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南充浩 オフィシャルブログ

メディアが報道するほどにはSDGsな衣料品が売れていない理由

2022年7月7日 トレンド 1

メディアでは「環境」「SDGs」「エコ」などを冠した商品や取り組みが連日これでもかというほど取り上げられ続けているが、実際のところ、身の周りではそこまでエコ商品を好んで購入している人を見たことがない。

同年配の業界人しかり、6年半通い続けた専門学校の生徒しかり、当方の親戚しかり、である。

むろん、全員が「公害垂れ流しで何の問題も無い」とは1ミリも思っていない。当方も思っていないが、ことさらに「環境対応商品を優先的に選ばねばならない」とは当方と周囲の人間は全く思っていない。

以前にもこのブログで紹介したことがあるが、SDGs商品の購入率は3割にしかならないというアンケート調査の結果がある。

 

SDGs消費、経験者は約3割、価格は3割増まで許容…購入品は食品・雑貨など | 通販通信ECMO (tsuhannews.jp)

 

このアンケート調査の結果が絶対的に正しいとは思わないが、この手の商品を好んで買う層は、多く見積もっても半数以下だろうというのが、身の周り調査も併せた当方の感想である。

少なければ1割~2割程度という可能性もあるのではないかとすら思う。

それゆえに、実際に素材メーカーやアパレルメーカーなどを取材すると

 

「SDGsとかエコとか冠を付けてはいるが、それが売れているという感じはしない」

 

という現場からの意見が多く聞かれるのだろうと思う。

また、国内の大手工場なんかではすでに2000年代初頭から、排水を限りなく無毒化するまで濾過するなどの環境対応を進めているから、今更、これ以上ハードルを上げる必要があるのかとも思う。

カイハラの三次工場ではすでに2000年代前半から排水を無毒・透明になるまで濾過して放水していたし、洗い加工場大手の豊和も2002年か2003年の時点で排液の無毒化取り組みをしており、自身で取材に伺ったことがある。

 

ただ、原・燃料の高騰やロシアによる侵略戦争による物価高などの影響で、2021年までの「エコ」「SDGs」とは今後かなり様相は変貌しそうだ。

例えばこのニュース。

原発・ガスは「持続可能」 欧州議会が分類を支持 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News

欧州議会(European Parliament)は6日、天然ガスと原発への投資は持続可能な事業と分類する欧州連合(EU)欧州委員会の案を承認した。

とのことで、普段はイシキタカイ系建前でしか話さないヨーロッパ人も背に腹は代えられず、本音をさらけ出して実利を掴みに来たというところである。ヨーロッパ人は今回に限らずいつもそうなのだが。(笑)

今後、SDGsの範疇や取り組みなどが変貌する可能性は極めて高くなったといえる。

 

それはさておき。

当方も含めてメディアの報道の多さに反して、SDGsやエコの商品が想像しているよりも売れにくい(需要が少ない)のかということになると、メディアの報道姿勢が極めて恣意的だからではないかと思う。

例えばこの記事である。

 

Z世代のリアルな環境意識を議論 日本プロフェッショナル販売員協会が勉強会開催

一般社団法人日本プロフェッショナル販売員協会(以下、JASPA)はこのほど、サステナビリティをテーマとした定例勉強会の第4回を開催した。今回はZ世代の環境意識への理解を深めることを目的に、学生団体Rethink Fashion Waseda(以下、ReF)のメンバー8人と「WWDJAPAN」編集統括兼サステナビリティ・ディレクターの向千鶴をゲストスピーカーに迎えた。JASPA会員企業のLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)やロレアル(L’OREAL)、大丸松坂屋百貨店、オンワードホールディングスなど11社から約120人がオンラインで参加した。

ReFは、早稲田大学国際教養学部に所属する学生が立ち上げ、主にサステナブルファッションにまつわる情報発信を行う団体。現在はさまざまな大学から約65人が参加する。

とある。この引用は別につぶさに記憶する必要は無い。ただ、参加した大学生の背景や人数がどのようなものだったかということは記憶しておいていただきたい。

で、この記事の中で以下のような当該学生の発言がある。

 

一方で、ファストファッションを楽しむ同世代も多く、「自分たちはマイノリティーだと感じる。“意識高い系”と壁を作られてしまうことが悩みだ」という。

 

いかがだろうか。

彼ら大学生はマイノリティーであるという自覚を持っている。そして当方も先ほどのアンケート結果と照らし合わせても彼らは確実にマイノリティーだろうと思う。

その自他ともに認めるマイノリティーの意見を聞いているのが、大丸松坂屋、オンワード、ロレアルなどのマス向け大手企業であり、それは激しくミスマッチを起こしているといえる。

むろん、マイノリティーの意見を聞く必要はあるが、大手企業はマスに向かって売りたいわけだからまずはマジョリティーの意見を聞くべきだろう。

逆にいえば、マイノリティーの意見しか聞かないで政策を立てれば、必ず売れない。

 

何が言いたいのかというと、今回のSDGsに関してもそうだがそれ以外でもメディアはマイノリティーの声を大きく報道しすぎているのではないかということである。

もちろん、ニュースというのは意外性がないと興味を持って購読視聴してもらえないから、売らんがため・金のためにはそうなることは理解できる。

昔から言われているように、犬が人を噛んでもニュース価値はないが、人が犬を噛んだらニュースになる、ということである。

だが、今回のようにマイノリティーの声だけを過剰に大きく報道することで、世の中のミスリードを引き起こしているといえる。

すくなくとも業界メディアは、業界をミスリードすべきではないと当方は考える。

まずはメディアはもとより、大手企業はサイレントマジョリティ―の意見にこそ耳を傾ける必要があるだろう。

 

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 comment
  • BOCONON より: 2022/07/07(木) 6:41 PM

    およそこの手の “エコ” な商品はたいへんにお高いですからね。それはつまりフツーの商品より電気も石油も手間も時間も食う,という事だから本当は SDGs もへったくれもない。ペットボトル集めて温水器作って家の屋根に乗せるような話・・・いやそんな笑い話レヴェルじゃなくなっているな。今や太陽光発電の現状似たようなものだから,小池都知事も阿呆の極みですね。「そういうのは個人の道楽でやってもらいたいもんだ」と僕は思います。

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