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南充浩 オフィシャルブログ

難易度は高いがスーツ需要を一定量維持できる方法はこんな感じ?

2022年7月6日 トレンド 4

季節外れの台風のおかげで、7月3日の日曜日を最後に季節外れの猛暑もおさまった。

気楽な仕事の時には夏の暑さが何よりも嫌いな当方は半ズボンを穿いている。ある程度身なりを整えないといけない仕事が月に何度かあるので、その際は長ズボンを穿くのだが暑い。

夏にまともな服を着ることはかなりの苦痛である。

そんな当方だが、スーツを着こなしている人(ちょいクールビズ寄りも含めて)を見るとやはりかっこいいなと思う。自分は着たくないけど。

 

コロナ禍が始まってからスーツ業態苦戦の記事を頻繁に目にするようになった。このブログでは何度も書いているが、スーツ危機が最初に叫ばれたのは2007年頃のことだった。

ちょうど団塊世代の最年長の定年が始まる年である。しかし、高齢化社会に加えて平均寿命が延びたこともあって、最近はほとんどの企業で65歳までの延長雇用がなされるようになった。

そのため、2007年問題は一旦棚上げされたが、寿命も延長も永遠ではないから、終わりは来る。

それが2017年頃のことで、延長された雇用も終わり、団塊世代すべての完全リタイアも訪れた。

そこから如実にスーツ業界の苦戦が顕著になり始めた。そしてコロナ禍によるリモートワークの推進で、通勤着・現場作業着としてのスーツ需要は激減した。

今年は出勤日数が増えているから、ある程度の買い替え・買い足し需要は想定できるものの、ピーク時のころの需要には到底回復できない。服装のカジュアル化が進んでいることと相まって、通勤着・現場作業着として着用する生産者人口が団塊世代の完全リタイアによって激減したままだからだ。

 

そこで、特に注目されるのが、青山・AOKI・はるやま・コナカの大手スーツチェーン店4社の動向である。

上位2位の青山・AOKIはスーツ以外の異業種へ早くから進出している。異業種への進出に関しては青山よりもAOKIに一日の長があると言っても良いだろう。

一方、コナカは目立った異業種参入への動きが知る範囲では存在しない。

紳士服のコナカ、在庫「20日」に託す東証プライム残留: 日本経済新聞 (nikkei.com)

この記事によると

 

スーツ市場の成長が見込めなくなり、紳士服各社はネットカフェや焼き肉店といった多角化を進めた。連結売上高に占める紳士服販売事業の割合は青山商事で7割弱、AOKIホールディングスで6割弱まで低下したが、コナカは依然として95%が紳士服だ。

 

とあるから、当方の認識は正しかった。

この記事にもあるようにコナカの唯一の切り札は低価格オーダースーツ「ディファレンス」である。

ただ、当方からすると、中・低価格のパターンオーダースーツというのは、市場規模が非常に小さいと見える。そのジャンルでは最大手と目されているタンゴヤのグローバルスタイルですら、いまだに売上高100億円を突破できていない。都心一等地に店を構え2着48000円という低価格を打ち出しているにもかかわらずである。

ZOZOのPBのメンズスーツがすぐにポシャッた要因の一つもそこにあるだろう。

となると、ディファレンスをいくら拡大したところで、利益率は改善できるかもしれないが、「人員には手を付けずに業績回復を目指す方針」(本文から抜粋)を実現することは不可能だろう。

なぜなら営業利益が改善する可能性はあるが、売上高を現状維持することは市場規模の小ささから考えても不可能に近いからだ。

では、スーツ需要を拡大とは行かないまでもある程度維持する方策はあるのか?と問われると、スーツの着用シーンを大きく変える、スーツの使い方を変えてしまう、とのが妙手なのではないかと当方は考えている。

まあ、言うは易く行うは難しというのは毎度のことであるが。

 

当方が想起するのは「メガネ」である。

30年前、当方がまだピチピチの男子大学生だったころ、メガネというのはクソダサい医療器具という位置づけにすぎず、色気づいて大学デビューする奴ら、高校デビューする奴らはこぞってコンタクトレンズに変更していた。

ちなみに当方の両親も若い頃から近視用のメガネをかけていたがデザインにこだわるなんてこともなく、淡々とメガネをかけていた。

それがいつの頃からか、90年代半ばくらいだったのではないかと思うが、「メガネはファッションだ」という感じになった。

これは恐らくはファッション雑誌やら当時出始めていた大手低価格メガネチェーン店やらによるキャンペーンだったと考えられるが、そこから低価格でデザインバリエーションが豊富なZOFFやJINSなどのチェーン店が躍進することとなった。

ファッションにこだわる層もコンタクトレンズ一択になることはなく、服装や髪型に合わせてメガネを変えるということも当たり前になった。

ちょうど30代前半で近視が激しくなってきた当方も低価格メガネチェーン店でメガネを買うようになり今に至る。

 

で、何が言いたいのかというと、スーツはどうしても「通勤着」「現場作業着」という着用シーンのイメージが強い。高級スーツになるとそのイメージは弱まるが今度は逆にメンテナンスや保管がめんどくさい服というイメージになる。

今、定年退職した高齢男性で、冠婚葬祭以外で定期的にスーツを「わざわざ着たい」と思っている人はほとんどいないだろう。

だからスーツをわざわざ買わない。また現役世代も同様で仕事の無い日にスーツを着る人はほとんどいない。

 

となると、スーツ需要を一定数維持するためには「スーツは通勤着・現場作業着・仕事着」という概念を壊して「ファッション衣料である」という認識を形成し、使い方の変更を提案する必要があるのではないかと思う。メガネのように。

現在、コロナ禍のリモートワークに対応するために各社はアクティブスーツとかパジャマスーツとか呼ばれるカジュアルセットアップを多数開発している。

これをもっとカジュアルに使いましょうというようなキャンペーンを業界が団結してやってみてはどうだろうか?そうするとリタイアした団塊世代の需要も幾分かは見込める可能性もあるし、これからリタイアする世代の需要も幾分かはつなぎとめられるのではないかと思う。

ただ、この手のアクティブスーツ類は、これまでの純然たるスーツよりも物作りが簡略なので、新規参入が容易になってしまう。そのため販売の競合が激化する可能性は極めて高く、生き残りのために厳しい戦いを強いられることになるのではないかと思う。これも今の低価格メガネチェーン店のように。

まあ、そんなことをつらつらと考えてみた次第である。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2022/07/06(水) 11:47 AM

    日本製の既製スーツで人気があるリングヂャケット社なんかだと、低価格スーツより高額なスーツのほうが売れるということで10万円以下なんかには力を入れず、普通に20万円くらいのスーツとかシルク製ジャケット20万円とか売ってて、コレが結構売れちゃうという話ですね。オーダーだとスーツで40万円とかw
    もう、スーツ屋さんはコッチの路線に行くか、超低額のなんちゃってスーツに行くかしかないのかも?
    安売りオーダースーツ屋も何社かは生き残るでしょうけど、とてもコナカの規模の従業員を食わせられるほどにはならないですよね。経営って大変w

  • Keith より: 2022/07/06(水) 3:22 PM

    バブル期後半から京都OBJに始まり白山眼鏡、GB Gafas、Less than Human、9999などの国内勢、Mikli, Oliver peopleなどの海外勢と一大メガネブームになった記憶があります。当方もわざわざ北白川まで行ってAlain mikli買いました。まあこれも流行って廃る流れですね。流行るものは廃れる。流行りのピークが鋭くて大きいものほど廃れるスピードも早い。諸行無常ですな。と考えると細く長くをたくさん持てる会社の方が最終的には強いのか、スクラップアンドビルドを繰り返すのが強いのか…
    前に書いてはった旬を超えたところで売るのが今どきの経営から言うと正解かもしれません。あくまで経営側の意見ですが。

  • BOCONON より: 2022/07/06(水) 5:31 PM

    基本的にはメガネもスーツも南さんや “とおりすがりのオッサン” 氏のおっしゃる方向へ行っていると僕も思っています。百貨店やいわゆるツープラの動向を見ればわかる。
    以前書いた通り,丸井はもう洋服「も」売っている店になっているし,西武百貨店は明らかに「金持ちしか相手にしない」って営業方針に転換したようである。東武はやや丸井に近い。ツープラも池袋で言えば,事実上もうコナカ系列のスーツセレクト以外はないも同然になっています(この辺,南さんの今回の記事を読むにスーツセレクトはあるいはツープラ唯一の勝ち残りになるつもりなのかも…と僕は思ってしまう)。

    ところでアクティブ・スーツとかセットアップスーツには僕思うにヒジョーに大きな問題がある。それは「スーツと言っても,中学生が通学に着ているようなイモジャージみたいなものだから,特に良いものを着る理由がない」=「どれ買っても同じ」ということであります。・・・いや,ジャージなら学校ごとに色柄が違うからむしろまだましであるな。大悟や千原ジュニアみたいな芸人ならとも角,ビジネスに着るならスーツは基本濃紺か黒っぽいグレーしかないようなもの。その上こんな事実上まったくの作業着みた様な服の生地やシルエットなんぞにこだわって高価なブランドのものでも買う,なんて奇特な金持ちはたぶんそんなにはいない。素材もデザインも多種多様なメガネと違って「安くってもオシャレで自分に似合うものを…」なんてコダワリを持つ客も大していそうもなくて,たいがい「まあ適当に安いの買っておけ」でしょう。

    最近格安眼鏡店のクーレンズが事実上廃業したようで,僕の住んでいる地方都市もドラッグ・ストアや安いメガネ店が乱立したり撤退したりで,どう見ても潰し合いをやっているようにしか見えない。同様に結局アクティブ・スーツとかセットアップ・スーツ売っているお店なんてものも結局生き残るのは一つ二つだけ(あるいはユニクロだけ)になりそうな気がする。
    僕のこの予測が正しいとすれば,わが祖国は本当に「貧困ビジネス」のたぐいしかはやらない国に成り果てたようで,どうにも気の滅入る話であります。

  • 南ミツヒロ的テキトー主義者 より: 2022/08/10(水) 12:33 PM

    そういう南さんでも
    「スーツを着こなしている人を見ると
     やはりカッコイイと思う」・・・

    ここで南さんがいうスーツとは
    芸人が着てるお尻丸見え・着丈短めでもないし
    クラシコなんちゃらでもナポリ風でもない

    ネック~肩周りがハマって
    サイズがあっていれば
    ツープラのスーツで十分

    お手入れ、お値段、収納を度外視すると
    ダークスーツが一番日本人に似合うのでは?

    でも、5~10月にスーツは着たくないです

    温暖化と夏の前倒しのせいで、ジャケットを着れる期間が
    どんどん短くなったのもスーツ不要の大きな要因かと

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