綱渡りのようなオペレーション
2014年5月29日 未分類 0
衣料品・服飾雑貨において「日本製」がちょっとしたブームである。
しかし、現状、国内製造業者は減り続けている。
起死回生を賭けて新規商材開発に乗り出した企業もあるが、需要が増えても、製造業者の減少には歯止めがかからないというジレンマに陥る場合もある。
今回は、ある雑貨の現状を考えてみたい。
新規商材の開発に成功し、売上高がそれなりに伸びている雑貨がある。
当然、需要が増えるのだから、供給量も増やさないといけない。
しかし、作り手は減少しているため、需要になかなか対応できないことが増えている。
販売店からは「補充対応が悪い」「供給体制はどうなっているのか?」という不満の声が挙がる。
しかし、よくよく尋ねてみると、作り手となる職人は減り続けているそうである。
4年前には20人いた職人が、今は5人くらいに減っているのだそうだ。
5人では作れる物量も知れている。商品補充がままならないのも当然といえる。
この話を聞いて、何とも難しい局面だと感じた。
新規商品の開発に成功したといっても、初年度売上高は知れている。
そこから毎年拡販したといっても、5億円とか10億円規模に到達したわけではない。
新規商材は好調に伸びているとはいえ、工場全体の売上高減をカバーできる規模ではない。
そうすると工場側は人員整理を行わざるを得ない。
一方、新規商材の需要は伸びているから、商材の補充は不十分なものとなる。
現在、それでもある程度売れているからごまかしも効いているが、もしかすると補充体制の不備から売れ行き不調へと転じる可能性もある。
そうなれば、さらなる人員整理もあるだろうし、下手をすると工場自体が倒産に至る可能性もある。
破綻しかけた供給体制でどうやって好調な売れ行きを維持させるのか、という難しい舵取りが必要とされているのが現状である。
そんな話を聞いていて、これは単にこの雑貨品だけの問題ではないなと感じた。
他の衣料品・服飾雑貨を含めた国内製造業者の多くが置かれている共通の問題といえる。
新規商材の開発・販売には成功した。
↓
けれども工場全体の売上高減を補う規模に成長するには数年以上の時間がかかる。
↓
工場全体の経営は厳しいから人員整理を行う。
↓
供給体制に破綻をきたす。
↓
供給体制は破綻しつつ、新規商材の販売量は増やさねばならない。
これを乗り切るには綱渡りのようなオペレーションを繰り返すこととなり、一手差し違えると、工場は倒産することになる。
「日本製」ブームはたしかに明るい兆しではあるが、製造現場の現状は多かれ少なかれこれに近い部分がある。
果たして、いつまで「日本製」の衣料品・服飾雑貨品が存在し続けられるのかと考えると、前途は暗いと感じられる。