月別: 2月 2016 (1ページ / 3ページ)

レンタル洋服でファッション離れは食い止められない

 若者に限らず「洋服離れ」「ファッション離れ」というのは少なからずあると思う。
一番の要因は、「低価格品の見た目が良くなったから」だと思う。

何度も書いているが、90年代中ごろまでは、量販店や低価格専門店に並ぶ服と、有名ブランド店で並ぶ服はデザイン性や色柄などの「見た目」が大きく異なっていた。
それが2000年以降、低価格商品の「見た目」(物性品質ということではない)が上昇したことに加えて、ブランド側がOEM/ODMに企画を丸投げしすぎて、商品の見た目が悪くなったため、消費者の間に「低価格品でも十分におしゃれができる」という認識が広まった。

事実、筆者もそのように思っている。

凡百の百貨店ブランドが丸投げして作ったジーンズより、ユニクロのストレッチセルビッジジーンズの方が物性品質も見た目も良い。
これにユニクロのコットンカシミヤケーブル編みセーターを合わせれば、十分におしゃれに見える。

中には変てこりんな商品もあるが、選ぶ側の目がある程度確かなら低価格品の組み合わせでもそれなりにオシャレに見える。

で、ここからが本題だが、そういう要因もあって売上高が低下しているアパレル企業は新しい方策を立てることが求められている。
そのうちの一つがレンタルであり、リユースである。
で、そのレンタルについてだがこんな記事がファッションスナップドットコムに掲載されていた。

小売とレンタルは両立できるか?
クロスカンパニーが「ファッション離れを食い止める」新事業に積極投資
http://www.fashionsnap.com/news/2016-02-25/crosscampany-rental-reuse/

結論から言えば、レンタルで「ファッション離れ」は食い止められないと思うし、小売店との共食いはある程度は起きると思っている。

石川社長はメディア向けのリップサービスが上手い人だから、本気では言っていないと推測するのだが。

昨年9月に日常着のレンタルサービス「メチャカリ(mechakari)」を始動。「アースミュージック&エコロジー(earth music&ecology)」といった自社製品を対象に月額5,800円で借り放題にするサービスで、現在は約2,000人の会員が利用している。新作もレンタルの対象になり、60日間借り続けるとユーザーのものになるサービスが特徴だが、店舗の売上に影響はないという。

(中略)

平均のレンタル着数は1ヶ月7着で、約65%はこれまで同社が展開しているブランドを利用したことがない新規ユーザーが占めることからも「新規顧客を取り込んでいる」と見る。

とのことである。

筆者は個人的にはレンタル衣料にもその市場にもまったく興味はない。
そういう属性の人間が自らの行動に照らし合わせて考えるので、いささか世間常識とは乖離が出るかもしれないがそこはご容赦願いたい。

月額5800円で借り放題という価格設定だが、商品を買うよりはずっと割安である。
クロスカンパニーはタイムセールとか、全品80%オフからさらにレジにて20%オフ、みたいな安売りを得意とするが、定価販売で考えるならレンタルする方が割安である。

5800円という支出でクロスカンパニーの店舗で買える洋服は、下手をすると1枚、上手く買い合わせても3枚が限界だろう。1900円のTシャツ3枚で5700円である。

5800円で借り放題、おまけに60日間かり続けると自分の物になる。
これなら下手に定価で買うよりもずっと「コストパフォーマンス」が高い。
コスト意識に敏感な人なら間違いなくこちらにシフトする。
記事では「店舗の売上に影響はない」としているが、その要因は現在の会員数が少ないからだろう。

会員数は2000人。クロスカンパニーの全店舗数はいくつあるのか?
あれだけ店舗数があれば全国で2000人の顧客が減ったところで、たしかに影響はない。
一地方都市だけで2000人の会員数があるわけではないのだ。

ちなみにレンタル事業での売上高は、単純に掛け算をすると5800円×2000人で、1160万円ということになる。
いろいろとオプションもあるだろうからもう少し増えるとしたって2000万円を越えることはないだろう。
クロスカンパニーの年商規模からすると、かなり構成比は低い。
そりゃ影響はないだろう。なくて当たり前である。

レンタルサービスというのは新規販路の模索という点においては画期的とは思うが、開始半年後で会員数わずかに2000人くらいでは、「将来性云々」という視点で取り上げる方が間違いではないか。

一方で、「新規顧客を取り込める可能性がある」というのはその通りではないか。

というのは、これだけ割安感があるのなら、今までクロスカンパニーという企業の商品を利用しなかった人たちが「めちゃ安いから利用してみようか」と考える可能性はある。
そういう意味での「新規顧客」開発は十分にあり得るだろう。
その点だけは期待できるのではないか。ただし、安さに釣られて来る人は、「安い物」が好きなのであって、そのブランドのファンになる割合は低い。

もっと安い物が現れればそちらに移る。

逆に他社ブランドもレンタル市場に参入すればどうなるだろうか。
ここからは想像の話になるが、おそらく小売店の売上高は激減するだろう。
もしかしたらネット通販の売上高も減るかもしれない。

レンタル売上高は増えるだろうが、その増え方は小売店・ネット通販の売り上げ減をカバーできるものではない。そう推測する。

フォーマル市場が衰退したのはレンタルサービスが普及したからだという意見がある。

それはなるほどそういう一面はあるだろう。
一生のうちに何度かしか着用しないフォーマルをわざわざ高い金を払って買うのもバカらしい。
よほどの金持ちなら別だが。
なら何万円か支払ってレンタルした方が賢い。買えばもっと高い値段を取られるのだから。
もしくはそれこそリユース店で買うかである。

今度は、カジュアルにこれを持ち込もうとしているのだから、会員数が現在の2000人程度ではなく、激増すれば確実に小売店・ネット通販の売上高は減る。
当たり前ではないか。

同じブランドが格安でレンタル、しかも借り放題なら、だれだってそちらに移る。
ブランドが異なるのだったら、「安さはやっぱり魅力だけど、こちらのブランドが好きだから小売店を選ぶ」という選択肢はあるが、ブランドが同じだったら絶対に安い方を利用する。

ジュースが定価販売の自動販売機で売れなくなっているのと同じ理屈だ。
食品スーパーなら割引されて同じ物が販売されているし、コンビニで買えば定価販売でもポイントが貯まる。
自動販売機だけが何の特典もない。

これと同じ事態が起きる。
同じ物は絶対に安い方で買うのが人間の心理である。

レンタル、リユース市場への挑戦というのは、既存手法での販売が伸びないことを考えると重要なことだとは思うが、広まれば広まるほど既存店・既存通販の売上高を侵食する可能性が高い。
筆者にはそう思えてならない。


メンズパンストの着用は今秋以降へ持ち越し

 先日、激安の聖地、天神橋筋商店街で「メンズパンスト」なる商品を見つけた。
なんと3足セットで150円で売られていた。

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今まで、メンズパンストの存在を知らなかったが、ググってみると日経トレンディで

「メンズパンスト」が激売れ! 病みつきになる理由は?
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20121204/1046079/

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という記事が掲載されており、日付を見ると2012年12月10日となっており、今から3年前である。
3年前にすでに注目されていたということだが、パンスト大手の1社であるグンゼの展示会ではこんな商品を見たことがない。

この商品を見つけたとき、メンズブラジャーと同じようなちょっと特殊な嗜好向けの商品ではないかと思ってしまったが、そうではなかったようだ。

記事は靴下大手の1つであるナイガイのことを中心に書かれている。
同じ、靴下大手同士だが、グンゼはメンズパンストは企画開発しておらず、ナイガイは企画開発したということになる。
パンスト大手の1つであるアツギはどうだろうか。

ナイガイでは、当初、1万足を発注。すでに8000足を各店に納品していて完売しそうな勢いだという。現在、さらに1万足を追加発注している。

とある。くどいようだがこれは3年前の状況だ。

どんな商品なのか実際に手に取ったことがないからわからないのだが、想像してみると、おそらくメンズのタイツやモモヒキよりも薄手の生地なのではないか。
薄手の生地だから、細身のパンツの下にも穿けるし、タイツなどに比べてもたつきが少ないのだろう。
そして、パンストというのは生地が薄い割には意外に暖かい。

なぜ知っているのかというと、実は子供のころにモモヒキ代わりに母親のパンストを着用したことがあるからだ。10歳前後のころだったと記憶している。
安心してもらいたい。それ以降は一度も着用していない。
筆者は変態だが、そういうタイプの変態ではない。

で、着用した感想をいうと、あんなに薄い生地なのに予想よりもはるかに暖かかった。
それをメンズに応用するというのは、理にかなった要素がある。

ただし、着用した姿はあまりかっこいいとはいえないと感じる。
自宅以外でこの姿になることはちょっとはばかられる。

3年前にこんな記事が出ているにもかかわらず、その後、筆者の知る範囲ではあまり記事化されていない。
肌着メーカー各社もそれほど注目している様子もない。

一時期の突発的なブームで終わったのだろうか。
単に筆者が知らないだけだろうか。
それとも3年間安定的に売れ続けていたのだろうか。

さまざまな疑問が湧くが正解にはたどり着けていない。

そんなわけで、ためしに150円で買ってみようと心を決めて再び天神橋筋商店街へ出かけたところ、3足150円のメンズパンストは売り切れてしまっていた。

ああ、メンズパンストを買い逃してしまった。

メンズパンストへの挑戦は今年秋口以降に持ち越しとなってしまった。




ヘインズのTシャツで洗濯後どれくらい縮むかを試してみた

 そういえば、先日、20何年振りにヘインズのパックTシャツを買った。
2枚セットで定価743円が500円に値下がりしていたからだ。

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筆者が大学生当時だから今から25年ほど前、ヘインズの3枚セットのパックTシャツが大流行していた。
その当時は白が人気だったが、今回は黒を買った。黒しかなかったし、白は汚れが目立つからそれほど好きではない。

で、なぜか筆者もその当時何度かヘインズのTシャツを買ってみた。
赤ラベルと青ラベルがあったと記憶しており、両方とも買った。

それ以来ヘインズのパックTシャツは買わなくなったのだが、なぜかというと、1度洗濯すると襟がすごく伸びてしまったからである。
当時は「その伸び具合が良い」というような人が相当数いたのだが、洋服に興味がない筆者が着用すると、単なるだらしない貧相なおっさんにしか見えなかったし、もともとが襟が伸びきったTシャツは嫌いだったので、すぐさま捨てて、そこからヘインズを買わなくなった。

今回も恐る恐る買ってみて、何度か洗濯をしてみたが、25年ぶりに買ったヘインズの黒Tシャツは襟は伸びずに着用できている。
そのあたりの品質は改良されたといえそうだ。

パックにも書かれているが、このTシャツは空紡糸で編まれている。
空紡糸らしく軽量でドライな感じの手触りがする。
個人的にはこの素材感はあまり好きではない。

とくに空紡糸で織られたデニム生地は安物っぽくて好きになれない。

Tシャツやカットソーは洗濯して乾かすと必ず縮む。
そこでふと、どれくらい縮むのかを試してみたくなった。

2枚パックなので、1枚を先に洗濯し、洗濯していないもう1枚と比較してみた。

画像ではちょっとわかりにくいが、洗濯していないTシャツの上に洗濯して乾いたTシャツを置いた。
だいたい身幅で3センチ前後、丈で1センチほど縮んでいる。

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同時に片倉工業の黒のVネックの2パックTシャツも500円で買ったので、そちらも同じ実験をしてみた。
こちらは手触りからすると、リングスパン糸で編まれているのではないかと感じる。

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やっぱりリングスパン糸で編まれた方が好きである。

こちらも同様に洗濯した物を上に置いてみた。

ヘインズとほぼ同じくらいだが、縦横の縮みが少し大きいのではないかと感じる。
微妙な差だが。

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これで見てもお分かりいただけると思うが、Tシャツ、カットソー類は洗濯するとかならず縮む。
買う際には縮んだあとのことを考えてサイズを選ぶのが賢明といえる。

例えば、Mサイズでピチピチなら洗濯後はさらにピチピチになるということである。

とはいえ、天日干しや陰干しではLサイズの物がMサイズやSサイズくらいにまで縮むことはない。
乾燥機を使えば別だが。

以前、デヴィッド・ベッカム氏がかなり小さめのTシャツを着用していることが話題となった。
もう数年くらい前の話である。

さまざまなファッション系のメディアで解説がなされていたが、新品のSサイズを着用しているのだろうということと分析されていた。

新品でピタピタだから洗濯をするとさらに縮むことになる。
おそらく、洗濯せずに1度か2度着用した後は捨ててしまうのではないかと推測している。
こういうことは超お金持ちのベッカム氏だからできることで、貧しい筆者はなるべく長持ちしてなおかつ、そこそこに見栄えが良い低価格品を選ぶことに徹している。

長年そうやって暮らしてきたので、すっかり身に着いた。
これはこれで楽しいものであり、もしお金持ちになったとしても止められないだろうと感じている。
高額品を定価で買う生活をたまに想像してみるが、何とも物足りなく思う。

ちなみにこの2種類のTシャツは西友で買った。




補助金を使ったブランド化で一発逆転はあり得ない

 ほんの3年ほど前まで各産地組合主催での、産地見学ツアーがちらほらと開催されていた。
東京を中心に、関西、名古屋あたりのアパレルメーカー社員や小規模デザイナー、一部小売店スタッフなどを対象として、それぞれの産地を見学するツアーが組まれていた。
地元での産地総合展示会も同時開催する場合もあった。

北陸の某産地でも無料送迎バスを用意したご招待ツアーがあった。
兵庫県の某産地も地元で産地総合展示会を開催し、オプションとして工場見学ツアーがあった。

だいたい、どの産地も3年やって「はい、お終い」となっている。
この3年というのは、補助金・助成金が終わるタイミングである。

送迎バスを用意したり、場合によっては宿泊施設も用意したりで、相当な費用がかかっていただろうから、補助金・助成金が終われば「自腹ではとてもじゃないが賄いきれません」というところだろう。

気持ちはわからないではないが、3年が経過してやっと少し工場見学ツアーが認知されつつあったのに「もったいないな」と感じてしまう。
よほどの知名度がない限り、初年度から注目されるイベントや打ち出しなんてありえない。
ブランドの構築だって本気でやるなら5年や10年はかかる。

にもかかわらず、各産地は3年ごとに打ち出しをリセットして、産地を告知するイベント自体は継続する。
目玉企画や開催場所を3年ごとに変えて今に至る。
その3年周期を何十年も繰り返してきた結果が現在である。
実を結んだ産地はあまりにも少ないというのが外野たる筆者の感想だ。

結論から言ってしまうと、産地組合が主導して、産地企業を平等に扱う全員参加型を前提とする限りにおいては、産地ブランド作りというのは不可能である。
何社かの有志が独自で活動する体制へと転換させる必要がある。

以前にも書いたが、人間が5人集まればすでに意見が割れる。
5人程度なら反対者をなだめながらでも活動は続けられるが、10人、20人となればそんな小手先の対応では通用しない。反対派を力で押さえつけるか排除するかしかない。
あとは、だれもが反対しないような「毒にも薬にもならない」企画を淡々と粛々と続けるか、である。

以前にも書いたが、東洋経済オンラインの「地方創生のリアル」という連載が面白い。

繊維産地にも当てはまるような事例が毎回紹介されている。
今回は地域ブランド化が失敗する理由がまとめられている。
産地総合展が各地で開催される時期にふさわしいのではないか(笑)

「地域ブランド化」が失敗に終わる3つの理由
難易度が高い上、凡庸な商品では無理がある
http://toyokeizai.net/articles/-/104375

タイトルだけで言わんとすることが伝わってくる。

理由1:ブランド化に適さない凡庸な「地域」と「商材」
理由2:コンサル頼みでは「汎用品・地域ブランド」しか生まれない
理由3:資源不足なのに難易度の高い方法に取り組む非合理

もうこの小見出しだけで十分伝わるのではないかと思う。

ここでの地域ブランドというのは繊維も含めたすべての商材についてであるから、繊維に関してすべてが合致するとは言えない。
食品、家具、雑貨、日用生活品、さまざまジャンルを包括的にとらえた記事である。
しかし、繊維にもこの記事のエッセンスを生かすことは重要ではないかと考えている。

理由2の章の中に、「外部から来た名ばかりコンサル(繊維業界あるあるw)が提案する7点セット」が紹介されている。7点とも繊維業界あるあるすぎて笑いが止まらない。

(1)よく聞くウリ文句(日本一の◯◯)
(2)いい加減な地域商材選定
(3)何となく地域の名前を使ったブランド名
(4)デザインされたロゴ
(5)綺麗な写真を使った大型ポスター
(6)中身のないWEB
(7)東京の一等地でのイベント

である。7点とも繊維産地でも良く見かけるセットではないか。
そしてこの7点セットで成功した繊維産地は数少ない。
すべて失敗したとは言わないが、成功した事例は片手の指で足りるほどではないか。

繊維産地に関していえば(2)は除外される場合が多い。
三備のデニムにしろ、和歌山のニットにしろ、西脇の先染め織物にしろ、泉州と今治のタオルにしろ、ずばりそのものの商材しかない。
しかし、残り6点はどうだろうか。
99%の産地で当てはまるのではないか。

個人的には、繊維産地についていえば(3)~(6)というのは、ほとんど何の効果ももたらしていない。
とくに販促的・広報的見地からいえば(4)~(6)はまったく効果がない。

今治タオルはロゴのデザインで成功した数少ない事例だといえるが、それ以外の産地のロゴが市場で認知されているだろうか。
筆者は記憶にない。
さらにいえば、産地の各企業がその産地ロゴを使い続けて商売をしているだろうか?
これもあまり記憶にない。

せいぜいが産地総合展の際にあちこちに掲げられるくらいだろう。
産地総合展は補助金・助成金の兼ね合いもあって年に1回しか開催されない。
必然的に産地ロゴを目にするのも年に1回限りとなる。
10年開催したって10回しか目にしないということである。
そんな物を記憶できている人間はかなりの少数派か産地関係者くらいである。
頻度の少ない物を人間は忘却する。

大型のポスターもそうだ。
筆者はそもそも産地に限らずポスターって効果があるのかと以前から疑問を抱いていた。
というのも、筆者の脳に欠陥があるのか、駅やビルに貼られているポスターをほとんど認識しないのである。
目には映っているが、認識しない。
視覚に流れて行っているのである。

風景やらロゴやら幾何学模様のポスターなら、有名芸能人の顔がデカデカと映ったポスターの方が認識しやすい。
他の人はどうだかわからないが、筆者の脳はそういう反応を示す。

そして、産地のWEBはだいたい中身がない。
表紙だけ整えられた紙芝居みたいなものである。
2000年代前半の企業サイトと同レベルだと感じる。

手を加えて人手を加えれば加えるほど費用が発生する。
費用を抑えようとするなら紙芝居にならざるを得ないのも理解できる。
しかし、紙芝居サイトでは何ら効果がないのも事実である。

反対にWEBサイトの表紙すらお粗末という産地や企業があることも事実であり、繊維業界のIT化への取り組みが如何に遅れているかという証拠でもある。

この記事は

自分たちは何も変わらず、単に補助金をつかったブランド化で一発逆転、だなんて都合のよい話はありません。

と結ばれているがまさしくその通りではないか。

昨今ではわずかながら、SPA化に成功した産地企業が現れ始めている。
個人的には、「エヴァムエヴァ」を展開する近藤ニットをもっとも評価している。
もともとはニット工場だったが、現在は直営店を全国展開しており、自社工場ラインの99・9%を自社製品製造で回している。残り0・1%だけ長い付き合いのある某ブランドの製品を製造していると聞いた。

近藤ニットに続く産地企業が少しでも多く現れることを願ってやまない。




デザインはアートではない

 つい先日から、藤本貴之さん著「だからデザイナーは炎上する」(中央公論新社)を読み始めた。
これは、例の東京オリンピックの佐野研二郎氏のエンブレム問題を考察した本である。

「過剰なクリエイター(笑)擁護論」もなく、至極まっとうに佐野氏とその周辺の問題点を考察している。
読み終わったら別途感想をまとめてみたいと思う。

その中でこんな箇所がある。デザインとアートの違いについてである。
最近、デザインとアート、クリエイションが各分野で混同されているように感じる。
もちろん、ファッションの業界でもそれは同様である。

そもそもデザインとは、デジタル大辞泉によると、

1 建築・工業製品・服飾・商業美術などの分野で、実用面などを考慮して造形作品を意匠すること。
2 図案や模様を考案すること。また、そのもの。
3 目的をもって具体的に立案・設計すること。

とある。

これをもって藤本氏は、「デザインとは具体的な目的や機能を持って設計すること」とまとめている。

そして「デザインとアートを分かつ最大にして唯一の条件、それは『客観性の有無』であるといわれている。アートは制作者の主観的な表現のみで作られることがゆるされたものであり、客観的な説明や合理性を必要としない。(中略)ではデザインはどうだろうか。それが何であれ、デザインにおいては、具体的な目的や機能を持って設計しないとならない。となれば、客観的な説明可能性や、その存在の合理的な根拠が必要になるのも至極当然である」と指摘している。

その事例としてここでは建築を挙げている。

アートとしての住居は理論的には存在できない。
その理由は簡単だ。建築とは「住む」という具体的な目的を果たすために、必要十分な実用性を具備したうえで、立案や設計がなされなければならないはずだ。

もし建築物がアートであれば「2階に行けない2階建て」や「入口がない部屋」「途中で途切れている階段」などの表現も、アーティストの主観的表現の下に許される。そもそも「住むことができない家」というコンセプトだってありうる。しかしそのような住居としての具体的な機能や目的を充足していない建築物はデザインではない。建築をモチーフとした「アート作品」だ。

とのことであり、この説明は適切であろう。

翻ってファッションデザインということを考えてみれば、

服としての機能を満たしていないような服はデザインではないということになる。
さまざまなTPOに照らし合わせて、そのいずれもの場面で着用が難しいと思われる物は洋服をモチーフとしたアートと言えるだろう。

そういえば、以前、レディーガガが生肉で作ったドレスを着用したことがあったが、あれも厳密には洋服ではないだろう。数時間経てば腐って、着用者の体を汚すし、異臭も放つ。
何かの拍子に人とぶつかればぶつかった人の衣服や体も汚す。

迷惑千万な一品であり、アート作品と言えるのではないか。

これに類した到底着用不可能な衣服がパリコレクションを筆頭とする欧米のコレクションショーにはたびたび登場する。

フェイスブック友達の吉田克明さんが、先日ブログで上げておられた。

置いてけぼりをくらうファッション10選
http://moongate.hatenablog.com/entry/2016/02/21/001410

個人の主観で10個を選んでおられるが、これに勝るとも劣らない「作品」は毎シーズンいくつもランウェイ上で発表され、そのたびにネット上では騒然となる。
はっきり言って、これらの何が素晴らしいのかさっぱりわからない。
着たいとも思わないし、作ってみたいとも思わない。
見たいとも思わない。
筆者にとっては意味不明で興味も湧かない。

藤本氏の言葉を借りるなら「衣服をモチーフとしたアート作品」といえるのではないか。

吉田氏のブログからいくつか画像をお借りする。
個人的に10選の中からさらにワーストを選んでみた。

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20160219004311
20160219004323
20160219004221

ファッション専門学校の生徒や講師、若手ファッションデザイナーと話していてときどき違和感を感じるのは、こういう類の物をファッションデザインだと思っている人が一定数存在することであり、そんな彼らから「クリエイション」「クリエイター」という言葉が多用されることである。
メディア従事者にも同類の人は一定数存在すると感じる。

筆者はデザイナーとクリエイターはイコールではないと思っている。

藤本氏は「本来、デザイナーとは、目的と機能を果たすための事物を設計する技術者(エンジニア)である。それは必ずしも、アーティストやクリエイターを指すわけではないのだ」とも書いており、これには全面的に賛成である。

現在の日本のファッションデザイナー市場が混乱しているのは、このデザイナーとアーティスト、クリエイターとの混同が原因ではないかと個人的には感じている。

一方、「デザインとは具体的な目的や機能を持って設計すること」だから、目的・機能を重視されたワークウェア、ミリタリーウェア、スポーツウェアが結果として「カッコイイ」と目されるのではないかとも思う。

もちろん、アート寄り、アート風に表現された衣服があっても良いとは思う。

しかし、洋服は純然たるアート作品やクリエイションであってはならないと思う。
そのあたりの区別から再構築することが必要なのではないか。


ファッションショーに起きた収斂進化

 バーバリーがコレクション発表時期を後倒したことが話題となっている。

バーバリー大胆「新商法」の大きすぎる波紋
半年前倒しのコレクションを廃止へ

http://toyokeizai.net/articles/-/105213

ファッションブランドの新作発表の場であるニューヨーク・ファッション・ウイークの開幕を目前に控えた2月5日。英高級ブランドのバーバリー は、今年9月からコレクションの発表と発売の時期を合わせると発表した。つまり、新作発売の半年前にファッションショーで披露するという従来の方式をやめるということだ。

コレクション発表後すぐに消費者が買えるにようにしたいという考えに基づく。
これにトム・フォードやトミーフィルフィガーも追随する動きを見せており、今後、欧米ブランドのコレクションは発表後すぐに消費者が買える時期に変更になる可能性が高い。

これまでコレクションを開催するブランドは、発売の半年くらい前にコレクションショーを開催するのが通例だった。
春夏物なら前年の秋口に、秋冬物ならその年の2月~3月に、と言った具合だ。

これを商品発売時期にコレクションショー開催を合わせるということである。

こうなると、欧米ブランドの半年前のコレクションショーを見て、デザインや商品企画を「インスパイア(笑)」していた国内アパレル各社は苦しくなる。
なぜならインスパイア(笑)する対象がなくなるからだ。

現在はバーバリーやトム・フォード、トミーフィルフィガーなど数ブランドが表明しているだけだが、今後はその数が増える可能性が高いことから、インスパイア(笑)先がどんどん少なくなるだろう。
さてどうする?

今回、バーバリーが発表時期を後倒しした原因は、完全にビジネス上の構造によるものである。
別に日本ブランドにインスパイア(笑)されることを嫌ったわけではないだろう。

先の記事の中に答えが書いてある。

これほど大がかりな動きに出られたのは資金力があり、生産から販売までの垂直統合が進んでいるバーバリーだからだ。バーバリーは直営工場をいくつも持ち、売上の70%は直営店から得ている

とのことだ。

要するに卸売りよりも、直営店での売上高の方が多くなったからだ。
卸売りブランドは、小売店に仕入れてもらわなくてはならないから、早めに商品を見せる必要があった。
小売店側に検討する時間が必要だからだ。
半年前にコレクションショーを開催せずとも、我が国の卸売りブランドもだいたい3か月前には展示受注会を開催する。
そこにバイヤーが来場し、商品を発注するという仕組みだ。

ブランドが展示した商品をすべて量産するかというとそんなことはない。
展示受注会を開催したものの、受注数量が少なかった商品は生産しない場合が多い。
例えば、5枚や10枚くらいしか受注できなかった商品は生産しない。
なぜなら、ミニマムロットに達しない商品を製造するとコストアップになるからだ。
コストがアップしたからといって販売価格を変更することはできない。
小売店側はその価格だと思って仕入れているからで、高い物が売れにくいと考えられている環境下において、値上がりした商品をそのまま受け入れる小売店はほとんどないと言っても過言ではないだろう。

展示受注会で一定の枚数の受注があった商品が量産されて、各小売店へ配送される。

この製造におよそ3カ月くらいはかかるという見込みである。

しかし、卸売りが限りなくゼロに近い、もしくはゼロになって直営店のみのブランドならどうだろうか。

こんな展示受注会を開催する必要なんてない。
なぜなら小売店に仕入れてもらう必要がないからだ。
せいぜい、発売の少し前にマスコミ向けの商品発表会を開く程度である。
それで十分に事足りる。

バーバリーの場合も、直営店比率が7割に達しているし、我が国内の展開を見ても主要な店舗はすべて直営となっている。

となると、わざわざ半年前に商品を発表する必要はなくなる。
当たり前の結論である。

この動きを見ていると何とも感慨深い。

我が国の東京ガールズコレクションや神戸コレクションと、その発想元は異なるが、最終形態は同じようになったからだ。
むしろ、「すぐ買える」という点においては東京ガールズコレクションや神戸コレクションの方が、何年も前から先行していた。

東京ガールズコレクションや神戸コレクションは、イベント興行が目的であり、その手段の一つとして「ファッション」という体裁を取った。
芸能人にランウェイを歩かせることで入場料を取り、グッズ販売するという興行ビジネスがその発想の原点である。単に手ぶらで芸能人を歩かせても仕方がないからその表面上の方策としてファッションを利用したということができる。

ただ、その場合、衣装を提供してもらうブランドに半年先の商品をねだるわけにはいかないし、出品してもらったところで意味はない。
だから、現在、販売中もしくはもうすぐ販売開始の商品を出品してもらうということになる。
出品ブランドもインスパイア(笑)して物作りをするブランドが多いので、半年先の商品なんてとてもじゃないが提供できるはずもない。

一方のバーバリーは、現在の自ブランドの販売形態と顧客動向を見極めた上での極めてビジネス的な決断である。

しかし、発想の根本は違うが、表面的には同方向に歩み寄ったようにも見える。
まあ、今後もバーバリーが芸能人にランウェイを歩かせることはないとは思うが、すぐに買える商品を見せるという方向性だけはたまたま合致した。

これは生物における「収斂進化」と同じように見える。

違う種類の生物が似たような目的のために、似たような形態に進化することである。
有名なところだと魚類の鮫と、哺乳類のイルカである。
生物としての歴史は鮫の方が古い。
鮫は魚類の中でもかなり古くから存在した種である。
一方、イルカは哺乳類なので、鮫に比べてかなり後で生まれた種である。

まったく別種の生物だが、水中生活への適応という目的のために似たような姿を採っている。

ほかにも例がいくつもあるが長くなるのでやめよう。
収斂進化でググってもらえば他の動物の事例がたくさんでてくる。

http://matome.naver.jp/odai/2140236998268676401?&page=1

欧米ブランドでも卸売り比率が低いブランドは今後、軒並みバーバリーに追随するだろう。
そして、先の記事にもあったように卸売り比率が高いブランドはどうするのかというのは今のところ不透明だ。

直営メインのブランドはジャストインタイムでの発表、卸売りブランドは半年先のコレクション発表、というように近い将来は完全に別れてしまうのではないだろうか。

ビジネスにおける合理性を考えるならこれが最も合理的であり、ビジネスでは合理性を最優先すべきだからだ。




100枚中10枚が定価で売れれば赤字にはならない

 まだ売り場には一部セール品が残っているが、ほぼ冬のセールは終わりに近づいたといえる。

1月20日くらいから各ブランドとも一斉に投げ売りを開始したが、在庫を残すよりは投げ打った方が良いと思う。
しかし、あまりに投げ売りをすると定価設定に説得力が無くなるから諸刃の剣といえる。

2月1日から2月7日まで無印良品が「セール価格からレジにてさらに20%オフセール」を行っていた。
そこで筆者はアメリカンコットンスキニージーンズを購入した。
無印良品のジーンズを買うのも、スキニージーンズを買うのも初めてである。
筆者は腿が太いのでこれまで、スリムストレートとかテイパードジーンズを買っていたのだが、思い切ってスキニーに挑戦してみた。

定価3980円が半額になり、さらにレジで20%オフなので1592円(税込)である。

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これくらいの金額なら失敗しても良い。

若者ブランドにありがちなめちゃくちゃ細いシルエットではない。
太もももそれなりにゆとりがあり、前のファスナーがかなり下の方まで下げられるようになっており、オッサンにも優しい作りになっている。

ふくらはぎは通常のスリムストレートよりタイトなシルエットになっている。
もちろんストレッチデニム生地を使用している。

それと昨日、ユニクロで耳当てを買った。
最寄駅まで自転車で10分くらいかかり、2014年12月ごろから耳が霜焼けになるようになった。
栄養状態が悪化したのだろうか。
幸い今冬は暖冬傾向なので霜焼けが小さい。
しかし、筆者の肉体は年々衰えて行くばかりなので、どこかで手を打たねばならない。

そこで折り畳み式の耳当てを買おうと思いついた。
というより、たまたまユニクロに入ったら投げ売りされているのを以前に目にしていた。

定価1500円が190円(税抜)にまで投げ売られている。

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先週は体調不良もあって買いに行けなかったので、昨日買った次第である。
後頭部から装着するタイプの耳当てである。
これで耳の霜焼けともおさらばさ。

それにしても原価はいくらなのだろうか。

さて、原価ということでいえば、クロスカンパニーの洋服は原価がいくらなのだろうか?と話題になった。

というのも1月の下旬に、「定価から80%オフ、レジでさらにそこから20%オフセール」を大々的に開催していたからだ。

10000円の商品は2000円になり、そこから2割引きだから1600円になる。
5000円の商品なら800円である。

これが原価なのか原価を割っているのか。
それが話題になった。

ある製造関係者が、「おそらく原価を割っているのではないか」と知らせてきたが、原価割れセールをこんなに大々的に開催して、会社は赤字にならないのかと質問を返した。

するとその製造関係者はこう答えた。
以下はその要約である。

原価率を20%だと仮定する。
あくまでも仮定だ。

店頭販売価格1万円の商品を100枚作ったとする。
原価は2000円で、製造総額は200000円となる。

もし、この商品が定価で10枚売れて、残り90枚が80%オフからさらに20%オフセールで売り切れたとする。

定価で売れたのは10枚だから総額は10万円
残り90枚は1600円で売れたので総額は14万4000円

となる。

10万円と14万4000円を足すと24万4000円であり、これがこの商品の売上高ということになる。
製造総額は20万円なので、4万4000円の粗利益ということになる。

だから10枚が定価で売れれば損はしない。
そういう計算になる。

ということである。

なるほど。
もちろん実際はもっと様々な経費が加算されるし、こんな単純な計算にはならないだろう。
それでも根本の原理はこういうことだそうだ。

この考え方で行くならたしかに会社に赤字は発生しない。
しかし、利益は恐ろしく薄い。
いわゆる薄利である。

薄利を持って、ある程度の利益額を稼ごうとすると、必然的に多売する必要がある。
いわゆる薄利多売である。
昔のダイエーをはじめとする量販店の考え方と同じである。

ということは、多店舗化を推し進めなくてはならない。
インターネット販売という手段もあるが、現時点ではそれだけでは大きな売上高にはなりえない。

だから現に多店舗化を推し進めており、新規出店も途切れることがない。

また固定費も抑えなくてはならない。
多店舗運営するときの最大の固定費は人件費である。
さらにいえば、製造原価も低く抑えなくてはならない。

だからアパレルの人件費は総じて安いし、製造原価を1%でも下げたがる。
そういうことになる。

それを改善するためにはどうすれば良いかという話になるが、一気に消費者心理を変えることは不可能である。
経済全体を活性化すれば可処分所得は増え、ある程度支出は増えるだろうが、いくら大企業とはいえ、たかがアパレル1社に我が国全体の景気を押し上げるほどの影響力はない。

ならば、各社が少しでも定価に近い値段で売れるように努力するしかない。
その場合は商品のデザインや製造に関することだけでなく、販促や広報やディスプレイなどにも最大限の工夫が求められる。

そうやって各社が少しずつでも高く売る努力をする必要がある。
それしかないのではないか。

とはいっても、景気が完全に良くなるまでにはタイムラグが生じるから、低価格品の需要も即座に減るわけではなく、むしろ値上げしたブランドが増えれば増えるほど、購買能力のない人が増えるから低価格品への需要も増える。

だからまた新たな安売り業者は絶対に生まれるし、絶対になくならない。
安売り業者を絶対悪のように見る業界人がたまにいるが、経済のシステムをまったく理解していない現実無視の理想主義者といえるだろう。

現実無視の理想論が成功したためしは、古今東西、存在しない。

服を着るならこんなふうに (1)
縞野やえ
KADOKAWA/角川書店
2015-12-10




洋服の買い上げ客数を増やすことが難しい時代

 昨年11月、12月とユニクロの既存店売上高が減少した。
これをもって盛んに「ユニクロ失速」という記事がメディアに掲載されたが、今年1月はセールが好調で既存店売上高が伸びた。すると、その手の記事はほとんど掲載されなくなった。
まあ、メディアなんていつも現金なものである。

個人的にいえば、ユニクロの前年実績は好調だったからそれを越えるというのはかなり高いハードルだと思うし、国内市場でいうと飽和点に達しつつあるのではないかと考えられるから、成長曲線が鈍化もしくは少しくらい下落しても不思議ではない。

そういえば飛ぶ鳥を落とす勢いだったソフトバンクだが携帯電話の加入者が前年実績を割り込んでいる。
いつまでも無限成長し続ける企業はないということである。

一方、ライトオンは11月、12月と好調だったからユニクロ失速の一例として挙げられることが増えた。
しかし、結論からいうとライトオンはそれまで前年実績を下回り続けており、前年実績のハードルは非常に低かった。

これを非常に上手く見つけた記事を発見した。
良記事なのでぜひとも参考にしていただきたい。

別の視点から数字を見る
http://www.apalog.com/fashion_soroban/archive/20

この記事は2011年秋冬、2012年春夏を基準として、それに対しての既存店売上高、既存店客数、既存店客単価の推移を再構成しているところが秀逸である。

これをまとめなおすのはけっこう骨が折れる。
かなりの労作といえる。
自分でもやれば良いのだが、こんなにめんどくさいことはちょっとやる気になれない。
本当に素晴らしい資料だと思う。

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この表から見ればわかるように、「失速」と喧伝されているユニクロだが、2011年から比べると2015秋冬は8%増の売上高である。
また、2012年以降はすべて基準年実績を上回っている。

ただし客数は2015年秋冬は初めて減少している。
反対に客単価は2015春夏、2015秋冬とそれぞれ上昇している。
値上げが顕著に反映されていると考えられる。

一方、メディアで持ち上げられ過ぎの嫌いがあるライトオンだが、2013秋冬から一貫して既存店売上高が減少し続けている。

記事内でも指摘されているように2015秋冬の「好調」は単に2011年当時水準まで回復しただけということがわかる。

客単価は2012年から一貫して上昇傾向だが、客数は落ち続けている。
好調と言われた2015年秋冬も客数は減ったままである。

ついでにユナイテッドアローズである。
ユナイテッドアローズは2012年以降、一貫して既存店売上高は伸び続けているが、客数は2014年から減少し続けている。
客単価は2014年、2015年と続けて高い伸び率を示している。
これは相当に値上げがあったと考えるべきだろう。

個人的な感想でいうと、値上げしたから客数が減ったのかもしれず、反対に客数減を値上げで補ったともいえるだろう。
ユナイテッドアローズの値上げ路線はこれ以上進むとさらなる客数定価を招くので危険ではないだろうか。
ユナイテッドアローズが街の個店なら「お好きにどうぞ」というところだが、仮にも上場しているので、そういう奇策は株主の反発を招く。
客数は落とさず売上高も伸ばし続けるというかなりきわどいミッションをこなし続けなければならない。

この記事でも触れられているのだが、客数を伸ばすというのは本当に困難なことになりつつあるといえる。
決算で発表される客数とは「買い上げ客数」のことだから、入店客数ではない。
「洋服を買ってもらう」ことがかなり困難なことになりつつあるということである。

洋服を買わない理由はいろいろとある。
以前にも書いたことがある。

トレンドがあまり変わらない、洋服があまり傷まない、次々と新しい服を着ることに興味がない、可処分所得が減った、などなど。

メディアではよく、現在を指して「ファッションは冬の時代」というが、冬というのは待っていれば春が来る。
しかし、現在もこれからも「待っている」だけではファッションに春は来ない。むしろ今が常態ではないか。
だから冬の時代ではない。

そこを踏まえて考える必要がある。




インターネット通販はすでにレッドオーシャン

 昨年夏ごろから、このブログもアマゾンのアフィリエイトを貼りつけるようにした。
いつもの記事の最後に出てくるのがアマゾンのアフィリエイトである。

これを貼りつけるようになってから、アマゾンの衣料品の通販をときどきぼーっと眺めるようになった。

何を今更と思われるかもしれないが、見たこともないブランドで溢れかえっている。
その多くは低価格品だ。

通常、百貨店、ファッションビル、ショッピングセンターに出店しているリアル店舗の場合、そのほとんどは見知ったものが多い。
こんな仕事を18年近くもやっているので、商業施設に出店するブランドはだいたい見知ったものが多く、詳しくは知らないまでも名前くらい聞いたことがあるというのがほとんどである。

見たことも聞いたこともなかったというブランドは滅多にないのだが、インターネット通販は反対に知らないブランドの方が多いくらいである。

ここまでブランドが無数に増えており、おまけに価格帯も商品の見た目も同質化している。
画面上で見える同質化は、リアル店舗の同質化よりもひどいのではないかというのが個人的な感想だ。

リアル店舗の場合、パっと見た感じが似ていても、商品をよく見ると生地の風合いが違っていたり、
店の看板のデザインが違っていたりで、区別しやすいのだが、画面上でズラっと商品だけを眺めていると、どれもこれもほとんど区別がつかない。

おまけに有名ブランドと微妙に似たようなブランド名を付けているブランドもあり、一瞬間違えそうになる。

この手法はリアル店舗でも昔からよくある。
激安の聖地と勝手に読んでいる天神橋筋商店街だが、手描きで「G-starのシャツ」と描かれたPOPがあって、以前から気になっていた。

明らかに不良在庫を格安で引き取ってきて投げ打っている店なのだが、「G-starの在庫も出回っているのか」と興味を持って、毎回眺めていた。
その割にはG-starでは見たこともないデザインのカジュアルシャツが並んでいる。

何度目かのときに手描きPOPをもう一度よく見直してみると、「G-stage」と描かれていることに気が付いた。
どうりで見たこともないデザインのシャツだったわけである。
別ブランドだったということである。謎は解けた。

先日、アマゾンでディーゼルと検索をすると、3000円弱のジーンズが出てきた。
何と激安品なのかと思って、良く眺めると何かがちょっと違う。
洋服そのもののデザインも筆者の知っているディーゼルとは異なっている。

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%83%BC%EF%BC%9A%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%8B%E3%83%BC-%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%BC%E3%83%AB%E3%83%91%E3%83%AF%E3%83%BC-DIESEL-POWER-DSP02497/dp/B00OJW2QZ2/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1455670242&sr=8-1&keywords=%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%BC%E3%83%AB%E3%83%91%E3%83%AF%E3%83%BC

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(ディーゼルパワーのスキニー)

ブランド名をもう一度よくみると「ディーゼルパワー」と書いてある。
これはちょっとやられた。

ディーゼルとは本来重油を燃やす内燃エンジンのことであり、発明者の名前である。
業界だと「ディーゼル」というとイタリアのブランド名だが、発明者はフランス生まれのドイツ人である。

日常会話では、ディーゼルエンジンとかディーゼル機関という使われ方をする。

そのため、筆者にとってはディーゼルパワーというのは、何とも違和感のない響きで、すんなりと受け入れやすい。
ちょっとした工業用語のようにも聞こえる。

このブランド名を名付けた人はなかなかのセンスであり策士といえる。
おまけにあの「ディーゼル」とも混同されやすい。もちろんそれを狙ったネーミングだとは思うが。

それはさておき。

今、盛んに「EC化比率を高めよ」と言われる。
しかし、すでにインターネット通販はレッドオーシャンである。

Yahooだけで34万店、楽天だけで4万店のネットショップが出店しているといわれている。
ほかにアマゾン、ZOZOTAWNなどもあるし、中小のモールもある。
またブランドの単独ショッピングサイトもある。

はっきり言ってしまえば、無策でインターネット通販になんて乗り出したところで、埋没してしまうのが落ちである。
よほどの仕掛けを考えないと浮かび上がることはできない。

先日、coco azabu というインターネット通販事業者が破産した。

衣料品ネット通販の「COCO AZABU」に破産開始決定
http://www.fukeiki.com/2016/02/coco-azabu.html

このサイトはまだ閉鎖されていないので見ることができる。

http://www.cocoazabu.com/

なかなか綺麗なデザインのトップページであり、他の構成もなかなかしっかりしている。
従業員は30人くらいだからそれほど大きな事業者ではない。

しかし、このくらいきっちりとサイトを作くりこんでいても倒産してしまう。
「単にインターネット通販をやりました」というだけでは埋没してしまうのである。

インターネット通販をやるなとは言わないが、「インターネット通販を始めたら即座に売れ始める」という甘い考えは今すぐに捨てるべきである。

そういう視点でいうなら、ディーゼルパワーは相当な策士であると密かに注目している。
そこらのへなちょこコンサルが提案するプランよりもよほど上手である。




製造方法の提示が効果的な販促になるとは限らない

 最近は、使用素材とか製法とかを下げ札に書いて、その価値を消費者に伝えるブランドが増えた。
何もしないよりはした方が良いとは思うが、正直なところ、すべてに販促効果があるわけではない。
まるで効果のないものも多い。

その中の一つに筆者はホールガーメントがあると思っている。
いわゆる、無縫製のセーター類である。

通常のセーターは袖や身頃が縫製されているが、ホールガーメントはそれを無縫製で編み上げるという技術であり、専用の編み機が開発されたことで製品化が可能になった。

ホールガーメントという技術を否定しているわけではない。
それは製造側にとっては画期的なことである。

また、昨今はリンキング工場が倒産やら廃業で減っており、その減少をカバーできるという効果もある。

ただし、消費者サイドで考えるなら「ホールガーメントのセーターです」と言われたところで、「だから何?」としか言いようがない。

「無縫製です」と言われても、それによってどういう効果があるのかはさっぱりわからない。
例えば、シルエットが綺麗になるとか、フィット感があるとか、そういう意味での「効果」である。

「ストレッチ混素材を使用しました」という説明なら、消費者は「あ、生地が伸縮して動きやすいんだな」とその効果が容易に想像できる。

ホールガーメントについて「無縫製のセーターです」という説明を売り場で受けるが、それで得られる消費者の利便性なり満足感なりはちょっと思いつかない。

実際に筆者も買ってみたことがある。
もう5年以上前のことだが、ジーンズメイトでホールガーメントのジップアップカーディガンが売られていた。
素材はウール100%。

「ホールガーメント」と書かれた下げ札が付けられていた。
たしか定価は5900円くらいだった。
興味深く見ていたが、その時は買わなかった。
筆者は定価では服を買わない。

それからちょうど1年後くらいに同じ商品を同じ売り場で見つけた。
前年の在庫品である。
1000円に値下がりしていたので購入した。
ひとつにはホールガーメントのセーターがどういう着心地なのかを試してみたかったこともある。

で、購入して何度か着用したわけだが、至って普通である。
通常品と何も変わらない。

それが筆者の感想である。

最近は肌着にも無縫製という物がある。
これはホールガーメントで製造されているのではないが、縫製せずに圧着テープで接着されていたりする。
肌着の場合は、直接肌に触れるものなので、縫い目が擦れてかゆいとかイタイということがある。
無縫製肌着はそれを解決できるという機能を持っている。

しかし、セーター類の場合は、素肌に直接触れることは考えにくい。
大概が、Tシャツとかカジュアルシャツの上からセーター類を着る。
となると、縫い目があろうがなかろうが大した違いはなくなる。

動きやすさとかフィット感がさらに向上したかというとそうでもない。
もともとセーターは編み物で伸縮性が高いため、動きやすいものだしフィット感もある。

また、熟練の職人による手作業でもない。
個人的には手作業自体に意味はないと考えるが、それでも「こんなすごい物を手作業で作るなんて」という驚きは理解できるし、それを評価したいという心理も理解できる。
しかし、ホールガーメントはそういう類のものではない。

製造は限りなく自動化されている。
専用の編み機さえ導入すればだれでも作れる。

現段階においてホールガーメントというのは、製造側に大きなメリットをもたらす技術ではあるが、消費者側にはあまり効果のない技術ということができる。
今後の技術進歩によって消費者側にも何らかのメリットを供与できるようになる可能性もあるが、現時点ではその部分が低いと感じる。

何が言いたいかというと、今回はホールガーメントを例に出したが、こういう「効果のない販促」が多々あるのではないかということである。
ブランド側、小売店側ももう少し販促手法を吟味する必要があるのではないか。

昨今は、洋服のデザインや色柄だけでは差別化しにくくなっており、使用素材や製造方法で差別化を図る事例が増えている。
それ自体は決して悪いことではないと思っているし、いろいろと工夫してみるべきだと思っている。
しかし、何でもかんでも使用素材や製造方法の提示が効果的な販促になるとは限らない。

〇〇製法で作られました
〇〇素材を使用しました

こういう下げ札を付ける際に、それで消費者の何が解決できるのか、消費者のどういう満足が得られるのかを考えてみるとより効果が高まるのではないか。
それが見いだせない物は逆にわざわざその手の下げ札を付ける必要はないのではないか。





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