MENU

南充浩 オフィシャルブログ

メタバースで洋服のネット通販が拡大するとは到底思えないという話

2022年8月10日 ファッションテック 1

基本的に「最新の〇〇」にはあまり飛びつかない。

情報としては知っておこうとは思うが自分の生活にそれを即座に取り入れたいとは思わない。なぜなら、今でも十分に便利な生活を送っているから未知の〇〇に飛びつく必要性を感じない。また、最新の技術というのは改善点も当然多いから、それならある程度普及して改善されてから取り入れた方が効率的だと思うからである。

アパレル業界は基本的にミーハーな人が多いから「最新の〇〇」に飛びつきたがる。特に衣料品が売れ行き不振だから余計に藁をもすがる思いで、飛びつく場合が多いのだろう。

毎年次々と「新しい〇〇」が業界で提唱されるが、例えば、ノームコアだとか、洋服の月額レンタルサービスとか、「売らない店」とか、意味の分からない物も多い。

そんな物の中の一つにメタバースがある。

何度説明を聞いても良く分からない。いや、基本的なことはわかるが、それがなぜ衣料品販売やネット通販の買い物に大きく貢献するという理屈になるのかがわからない。

これが音楽ライブとかゲームとかそういうエンタメなら需要があることは理解できる。当方はフォートナイトもエイペックスもプレイしないが、ポケモンGOなら欠かさずやっている。ARなんてめんどくさいから使わないが、それでも自分のアバターは時々気分転換を兼ねて衣装を着替えさせている。生来のケチんぼな当方は無料の衣装ばかり選んでいるが、3年くらい前から安い金額なら課金して衣装を買ってみても良いのではないかと思い始めており、ゲームキャラの衣装を買うために課金するという行為は理解できる。

 

しかし、メタバースで現実の衣料品やネット通販の売れ行きが大幅に伸びるという予測はどうしても納得できないでいた。

メタバースもうダメじゃね?:村上福之の「ネットとケータイと俺様」:オルタナティブ・ブログ (itmedia.co.jp)

 

メタバースのECは金入ってくるまで時間と労力がかかりすぎる。メタバースの中のお店でもの買うのすごいつらい。普通にAmazonで検索して買った方が3兆倍速い。

 

当方の理解している技術水準とこのブログ主では圧倒的に異なると考えられる。もちろん、当方の理解が圧倒的に低い。しかし、それでもこの一文には非常に納得できる。

何でわざわざ仮想空間内の街に行って買い物をする必要があるのか、理解不能である。Amazonだけではなく、楽天やらYahoo!ショッピングやらで検索して買った方がずっと手っ取り早い。

「買い物はエンタメだ」と主張する人もおられるが、それなら、実店舗に行って商品を実際に触った方が楽しめる。個別の路面店を廻るのは効率が悪いとおっしゃるなら、最寄りのイオンモールとかファッションビルとかそういう集積された施設に行けば効率的に実店舗を見て回ることができる。

 

まぁ、アバターで接客してもらえるのは新しいけど、なんかamazonでとりあえず買って、返品したほうがええわ。これはビジネスやってる方も、ユーザーも、投資家にとっても、金入ってくるまで今までより時間かかるのはデメリットしかない。決済の時に、Webサイトに飛ばされて、ヘッドセットはずさなあかんやつとか、面倒くさい。

 

とあり、アバター接客が特段優れたセールスポイントとも思えない。チャットで接客してくれる現行の通販サイトだって少なくない。それと何が違うのだろうか?

 

メタバースでお金とるには、ゲームに特化するか、セカンドライフみたいなデジタルコンテンツ売るほうがよい。ECはメタバースでなく、普通のスマホで頑張ったほうがよい。普通にブラウザで買うのが早い。

とあるが、その通りだろう。

スマホかパソコンで普通の通販サイトで買うのが一番手っ取り早くてめんどくさくない。そしてゲームやエンタメなら効力があるというのは、ポケモンGOしかやらない当方のような低感度のオッサンでさえ理解できる。

あと、コスト面にも具体的な数字はないものの言及されている。

3Dを扱うので、どんなオブジェクトも気楽につくれない。(中略)まぁ、3Dはお金かかるよ。

それはその通りだろう。テレビの特撮番組でも立体CGが使われることが増えたが、予算配分を考えずに頻繁に使うことができないと言われている。だから実際にメタバースに積極的に今の時点で乗り出しているアパレルブランドは大手しかない。3Dをやるには抽象零細アパレルでは企業体力的に考えて不可能なのだろうと思う。メタバースに投資できるような大手ブランドからすると、投資額は大したことがないし、セールスプロモーションの一環だと考えれば例え外れたとしても惜しくないということなのだろう。中小零細ブランドにはとてもではないがそんな資金的な余裕はない。

 

上記の理由でメタバースは制作費が仮に従来webの10倍くらいかかるのに、別に売上が10倍になるわけでもない。メタバースだから、広告の出稿価格が10倍にならないし、ECの単価が10倍になるわけでもないし、オンラインセミナーがZoomより10倍になるわけでもない。利益でないと、投資家も手を引くし、先はない。

 

とまとめられているが、結局はどんな崇高な理念であろうが、最新の夢の技術であろうが、企業側が儲からなければ開発は進まないし普及もしない。経済合理性の無いプロジェクトが規模成長したためしはない。

結局、リサイクルポリエステルが20年前から存在しているのに、SDGSブーム(笑)が来るまで見向きもされなかったのは、素材そのものが低品質の割に高価格だったからである。

それにどう考えても、買い物をするためだけに仮想空間へ行きたいという人は少数しかいない。ゲームや音楽などのエンタメを楽しむために仮想空間へ入るというのは理解できるが、買い物のためにそんな面倒なことをしたいという人がどれほどいるだろうか。

自分と周囲の人々の日々の生活スタイルを鑑みれば容易に想像できると思うのだが、メタバースに限らず「最新の〇〇」に引っかかる業界人が少なくないのはどうしてなのだろうか?謎でしかない。

 

仕事のご依頼はこちらからお願いします~↓

SERVICE

この記事をSNSでシェア
 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2022/08/10(水) 11:19 AM

    メタバース、アバターとかじゃなく実写?で自分の顔、体型のままでお店に行って試着できるとかだったら、利便性あって少しは使ってみようと思うかも?
    ちゃんと自分の体型に合わせて服を着た時の状態が分かるって前提ですが、まぁそんなコトは技術的に可能だとしても、zozoスーツの二の舞になっちゃいそうで我々が生きている間には実現しないでしょうけどw
    あと、外見が自分のままだとお店で鏡見るよりも客観視しちゃって「カッコ悪いからやっぱ買うのやめよう」となって逆に売れなくなるかも?(´Д`)

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ