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南充浩 オフィシャルブログ

雑貨に活路を見出そうとする企業が増えているが柳の下にドジョウは何匹いるのか?

2022年10月4日 企業研究 5

先日、無印良品の新しい業態が発表された。

かなり多くのメディアで報道されたのでご存知の方も多いだろう。

 

「無印良品」500円以下の日用品の新業態 長期的に2000店舗めざす

である。

「無印良品」を運営する良品計画は30日、500円以下の日用品に特化した新業態「無印良品500(ごひゃく)」の1号店を東京・三鷹に開いた。洗剤類、キッチン用品、洗面用品、スキンケア用品、シャンプーやコンディショナー、下着、靴下、文房具、レトルト食品、菓子などをそろえる。小型業態「ムジコム(MUJI com)」の業態転換を含めて、23年2月末までに30店舗を出店し、その後は年20店舗のペースで都心部への出店を重ねる。「『無印良品』によるコンビニに近い業態として、(反響次第で長期的には)いずれ2000店舗の規模に持っていきたい」(永原拓生・執行役員営業本部長)と高い成長性を見込む。

 

とある。

また

JR三鷹駅の駅ビル「アトレヴィ三鷹」の4階に1号店として、30日に181平方メートルの小型店をオープンした。通勤・通学などで駅を利用する人や近隣の住民に向けて、3000アイテムを販売する。そのうち約7割が500円以下の商品で構成する。

良品計画は買い替え頻度の高い低価格の日用品、消耗品、食品を重点的に強化する方針を掲げており、「無印良品500」はその戦略店舗となる。

ともある。

従来型の無印良品では既存店の伸び率の鈍化から大目標に掲げられた「世界売上高3兆円構想」は実現不可能だから新業態を開発するということは必要不可欠だし、納得できる施策であるといえる。

部門別既存店売上高の月次推移を見ると、衣料品は前年割れ続き、日用雑貨品が堅調だったが沈み始めている、食品が好調から転じて踊り場に突入したという感じとなっているため、日用雑貨品のテコ入れが入ってもおかしくはない。一方、衣料品へのテコ入れはいまだに店頭レベルでは見られない。

まあ、近年の衣料品業界の売れ行きからすると、無印良品が衣料品を強化しないのは当たり前ではないかと感じられてならない。

ちょうど、先日、玉屋がミッシュマッシュという衣料品ブランドを他社に売却したというニュースについてブログを書いた。

ミッシュマッシュ売却で衣料品ブランドが無くなり雑貨ブランドだけになる玉屋

 

玉屋というと関西地区では老舗のレディース服の専門店チェーンだったが、このミッシュマッシュを売却すると、この時に初めて知ったのだが衣料品ブランドは無くなってしまう。残るのは雑貨・アクセサリーブランド店ばかりとなってしまうのである。

今後、また新たに衣料品ブランドを立ち上げる可能性がゼロではないかもしれないが、わざわざ新しく立ち上げるくらいなら衣料品ブランドを全て無くすことはしないだろう。

リニューアルなり他社ブランドとのコラボなりをやってテコ入れをするはずである。一から新しく衣料品ブランドを立ち上げることは極めて非効率的であるので、今後は雑貨・アクセサリーチェーン店として生きるという社長の意思表示だと考えられる。

 

偶然だか必然だかわからないが、同じ時期に雑貨強化と雑貨特化の企業戦略方針が売り出されたことは興味深い業界内の動きだといえる。

 

要するに2社ともに「衣料品は難しい。雑貨の方か活路がある」と考えたのではないだろうか。

そして、2社がこの考えに至った理由の一つにはパルの「スリーコインズ」の大躍進があるのではないかと当方は考えている。

元デベロッパー社員に言わせると

 

「安物イメージが強い百均を導入されることを嫌う衣料品ブランドのテナントが多かったが、スリーコインズなら導入しても反対が無かった。だからテナント入店させることが多くなった」

 

とのことである。

しかし、その毛嫌いされた百均でさえ、2020年のコロナ禍以降は、ブランドのテナント撤退後の穴埋めができない商業施設に続々と入店している。

大阪市内でいえば、あべのハルカスウイング館にはキャンドゥが入っているし、なんばマルイにはセリアが入っている。都心一等地のファッションビルに堂々と百均が入っているのが当たり前となっている。

そして、百均が入っていないビルにはスリーコインズが必ず入っている。

となると、2匹目どころか3匹目か4匹目のドジョウを狙う企業が出て来てもおかしくはない。

今回の「無印良品500」なんていうのは、価格帯から考えるとあからさまにスリーコインズとバッティングする。スリーコインズの客を奪おうとしていると見られてもおかしくはない。

 

当方自身の消費行動を振り返ってみても、衣料品を買う枚数というのは年々減っている。理由はすでにたくさん持っているし、物にもよるが例えば防寒着や余所行きオシャレ着なんていうのは着る回数が少ない。そのため、毎年1枚は買い足したとしても3枚とか4枚は買う気にもならない。

そうなると、衣料品を販売しているだけでは売上高が増えにくいどころか、逆に売上高は減少する可能性もある。その点、単価は低くても雑貨・日用品ならかさばらないから購入頻度は高くなりやすい。日用消耗品なら必ず定期購入が見込める。コーディネイトで考えてみてもアクセサリーやバッグ、マフラーなどの雑貨を工夫することで着こなしを楽しむ人が増えた。

そうなると、ますます雑貨・日用品を扱うことの重要性が浮き彫りになってきたというのが、この2社の施策に反映されているといえるのではないだろうか。

 

そういう意味では、会社清算される直前の遊心クリエイションが新業態として雑貨専門店「ASOKO」を立ち上げたのは先見の明があったということができる。ただし、時期が早すぎたことと加え、会社の経営基盤がぜい弱なため、店舗数を拡大することができず、結局この業態はパルに買収され、そのまま消え去った。

百均の都心一等地商業施設への進出が相次ぎ、スリーコインズが躍進を続けることで無印良品、玉屋に続いて雑貨シフト・雑貨強化を打ち出すアパレル企業はさらに続くと考えられる。今後、低価格雑貨は今以上にレッドオーシャン化することになるだろう。今後、進出する企業はブームだから乗っかるのではなく、この辺りの機運を見極めることが必要となるだろう。

蛇足だが、無印良品500は、今後年間20店舗出店し続け、好調なら最終的に2000店舗出店したいと語られているが、そのペースだと2000店舗の到達するまで100年かかってしまうということを指摘しておきたい。100年後に無印良品があるとは思えないのだが(笑)。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2022/10/04(火) 10:53 AM

    100年間ワロタw
    雑貨とかの利点は、それこそ「定番品を長く売る」ってのもありますよね。むしろ、定期的に買う消耗品は、定番品が無くなっちゃうと困りますし。しかし、商売というのは難しいもんですねぇ。私も太い実家でチャラく生きてみたかった(´Д`)

  • BOCONON より: 2022/10/04(火) 6:24 PM

    8月31日のコメントで僕は「(あながち冗談でもなく)無印良品は100円ショップのような業態に転換してしまえばいい」と云った意味の事を書いたけど,実際のところ本当にそれに近い事をやるとは思っていなかったのでちょっとびっくり。

    ・・・とは言え,どうも個人的には無印良品の雑貨にはいま一つ信頼がおけない。最近買った

  • BOCONON より: 2022/10/04(火) 7:05 PM

    8月31日のコメントで僕は「(あながち冗談でもなく)無印良品は100円ショップのような業態に転換してしまえばいい」と云った意味の事を書いたけど,実際のところ本当にそれに近い事をやるとは思っていなかったのでちょっとびっくり。
    でもまあ僕でなくとも最近世の中洋服・食品も含めて広い意味での “貧困ビジネス” (ラーメンなんぞの “評論家” だのTVのニュースで話題が卵かけごはんだの,貧乏くせえな)以外はやらないような世の中だから当然の決断だと思う人は少なくあるまい,とも思う。

    ・・・とは言え,どうも個人的には無印良品の雑貨にはいま一つ信頼がおけない。最近買ったアルミのノック式ボールペンは,デザインは昔よりさらにクールで格好良い感じになっていたけど,相変わらずインクの出が悪かった。エコバッグもオシャレな感じのが欲しいと思って無印良品も見たけど,汚れが目立ちそうだし嵩張って使いにくそうだったのでやめておいた。僕は何本もある眼鏡をアクリルラックに入れているのだけれど,無印良品のものはたいへんに高価だったので,ダイソーで似たようなものを買って済ませている。デイパックは案外おかしなデザインが多くてダサいので,最近出たごくシンプルなベージュのもの以外は買ったことがない・・・といった塩梅で。

    われわれオッサンおばさん達にとって無印良品は「イメージは “シンプルながらオシャレ”」だけどお若い人には「特にそんな感じもしない割にユニクロなどより高い」というのが実情であろうから,500円以下の商品というのも「こりゃ安い割にお洒落」と思ってもらえるのか,「100均に比べて特に特徴もない割に中途半端に高い」となるのか,とりあえず「お手並み拝見」といったところでありますね。

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/10/05(水) 10:03 AM

    B氏>ビンボーくさいビジネス以外やらない世の中

    ラーメン評論家はすでにふうぜんの灯です。というのはラーメンは
    1杯880円~なので、今となっては高級品だからですw
    代わりに卵かけご飯評論家とか、ふりかけ専門家が出没中
    これも貧困ビジネスの一環かと

    無印はすきま商品を企画製造するのが上手かった会社です
    ポリエチレンのボトル類や小間物ケースみたいなやつ

    100均も30年前からやってはいたけど、品質最悪だったので
    無印の1人勝ちでした

    けど今は違う

    100均はもちろんイオンさんヨーカドーさんのPB品が良くなりました
    そして価格は無印より安い

    消費者目線でいくと「500円均いつ」という時点で
    もう無理だな・・・という感じです

    3個4個ホイホイかごに入れたら、あっという間に2000円3000円
    そんなお店に行く人がいるとは思えません

    それよかセール品のGUをせんえん札1枚で買ったほうが
    楽しいです

    3個カゴに入れても、千円札と小銭で済む300円均が
    価格面で限界だと思います

    無印も西友時代の人が完全にゼロになってから
    本当におかしくなりましたよね

    給料やすくても、イメージがいいから
    コンサル関係アパレル関係者がわんさと入ったのが
    低落定着のきっかけだったと思います

  • BOCONON より: 2022/10/10(月) 11:39 PM

    > ラーメンは1杯880円~なので、今となっては高級品だからですw

    そがいなもんかいの。
    僕はあまり外食しないし,しても富士そばくらいだから「ラーメンなんてたいがい500円以下だろ」って感覚が抜けないのでそんな事になっているとは知りませなんだ。

    無印良品について言えば,確かに500円じゃ「ついでにこれも買っちゃおう(としばしば要らないものまで買ってしまうがそれもまた楽し)」とはいきそうもないですな。

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