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南充浩 オフィシャルブログ

SHEINはユニクロとの競争なんて多分考えていないだろうという話

2022年10月13日 企業研究 2

SNS上ではすでに話題となっていたが、ユニクロ心斎橋旗艦店跡地に、今なにかと話題のSHEIN(シーイン)が期間限定店を10月22日からオープンする。

このユニクロ心斎橋旗艦店というのは2011年に心斎橋筋商店街にオープンした旗艦店で、H&Mの対面に位置する。2021年に閉店し、現在はジーユー心斎橋店に移転し、ジーユー心斎橋店はジーユーとユニクロの併設店となっている。閉店した理由はコロナ禍によるインバウンドが長期にわたって見込めないことと、契約期間が丸10年で終了したことによるものだと発表されている。コロナ禍以前の売れ行きは好調だったので、もしコロナ禍がなければ契約期間を延長したのではないかと想像できる。

 

ユニクロ跡地にシーインの期間限定店がオープンするということで「新旧交代の象徴」と過剰反応したり報道するケースがあるのではないかと思うが、当方はその視点はいささかナンセンスだと思う。

 

このシーインのポップアップ店についてファッションスナップドットコムがSNSの後追いで記事化しているので詳細を見てみよう。

シーインが「ユニクロ 心斎橋店」の跡地にポップアップストアをオープン (fashionsnap.com)

ファッションブランド「シーイン(SHEIN)」が、2021年8月に閉店した「ユニクロ 心斎橋店」の跡地にポップアップストアを出店する。期間は10月22日から3ヶ月ほどを見込む。

今回のポップアップストアは、ユニクロのグローバル旗艦店「ユニクロ 心斎橋店」の跡地にオープン。「ユニクロ 心斎橋店」は地下1階から4階までの5フロア構成で、オープン当時のユニクロ国内店舗では最大級となる約800坪の売り場を展開していた。ポップアップは1階フロアを利用して開催する予定だという。

とのことである。

 

まず、期間限定店なので3カ月程度の開催であること、そして地上1階フロアのみを利用すること、がこの記事のキモといえる。

3カ月ほどなので来年1月下旬までの期間限定店で決して常設店ではない。また旧心斎橋旗艦店は5フロアの巨大店舗だったが、5フロア全てを埋めるほどの商品量も人員投入も採算に合わないためか1フロアしか使用しないこと。この2点を合わせて考えても「新旧交代」とか「ユニクロ越え」という視点は少しズレているだろう。

 

「ユニクロ超え」謎の中国アパレル・シーイン、その「世界制覇戦略」と「真の目的」(週刊現代) | マネー現代 | 講談社 (gendai.media)

 

いま、大人には耳慣れないこのファストファッション・ブランドが世界のアパレル業界に激震をもたらしている。年間の世界売上高は200億ドル(約2兆8000億円)に達し、ユニクロを運営するファーストリテイリングの2兆2500億円(2022年通期業績予想)をすでに超えているとも言われる。

 

という一文と見出しが全てを表している。

個人的な意見でいうと「ユニクロ超え」という文言には過度の煽りを感じるが、それ以外は、この記事は内容・見出しともに決して悪くない。むしろ煽りが少ないところが良質だといえる。

まず、シーインというブランドは、メディアや一部の訳知り顔の胡散臭いコンサルタントがいろいろと伝えているが、実のところ、公式発表されている点は非常に少なくこの記事の見出しにもある通りに「謎の中国アパレル」でしかない。

年商2兆8000億円という金額も記事に書かれている通り「とも言われる」状態である。その他の様々な報道内容も公式発表ではない。

 

この記事、また同時期に出された記事はほぼ「ユニクロ超え」という文言を使っているが、これには当方は賛成しないが、日本人向けとしては使った方が伝わりやすいとメディア側が考えたのだろう。

ユニクロは日本発のブランドであり、日本ではほぼ国民服という位置づけにあり、日本人なら誰でも知っているというブランドだから、ユニクロとの比較は日本人には伝わりやすいと考えられる。

だが、冷静に考えてユニクロを展開するファーストリテイリングは世界3位の売上高なのだから、チャレンジャーが最終目標とする確率は高くない。何事も世界1位を最終目標にするから、シーインが目指すとするなら「打倒ユニクロ」ではなく「打倒ZARA」ではないだろうか。

「世界一を目指します」という人はいても、わざわざ「世界3位を目指します」という人は少ないだろう。

 

個人的には、シーインはZARAと似ていると感じる。

最近ではZARAも情報開示が増えてきたが、2005年ごろまでは情報開示がほとんどなく「謎のブランド」だった。この頃のZARAに個人的に情報開示を受けたとして、幾人かのコンサルタントやメディア人が報道し、自らの媒体的価値を高めて行った様子は、今のシーインに「個人的に情報開示を受けた」として発言力を増そうとしている様子と瓜二つである。

そして、シーインの強みは衣料品においてはトレンドキャッチしてから消費発売までが非常に短サイクルでスピードが速いことだとされているが、ZARAの強みも同様である。

ユニクロは商品企画自体を1年前~半年前くらい前から時間をかけて仕込むので、トレンド商品を短サイクルで次々と発売するというスタイルとは全く噛み合わない。また商品デザインもトレンド要素は取り入れるものの、ベーシック要素の強いデザインが主力なので、トレンド要素を強く意識するシーインとは競合しにくい。

 

そして、シーインはZARAやユニクロとは異なる存在を目指しているのではないか?というこの記事の指摘はその通りではないだろうか。

 

経営コンサルタントの竹内謙礼氏は、「SHEINは『中国版Amazon』になるポテンシャルを秘めている」と指摘する。

「そもそもSHEINを『アパレル企業』としてとらえるべきか否か、という問題があります。アパレルのサプライチェーン構築でユニクロやZARAよりも優れているとは考えにくいですし、売上は高くても、利益率まで高いかどうかは分からない。

おそらく彼らはいま、コロナなどの環境変化をビジネスチャンスとみて、とにかく『面』を取りに行っているのではないでしょうか。かつてAmazonは、最初はあえて儲からない書籍通販で流通網を構築し、その後ありとあらゆるものを販売する巨大ECに成長しましたが、SHEINにとっての服とはAmazonにとっての本なのかもしれません。

 

例えば、先日もシーインがコスメを発売するという記事が掲載され、この施策はあくまでも衣料品にこだわるユニクロ、ZARAとは明らかに異なる。

Amazonは本から始めて総合小売り化したが、衣料品の自主企画商品に関してはAmazonびいきのコンサルタントですら認めているほど日本では売れていない。

一方、シーインは服から始めてコスメ、その他生活用品と今後、取扱商品の分野を広げて総合小売り化する可能性は決して低くはない。

本から始めて総合小売り化したが、日本では自主企画の衣料品が売れていないAmazonに対して、衣料品が売れて総合小売り化するシーインという対比は面白いと思うしあり得るのではないかと思う。シーインが目指しているのはZARAでありAmazonではないかと当方は考えている。

「ユニクロ超え」は事実なのかもしれないが、比較対象するには実態とは離れており、日本人に伝えるためのメディアの方便にすぎないと思って眺める方が、シーインを冷静に客観的に眺められるだろう。

 

3カ月間もあるので、とりあえず1度は期間限定の心斎橋店に足を運んでみるつもりである。

 

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/10/13(木) 4:51 PM

    >シーインの強みはトレンドキャッチしてから発売までの
    >サイクルが速いことだとされておりZARAと同様である

    ただZARAもHMもサイクルが異常に早いのが
    日本市場では弱みになっています

    細かいディティールが甘いのはもちろん、縫製が荒い

    仕様書どおり縫う・検品をそこそこでいいからやる体制が
    皆無と思われます

    これではいくら安くて今っぽくても無理。日本では絶望的でしょう

    その点SHEINはディティールそこそこ・縫製もそこそこです

    しかもウェブでの見せ方が上手いとなると
    日本市場ではZARAに余裕で勝てると思います

    日本市場限定では、彼らの競争相手はハニーズじゃないでしょうか?
    南サンのご指摘通り、ウニクロGUは競合相手じゃないですね

  • BOCONON より: 2022/10/13(木) 10:54 PM

    >1 で例によってどっかのお調子者がフカしているけれど,全体としてはまだ正体不明,戸惑い気味な感じで「みんなテキトウな事言ってやがらw」ですね。
          ↓
    https://highfashionmens.com/archives/16020228.html

    メンズに関して言えば,南さんも上の人もおっしゃるように競合するとしても ZARA ,H&M (あるいはせいぜい GU )でありましょう。
    まあ僕なんぞにはネットや印刷物で見ても色も縫製も質感もわからないので実物を簡単に見られるようにならないと何とも言い難いですが,確かにどう見てもユニクロに取って代わるようなものには見えないし,そんな気もなさげである。 
          ↓
    https://jp.shein.com/men

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