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南充浩 オフィシャルブログ

メタバースが行き詰まるのは当然の結果

2023年4月4日 ファッションテック 3

衣料品業界と業界メディアはいまだに期待分野の1つとしてメタバースを持ち上げ続けているが、それも徒労に終わりそうである。

仮想世界「メタバース」に厳しい現実 – WSJ

仮想世界「メタバース」は、大きな話題を呼んでから2年足らずで厳しい現実に直面している。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は今週、ウォルト・ディズニーがメタバース戦略を開発していた部門を廃止したと報じた。マイクロソフトは最近、2017年に買収したソーシャル仮想現実(VR)プラットフォームを閉鎖した。メタバースに本腰を入れるべくフェイスブックを「メタ・プラットフォームズ」に改名したマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、先月開いた決算電話会見で人工知能(AI)により重点を置いた。

一方、ユーザーがアバター(分身)姿で遊べる一部のオンライン世界では、仮想不動産の価格が暴落している。メタバースの土地販売を調査しているウィーメタによると、仮想空間プラットフォーム「Decentraland(ディセントラランド)」の土地の販売価格中央値は、1年前から90%近くも下落している。

 

とある。

ディズニーがメタバース部門を廃止し、マイクロソフトは買収したVRプラットフォームを閉鎖、メタはメタバースよりもAIを重視し始めている。

という内容である。

仮想空間内の土地販売価格の中央値が9割も低下して投げ売り状態であることは、そこに需要が全くないことを証明している。

 

これは当方のような一般人からすれば極めて当たり前のこととしか思えない。SNSが日本社会に普及してすでに13年くらいが経過していてライフラインの1つとなっていることに異論のある人はいないだろう。現実世界とは別個に赤の他人と交流したければ、メタバースの仮想空間など使わずとも、SNSを使えば済む話である。なぜわざわざ面倒な仮想空間とやらに没入する必要があるのか理解不能である。

ショッピングがしたいなら現在のネット通販で十分であり、仮想空間内に土地まで買おうなんていう物好きは現実世界にほとんどいないだろう。だからこそ9割減の下落である。

こんな物に多くの人が熱心に没入してくれるだろうという考えはあまりにも希望的で楽観的な考えに過ぎる。

そもそも、のんびりしたいと考えるのであれば仮想空間内に土地を買うよりも、自宅でゴロゴロするとか、近場の温泉に行くとか、近場のスーパー銭湯へ行くとかした方がはるかに心身ともにリラックスできる。当方なら、カネがありあまって仕方がないという状況にならない限り、仮想空間内に土地なんて買おうとは思わない。それならガンプラ100体とかユニクロの服を全型買った方がはるかにマシである。

 

分身(アバター)を作って仮想空間内で遊べるとあるが、現在のポケモンGOやその他のオンラインゲームのようなアバターを作って、それを外から操作している状態で仮想空間内で遊んだところで一体何が面白いのか理解できない。オンラインゲームならまだしも無目的にその仮想空間内に入るなんていうのは時間の無駄でしかなく、それならツイッターを延々とやっているか、全ての活動を休止して昼寝でもした方が有意義な時間を過ごせる。

なぜこんな簡単なことがわからないのか不思議でならない。

 

数年前のアニメ作品で「ガンダムビルドダイバーズ」があった。これは仮想空間「GBN」に自分がアバターとなって入って、そこでガンプラに乗り込んで操縦してバトルする物語である。

もちろん、アニメ作品だかなりの絵空事を描いているが、このシステムのメタバースなら当方は参加したいと思うが、どう考えても現在の技術水準では実現は不可能で、実現できるとなるとかなり先の話となり、そのころまで生きていられるかどうかも怪しい。ちなみに「ガンダムビルドダイバーズ」は2作目の「ガンダムビルドダイバーズ リライズ」がお勧めである。

 

ベンチャー投資家でメタバースに関する著書もあるマシュー・ボール氏は「この変革はもっと先だ、ということに多くの人が気づき始めている」と述べた。

という一節が記事内にはあるが、全くその通りであり「もっと先」の話を今すぐに実現できるかのように夢想するのは、浮世離れにもほどがあるといえる。

結局、メタバースを盛んに売ろうとしていた輩は何を狙っていたのだろうか。あくまでも個人的な推測だが、すでに現実世界の物は先進国では爆発的に売れそうな事物はもうほとんど存在しない。スマホもすでに目新しい技術革新は無くなっている。iPhoneの最新機種を常に買い求める必要性はとっくの昔に無くなっている。洋服もしかりだ。そんな目新しい商材は生まれていないし、今後も生まれないだろう。

となると「土地販売」の文言からも分かるように、メタバースという新しい商材なら土地や衣服が上手く行くと爆発的に売れるのではないかと考えた者達がいたのだろう。

そして物を売るためにメタバースを仕掛けた。

イシキタカイ系や新しい物好きのイキリたちはそれに飛びついたが、世の中の比率で言うと彼らは少数派だから、当初に目論んだほどの数量が売れなかったのが現在の結果といえるのではないだろうか。

 

研究開発の継続は重要だし、それを否定するつもりは全くない。メタバースの研究開発も今後地道に続けられるべきである。しかし、一足飛びに技術は完成しないし、それを用いて一足飛びに社会が変わるわけもない。本当にメタバースを確立し普及させたいなら、これまでのような煽り方は百害あって一利なしといえる。

 

 

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 comment
  • キム ゴンウ より: 2023/04/04(火) 12:34 PM

    4/3 お昼頃心斎橋をリサーチされていましたか?
    お声をかけようかと思ったのですが
    厳しい表情だったので 遠慮しました
    働く男を感じました^^

  • とおりすがりの壮年 より: 2023/04/04(火) 10:10 PM

    元気に動ける人にとってはポケモンGOとかのARどまりがせいぜいなのだろうな、と思ってながめてます
    バ美肉VTuvberのVRですらオフ会で実際に会いたいとかなっているのを見ると余計に…

    逆に色々な事情でそうできない人たちにとっては、こういう世界は新たな市場であり出会いの交差点になりえるのかもしれないな、とは想像してました
    ただ、現状のコントローラが主流だけどどうやって操作するの?とか、考えるだけでも課題が多そうで
    やるわけないとは言わないまでもそんなに多くはないよね、となってしまいますね
    通常の市場と比べると規模はお察しください、なので人とお金が回るまで投資できる体力がないと続きませんね

    セカンドライフとか言っていたのは20年前くらいだったかな…
    そこからVRゴーグルがついて、はたして生きているうちに本当のソレにお目にかかれるのかなあ

  • くさの より: 2023/04/05(水) 11:56 AM

    そもそもメタバースで何ができるのか具体的に誰も言えないんですから、普及するわけないですよね。大体1日中重たい VRゴーグルをつけたい人なんていますかね?それこそディストピア世界の住人の現実逃避にはなりそうですが。

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