SPAブランドとネット通販の普及で「セールの早期化議論」は無意味になった
2022年6月20日 お買い得品 0
数年くらい前からすっかり忘れ去っていた業界キーワードの一つに「バーゲン開始の早期化」がある。
実はほんの数日前まですっかりと忘れ去っていた。なぜなら当方はもう夏冬のバーゲン開始日に店頭に行くことを2018年ごろからしなくなったからだ。
正確にいうと、夏のバーゲンはもっと以前から興味を失っていて、冬のバーゲンの開始日に店頭に行かなくなったのが2018年正月からである。
理由は
1,夏物の衣服は定価でも単価が安いし、夏服自体にあまり興味が無い
2、夏冬に限らずSPAブランドは年中値下げ品があるからバーゲンまで待つ必要がない。
3、ネット通販にも値下げ品は年中溢れているのでバーゲンまで待つ必要がない
4,加齢なのか老化なのか若い時ほど切実に〇〇ブランドの〇〇が欲しいとは思わなくなった
である。
で、それを思い出した切っ掛けとなったのは、繊研新聞に「セールの早期化が云々」というコラムが掲載されていたのを読んだためだ。
あ、そういえばそんなこともあったな、と。
加齢や老化による欲望の減退を差し引いたとしても、SPAブランドの存在とネット通販の存在は若者にとっても大きく、バーゲン開始時まで待つ必要性を感じさせなくなっているのではないかと思う。
ユニクロ、ジーユーに限らずアダストリアの各ブランドやGAPに代表されるように、SPAブランドは基本的に売れ残った商品を定期的に値下げする。そのため、常に年中、店内にセール品コーナーが存在する。
となると、2000年ごろまでのように、値下げされた服を買うには夏冬のバーゲン開始時まで待たねばならないという必要性は低くなる。
そしてこれだけSPA型ブランドが全国津々浦々にまで店舗網を拡大していれば、よほど御贔屓のブランドがある人以外は、これらのSPAブランドのセール品をその都度買えば良いということになる。
2000年代後半から、当方はそのために夏冬のバーゲンで買う服は劇的に減った。
そして2015年以降のネット通販の拡大である。
まず、楽天やYahoo!ショッピング、ZOZO、Amazonなどの巨大モールでは、毎日のように割引クーポンが配られ、タイムセールが行われている。値下がり品が欲しければそれを狙えばいい。
また、各ブランドの自社通販サイトはアウトレット機能を備えており、ウェブという空間は陳列スペースが無限だから、何年も前の不良在庫を投げ売りしている場合がほとんどである。
2018年から愛用し始めたアダストリアのドットエスティはわざわざ「アウトレットコーナー」は設けていないものの、3年くらい前の商品を値下げして平気で売っている。
もちろん、当方はそれを買っている。
以前にもこのブログでご紹介したベイクルーズストアだが、1年くらい前に「アウトレットコーナー」がサイト内に完備されたようで、当方は今春から愛用し始めた。
だいたい2017年春夏以降の在庫品が並んでおり、80~50%オフである。
3カ月連続で買っている。
今月は1097円に値下がりした半袖綿セーターを2枚、792円に値下がりしたシルクのネクタイ1本と990円に値下がりしたシルク・綿・麻混のネクタイ1本で計3976円を使った。
これだけ買って4000円未満というのは、なかなか買いごたえがある。
その前にも半袖Tシャツを何枚か買っているので、ぶっちゃけ、今年の夏物はベイクルーズストアの投げ売り品で満腹である。
あと買い足すとするなら、ユニクロかジーユーで吸水速乾機能付きのTシャツの値下げ品を買うくらいである。
こんな環境で夏冬のバーゲン開始まで待つなんていうのは、よほどにマニアックなこだわりのある人か御贔屓ブランドがあるか、特定のブランドの特定の商品が欲しいと強く願っている人か、だろう。
そして付け加えるなら、冬服に比べて夏服への注目度の低さ、関心の低さもある。
冬服はアパレルの花形だと思う。特に防寒アウターは見映えもするし単価も高いから、消費者のバーゲンへの期待も大きくなる。
一方、夏服はというと、メンズだと半袖シャツかポロシャツ、Tシャツくらいしか買う物がなく、女性でもそこにワンピースが加えられる程度だろう。
そして冬服に比べて定価が安い。
バリエーションが少なく、定価が安いとなると、バーゲンへの期待値はそこまで高くならない。切実に欲しいなら定価でも手が届きやすい。
実際に、2005年以降、人気ファッションビルや百貨店でバーゲン開始日に買い物に行くと、夏と冬では全く熱気量も客数の多さも異なる。
夏の方が圧倒的に空いている。
店頭の売れ行きで言うと、5月上旬にゴールデンウィークが終われば母の日と父の日くらいしか売れる日が無い。特に6月は父の日以外に何のイベントも無いので売れ行きが鈍る。となると、6月から売れ残り品を値下げすることは理にかなっている。
低価格SPAブランドには年中セール品コーナーはあるし、低価格SPAではない中価格帯のファッションビルブランドでさえ、自社公式通販サイトにはアウトレット品や数年前の在庫品が値下げされて叩き売られている。
そして、2020年のコロナ禍によってネット通販の利用者数・利用率は増え、これまでのように「ネット通販と実店舗は別だから。ネット通販なら消費者に気付かれないから」ということは無くなった。
よほどにステイタス性の高いブランドやイメージを高く保ち続けているブランド以外は、ますます夏冬のバーゲン開始日を死守する意味が無くなっている。
一握りの死守ブランド以外は、SPAブランドよろしく設定販売期間を過ぎた売れ残り品は値下げすればいいと思うし、ネット通販で値下げ販売しながら実店舗では値下げを我慢するという行為は全く意味がないし消費者に対するダブルスタンダードだとしか思えない。
バーゲン開始日の議論なんてすでに無駄であり、いかにして設定した販売期間内でできるだけ値下げせずに売り切るかという手法と、売り切れる数量を定める精度を高めるかがアパレルという仕事の鍵になっている。それが理解できないアパレルや小売店はますます苦戦するだけである。
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