーディネイターを選ぶことが重要だろう。



大手企業でもやり方が下手くそなら、ネット通販は8億円も売れない

 リアル店舗の不振からネット通販への注目が高まっているが、「リアルがダメだからネットで」というような逃げの姿勢でやっているところは総じて伸び悩んでいると感じる。

当たり前である。

ネット通販が今の消費不振をすべて解決してくれる「魔法の杖」かのように勘違いしている業者やコンサルも多く見受けられるがまったくの知識不足といえる。
ネット通販がすべて売り上げを稼げるわけではないし、売れないところはまるで売れない。

ネット通販もすでに多くの業者が進出しており、ブルーオーシャンではなくレッドオーシャンだという認識が前提である。

最大手といえばやはりAmazonだろう。
日本国内だけで7000億円くらいの売上高がある。
意外に健闘しているのがヨドバシカメラで売上高は1000億円くらいである。

この2社に追いつこうとするなら、個人経営のような小資本企業では到底無理だ。
しかし、資本さえ大きければ必ず売上高が稼げるというものでもない。
それがネット通販の特徴でもある。

アパレルでいうと、最大手ブランドはユニクロだろう。
300億円を越えている。

ワールドは140億円くらいでこれを300億円くらいまで引き上げたいと発表しているが、果たして実現可能かどうか。仮に300億円に引き上げたとして、実店舗の売上高はそのときにどれだけ減少しているのだろうか。
中長期的に見て、ワールドの実店舗ブランドの売上高が飛躍的に伸びることは考えにくい。

http://ameblo.jp/knitkitchen/entry-12182062748.html

このブログを参照してもらいたい。

で、かつての大手で今でもそれなりの規模があるレナウンという企業はネット通販の売上高が7億9700万円で8億円に満たない。
2015年4月~2016年3月までの1年間の売上高だ。

2016年2月期連結決算での売上高は712億円ある。

連結とはいえ712億円の売上高がある企業にしてはネット通販の売上高が8億円未満というのはかなり少ない。ネット通販の売上高が一概に会社の規模に比例するわけではないことがわかる。

一方で、たった2,3人で運営している洋服の独自販売サイトが、売上高3億円くらいある。
2,3年前に独立して1人で洋服のネット通販を新たに開始した知人も年商はそろそろ1億円に手が届くそうで、スタッフを雇用するらしいとも聞いている。

こんなに少人数で個人事業主の延長線上みたいな会社でも年商1億円というのは、ネット通販では達成可能ということである。

年商700億円を越えていてもネットでは8億円も売れない。

ようはやり方次第ではネット通販は小資本・少人数でも1億円とか2億円くらいの売上高が可能だし、やり方が下手くそなら年商700億円の会社でも8億円も売れないということである。

なぜ、こんなことを書いているかというと、先日、某業界新聞記者と会った際に、「小型店を2つか3つくらいしか持っていない某店のネット売上高が5億円くらいある」と教えてもらったからだ。
そういえば、1店舗しかない某店舗もネット通販が好調で、エドウインの卸売り先の上位何位かに入っているともエドウインの営業マンから聞いた。
おそらくネットでの売上高は1億円は越えているだろう。

先ほども書いたように、ネット通販で問題がすべて解決するとは思っていないし、ネット通販をやればすべての会社が上手くいくとも思っていない。
しかし、やりよう次第では少人数・小資本でも1億円や2億円の売上高は稼げるのも事実である。

小資本・少人数・小面積の実店舗で1億円や2億円売れるようになることの方が、難易度が高いのではないか。

年商規模が5億円とか10億円くらいの会社で、売上高が1億円増えれば資金繰りはかなり楽になるのではないか。上手く運営すれば小資本・少人数でネット通販ならそれくらいの売上高に到達することは不可能ではない。洋服の実店舗を出店するよりよほど難易度は低い。

手間暇と研究と試行錯誤は必要だが、小資本の会社こそネット通販に参入してみてはどうか。
逆に手間暇をかけられないなら大資本でもネット通販は成功しない。それはレナウンが証明している。




ヌッテが特集された「ガイアの夜明け」を見た感想

9月13日にテレビ東京系「ガイアの夜明け」で縫製職人とオーダーをマッチングさせるサービス「ヌッテ」が紹介された。

https://nutte.jp/

このシステムは今のところ、縫製職人とかサンプル生産工場に対して仕事を供給するものなので、発注側も1枚とか超小ロットが多い。
極端な話、「娘が来月の発表会で着用するドレスを縫ってほしい」というような依頼が主流である。

1型100枚(サイズ込・色柄込)のような商業ベースに乗るような生産依頼はあまりないし、現在のヌッテの登録者(縫製職人・サンプル工場)は小規模で対応できないことが多い。

放送を見ていたが、番組制作側もそれを見ていた視聴者もその部分がイマイチわかってなかったのではないかと感じられた。

同様にファクトリエやシタテルなどのインターネットを使って、縫製とオーダーを結び付けるサービスがあるが、ファクトリエ、シタテルが商業ベース、工業ベースの生産を請け負うのに対して、現段階のヌッテはあくまでも個人需要に近い生産を請け負っているという違いがあるのだが、その部分はあの放送ではあまりわかりやすく説明されていなかった。

実際に縫製工場の人や製造加工業の人も多数放送を見ていたようで、フェイスブックでもツイッターでも交流のある人たちが感想をいろいろと述べておられたが、彼らでは間尺に合わないのは当然である。

しかし、あの番組内では随分と疑問なストーリー展開も見受けられた。
ヌッテを活用している子持ちの若奥様の実例である。

自分でイメージした子供服を縫ってもらうのだという。
生地は「会津木綿」を生産するはらっぱから購入。合計で7000円ほどだった。

それをヌッテを介して縫製工賃15000円で依頼した。

1枚だけのオーダーだったし、サイズも画面に映っていたお子様と同じくらいだったので、てっきり「子供さんに着せるんだな。それにしても2万2000円の子供服ってこの奥様はセレブだな。羨ましい」と思って見ていた。
すると、子供服店での受注販売会みたいなのい出品してて、「え?売るんかい」とズッコケた。

しかも製造に2万2000かかったのに、売価は1万6000円。

ナレーションは「テスト販売品なので今回は赤字覚悟。でも受注数量がまとまればコストが抑えられて採算が好転するはず(意訳)」みたいな内容のことを語っていた。

それも「????」である。

通常の洋服は原価率が平均で30%前後とされている。
となると、16000円で販売するなら、製造原価は5000円強にしなくてはならない。
ちょっと素人商売臭かったから、原価はもっと高く設定しているのかもしれない。

会津木綿は38センチ幅しかないから、1メートル1000円と言っても、用尺が多くかかる。
サンプルで7000円かかっていたので7メートル前後を買ったということになる。
となると、いくら製造枚数が増えても生地代だけで7000円前後かかることになる。

製造枚数が増えれば生地代も1メートルあたり安くしてもらえると推測されるが、それでもまさか300円とか200円にはならないだろう。幅が狭いので1着当たりにかかる生地代は安くても4000~5000円になるはずだ。

となると、縫製工賃がどうなるかだ。

10着くらい生産しても縫製工賃はほとんど値下がりしない。
1型100枚くらい作れば、1枚あたりの工賃は1500円とか2000円くらいにはなる。

100枚生産してやっと製造原価が5500~7000円くらいになる。
これが通常の卸売り型子供服アパレルならまだまだ赤字である。

個人の趣味の延長線上でゆるく直接販売しているなら、このくらいの原価で16000円で売ることは可能だろう。

しかし、そんなゆるい個人販売で100枚も売れるのだろうか?
その部分に疑問を感じる。
もしかしたら、あの若奥様がものすごく影響力があって、インターネット上でフォロワーが1万人くらいいて、一声かければ100人くらいの受注はすぐに集まるのかもしれない。

でもそういう状況でない限り、100枚を売るのはなかなか難しい。

しかも16000円の子供服である。
同価格の大人服や大人向けアクセサリーよりも販売が難しい。

それはさておき。

1枚きりのオーダーで縫製工賃15000円という価格をどう思われるだろうか。
実はこれはけっこう安い。
サンプル生産工場だと1枚の縫製工賃はデザインの複雑さにもよると思うが、最低でも2万円くらいはする。

それに比べると割安なのである。

縫製工場もそうだが、縫製職人、サンプル縫製工場も総じて仕事を探すことが難しくなっている。
一つには中国や東南アジアに円高も手伝って受注が取られているからだが、もう一つは、縫製関係者があまりにもインターネット対応、自己発信をしていないからである。

一部の例外を除いて自己発信している縫製工場、縫製職人、サンプル工場はいまだに少ない。

ブログやツイッター、フェイスブックなどのSNSはおろか、ウェブサイト(俗にいうホームページのこと)すら所有していないところが大半である。
交流のある某サンプル工場の社長は「ホームページを作ったおかげで問い合わせがむちゃくちゃ増えた」と言っている。
大したデザインのホームページでもない。極めて初歩的なデザイン、システムのホームページである。

それでもアパレルやブランドからの問い合わせがそこそこにある。

このブログで何度も書いているが、今の世の中、物を調べるときに真っ先にウェブで検索する。
ホームページがなければこのウェブ検索に引っかからない。

ファクトリエの人は、電話帳の上から下まで全部電話を掛けたと言っているが、通常のアパレルもブランドもそこまでして縫製工場や縫製職人、サンプル工場を探そうとはまったく思わない。
なぜなら時間の無駄だからだ。ならOEM/ODM屋とか商社に多少割高でも依頼する。

そのほうが手っ取り早い。

彼ら縫製関係者が自分たちでウェブを使って自己発信をしていれば、別にファクトリエもヌッテもシタテルも必要ないのである。

それができない、やりたくない、やる気がないというのであれば、ヌッテなりそういうところに登録するほかない。
サンプル工賃として見た場合、ヌッテを介して提示される価格は概ね割安である。

ヌッテも含めて各社は今後、さらに様々なサービスを開始すると思うし改善点も多々生じると思うが、現在の縫製関係者が自ら変わらない限りはこれらのサービスは不可欠な存在であり続けるだろう。

きれいに縫うための基礎の基礎
水野 佳子
文化出版局
2009-02


パターンから裁断までの基礎の基礎
水野 佳子
文化出版局
2010-02-13


1 / 2ページ

©Style Picks Co., Ltd.