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南充浩 オフィシャルブログ

値上げを理由に品番数を増やすことになる無印良品の新戦略は大丈夫なのだろうか?

2023年1月12日 決算 7

個人的に、最近の無印良品の経営方針は迷走していると感じる。

以前に「男女兼用服」を大幅に増やして、危ういなあと思って眺めていたら、やはり衣料品が苦戦し男女兼用服を中止した。PDCAは必要だと思うが、そもそも理屈に合わない商品をプランニングしてトライする必要性は全くない。

現経営陣は「キャッチ―なことに焦点を当てた」と言っていたが、当て方が根本から間違っていた。

 

今回は、値上げ発表なのだが、原材料費の高騰に加えて燃料高騰からの電気代・ガス代の高騰があるので、それは避けられないことだろうと思う。

ただし、無印良品もそうだが、ユニクロ、ジーユーなどの巨大ロットの大量生産ブランドは、全品番が過不足無く完売するということは不可能なので、必ず値下げが発生する。期中の期間限定値下げは単なる値下げではなく、集客販促も兼ねているのでやめるわけにはいかない。

期末値下げまで待っていると売り切れるかもしれない品番は、期間限定値下げの時に買えば良いのである。それだけのことだ。

 

で、無印良品の値上げ発表だが、詳細を見てみよう。

良品計画が従来価格帯を強化 客離れ防止を狙う | 繊研新聞 (senken.co.jp)

 

良品計画は、1月13日と2月3日の値上げを機に、低価格商品の導入や家具の月額定額サービスの拡大など、新たな商品販売と事業を開始する。値上げ前の価格帯の品揃えを強化し、客離れを防ぐ。堂前宣夫社長は1月6日の決算会見で「これまでと同じ価格の商品を投入し、単純な値上げとならないよう準備をしている」とした。

 

とある。この部分が結論なのだが、この部分だけではちょっと意味がわからないことが多いので、後段も見てみよう。

値上げ商品に代わる従来価格帯の新商品やサービスの導入が可能となり、踏み切った。値上げ対象の綿のベッドシーツに代わり、新たに乾きやすい機能性素材のシーツを値上げ前の価格帯で販売する。ジュート、ウォーターヒヤシンス、竹などの安価な素材の商品群もある。

 

とのことである。

まず「値上げ商品に代わる従来価格帯の新商品やサービスの導入が可能となり、踏み切った。」という一節だが、個人的にはちょっと何を言っているのかわからない。当方の読解力がおかしいのかもしれないが、この一節は要らないだろう。

まあ、それはさておき。

要するに、例えば、綿のシーツは少し値上げするが、値上げ前と同じ価格で機能性素材(恐らく吸水速乾合繊生地だろう)のシーツを新商品として投入するということであり、シーツ以外の商品にもこの手法を用いるのではないかと当方は推測している。

 

だが、記事を読む限りにおいては、この手法は危険だと当方は考える。

当方が危惧する理由は、「品番数が増えることになるから」である。シーツだけで考えても

 

1、値上がりした従来の綿シーツ

2、値上がり前の綿シーツと同じ価格の吸水速乾シーツ

 

と2つの商品群ができることになる。色柄はまさか白だけとかブルーだけとか1色展開ではないだろう。恐らくは白とブルーとグリーンとか、白とベージュとブルーとか、3~4色くらいの展開になるのではないかと考えられるが、そうなるとSKUが単純に倍増してしまう。

その中からは必ず不人気の色柄が発生し、売れ残りとなる。これが2品番になるわけだから、売れ残り量も単純に考えると2倍になる(実際はそれほど単純に増えるわけではないが)。

売れ残り品は店頭で値下げして叩き売るか、アウトレット店で販売するか、ネット通販で値下げして売るかしかない。

値下げは粗利益を削ることになるので、従来品を値上げし、値上げ前の価格の新商品を投入するというのは、品番数・SKUが増えることにつながるため悪手の可能性が高いといえる。(どんなアイテムでも品番数・SKUが増えると売れ残り量が増える可能性が高まる)

 

そんな無印良品を展開する良品計画の23年8月期第1四半期決算が先ごろ発表された。

 

良品計画/9~11月は原材料の高騰・急激な円安で営業利益54.9%減 | 流通ニュース (ryutsuu.biz)

 

良品計画が1月6日に発表した2023年8月期第1四半期決算によると、営業収益1369億4800万円(前年同期比11.4%増)、営業利益50億2100万円(54.9%減)、経常利益54億6100万円(53.5%減)、親会社に帰属する当期利益38億9500万円(50.3%減)となった。

 

とのことで、まだ第1四半期のことなので、今後挽回は可能だろうが、大幅減益は状況から考えると仕方のない一面もあるが、単純に「増収」を喜べない状況だといえる。

記事には

 

営業収益は、国内及び中国大陸における既存店の売上が苦戦するなか、新規出店に伴う店舗数の増加により、増収となったものの

 

という説明がある。

今回の増収は、既存店は苦戦したが、新規出店のおかげで売上高が増えたということになる。物販に携わっている者なら常識だが、基本的に新規出店を増やせば増やすほど「売上高だけ」は増える。ただし、利益を確保できるかどうかは定かではない。出店による経費増で減益という事例はこれまでに掃いて捨てるほどある。

そして、利益度外視で、大量出店を続けて増収を確保するというやり方は高度経済成長期からバブル終焉まで続いたやり方である。

そしてたしかに無印良品は特に新経営陣になってからここ1年半くらいで大量に店舗を出店し続けている。

もちろん、コロナ禍によるテナントの穴あきなどで出店要請が多いのだろうと考えられるが、それにしても既存店が伸びず、大量の新規出店による増収というのは危険な兆候と考えられる。

そして、値上げに伴いいたずらにSKUを増やすという方針を今回発表したので、当方には「迷走している」と映るわけである。

投資家やメディアには受けが良い現経営陣なのかもしれないが、当方には、ちょっと危うさしか感じられない。

 

 

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/01/12(木) 10:55 AM

    電車に乗って都会にいかないと買えなかったのが無印
    特にアパレル・リネン・大物関係です

    裏を返すと、だから割高な物でも売れた訳です

    ところが、郊外の急行停車駅やめぼしいSCほぼ全てに
    出店すると、この理屈では物が売れなくなる

    という事は、プライスリーダーは近所のニトリやイオン
    になるのだから、彼らに合わせたプライシングに
    すればいいだけです

    それが出来ない・しかしそれをやらざる得ないという
    窮境が今回の方針によく現れています

    ただね、ここ20年の無印は天然シゼン大好き症候群w
    のせいで、「消費がすべてしょうゆ色・みりん色」に
    なってしまいました

    このヤバすぎる色味を化繊でも再現するつもりですかね?
    品質劣悪天然せんいの色を化繊で再現したら
    ヤバい次元のおバカさん揃いという事になります

    そして道を渡るとニトリイオンのせーけつ感あふれる
    化繊カラーの消費品が売っている

    さて、どちらが売れるでしょうか

  • 読者 より: 2023/01/12(木) 1:09 PM

    そもそも無印って天然素材信者向けの商売なので、昨年からのフリースパジャマとか迷走の象徴。
    機能素材のシーツ買うならニトリでええやんという話で明らかにブランドバリューを毀損している。
    中国事業で大成功して日本国内の失速を補わないと現経営陣の命脈は短かそう。

  • ハマオ より: 2023/01/12(木) 9:07 PM

    元FRの皆さん微妙な結果ですよね。
    大風呂敷広げるのは得意ですが
    継続的に成長できないですね
    三年位で化けの皮が剥がれる感じですね
    ファミマの澤田さんなども
    まだ玉塚さんが一番ましですかね

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/01/13(金) 9:29 AM

    渡り歩き組出身者・コンサル出身者の中では
    今の無印無能首脳陣はマシなほうです

    しかも日本のカイシャでの生き残りかたを
    知っている風ではある

    システム系を除きコンサルは絶対に謝らない
    でしょう?たとえ売上が上がらなくてもwww

    その点、今の無印首脳陣は
    あっさり方向転換を認めてますからね

    無印無能者wを観察していると
    男はとにかく人が良いのが多い
    そのカルチャ〜をしっかり引き継いでいる

    年俸3000万〜5000万という
    コンサル出身社長にしては安い年俸でも
    なんとか5、6年は粘ろうという計画でしょう

    んで次の社長は間違いなく女性ですな

    ただ市場は縮小・競争は激化するいっぽうだから
    会社を文字通りダウンサイジングしてあ
    「無印は社員にやさしいecoな会社ですぅ〜」
    とかヌカすだけでしょう

    その前に飲食コンサルに走る・保険・金融業を
    やりだすという情報もちらほらです

    バカコンサルの1つ覚え念仏で
    「ボクたち生活産業のSONYを目指しますぅ」
    といっていたのがいたくらいですから

  • BOCONON より: 2023/01/14(土) 6:30 PM

    迂闊にも “読者 氏に言われるまで気がつかなかったけれど,言われてみれば確かに無印良品は天然素材志向なブランドですね。僕も,シャツなどはなるべく化繊は避けたい方ではある。
    でもこういう肌が汚く見えるような色のシャツが欲しいんじゃないんだよな。アースカラーならいいってもんじゃない。
         ↓
    https://minamimitsuhiro.info/archives/9322.html

    こういういかにも「自然素材のさりげなくお洒落なシャツでござい」と強調しているかのようなデザインでもない。
         ↓
    https://www.muji.com/jp/ja/store/cmdty/section/S10205   

    昔はこうじゃなかった気がする。「安くてどうってことないようなポロシャツだけど,化繊じゃありません。風合いが違う」だったはず。
    今の無印良品の経営幹部は,ほんとは特に天然素材に愛着があるようにも見えない。

  • BOCONON より: 2023/01/14(土) 6:57 PM

    間違えた,こっち。
       ↓
    https://www.muji.com/jp/ja/store/cmdty/section/S10205?web_store=hmenu_D00022

    実際最近僕が買った無印良品の安いクッションはその安さに驚いた。もちろん化繊である。イオンで買うより安いね,こりゃ。
       ↓
    https://www.muji.com/jp/ja/store/cmdty/section/S02802

    これだと3COINSとさして変わりがない。
       ↓
    https://www.palcloset.jp/display/display/?SearchItem.KEYWORD=%E3%82%AF%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3&nl=0

    以前書いた気もするけど,最近買った3COINSのフェイスタオルも無印にセンスもおさおさ劣らないし安価である。
       ↓
    https://www.palcloset.jp/display/display/?SearchItem.KEYWORD=%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%AA%E3%83%AB&nl=0

    こういう無印のタオルを選ぶ理由は特になし,だ。
       ↓
    https://www.muji.com/jp/ja/store/search/cmdty/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%AA%E3%83%AB?secid=all

    例の無印良品の500円ショップじゃないが,無印良品はもういっそ「仮想敵として高級3COINSを目指す。無印良品のアイデンティティーとして天然素材の商品は出し続けるが,どこまでもそれにこだわるつもりはない。そんなマーケットに未来はない」と言ってしまえば良いのに。

  • BOCONON より: 2023/01/14(土) 7:59 PM

       菜の花や東が西武で西東武

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