
こだわった高価格な服をマス層に売ることは不可能に近いという話
2022年7月4日 トレンド 2
先日、岡山・福山界隈のジーンズ業界についての情報交換をさせていただいた。
かつてはナショナルブランドと呼ばれた大手ブランドのほとんどは縮小し、こだわり系の小規模デニムブランドの設立が増えたが、それも一服感が出てきたように感じる。
で、その中の1社の近況を聞くことができたのだが、社長はメディアでどんな公式発言をなさっているのかはつぶさにはしらないが、実際のところは
「年商10億円前後の現在がピーク。これ以上は増えないだろう。ジーンズ1本に2万円~3万円費やすような人は今の世の中ではマスではなく少数派、その少数派に支えられているから今の企業規模が適正であり限界」
というような意味合いのことをおっしゃっているとのことだった。
これについて、当方はまさしくその通りだと感じる。
人の趣味は多々あり、その趣味の一つが洋服なのではないかと当方は常々思っている。釣りにはまっている人もいればキャンプにはまっている人もいる。軽い登山?山歩き?にはまっている人もいる。
当方ならガンプラだろうか。最近はガンプラが入手しづらいので他のプラモデルも買うようになっているが。
最近は、ガンプラが入手しづらいので、見つけたときには定価でも買うようになった。もちろん、安ければ安いにこしたことはないから、割引きのある店で優先的に探すことは言うまでもないが、そこでなければ定価で買う。転売ヤーを利することになるため定価以上では絶対に買わないが。
その代わり、仕事着も兼ねたカジュアル服、セットアップには金を使わなくなった。趣味も兼ねているからちょくちょくと毎月服は買うが、4年前に比べると枚数は激減した。もちろん合計金額も激減している。
周囲には釣り、山歩き、キャンプ、サーフィン、音楽などを趣味にする人がいる。多くは衣料品業界人なのだが、趣味の釣りなどにはお金を使うが、カジュアル服やビジネス服にはあまりお金を使わなくなった人が多い。
そりゃ個人の収入は限られているのだから、何かに使えばその分他の分野の支出は減らされて当然である。
ファッションを趣味とする人は体感的に20年前、30年前と比べると減ったと感じるし、支出を減らされる分野の一つがファッションになったのではないかと強く感じる。
ちなみに当方は食費も削減している。なぜなら食べることにさほど興味が無いからだ。
で、話を戻すと、ファッションを優先すべき趣味にしている人は体感的に大きく減っている。もちろん、他人の趣味にケチをつけるつもりはない。
このような状況だから先の社長のお言葉は本当に正しいと感じる。
こだわって高い服を作って売っているけど年商何百億円規模を目指します
というのは、現在の環境では至難の業だと感じる。
若き日に、といっても30歳くらいだったが、いろいろと百貨店メンズブランドのことを教えていただいた方がワークマンシューズについて感想をブログで書いておられる。
手放しでは賞賛できにくいという主旨は当方と同じである。その文章の中にこんな一節がある。
小職のような拘りのある消費者はこのターゲットにはイレギュラーなので平均的ではないのですが、靴やファッションを身に着ける事による高揚感が残念ながら感じられないのです。
とのことである。
一節だけを引用すると誤解をされる方も多いかもしれないので、念のために説明をすると、拘りがあると書いていても低価格ブランドも買い集めて使ってみて自分の好みはこうだと言っているのと、あとは低価格ブランドでの仕事もされていたので、趣味と仕事は切り分けて考えられるタイプの方である。
趣味の部分では当方とは全く合わないが、それは先方とて同じだろう。ユニクロとジーユーの短パンは990円に値下がりするまで買わないのに、ガンプラなら5500円の定価でも買うという当方の嗜好は先方からすると理解不能だろう。
とはいえ、持ち上げるわけではないが、趣味と仕事を切り分けて考えられるタイプの人は、衣料品業界では非常に少ないというのが、当方の30年間の経験である。
異性に対する服なら、ビジネスと割り切って考えられるタイプの人は業界にも多いが、同性向けの服になると「趣味」が丸出しになって割り切ってビジネスに徹しきれない人が多い。
そういう点では先ほどのこだわりジーンズの社長も高い評価ができる。
アパレル業界人、とくに古株業界人や高価格帯に身を置く業界人は、いまだに高くてこだわった服を大量に売ることを夢見ている。
そのため、必ず、ワークマン、ジーユー、しまむら、ユニクロなどの論評になると、市場規模とか想定される獲得客数とかそんなことを度外視して「洋服とは」「ファッションとは」みたいなことを語りたがる傾向が今でもそこそこ残っていると感じる。
ファッションの趣味について語ること、こだわりを持つこと自体は全く否定しないが、マス層へのビジネスにそれを持ち込むことは何ら意味が無いと思っている。
マス層に売りたければマス層に売れるような商品、値段を提供すべきである。趣味の商売がしたければ、その分野は小規模であることを強く認識する必要がある。
その点、先ほどのジーンズ社長は冷静である。たしかに、いくらムラ糸を使っていようが、旧式の織機で織ったデニム生地を使っていようが、ジーンズに2万円も3万円も支払いたいという人はマス層では完全にない。「うちの商品と価格帯ならこれくらいの売上規模が限界」と見極める冷静さが求められる。
業界人と話をしたりSNSを眺めていたりすると、そのあたりの分類がいまだにできていない人が多いことが、衣料品業界の苦戦の一因ではないかと思った次第だ。
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南ミツヒロ的Gパン愛好者 より: 2022/08/12(金) 12:25 PM
「ちょう高品質・ウルトラこだわり満載ゆえにGパンでも3万で当たり前」
みたいな流れが出てきたのって、いつ頃からですか?
昔ばなしになりますが、日本リーバイスが独自企画でちょい高品質な501
(503BXX)をリリースしたのが89年。価格は確か12,800円だったと思いますリーやラングラーもこの流れに追随して、価格もほぼ同じでした
そしてこの価格だからマス層に広がった
防縮加工済のデニムだから扱いやすい上、色落ちも楽しめました
これなら7900円の501より5000円高くて当たり前だなと思ったものです問題はそこからです
その後、世の中ずっとデフレなのに、
大手メーカーのちょいコダワリ品ですら値上げ値上げでしょう?ある時点から、小売価格の設定が
原価法から「市場で売れうる最も高い値段法?」
に変わったような気がしますそしてGパン3万当たり前~のビックリ価格が
マス層を締め出すきっかけの1つになり
最終的には業界全体が傾くようになりました、とさ
私も若かりし頃は
かなり洋服が好きだったと思いますが
今はそこまでではなくなりました
私の通っている美容室と取り引きしている
材料の営業の方によくお会いするのですが
50歳くらいで細マッチョ
(空手を何十年もやられているそう)
その方はいつもオシャレで
担当の美容師さんと
本当にオシャレで羨ましいねぇと話ます
凝ったオシャレもする人ですが
薄手のクルーネックのネイビーのセーターに
細身のスラックスにレースアップシューズ
(しかもリーガルでした笑)
たったそれだけでもオシャレなのです
何が言いたいかと申しますと
ヘアスタイルと顔と体型が一番重要
その上で体型や雰囲気に合った洋服をチョイス
それが一番実はハードルが高いのではないか…と
オシャレな人はそうそういないのも現実
見栄を張る場所も相手も必要もなくなった今
逆に高いアイテムを身に付ける
それだけでは満足感は得られないのですが…
私は車やバイクが趣味なので
それ用のアイテムにはお金を惜しみません