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南充浩 オフィシャルブログ

債務超過に陥ったタカキューの最大の問題点は「知られてないこと」だという話

2023年1月11日 企業研究 5

タカキューの経営が悪化している。

タカキューの経営についてある程度の興味を持っているのは恐らく業界人だけだろうし、業界人の中でも一部だろう。もちろんタカキューを取引先としているところは除いてである。

多分、世間一般の人はほとんど興味もないだろうし、タカキューの認知度も極度に低いだろう。

 

タカキューが希望退職者を募集、応募人数は未確定 (fashionsnap.com)

 

タカキューは2022年2月期で債務超過に陥り、2023年2月期第3四半期末時点で15億2600万円の債務超過となっている。希望退職者募集により人員の適正化を図る方針で、その他商品ポートフォリオの最適化や販売チャネル改革などの取り組みを通じて、2024年2月期中の債務超過解消を目指す。

 

とある。

この債務超過解消の手段として

 

採算店舗の退店も進めており、2020年2月期から2022年2月期までの3ヶ年で全店舗の45%に相当する136店舗を閉店。2023年2月期は9店舗の退店を期初に計画していたが、2022年8月末までに退店した3店舗に加えて、前回発表からさらに閉店予定の店舗を増やし、2023年8月末までにセマンティックデザイン業態全13店舗を含めた合計32店舗の追加退店を決定した。

 

ともある。

要するに人員を削減し、不採算店舗の閉鎖を強めてなんとかしたいという考えである。

これは基本的には正しい。

この施策が奏功したとして、タカキューの将来像は、縮小均衡になるだろう。売り上げ規模よりも利益体質というのはバブル崩壊後、日本企業の命題となって今に至る。

いくら売り上げ規模が大きくても赤字垂れ流しでは企業としては意味がない。売り上げ規模は小さくとも利益を確実に稼げる方が良いというのは当たり前の考え方といえる。

タカキューとしては出血を止めることを最優先している。ここは理解できる。

ただ、収益が好転したとしてタカキューが増収基調に転じることは考えにくい。当方にはその姿が予測できない。売り上げ規模は良くて微増、普通に考えれば現状維持だろう。

となると、黒字だが縮小均衡する未来しか待ち受けていないと当方は見ている。

 

まあ別に増収しなくてもいいじゃないかと言われればそれまでだが、現状維持を続けて行くということは、想像以上に厳しく、経営者はもちろんのこと従業員のモチベーションも高まりにくい。2年や3年は耐えられても10年、15年は耐え切れなくなる。

 

当方もタカキューの内情は全く知見が無いので、なんとも言えないが、外部から眺めている限りにおいてもこれまでからそれなりの工夫努力はしてきている。

だが、それがことごとく実っていないだけのことである。

基幹ブランドはもちろん「タカキュー」で、このタカキューはブランドネームとしては賞味期限が切れている。だが、タカキューとて手をこまねいていたわけではない。

恐らくはタカキューブランドの効力が無くなっていることは自身も気付いていたのだろうと考えられる。

なぜなら、様々な新ブランドをこれまでの期間に開始しているからだ。

ブランド一覧 | TAKA-Q ONLINE SHOP/タカキューオンラインショップ【公式通販】

 

タカキューを含めて8つのブランドが展開されていることがわかる。

ただ、タカキューも含めて全ブランドの知名度が圧倒的に低い。このブログの読者は恐らく業界関係者が多いと考えられるが、みなさんはこの8つのブランドのうち、いくつブランド名をご存知だっただろうか?また、ブランド名をご存知だった方もそのブランドをタカキューが運営しているということをどれだけご存知だっただろうか?

当方はほとんど知られていなかったのではないかと思っている。

ちなみに当方が知っているのは「セマンティックデザイン」というブランドで、ここで服を買ったことがある。「セマンティック」をタカキューが運営するブランドだということも知っていた。あとは買ったことはないが「グランバック」というビッグサイズ専門ブランドは名前だけは知っていたが、タカキューの展開ブランドであることは知らなかった。

 

「セマンティックデザイン」で服を買ったのはだいたい10年強前で、2009年か2010年だったのではないかと記憶している。

当時、まだ立ち上がって間もないメンズカジュアルブランドだった。ユニクロよりはだいたい1000~5000円くらい高い価格帯で、少しモードカジュアル寄りの服が多く、ユニクロには無い柄物なんかがあった。ここで買ったのが綿裏毛のフルジップパーカなのだが、濃い紫色のボディに小紋総柄の刺繍が入っている。これはユニクロには絶対に無い商品なので買ってみたわけである。価格は4900円か3900円で、当時のユニクロの綿裏毛フルジップパーカより2000~3000円高かったが、たしか30%オフになってから買ったと記憶している。大麻葉と髑髏の刺繍なのでルシアン・ペラフィネのパクリオマージュではないかと思う。(笑)12~13年経った今でも当方のタンスの中に眠っている。

タンスの中に12~13年眠っていたセマンティックデザインのルシアン・ペラフィネっぽい(笑)パーカ

 

 

商品的にはたしかに面白い物があったが、結局は知名度が高まらないまま、今回のリストラでブランドごと消えてしまうわけである。

 

先ほどのブランドラインナップを見てもらいたいのだが、「家具雑貨を含んだライフスタイルブランド」「メンズパターンオーダースーツ」「中高年向けカジュアル」「シャツ専門店」と、巷でその時々に注目されていたキーワードとしたブランドは一通りそろっているのである。こういう部分ではタカキューは追随が速いのだが、それでもこれが消費者に全く浸透していない。

消費者の目先を変えるには新ブランドを展開する、新商品を投入するということが最も効果的である。だからアパレル各社はこれまで新ブランド、新商品、新ラインを定期的に投入し続けてきたわけだが、タカキューもその方法を忠実に行っていたが、知名度は浸透せず、全く奏功せずに債務超過に陥ったということになる。

 

知られていないのは存在しないのも同然

 

常々書いているが、タカキューはまさにそれを体現してしまったといえるだろう。いくら時代の風潮に乗った新ブランドを展開しても知られていないのは存在していないのも同然なので、消費者から選ばれる対象にはなり得ない。何せ消費者はその存在を知らないのだから。

基幹ブランドの「タカキュー」自体もそうだし、時代に合った新ブランド群も同様である。

だから、「服を買いたい」と思った時に「タカキューもあるよな」という選択肢に入れられることすらない。

タカキューがいくら出血を止めたところで、肝心の消費者が戻ってくるかというと、存在しないのも同然の状況なので、消費者は戻って来にくいと考えられ、当方はかなり厳しい状態にあると見ている。

 

タカキューの創業は古く1950年とされている。60年代・70年代にはヤングメンズのそこそこオシャレな店という感じだったそうだが、当方が物心ついた80年代・90年代にはすっかりその輝きは失せていた。そして92年にイオンと業務資本提携を結んでいる。最終的には資本力のあるイオンに救済されることになってしまうのではないだろうか。

 

アパレル企業にとって商品の良さも必要だが、知名度の高さもいかに重要なのかということがタカキューを見ていれば如実に理解できる。

 

 

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 comment
  • キムゴンウ より: 2023/01/11(水) 12:30 PM

    板橋区役所前の本社を訪問したが、あんまりおしゃれという印象の会社ではなかったですね。80年代の男性はモータースポーツに関心があり、レナウン同様タカキューもレースカーのスポンサーをしていましたね。あれもブランドの為と言うことでしょう。レイトンハウスの例もあるけども。
    タカキューの役割は2万900円スーツとファストリが奪ってしまったので、今後同社が復活することは困難でしょう。ニコルのようにかなり限られた客を太客として成長させるような手しかないんじゃないですか?高校生の中にはホストに憧れる学生も一定数いるわけで、ギャル服のように徹底してホスト服にシフトするとじゃないかな

  • BOCONON より: 2023/01/11(水) 12:53 PM

    TAKA-Q の問題点は「知られていないこと」だというのは正しい指摘かも知れませんが,それは一番大きな問題ではない,と僕なんぞには思えます。バブル時代末期に洋服に興味を持った人間としては「タカキューなんてどこのショッピングセンターにだってあるショップ」でしたから,買い物するかどうかはともかく,その存在自体は誰でも知っていたようなものなので。うちの近所の駅ビルやSCにも当然のように出店していたし,若い頃の僕の中小企業の同僚も「タカキューは高いからなー」などと話題にはしていた(TAKA-Q なんぞが「高い」ってこれまたどうにも貧乏くさい気もするけど)。

    それゆえ基本タカキューはわざわざTVCMなんてしなかったし、ファッション誌の広告 ≒ 記事にも滅多に登場しなかったし,その必要も大してなかったのでしょう。しかしバブルが弾けて以来,タカキューや三峰のような “ものはスーパーよりは良いし百貨店よりは安い” 店というのは存在意義がなくなりつつある。百貨店自体からして買う客はおろか「はやり物を見るだけ。実際買うのはのSCとかにある安い店」という客すらいなくなりつつあるのだから,これは当然だ。一番の問題はこの「服も最早 “貧困ビジネス” 以外存在意義がない」ということだと思います。

    それでももちろん宣伝は大事だ。世の中大部分の人間にとってインフルエンサーなんてお呼びじゃないし「テレビが言わない事はないのと同じ」だから。(あれほどの騒動を起こした統一教会だって,その土俗信仰的に淫猥な教義も「テレビが言わないから」未だに誰もほとんど誰知らないし,多分興味もない)。
    だから僕は「”マッキントッシュをバーバリーの後継ブランドにする” なんて本気で思っているなら,あんな意味不明でスカしたTVCMなんてやっても何の足しにもならない。イチローでも起用しなきゃアラン・ドロンのダーバンみたいに行くわけがない」と以前書いたのです。結果は残念ながら僕の思った通りだったようでもある。
    しかしなあ・・・
    今のタカキューや三峰にわざわざ目玉商品にするほど洒落たアイテムがそんなにあるかと言えばそれは疑問だし,推したところで例えばタカキューの ALEXANDER JULIAN ブランドのちょっと洒落たジャケットなどに目を惹かれる客がどれほどいることやら。
    だいいち,売る方もその良しあしが分かっているかすらどうも疑わしい。

    結局のところ「もうタカキューなんて存在意義がなくなりつつある」という身も蓋もない結論にしかならないのでありました。
    AVONHOUSE みたいに「まだ余力があるうちに廃業した方が賢い」のじゃないのか知らん。

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/01/11(水) 1:30 PM

    キムさん>タカキューでしたっけ?taka-Qでしたっけ?

    レナウン、taka-Q、レイトンハウスと
    80年代にモータースポーツにカネ出してたアパレルは
    その後みんな傾いています

    という事は次はイタリアみたいな名前のところが(おっとww

    ニコルが上手かったのは元服ヲタ層を客・社員りょうほうで
    ばっさり切った点ですな

    経費が高い中小アパレルである以上、特定のセクタを狙うのは
    もちろんですが、さらにその中のマスを狙わないといけない

    昭和30年代からある会社で今でも生き残っているのは
    そうした会社が多い印象がします

    「なーんとなくだけど、品が悪くなくて、楽チンな服がほしい」

    むかし、こういう層はレナウンのお得意様でしたが
    ニコルが総取りした感がします

  • 関口康夫 より: 2023/01/12(木) 4:58 PM

    唐突に NICOLE について語り出されても,僕は池袋東武でしか見た事がないし、タイやハンカチくらいしか買った事がないので,ちょっとあのブランド何のお話してらっしゃるのやらようわかりませぬ。
    手巾の色柄などはどこかクラシックな趣きがあって結構なものでしたが ...

    “合理主義者” は元来 ” DCブランド” が好きな人なのかな。それとも新聞すら読まない僕が流行り物に無知過ぎるってだけの話か。

  • BOCONON より: 2023/01/12(木) 5:02 PM

    あ,間違えて実名を出してしまったw
    承認するならどうかBOCONON名義で願います。

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