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南充浩 オフィシャルブログ

最近立ち上がったタレントブランド・インフルエンサーブランドが短命で終了する理由

2022年6月21日 トレンド 0

有名タレント、インフルエンサーブランドの寿命は例外を除いて概して短い。

個人的には昔から読モブランド、タレントブランド、インフルエンサーブランドには全く興味がないが、2010年代半ば以降に立ち上げられた有名人ブランドは、2000年代の有名人ブランドよりも寿命が短いものが多いと感じる。

伊藤千晃、自身のブランド無期限休止「新たな活動に向けての決断」 | ORICON NEWS

約3年前、アパレルブランド発足が夢の一つだった私としてはKIKIANDDAYSを立ち上げられたことは、夢がひとつ叶ったと同時に新たな挑戦ができることに心がワクワクした出来事でした。

と記事中にはある。

また

紗栄子が手掛ける「マイ アパレル」が休止へ ライフスタイルブランドへのアップデートが理由 (fashionsnap.com)

という報道もあった。これは6月1日の記事なので今月は有名タレントブランドが2つも休止になったということになる。

2020年9月にデビューしたマイ アパレルは、「長く愛せるモノを」をコンセプトに、完全受注生産で環境に配慮したアパレルアイテムを開発。

という一文からもわかるように寿命はたったの2年である。

両者とも2年・3年という短命に終わっている。

新しいステージとかなんとか言っているが、実際のところは売れ行きや利益率が悪かったのだろう。売れていて儲かっていればもっと活動は継続しているはずだ。売れていて儲かっているけど止めますなんてことは普通はあり得ない。

この両者に対して自分は何の思い入れもないしファンでも何でもなく、当方の人生においてその存在は全く関わりがないが、それでも世間的にはかなりの有名人の部類に入る人間がやったところで、衣料品ブランドを5年以上継続することは至難の業だということが分かる。

 

90年代後半から2010年代前半までに立ち上がったタレントブランド、読モブランドの多くは、大手から中堅アパレルのバックアップを受けていた。

2010年代半ば以降のタレントブランド、インフルエンサーブランドは、大手・中堅アパレルと組んでいることは珍しく、商社の製品事業部やOEM・ODM会社と組んでいるものがほとんどである。

短命に終わる理由について、当方はバックアップ企業の差であると考えていることは以前のブログにも書いた。

小粒なインフルエンサーブランドやD2Cブランドが増えている理由

なるほど、大手・中堅アパレルも2000年代に突入すると商品作りを商社の製品事業部やOEM・ODM会社に丸投げすることが増えた。だが、基本的にアパレルはマーチャンダイジングと呼ばれる年間の商品計画は自前で組み立てている。その年間計画に沿って個々のアイテムの生産が丸投げされるという仕組みを取ってきた。

一見すると、アパレル企業を介在させることは無駄で非効率的と取る人もおられるだろうが、この「年間の商品計画」というのが重要なのである。

 

一方、近年のタレントブランド、インフルエンサーブランドはタレントやインフルエンサーの着想を得て商社の製品事業部やOEM・ODM会社が組み立てて服を作るという仕組みとなっている。これは一見すると効率的だが、実は大きな落とし穴がある。

 

単品ブランドではなく、トータルブランド、ライフスタイルブランドと名乗るとなると、何か特徴のある単品アイテムを売り続けるのではなく、ある程度の型数・品番数を用意し、トータルなファッションコーディネイトで売る必要がある。そうでなければトータルブランド、ライフスタイルブランドではない。

うちはTシャツとジーンズしかないんですよ

なんていうトータルブランドはあり得ない。それはTシャツとジーンズのブランドである。

トータルブランドというからには、Tシャツあり、スカートあり、ショートパンツあり、セーターあり、コートありという具合にトータルなアイテムが必要とされる。

アパレル各社はこれを何十年間もやってきたわけだから、春夏秋冬それぞれに応じたトータルアイテムを企画立案し、年間での商品計画を立てることには長けている。

一方、商社の製品事業部、OEM・ODM会社はなるほど商品を製造することには長けているだろうが、年間の商品計画を立てるノウハウはほとんど持ち合わせていない。

 

おまけに有名タレント、インフルエンサーのほとんどは衣料品ビジネスについてド素人だから年間通したトータルな商品を企画することはできない。どうしても単品アイテムを思いつくだけにとどまる。

実際に当方も何人かのインフルエンサーブランドを定期的に眺めているがいずれも単品アイテム提案ブランドの域を出ない。

そして、ド素人の個人が商品アイデアを思いつけるのは多くても20数回、少なければ10回くらいだろうと個人的には考えている。

伊藤氏のブランドは約3年ということで4シーズンで考えるなら12回、紗栄子氏のブランドは2年なので4シーズンなら8回なので、ちょうどド素人のアイデアが枯渇する上限に近いと当方は見る。

そして、ド素人なのでアイデアも枯渇したし、売れ行きもイマイチだからブランドを止めてしまおうかということになるのだろう。

恐らく今後も、商社の製品事業部やOEM・ODM会社と組んでいる単品志向のタレント・インフルエンサーブランドの休止は続くだろう。

 

最後に蛇足ながら、有名タレント、インフルエンサーがオリジナルブランドを開始する際、彼らがSNS上で抱えるフォロワー数の多さに期待を寄せて、組むことを決断する企業が多いと思うが、フォロワー数の多さは決して物がたくさん売れるという保証ではないということを再認識すべきである。

もちろん、フォロワー数は少ないよりも多い方が物が売れる可能性は高い。

だが、タレントやインフルエンサーのファンは、その人の容姿や演技、歌、パフォーマンスなどのファンなのであって、その人が作る洋服を求めているとは限らない。

またフォロワーというのは純粋なファンだけとは限らず、有名であればあるほど監視目的のアンチも多数含まれるようになるし、強いファンではないが単に時々覗きたいからという理由でフォローする人もいる。また幽霊アカウントのフォロワーもいるだろうし、最悪フォロワー数はカネを払えば買うこともできる。

タレントのファンクラブ会員でも物販でカネを落としてくれる比率は平均的に1%~5%程度と言われている。とすると、10万人のファンがいても物販で物を買ってくれるのは1000~5000人程度ということになる。

伊藤氏のインスタグラムのフォロワーは60万強、紗栄子氏は159万だが、これを額面通りの60万人のファン、159万人のファンがいると受け取ることは、世間知らずのすることといえる。

 

有名タレント・インフルエンサーブランドの短命さを持って、繊維業界の各企業は

 

1、フォロワー数の多さは商品の売上高を必ずしも保証する物ではない

2、年間を通じたマーチャンダイジングの重要性

 

を強く噛みしめる必要がある。

 

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