MENU

南充浩 オフィシャルブログ

ベルシュカも日本撤退 残り少ない外資グローバル低価格SPAブランド

2022年7月5日 企業研究 1

また外資グローバル低価格SPAブランドが日本から撤退した。

もうご存知の方も多いだろうが、この記事である。

ZARA姉妹ブランド「ベルシュカ」渋谷店が7月18日に閉店、国内実店舗はゼロに (fashionsnap.com)

 

インディテックス傘下で「ザラ(ZARA)」の姉妹ブランドとして知られる「ベルシュカ(Bershka)」が、日本1号店である渋谷店を7月18日に閉店する。2011年4月のオープンから約11年営業を続けてきた。同店の閉店により、国内のベルシュカ実店舗はゼロとなる。

なお、閉店後もオンラインストアではアイテムの販売を継続していくという。

 

とある。

 

少し前にZARAの国内店舗数が70店舗にまで減少しているという内容をこのブログにアップした。

日本で急速に縮小しているZARA

あの時点ではまだベルシュカは残っていた。

だが、元から少なかった店舗数は最近はさらにめっきりと減っていた。関西在住の当方がベルシュカ店舗を定期的に見る場所は、あべのキューズモールと心斎橋筋商店街だったが、今年5月だか6月だかに気が付いた時には閉店していた。

心斎橋筋商店街店はトミーヒルフィガーに変わっていた。たしか記憶が確かならトミーヒルフィガーは隣の路面店だったはずだが、ベルシュカ跡地に移転したということになる。

ベルシュカというブランドだが、2019年の夏に服を1枚だけ買ったことがある。

デニム生地の半ズボンで、最終処分価格で千数百円にまで値下がりしていたはずである。もっとも、2020年以降そのデニム生地半ズボンはあまり着用していない(笑)。

 

 

モード感のあるZARAに対してベルシュカはストリート寄りカジュアルという感じで、50歳前後のオッサンにとってはあまり魅力が感じられない。

それでも後学のために何度か店舗に入って商品を見てみたが、最終処分品以外は割安感は感じなかった。

各店舗もそこまで賑わっている感はなく、2019年時点でも大丈夫かな?と心配していたが、2020年春からのコロナ禍がトドメを刺してしまったといえるのではないかと思う。

 

結局、これで現在日本国内に残っている外資グローバル低価格SPAブランドはGAP、H&M、ZARAの3つになった。

その3ブランドの中でもし次に撤退があるとするならZARAではないかと、そんなふうに見える。

実際に前回のブログをアップした後、大手ショッピングセンターの現場の人からタレコミがあったのだが「H&Mはコロナ禍で撤退もありましたが秋以降再度出店数が増える見込みです。ZARAは店舗数が減少し続けたままです。私見ですがZARAは日本撤退もあり得るのではないかと思います」という内容だった。

実際の再出店計画など、外野の負け犬たる当方が知ることはできないからありがたい限りなのだが、ZARAについての見方は同じだった。

 

ZARA、H&M、GAPと残る3ブランドも店頭を見ていると決して好調・順調とはいえないと感じる。

ZARAとH&Mはこれまで何度か書いたので省略するが、GAPは価格政策の迷走が凄まじく不調ぶりがうかがえる。

高い定価設定と低い投げ売り価格という価格GAPもといギャップの売り方にようやく見切りをつけ、定価を引き下げてセールの削減を謳ったのが2020年秋のことだが、すでに2021年から下げた低価からさらに値下げセールを頻繁に行うようになった。もちろんコロナ禍という特殊環境も影響していることは否めないが、明らかに売れ行き不振の在庫過多ということはこの業界を少しでもかじった人なら誰でも推測できる。

定価引き下げによるセールの削減とは何だったのだろうか?

外資グローバル低価格SPAブランドの不振の理由は

1、テイストが日本市場に合っていない

2、サイズ感が日本人消費者に合わない

3、使用素材・縫製仕様などの品質が国内低価格ブランドに比べて悪い

という3点が挙げられるだろう。

ZARAとベルシュカについては、そこに

4、定価に割安感が感じられない

ということも付け加えられるだろう。これは定価引き下げ以前のGAPにも当てはまることである。

 

各ブランドで商品のテイストは異なるが、だいたいの相場感ではZARAで15000円するようなジャケットはベルシュカだと10000円くらいである。ところがユニクロだと5990~4990円、ジーユーだと3990~2990円くらいという感じの定価設定となっている。

まだZARAは欧米最新トレンドが反映されているから4つの難点があっても買う理由はある。だがベルシュカはどうか。

ストリート寄りのカジュアルなので、日本国内で代替ブランドを探すことは可能だ。そして、その代替ブランドの多くはベルシュカより品質が高くて低価格であるから、日本人消費者の多くにとってベルシュカをわざわざ買う理由はない。当方ならもっと低価格の代替ブランドを買う。

ベルシュカが上陸後あまり拡大できず、今回撤退する最大の理由はここだろう。

 

今回ベルシュカは撤退してもネット通販は継続するとあり、業界の識者の間では「ZARAも店舗数を減らしてネット通販を強化しているから、同じ会社が運営するベルシュカも同様ではないか」という楽観的な意見も聞かれるのだが、当方はそんなに楽観できる事態ではないと見ている。

理由は実店舗がなく定価もさして安いとは言えないブランドがネット通販だけで売れるだろうか?という疑問である。

おまけに品質は低い。以前のZARA回でも書いたように「ズボンの脚の太さが左右で異なるということもあるZARAを試着なしにネットの画像だけで買う勇気がない」という層もいる。

ベルシュカの品質も当てにはならない。果たして画像を見ただけでネット通販で買う層がどれほどの人数存在するのか甚だ疑問である。

実店舗が残っているZARAでさえ、ネット通販に並んでいる商品と各実店舗で並んでいる商品が全く異なる(要はネットも含めた各店の売れ行きが異なるため現存する在庫が異なってしまうため)から、ネット通販で見た商品を実店舗で探すことは困難だと言われているし、逆もまたしかりなので、識者が想像するよりもネット通販を拡大することは難しい状況にある。

世界市場ではどうだかわからないが、日本市場においてはZARAのネット通販戦略が高い効果を出すとは当方には考えにくい。

今回のベルシュカ撤退で、ZARAの近い将来の日本撤退の可能性も高まったのではないかと考えてしまうのだが、それは杞憂だろうか。

 

仕事のご依頼はこちらからお願いします~↓

SERVICE

この記事をSNSでシェア
 comment
  • sakeparadise より: 2022/07/05(火) 9:53 PM

    レディース目線が足りない
    南さんのブログで感じるのは
    1.個人の購買意欲に合うかどか
    2.個人の品質基準に合うかどうか
    あくまでメンズ感覚での〇×
    知り合いのODM会社デザイナーは、ユニクロ、ジーユー、しまむら、無印でパクリ用サンプル購入は無いが、ZARA,H&Mは重宝していると言っていた。ズバコピーではなくいくつかの商品の要素を合わせ技でサンプルを作ると商談成立%が高いそう→レディース商材に限るが
    また週に3日位店舗に行ってると、新規商品の導入型数の多さに驚かされるそう→凄い企画(パクリ)力&生産背景
    レディース中心のバロックジャパンリミテッド、マークスタイラー、マッシュスタイルラボの記事も是非お願いします。
    最近話題がないファイブフォックスも取り上げて欲しい。

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ